コンテンツにスキップ

リンクス歩兵戦闘車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リンクス
KF41リンクス歩兵戦闘車
種類 装軌式装甲戦闘車両
原開発国 ドイツの旗 ドイツ連邦共和国
開発史
開発者 ラインメタル
開発期間 2015年 -
製造業者 ラインメタル
諸元
重量 34 - 50 t
全長 7.22 - 7.73 m
全幅 3.6 m
全高 3.3 m (IFV型)
要員数 3名 + 6名(KF31)/8名(KF41)

主兵装 30mm/35mm機関砲(IFV型)
エンジン リープヘル社製ターボチャージャー付ディーゼルエンジン
懸架・駆動 トーションバー式
速度 65 - 70km/h
テンプレートを表示

リンクス英語: Lynx)は、ドイツ連邦共和国ラインメタルによって開発された装軌式の歩兵戦闘車ほか装甲戦闘車両ファミリーの総称である。

2016年のユーロサトリで軽量モデルのKF31が発表され[1]、2018年には大型のKF41が展示された[2][3] 。2022年には、120mm砲搭載の有人砲塔を搭載した軽戦車型のリンクス120が発表された。

概要

[編集]

リンクスは、ラインメタルが市場を独自に研究し、既存の車種のギャップを埋める存在としてプライベートベンチャー開発を進めた、歩兵戦闘車型を基本とする装軌式装甲戦闘車両ファミリーである。

2016年6月のユーロサトリで、軽量モデルのKF31歩兵戦闘車が公表され、2018年のユーロサトリではKF41の歩兵戦闘車型と指揮車両型が展示された[4][3]

2020年5月の発表で、リンクスがオーストラリアチェコおよびアメリカ合衆国に対して提案されていることが発表された。2022年3月時点で、これらの提案は継続中とのことである。2020年9月に、ハンガリーがリンクスを最初に導入することが公表された[5]

2021年10月には戦闘支援型のリンクスCSV英語: Lynx Combat Support Vehicle)が発表された。リンクスCSVはオーストラリア陸軍の開発配備計画『Land 400 フェイズ3』に基づいて提案された支援・兵站・修理・回収といった任務に適合する車両であり、オーストラリア陸軍はこのタイプの車両を約100両導入予定とされている[6]

2022年2月に発表されたリンクス120は、KF41の車体に120mm砲搭載の有人砲塔を搭載した火力支援型で、ラインメタルはこの車両を"重火力支援車両"と表現している[7][8]

設計

[編集]

リンクスの車体の基本設計は従来の装軌式歩兵戦闘車を踏襲しており、車体前方右側にリープヘル製ターボチャージャー付ディーゼルエンジンを搭載し、前方左側には操縦席が位置する。車体後方の兵員室はモジュール化されており、歩兵戦闘車型、装甲兵員輸送車型、指揮車両型、支援車両型といったバリエーションへの対応が容易である[9]

走行装置は信頼性の高いトーションバー式で、変速機はプーマ装甲歩兵戦闘車、操縦席はコディアック装甲工兵車英語版、NBCシステムはボクサー装輪装甲車、履帯はPzH2000自走榴弾砲とそれぞれ共通化されており、信頼性・保守性を高めつつコストダウンを実現している[10]

装甲については詳細非公表の部分もあるが、対戦車兵器・榴弾砲の破片・重機関銃弾などからの防護が提供されており、戦闘室は飛散防止内張り・二重床などで保護される[11][10]。また、必要に応じてラインメタルが開発しているアクティブ防護システムである、AMAP-ADS英語版の装備も可能とされている[12]

歩兵戦闘車型の主武装はラインメタル製30mm機関砲または35mm機関砲で、副武装として7.62mm同軸機関銃のほか、必要に応じ対戦車ミサイルや、小型無人航空機発射機なども搭載可能となっている[13][10]砲塔はリンクスよりも前に開発されていた [14]LANCE」と呼ばれる独立したモジュールで、リンクスの他にもボクサー装輪装甲車などに搭載したバージョンが存在する[15]。乗員2名が収まる従来の運用に加えて車内側からRWSとして運用することも可能である。MK-30(ハンガリー)、WOTAN(オーストラリア)等の各種中口径機関砲、スパイクLR対戦車ミサイル発射機などをカスタマー要望に応じて選択できるモジュラー設計となっている。

型式

[編集]
KF31
重量35-38トンで、乗員3名に加えて兵士6名が搭乗可能、750hpのエンジンを搭載、最高速度65km/h[12][13][11]
KF41
重量44-50トンで、乗員3名に加えて兵士8名が搭乗可能、1,140hpのエンジンを搭載、最高速度70km/h[1][13][11]

