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レントシーキング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

レントシーキング: rent seeking)とは、民間企業などが政府や官僚組織へ働きかけを行い、法制度や政治政策の変更を行うことで、自らに都合よく規制を設定したり、または都合よく規制の緩和をさせるなどして、超過利潤(レント)を得るための活動を指す[1][2]。また、これらの活動を行う人をレントシーカーあるいはロビイストなどと呼ぶ。

レントシーキングによる支出は生産とは結びつかないため、社会的には資源の浪費とみなされる。

概要

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英語のrentは通常「地代」のことを指すが、レントシーキングの文脈で比喩されるレントは賃料収入のみを指すのではなく、利潤・賃金・経済的利益一般を差す。rent-seekは元々は土地や天然資源一般の支配権を獲得する(探すseek)行為を指す。日本語では場所代に語感が近い。

ロバート・シラーによれば、レントシーキングの典型的な例は、「土地所有者が自身の所有する土地を流れる川に鎖を架け、通行する船に対して鎖を下ろす料金を徴収する集金役を雇用する事」であるという。鎖にも集金役にもなんら生産的な要素はなく、通行する船にも何ら見返りはない。土地所有者は川に対して何の改善も施しておらず、直接的にも間接的にも、自分自身に対するより他にはいかなる付加価値も生みだしていない。彼のやっている行為は、かつては無料で提供されていたものから収入を得る方法を発見しただけである[3]

レントシーキングは経済成長に悪影響を与える。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授のフィリップ・アギオンらの研究によれば、アメリカにおける近年の生産性の低下は、GAFAと呼ばれるような巨大IT企業があまりに大きな力を持つようになったために、ロビー活動とレントシーキング等を通じて、他企業の市場参入を阻害してきたことが原因である。この考察から、アギオンらは政策面での規制と競争政策の促進が必要であるとした[4]

イギリス金融サービス機構の元議長であるアデア・ターナーなど複数の経済学者によれば、金融業界における近年の「イノベーション」と称する有償サービスの提供のうち幾分かはレントシーキングの一形態にすぎないと批判している[5][6]

ジョン・サンプルズはニューヨークや他のアメリカの主要都市におけるタクシー営業に対する台数規制とメダリオンの制度は典型的なレントシーキングであり、メダリオンを保有する事業者は労働者に貸し与えることで賃借料を得ており、またメダリオン制度の存在によりニューヨークのタクシー料金が不当に高騰していること、メダリオンそのものが売買の対象となっており、一時期は100万ドルを超える高額で売買されているという風聞を紹介している[7]

脚注

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  1. ^ ジョセフ・スティグリッツ『世界の99%を貧困にする経済』
  2. ^ レントシーキング」『デジタル大辞泉』https://kotobank.jp/word/%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0コトバンクより2022年5月16日閲覧 
  3. ^ The Best, Brightest and Least Productive? [1]
  4. ^ フィリップ・アギオン「イノベーションと格差」『格差と戦え』慶應義塾大学出版会 pp.184-191
  5. ^ Turner, Adair (19 April 2012). Securitisation, Shadow Banking and the Value of Financial Innovation (PDF) (Report). School of Advanced International Studies. Johns Hopkins University. 2012年10月3日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ.
  6. ^ Turner, Adair (17 March 2010). What do banks do, what should they do and what public policies are needed to ensure best results for the real economy? (PDF) (Speech). FSA.gov.uk. 2010年10月7日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ.[?]
  7. ^ Samples explains how consumers are harmed by corporate rent-seeking with a look at New York City taxi licensing.May 30th, 2012[2]

関連項目

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