レッド・ベイ国定史跡

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
世界遺産 レッド・ベイの
バスク人捕鯨基地
カナダ
サドル島から見たレッド・ベイ
サドル島から見たレッド・ベイ
英名 Red Bay Basque Whaling Station
仏名 Station baleinière basque de Red Bay
面積 313 ha (緩衝地域 285 ha)
登録区分 文化遺産
登録基準 (3), (4)
登録年 2013年
公式サイト 世界遺産センター(英語)
使用方法表示
レッド・ベイ国定史跡の位置(カナダ内)
レッド・ベイ国定史跡
世界遺産登録地点

レッド・ベイ国定史跡(レッド・ベイこくていしせき)は、カナダニューファンドランド・ラブラドール州レッド・ベイ英語版にある1979年指定のカナダ国定史跡であり、その陸上および海底の遺跡には、16世紀におけるバスク人捕鯨基地の様子がよく保存されている。2013年に「レッド・ベイのバスク人捕鯨基地」の名称で、UNESCO世界遺産リストに登録された。水中文化遺産を対象に含む初の世界遺産である[1]

地理[編集]

1592年の地図に見られるバスク人の捕鯨

レッド・ベイはニューファンドランド島ラブラドール地方を分かつベルアイル海峡北部に位置し、セントジョンズからは直線距離で530 kmである。ブラン=サブロンフランス語版からは80 km の位置で、自動車で行く場合には510号線 (route 510) を使う[2]

レッド・ベイは直接大西洋に開けているのではなく、サブロン島に隔てられているため、自然の良港となっている[3]。「レッド・ベイ」の名は、17世紀のフランス人漁師たちが湾を「ベ・ルージュ」(Baie Rouge, 赤い湾)と呼んだことに由来するが[3]バスク人たちはその港を「ブトゥス」(Butus) と呼んでいた[4]

歴史[編集]

ラブラドール地方沿岸部には約9,000年前から人が住んでいた。マリタイム・アーカイック (Matime Archaic) のアメリカ先住民パレオ・エスキモー英語版は、一帯でアザラシセイウチタイセイヨウサケなどを対象とする狩猟・漁撈生活を営み、環境に適応する技術を発展させていった[5]

1550年から1625年までの間、レッド・ベイはバスク人たちの主要な捕鯨基地のひとつとなった[6]ケベック州グロ=メカティナフランス語版とラブラドール地方のセント・チャールズ岬英語版の間ですくなくとも16もの捕鯨基地の遺跡が発見されていることは、バスク人たちの活動がその地域で重要なものであったことを物語る[7]。その絶頂期にはスペインフランスから2,000人のバスク人漁師たちがレッド・ベイの捕鯨基地に集まった[6]。レッド・ベイの港にはタイセイヨウダラの干物を作るための施設や、鯨油融出用の竈を備えた捕鯨基地が20ほど存在していた[5]

レッド・ベイの港はバスク人のあとも、何世紀にもわたり、フランス人、イギリス人、ジャージー島民らが順に占有し、タイセイヨウダラ漁、アザラシ漁、捕鯨などをし、ヨーロッパ方面に輸出するのに利用した。19世紀になると、ニューファンドランド島、イギリス、チャンネル諸島の漁民たちが定住するようになった[5]

国定史跡の博物館に展示されている引き揚げられたバスク人の捕鯨船

レッド・ベイの遺跡は1970年代に同定され[8]、1979年5月21日にカナダ史跡記念物委員会フランス語版によって国定史跡の指定を受けた[6]

水中文化財の引き揚げ作業が1978年から始まり、1984年まで続いた。それによって、バスク人のガレオン船3隻と、それよりも小型の舟艇4隻、さらに16世紀の捕鯨船1隻が引き揚げられた[9]。海底には4隻の難破船の船体が残っており、うち1隻は「サン・フアン」号 (San Juan) のものである[10]。また、海底に堆積する鯨の骨も、かつての捕鯨に関する遺物である[11]。サドル島には捕鯨船員たちの墓地があり、60基の墓がある。また、15の精錬所、複数の樽製造所なども残る[12]

