レゾルシノール
レゾルシノール | |
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IUPAC名 | レゾルシノール(許容慣用名) 1,3-ベンゼンジオール 1,3-ジヒドロキシベンゼン(系統名) |
別名 | レソルシノール レゾルシン |
分子式 | C6H6O2 |
示性式 | C6H4(OH)2 |
分子量 | 110.11 |
CAS登録番号 | 108-46-3 |
形状 | 白色結晶 |
密度と相 | 1.28 g/cm3, 固体 |
融点 | 110 °C |
沸点 | 280 °C |
SMILES | Oc1cccc(c1)O |
出典 | 国際化学物質安全性カード |
レゾルシノール (resorcinol) は、で有機化合物の1,3-ジヒドロキシベンゼンである。ベンゼン環のメタ位に 2個のヒドロキシ基を有する構造を持つベンゼンジオールの1種で、カテコール、ヒドロキノン(ハイドロキノン)の位置異性体にあたる。水によく溶ける。
合成[編集]
樹脂や、ベンゼン-1,3-ジスルホン酸を溶融アルカリで処理することで、レゾルシノールを得る。プロピレン、ベンゼンを原料とし、1,3-ジイソプロピルベンゼンから製造する。工業的にはクメンの自動酸化プロセスを応用した1,3-ジイソプロピルベンゼンの酸化により、過酸化物のジヒドロキシパーオキサイドを得て、酸触媒存在下で分解(クリベージ反応)によりレゾルシノールを得る。クメン法の副産物である1,3-ジイソプロピルベンゼンから製造可能なため、石油化学コンビナートによる生産に適する手法である[1][2]。
性質[編集]
常温常圧で無色の固体である。放置すると、光と酸素により徐々に酸化されてピンク色を呈するため保管は注意を要す。レゾルシノールはヒドロキシ基を2基有し、水素結合を供与することも受容することも可能であるなど、比較的分子間力が強くなる構造で、常圧で沸点は280 セルシウス度 (℃)、融点は110 ℃前後である[3]。
ヒドロキシ基を2つともメタノールとエーテルにした1,3-ジメトキシベンゼンは、常圧で沸点は217 ℃前後、融点は-52 ℃である[4]。1,3-ジメトキシベンゼンは、レゾルシノールよりも分子量こそ大きいが水素結合の受容のみ可能で、レゾルシノールの方が沸点も融点も高い。
用途[編集]
総需要の半分以上がタイヤの強化材であるタイヤコードの接着剤の原料で、次いで木材用接着剤原料、樹脂用難燃剤原料、樹脂用紫外線吸収剤原料となる。還元力が強く殺菌剤として利用価値が高い。無水フタル酸と酸触媒反応してフルオレセイン(ガレイン)を生成し、蛍光染料の原料として重要である。
医療用途[編集]
おもにピーリング剤として5-15 パーセント (%) 濃度でニキビの治療に用い、ピーリング作用は10%以上の濃度で作用[5]し、文献では20%濃度までが安全[5]とされるが、妊婦の安全性は確認されていない[5]。
製造者[編集]
主なメーカーは杭州Amino-chem、住友化学、独ランクセス、印Atulほかである[6]。
これまで主なメーカーであった三井化学は2012年12月末をもって事業撤退[7]、米国Indspecも2017年7月末をもって事業撤退[8]している。一方で住友化学は大分工場にプラントを新設し、千葉と大分との2プラント体制にした[9]。
出典[編集]
- ^ “岩国大竹工場爆発火災事故に係る事故調査委員会報告書について”. 三井化学. 2023年3月30日閲覧。
- ^ 南部博彦 (1980). “自動酸化技術を利用したフェノール類の製造――クメン法の発展とその応用――”. 有機合成化学 38 (7). doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.38.713 2023年3月30日閲覧。.
- ^ Resorcinol(CID:5054)
- ^ 化学大辞典編集委員会 編集 『化学大辞典 (縮刷版) 4』 p.541(右下部) 共立出版 1963年10月15日発行 ISBN 4-320-04018-X
- ^ a b c J. Boer, G. B. E. Jemec (2010-1). “Resorcinol peels as a possible self-treatment of painful nodules in hidradenitis suppurativa”. Clinical and experimental dermatology 35 (1): 36–40. doi:10.1111/j.1365-2230.2009.03377.x. PMID 19549239.
- ^ “レゾルシノールの市場規模、2025年までに10億米ドル到達予測 用途別で最大シェアを占めるゴム製品の優位性は今後も続く見通し”. 株式会社グローバルインフォメーション (2021年1月6日). 2023年3月30日閲覧。
- ^ “岩国大竹工場でのハイドロキノンプラント稼動及びレゾルシン事業撤退について | ニュースリリース | 三井化学株式会社”. www.mitsuichem.com. 2019年6月4日閲覧。
- ^ “Resorcinol plant to close | Chemical & Engineering News”. cen.acs.org. 2019年6月4日閲覧。
- ^ "レゾルシン製造設備の増強について" (PDF) (Press release). 住友化学. 2023年3月30日閲覧。