ロストテクノロジー

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ロストテクノロジーとは、何らかの理由により現代では失われてしまった科学技術である。似た言葉にオーバーテクノロジーが挙げられるが、こちらは時代錯誤の工芸品(オーパーツ)を指し、主に創作の世界において使われる。

本項では主に、過去に開発されながら後世に伝えられず絶えた技術体系について述べる。

発生の要因[編集]

ロストテクノロジーが発生する要因は様々であるが、主に以下のことが原因であると考えられている。

後継者が途絶え、技術が失われる(例:ギリシアの火
職人による普遍的な工程が秘儀的な扱いになるなどした結果、後継者となる世代に広く十分に技術が伝承されなくなる。
環境の変化により、技術が育まれる基盤が消失する(例:ローマ水道
技術を伝えていた集団の属する文明が衰退したり、社会基盤を喪失したり、あるいは特定の原料が産出される地域から原料が得られなくなるなど。またかつて権力者がその権力と財力で保護していた産業が、後ろ盾となっていた権力を失って衰退するケースも挙げられる。これについては、大規模な天変地異や気候の変化による文化の変質、異文化による侵略略奪なども要因となる。
別のテクノロジーの発展により、衰退する(例:和算
新しい技術が単純により優れていたり、または「品質面ではやや劣るが、コストや時間的に効率よく大量に製造できる」という場合には、旧来技術は失われやすい。これは旧来技術では製造にコストや時間が掛かりすぎる場合、それに見合わない質の高い製品を作るより、新技術でやや質の低い製品を短時間で大量に提供できた方が、社会全体にとって有益であるためである。

ロストテクノロジーの例[編集]

北宋汝窯青磁
青磁の最高級品として著名。澄み切った青空のような色彩(一部釉薬にメノウを混ぜ込んでピンク色を呈することもある)で知られ、現存数は少ない。復元への試みがなされている。
南宋曜変天目茶碗
漆黒を背景に青・群青・銀・黄色など玄妙な光沢・色彩を呈する陶器。世界で3点(ないし4点。すべて日本に存する)しか現存しない。現在、技術復元への努力が一部の陶芸家によって続けられている。
共和政ローマおよびローマ帝国ローマ水道
大繁栄を誇っていたローマ帝国の分裂、滅亡によって技術が大幅に衰退。
東ローマ帝国ギリシアの火
国家機密とされていたために、帝国の滅亡とともに製造方法が失われた。
古代ローマガルム(魚醤)
ダマスカス鋼
古刀と呼ばれる日本刀
慶長年間以前に製作された刀を古刀と呼ぶが、この年代を境として日本刀の製作方法や用いられる鉄材に大きな変化があった。慶長年間以降の日本刀を新刀と呼ぶが、不思議なことに鉄の精錬技術が未熟であったはずの古刀期の日本刀の方が、刀鍛冶同士の技術交流や鉄の精錬技術が進んだ新刀期以降の日本刀よりも優れた作品が多いとされている。
西洋剣術
ヨーロッパでは銃の発達によって戦場で使われる実践剣術は失われ消失した。現在では武術考古学とでも呼ぶべきアカデミックな研究が行われており、古い文献などから復元を試みている研究者や観光資源として再現している人物がいるが、日本の剣術のように代々伝えている伝承者は存在していない。
ストラディバリウスの製作技術
弦楽器の代表的な名器を生んだ職人アントニオ・ストラディバリには純然たる後継者がおらず、その製作技術は失われた。後に多くの楽器職人や研究者がその音の秘密に挑んでいるが、未だに完全な解明はなされていない。
戦艦主砲
第二次世界大戦後は、主に航空母艦の台頭や航空機ミサイルの発達という理由により、戦艦が無用の存在となり、12インチ(30.5cm)~20インチ(50.8cm)クラスの大口径砲の製造技術も失われてしまっている。

フィクション作品における位置付け[編集]

サイエンス・フィクション(SF)などでは、現実的な科学的見地に立つハードSFのような作品では余り扱われない題材だが、より空想の範囲を広げたガジェットSFやスペースオペラに類する作品においては、オーバーテクノロジーと共にしばしば「理解できない(ブラックボックスの)物品なので、細部の機構的な説明ができない」として、現実的な既存の技術を無視する事が出来るために格好の題材として扱われ、「原理のみが大まかに語られる」という扱われ方をしている。

また、ファンタジーや歴史劇的な世界観にSF的な要素を持ち込む手段としてこのロストテクノロジーが登場することもあるが、こちらはいわゆる超古代文明などの延長的なものに過ぎず、オーパーツなどとの概念上の交雑が見られ、作中の世界観からすれば定義どおりではあるが、現実の「ロストテクノロジー」とは隔たりが大きい。

関連項目[編集]