1991年にニューファンドランド・ラブラドール州とカナダの当局は、レッド・ベイ国定史跡を発展させることを目的とした協定文書に署名した。この国定史跡には観光客向けのオリエンテーション・センターや管理センターなどが設置され、2000年にはサドル島を、その小道ともども公式に開放する式典が挙行された。2010年から2011年の観光客数は8,417人であった[13]

世界遺産[編集]

レッド・ベイ国定史跡は2004年1月1日に世界遺産の暫定リストに記載された[14]。当初の記載名は単なる「レッド・ベイ」(Red Bay) だった[15]

2012年1月16日に正式推薦され[14]世界遺産委員会の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (ICOMOS) は「登録」を勧告した。これを受けて、2013年の第37回世界遺産委員会で世界遺産リストに正式登録された[16]。カナダでは17件目の世界遺産(文化遺産としては8件目)である。

登録名[編集]

世界遺産としての正式登録名は、Red Bay Basque Whaling Station (英語)、Station baleinière basque de Red Bay (フランス語)である。その日本語訳は資料によってわずかな揺れが見られるものの、以下のようにほぼ同じである。

登録基準[編集]

この世界遺産は世界遺産登録基準における以下の基準を満たしたと見なされ、登録がなされた(以下の基準は世界遺産センター公表の登録基準からの翻訳、引用である)。

  • (3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
    • この基準の適用理由について世界遺産委員会は、「レッド・ベイのバスク人捕鯨基地は、ヨーロッパへの鯨油の出荷を目的としていた16世紀バスク人たちの捕鯨の伝統に関する優れた例証である。これは、その遺構や遺物の多様性から、この種の捕鯨基地の中で最も規模が大きく、最も保存状態がよく、最も包括的なものである」[21]と説明した。
  • (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
    • この基準の適用理由について世界遺産委員会は、「レッド・ベイのバスク人捕鯨基地は、工業化以前の鯨油の大量生産が16世紀に確立していたことを、余すところなく分かりやすく説明する考古学的要素群を形成している」[21]と説明した。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 第37回世界遺産委員会プノンペン会議古田陽久)(2014年2月15日閲覧)
  2. ^ Comment s'y rendre”. 2012年9月30日閲覧。
  3. ^ a b Red Bay”. 2012年9月30日閲覧。
  4. ^ L'histoire d'une baleinière basque du XVIe siècle”. 2012年9月30日閲覧。
  5. ^ a b c Histoire (Lieu historique national du Canada Red Bay)”. 2012年9月30日閲覧。
  6. ^ a b c Lieu historique national du Canada de Red Bay”. 2012年9月30日閲覧。
  7. ^ Red Bay National Historic Site of Canada”. 2012年9月30日閲覧。
  8. ^ Parcs Canada 2011b, p. 1
  9. ^ L'histoire d'une baleinière basque du XVIe”. 2012年10月1日閲覧。
  10. ^ Parcs Canada 2011b, p. 2
  11. ^ a b 日本ユネスコ協会連盟監修 (2013) 『世界遺産年報2014』朝日新聞出版、p.27
  12. ^ Red Bay National Historic Site of Canada”. 2012年10月1日閲覧。
  13. ^ Parcs Canada (2011), Fréquentation à Parcs Canada, 2006-07 à 2010-11, http://www.pc.gc.ca/fra/docs/pc/attend/~/media/docs/pc/attend/fre-att-2006-2007-2010-2011_f.ashx 
  14. ^ a b ICOMOS 2013, p. 152
  15. ^ 古田陽久 古田真美 監修 (2009) 『世界遺産ガイド - 暫定リスト記載物件編』シンクタンクせとうち総合研究機構、p.107
  16. ^ Station baleinière basque de Red Bay”. 2013年6月22日閲覧。
  17. ^ 世界遺産アカデミー監修 (2013) 『くわしく学ぶ世界遺産300』マイナビ、p.20
  18. ^ 谷治正孝監修 (2014) 『なるほど知図帳・世界2014』昭文社、p.142
  19. ^ 成美堂出版編集部 (2013) 『ぜんぶわかる世界遺産・下』成美堂出版、p.251
  20. ^ 古田陽久 古田真美 監修 (2013) 『世界遺産事典 - 2014改訂版』シンクタンクせとうち総合研究機構、p.167
  21. ^ a b World Heritage Centre 2013, p. 201から翻訳の上、引用。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]