KF31、KF41、いずれのモデルも歩兵戦闘車型に加えて、装甲兵員輸送車、指揮通信車両、砲兵観測車、偵察戦闘車、装甲回収車、装甲修理車、装甲救急車、弾薬輸送車など様々な構成が可能となっている。

また、KF41の車体に120mm砲塔を搭載したリンクス120も提案されている[7]

運用国

[編集]
 ハンガリー
2020年8月に導入を発表[16][17][18][19]。218両のKF41を発注し、最初の車両が2022年10月に納品された[20]。最初の46両はドイツで生産され、これ以降はハンガリーでライセンス生産の予定である[21]。2025年1月には、さらに172両のKF41と支援車両を調達する予定が発表された[22]。2025年4月には、自走迫撃砲用のNEMO迫撃砲塔が少なくとも24基発注された[23]
イタリアの旗 イタリア
2024年10月以後ラインメタルとレオナルド S.p.Aのイタリアにおける戦闘車両開発製造の合弁会社の設立について合意・認可されたことにより、更新を計画中のダルド歩兵戦闘車およびアリエテ主力戦車の後継にリンクスおよびKF51パンターの採用が有力となった[24][25]。程なくリンクス及びパンターの総計1000両を超える調達計画が決定し[26]、2024年12月、合弁会社レオナルド・ラインメタル・ミリタリー・ビークルズ(LRMV)はイタリア国防省の試験場にて、最初のリンクスKF41のデモンストレーションと共に、リンクス及びパンターの戦力化プログラム「装甲歩兵戦闘システム(Armored Infantry Combat System/AICS)」の詳細を報道陣に公開した。リンクスは、ヒットフィスト砲塔にレオナルドの新型30×173mm機関砲を装備したIFV型、120mm滑腔戦車砲を備えるチェンタウロⅡと同系列のHITFACT 120砲塔を搭載した軽戦車型、ハンガリーも関心を示しているスカイレンジャー30砲塔を搭載する可能性がある自走対空砲型、迫撃砲砲塔型、および無砲塔型の、5つの主要バリエーションからなる計16種、1050両を調達する。製造分担は軽戦車型の場合レオナルド側が砲塔、ヒットロール50 RWSおよび乗員操作ステーション、C4Iシステムなど全体の約60%。ラインメタル側が共通シャーシ、UGV発進装置、受動的/能動的防護システム等で、基本的に全てのタイプでほぼ同様の内訳となる。先行して16両の「緊急運用要件(UOR)」試験車両が調達され、最初の5両はドイツで製造されたものが納入され、後からヒットフィスト砲塔に換装される。残る11両は最初からヒットフィスト装備で2026年までに生産される。併せて調達されるパンターと共に2029年以後は100両単位を超える本格生産へ移行し、2040年までに現計画分の完納を予定する。イタリアからの輸出の可能性も見込む[27]。2026年1月、最初の4両がイタリア陸軍に納入された[28]
 ウクライナ
2025年1月、ラインメタルのCEOは部隊配備に備えた本格的な大量生産の前段階として、少数のリンクスをウクライナに納入したと明らかにした[29]

運用検討国

[編集]
ギリシャの旗 ギリシャ
2023年2月10日、ギリシャはドイツと205両のKF41と、123両のレオパルト2A7戦車の調達に合意したと発表した[30]。ただし財政的理由からより安価な中古のM2ブラッドレーマルダーの調達計画も並行して進められており、リンクスの導入は確定的ではないとの見方もある[31]
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
M2/M3ブラッドレーの後継車種選定プログラム(XM30機械化歩兵戦闘車英語版)に、ラインメタルとレイセオンの合弁事業として参画[32]
 ルーマニア
ルーマニアは15個大隊分246台のIFVの導入を希望しており、4社の国際防衛企業が興味を示し、ラインメタル(KF41 リンクス)、BAEシステムズ(CV 90)、ハンファエアロスペース(レッドバック)、ゼネラルダイナミクス・ヨーロピアンランドシステムズ(ASCOD2)が候補となっているが、うちリンクスが25億ユーロ超の契約で最有力となっている。取材によると、「自国メディアシュにラインメタルの子会社が存在するため」という[33]

