レディーファースト

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女性を前面に出して並ぶプロムの参加者。

レディーファースト: ladies first)とは、女性を尊重して優先させる欧米のマナーや習慣。

概要[編集]

日本における文献では1930年の『アルス新語辞典』(桃井鶴夫・編)において、「近頃レデー・ファースト主義といふ言葉を見受けるが、あれは婦人に一目を置くといふよりも同等に取扱ふ、即ち婦人の個性を認めて尊敬するといふやうな意」との記述が確認できる。

近年では「女性が部屋に入って来たら男性は立つ」などのレディファーストの行動理念は、欧米においても古い世代のものになりつつある[1]。しかし、TPOに応じて男性に必要とされる当然のマナーとして、レディファーストは今も存在している[1]

男性が連れの女性をエスコートする際のマナーとしてのレディファーストの一例を以下に記す[1]。ただし型どおりであれば良いということではなく、状況により臨機応変に動くことが望ましいとされている[1]

  1. 道路を男女で連れ立って歩く際は車道側を男性が歩き、女性を事故や引ったくりから守る。
  2. エレベーターでは扉を押さえて女性を先に乗せる。降りる際も扉が閉まらないように気をつけて女性を先に通す。
  3. 扉は男性が開け、後に続く女性が通りきるまで手で押さえて待つ。
  4. 高級レストランで案内が付くときは、女性を先に通して男性が後ろを歩く。ただし、案内などが付かないレストランでは男性が先に立って席を探す。
  5. ロングドレスの女性は座ってから椅子を引きにくいことがあるので、座りやすいよう男性が椅子を引き、女性が座りやすいように椅子を戻す。
  6. 女性が中座する際、男性は一緒に立ち上がる。席に戻る際にも同様に立ち上がり、座るのを待つ。格の高い女性が立ち上がる際は、その場の男性全員が立つ。
  7. レジでの勘定は、どちらの負担であるかにかかわりなく男性が行う。ただし女性から招待を受けている場合は別である。
  8. 自動車などの乗降の際において、特に女性がロングドレスにハイヒールという装いならば、運転する男性が助手席に回ってドアを開閉する。

また、ホテルなどにおけるドアマンなどによるレディファーストは、下記のとおりである[1]

  1. 自動車を降りる際に手をさしのべて女性を介助する。
  2. 船の乗降の際に手をさしのべて女性を介助する。
  3. 椅子に座る際、ウエイターが椅子を引いて座るまで女性を介助する。この場合、連れの男性は女性がきちんと座るまで着席を控える。

起源[編集]

エドモンド・レイトン作《騎士の叙任》(1901)

女性の機嫌を取ることが男性の風俗としてはじまったのは、ローマ帝国時代とされる場合があるが、これは恋愛術または口説きの手法としてのものであり、これはレディーファーストとは直接の関係はない[2]

欧州におけるマナーの起源は、騎士階級のひとびとの道徳規範であった騎士道に求められる。騎士階級は富農身分や貴族身分の中からおこり、12世紀頃に独立した階級となり、世襲化した[3]。長男はともかく、次男、三男は父の家督を継げる可能性はなかったので、戦功を挙げて主君に仕え、自分の城を手に入れようとする者も多かった。裕福な未亡人がいれば近づいて後釜に座ることもあった。また、若い騎士が主君の妻に恋愛感情をいだくこともあったし、主君もそれを家臣の引き止めのために利用しようとした。このように、実利的な動機によるとはいえ、貴婦人に対して奉仕するという騎士道の理念が成立した[4]

一方、動機を5世紀頃からはじまる聖母への崇敬に求める意見もある。この影響で、中世にはいると、少なくとも貴族の女性を崇高なものとして扱おうという傾向へ転じ、これを詩人や騎士が担ったとする。騎士道は11世紀のフランスに起こり、その精神と共に新たな生活風習がヨーロッパ各国に広まった。最盛期は1250年から1350年頃までとされる[5]。広く読まれた作法書としては、13世紀にカタロニアの言語で書かれ、英語、フランス語にも翻訳されたレーモン・ルル著『騎士の礼儀の書』があり、騎士の責任として、教会を守ることに次いで女性と孤児を助けることが挙げられている[6]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e ジェームズ・M・バーダマン、倫子・バーダマン『アメリカ日常生活のマナーQ&A』講談社インターナショナル〈Bilingual books 13〉、1997年1月。ISBN 4-7700-2128-3
  2. ^ 春山行夫『エチケットの文化史』平凡社 1988. pp.91-94.
  3. ^ 阿部、参考文献。pp.101-103。
  4. ^ 阿部、参考文献。pp.111-116。
  5. ^ 春山、前掲書、pp.103-105.
  6. ^ 春山、前掲書、pp.108-109.

参考文献[編集]

関連項目[編集]