レリオ、あるいは生への復帰

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レリオ、あるいは生への復帰』(Lélio, ou Le retour à la vie作品14bisは、エクトル・ベルリオーズが作曲した語り手、声楽と管弦楽のための作品。「叙情的モノドラマ」(Monodrama lyrique )と題されており、『レリオ、あるいは生への回帰』などとも訳され、『レリオ』と略されることもある。

概要[編集]

幻想交響曲』の続編として作曲されたが、この作品はベルリオーズの失恋体験がもとになり作曲につながったという。

1829年に、後に妻となるハリエット・スミッソンへの恋が受け入れられることがなく、その後間もなくしてカンタータ『サルダナパールの死』[注 1]によって念願のローマ大賞を獲得し、1830年末からローマに留学することになった。同年12月5日の『幻想交響曲』の初演で大成功を収めたベルリオーズは、女性ピアニストのマリー・モークと婚約して、2年間の留学が義務づけられたローマへと旅立った。しかしローマに着いて間もなく、マリーの母親から、娘は有名なピアノ製作者プレイエルの息子と結婚すると知らされ、結果的に2度目の破局となった。ベルリオーズはひどく怒り、母娘とプレイエルの息子を殺して自分も自殺しようと、女装してピストルと自殺用の薬物を買い込んで馬車に乗り、パリへと疾走したが、フランス国境近くで何とか思いとどまって正気を取り戻し、その後ニース[注 2]で1ヶ月ほど静養してローマに帰った。

ベルリオーズはその後、この体験をもとにして『レリオ』の作曲を始めたが、それ以前に作曲したいくつかの旧作も組み入れた。組み入れられた作品は、1829年にローマ賞のため提出したカンタータ『クレオパトラの死』や、1830年の『山賊の歌』と『テンペスト』、1831年の『幸福の歌』などである。1831年に「叙情的モノドラマ」(あるいは「6部のメロローグ」)として完成し、1832年12月9日、ベルリオーズがパリへ戻って最初の演奏会で『幻想交響曲』(再演)と共に初演された。指揮はアブネックによる。

この初演にはスミッソンも出席していた。この時まで彼女はベルリオーズのことは記憶に留めておらず、これらの作品で実は自身が主題となっていることにも気づかなかったが、この演奏会を契機として交際が始まり、翌1833年10月に結婚にいたる。また総譜の出版の際、初版はスミッソン、改訂版は2人の間の息子ルイに献呈されている。

ベルリオーズは、自身の自伝的な告白ともいえる『幻想交響曲』と『レリオ』の2つの作品を対にして演奏することを意図し、はじめは『ある芸術家の生活の挿話、5部からなる幻想交響曲』として1845年に出版した後、1855年に「ある芸術家の挿話 第1部」とし、『レリオ』をその第2部(作品14bis)として出版した。

本作は『幻想交響曲』に知名度や人気で遠く及ばず、音楽付きの独白劇という演劇的性格が強く形式上類例のほとんどない作品であるため、特に日本では言語の問題もあり演奏されることは非常に少ない。

編成[編集]

構成[編集]

全部で6曲からなり、曲の間には俳優による語りが入る。演奏時間は約53分であるが、ベルリオーズは2作続けて演奏するように指示しているため、仮に『幻想交響曲』と一緒に演奏した場合は約1時間50分以上となる。

  • 第1曲 漁師
  • 第2曲 亡霊の合唱
  • 第3曲 山賊の歌
  • 第4曲 幸福の歌
  • 第5曲 エオリアン・ハープ-思い出
  • 第6曲 シェイクスピアの「テンペスト」にもとづく幻想曲

第6曲の開始までは語り手のみが舞台の前に立ち、オーケストラ、独唱者、合唱団は舞台に下ろされたカーテンの裏で演奏する。第6曲を演奏する時にはカーテンが上げられる。これは、第6曲以外は全て主人公レリオの空想上のものとするためである。

主な上演記録[編集]

日本[編集]

その他[編集]

  • 2006年9月22日 / 10月4、6日、ダルムシュタット、ダムシュタット州立劇場、演出:ジョン:デュー英語版
    ダムシュタット州立劇場管弦楽団および合唱団、指揮:シュテファン・ブルニエ
    配役:ハンス・マティアス・フックス(レリオ)、マーク・アドラー/マルクス・ダースト(ホレーショー)、ヴェルナー・フォルカー・マイヤー/アレクサンドル・プリトリユク(山賊の首領)ほか[9]

録音[編集]

指揮者 管弦楽団・合唱団 配役 録音年 レーベル 備考
ピエール・ブーレーズ ロンドン交響楽団
ロンドン・シンフォニー・コーラス
ジャン=ルイ・バロー
(ナレーション)
ジョン・ミッチンソン
ジョン・シャーリー・カーク
1967 Sony 『幻想交響曲』有
ジャン・マルティノン フランス国立放送管弦楽団
フランス放送合唱団
ジャン・トパール
(ナレーション)
ニコライ・ゲッダ
ジャン・ヴァン・ゴール
1973 EMI 『幻想交響曲』有
コリン・デイヴィス ロンドン交響楽団
ジョン・オールディス合唱団
ホセ・カレーラス
トーマス・アレン他
1980 Philips ナレーション無し
『幻想交響曲』有
エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団
フライブルク声楽アンサンブル
フランクフルト聖歌隊
ダニエル・メスギッシュ
(ナレーション)
キース・ルイス
ウォルトン・グロンルース
1987 DENON 『幻想交響曲』有
ズデニェク・マーカル ミルウォーキー交響楽団
同合唱団
ウェルナー・クレンペラー
(ナレーション)
グレン・シーバート
ウィリアム・ダイアナ
1994 Koss 『幻想交響曲』有、
英語版での録音
ロルフ・ロイター ベルリン・コーミッシェ・オーパー管弦楽団
ベルリン放送合唱団
ハンス・ペーター・ミノッティ
(ナレーション)
ミヒャエル・ラープジルバー
ベルンド・グラボウスキー
1994 Berlin Classics 『幻想交響曲』有、
独語版での録音
シャルル・デュトワ モントリオール交響楽団
同合唱団
ランベール・ウィルソン
(ナレーション)
リシャール・クレマン
フィリップ・ルイヨン
ゴードン・ギーツ
1996 Decca 『幻想交響曲』有
トーマス・ダウスゴー デンマーク国立交響楽団
デンマーク国立合唱団
ジャン・フィリップ・ラフォン
(ナレーション兼バリトン)
ゲート・ヘニング・ジャンセン
スーネ・ヘリルド
2004 Chandos 『幻想交響曲』無し
リッカルド・ムーティ ケルビーニ管弦楽団、
イタリア・ユース管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱連盟
ジェラール・ドパルデュー
(ナレーション)
マリオ・ゼフィリ(テノール)
フランク・フェラーリ(バリトン)
2008 Zyx Music 『幻想交響曲』有、
PALのDVD(リハーサル)付
リッカルド・ムーティ シカゴ交響楽団
シカゴ・シンフォニー・コーラス
ジェラール・ドパルデュー
(ナレーション)
マリオ・ゼフィリ(テノール)
カイル・ケテルセン(バリトン)
2010 King International 『幻想交響曲』とセット、
2010年9月のシカゴ交響楽団
音楽監督就任記念コンサート
のライヴ録音

関連作品[編集]

  • フランツ・リスト:ベルリオーズの『レリオ』の主題による交響的大幻想曲(Grand fantaisie symphonique sur des theme du Berlioz 'Lelio' ) S.120/R.453 H2
    作曲:1834年、出版:1981年 ペータース
    ピアノと管弦楽のための交響的作品。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ このカンタータはローマ大賞を獲得した1830年に作曲されたものであるが、ベルリオーズは「自身の作品にそぐわない」として同年末頃に楽譜の一部分を自ら焼き捨てたと伝えられる。
  2. ^ ニースは1860年にフランスへ割譲される以前にはサルデーニャ王国領であり、フランス国外であった。

出典[編集]

  1. ^ ■AOF 大阪フィル公演記録データベース”. 大阪フィル定期公演記録データベース. 2016年4月16日閲覧。
  2. ^ 演奏会アーカイブ 過去の定期演奏会”. 神奈川フィルハーモニー管弦楽団. 2016年4月16日閲覧。
  3. ^ SendaiPhilharmonicOrchestraの投稿 (580712318762691) - Facebook
  4. ^ コンサート情報”. 仙台フィルハーモニー管弦楽団. 2016年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月16日閲覧。
  5. ^ 仙台フィルハーモニー管弦楽団 東京特別演奏会”. サントリーホール. サントリー. 2016年4月16日閲覧。
  6. ^ “<両陛下>仙フィルご鑑賞へ 17日・東京”. 河北新報. (2016年4月13日). オリジナル2016年4月16日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160416114858/http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201604/20160413_13040.html 2016年4月16日閲覧。 
  7. ^ 両陛下、地震考慮し音楽鑑賞中止 - 都内での特別演奏会”. 共同通信 (2016年4月17日). 2016年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月17日閲覧。
  8. ^ Fantastico Lélio - Lelio #musica”. il giornale della musica. 2016年4月16日閲覧。(イタリア語)
  9. ^ Schicksal / Lélio oder Die Rückkehr ins Leben”. 2012年4月29日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年4月16日閲覧。(ドイツ語)
  10. ^ Salzburger Festspiele > INSTITUTION > ARCHIV > Archivdetail”. 2016年4月16日閲覧。(ドイツ語)
  11. ^ NEWS - Muti, Depardieu e la fantasia di Berlioz”. Orchestra Giovanile Luigi Cherubini (2008年6月28日). 2016年4月16日閲覧。(イタリア語)
  12. ^ Marie-Aude Roux (2009年2月27日). “Muti et Depardieu, ensemble pour Berlioz”. ル・モンド. 2016年4月16日閲覧。(フランス語)
  13. ^ Federico Monjeau (2009年4月23日). “Una sinfonía en escena”. アルゼンチン: Clarín.com. 2016年4月16日閲覧。(スペイン語)
  14. ^ Nutrida agenda de conciertos del Centro Cultural de Música”. ウルグアイ: LaRed21 (2009年3月28日). 2016年4月16日閲覧。(スペイン語)
  15. ^ Para tornar os clássicos mais vivos”. ESTADÃO (2007年5月9日). 2016年4月16日閲覧。(ポルトガル語)
  16. ^ Orchestre des Champs-Elysées abre temporada 2009 da Sociedade de Cultura Artística”. Concerto (2009年4月24日). 2016年4月16日閲覧。(ポルトガル語)
  17. ^ John von Rhein (2010年9月24日). “Thunderous ovations greet CSO season opener under music director Riccardo Muti”. シカゴ・トリビューン. 2016年4月16日閲覧。
  18. ^ Chicago Symphony Orchestra”. カーネギー・ホール (2011年4月16日). 2016年4月16日閲覧。
  19. ^ Bard Music Festival and Fisher Center present:BMF Program Ten / From Melodrama to Film”. The Fisher Center for the Performing Arts. 2016年4月16日閲覧。
  20. ^ Symphonie Fantastique - Sir John Eliot Gardiner conducts Berlioz”. Edinburgh International Festival. 2016年4月16日閲覧。
  21. ^ RéVOLUTIONNAIRE ET ROMANTIQUE - Festival Berlioz - La Côte-Saint-André, Isère”. Festival Berlioz. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月16日閲覧。(フランス語)
  22. ^ Kunst un Leben”. 2016年7月25日閲覧。

参考文献[編集]

  • 作曲家別名曲解説ライブラリー ベルリオーズ(音楽之友社