不採用国 

[編集]
オーストラリアの旗 オーストラリア
「Land 400 フェイズ3」プログラムでリンクスKF41と韓国のK21歩兵戦闘車(レッドバックと名付けられた新型輸出仕様)で争っていたが、韓国のレッドバックが採用された[34]
スロバキアの旗 スロバキア
BMP-2歩兵戦闘車の後継としてKF41が提案された。比較対象はCV90とASCODであったが、スロバキア国防省英語版はCV9030 Mk.IVを選定した[35]
 チェコ
BMP-2歩兵戦闘車の後継としてKF41が提案された。比較対象はCV90とASCODであったが、チェコ国防省はいずれの車両も要求仕様を満たさないとして選定を一時中断した。最終的にスロバキアと同様にCV9030 Mk.IVを選定[36][37]


脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. 1 2 “Rheinmetall Defence – News archive 2015 Rheinmetall's new IFV, the Lynx”. www.rheinmetall-defence.com (Press release). 2016年6月15日閲覧.
  2. KF31 Lynx Rheinmetall IFV tracked Infantry Fighting Vehicle”. 2018年6月24日閲覧。
  3. 1 2 Eurosatory 2018: Rheinmetall unveils Lynx KF41 IFV | IHS Jane's”. www.janes.com. 2018年6月24日閲覧。
  4. Rheinmetall at Eurosatory (2018)”. www.forecastinternational.com (2018年6月4日). 2018年6月7日閲覧。
  5. NATO member Hungary orders 218 Lynx infantry fighting vehicles from Rheinmetall worth more than €2 billion”. www.rheinmetall.com (2020年9月10日). 2020年9月11日閲覧。
  6. Janes AFVs March 2022 updates”. www.janes.com (2022年3月9日). 2022年3月30日閲覧。
  7. 1 2 Nicholas Fiorenza (2022年2月22日). Rheinmetall presents Lynx 120 mechanised fire support vehicle (英語). Janes. 2026年1月7日閲覧。
  8. Lynx – The new-gen combat vehicle (英語). www.rheinmetall.com. 2026年1月7日閲覧。
  9. Lynx (Jane's AFVs 2019-2020)”. IHS Jane's. 2020年2月6日閲覧。
  10. 1 2 3 Lynx (Jan 2018)”. www.janes.com (2017年6月9日). 2018年1月26日閲覧。
  11. 1 2 3 Rheinmetall Defence – Lynx”. Rheinmetall Defence. 2018年1月26日閲覧。
  12. 1 2 Lynx Infantry Fighting Vehicle”. Defense Technology Review Magazine (2016年6月14日). 2016年6月14日閲覧。
  13. 1 2 3 Rheinmetall undiscloses the Lynx Light Armored Infantry Fighting Vehicle at Eurosatory 2016”. www.armyrecognition.com (2016年6月14日). 2016年6月15日閲覧。
  14. Defendory 2008: Rheinmetall reveals Lance turret”. researchgate.net/. 2023年3月19日閲覧。
  15. オーストラリア陸軍、新しい偵察戦闘車にラインメタル「ボクサーCRV」を採用”. おたくま経済新聞. 2023年3月19日閲覧。
  16. Rheinmetall's Lynx Infantry Vehicle Targets Australian Market”. Janes (2020年8月20日). 2020年9月11日閲覧。
  17. Hungary's Government and Rheinmetall to Produce Armored Fighting Vehicles in Hungary”. ニューヨーク・タイムズ. 2023年3月13日閲覧。
  18. 218 harckocsit vesz a Magyar Honvédség (ハンガリー語). 24.hu (2020年9月9日). 2020年9月9日閲覧。
  19. Šéf Rheinmettalu: Pokud někdo chce shodit tendr za 52 miliard na rozsahu hlavní zbraně, je to absurdní (チェコ語). ekonomickydenik.cz (2020年9月2日). 2020年9月9日閲覧。
  20. Hungary receives first serial KF41 Lynx infantry fighting vehicles and Buffalo armoured recovery vehicles”. 2023年3月13日閲覧。
  21. Milestone for the Lynx - Rheinmetall launches production of new infantry fighting vehicle in Hungary”. 2023年3月13日閲覧。
  22. Nicholas Fiorenza (2025年1月27日). IAV 2025: Hungary plans to procure more Lynx IFVs”. janes.com. 2025年1月28日閲覧。
  23. Nicholas Fiorenza (2025年4月16日). Hungarian Lynx armoured mortar vehicle to be equipped with NEMO”. janes.com. 2025年4月17日閲覧。
  24. Richard Pettibone (2025年1月23日). Rheinmetall and Leonardo JV Receives Approval, to Focus on Italian Army Programs”. DEFENSE AND SECURITY MONITOR. 2025年1月26日閲覧。
  25. イタリア新型戦車「ヒョウ」ではなく「黒ヒョウ」に! 伊独の有力軍事企業が協力し“最新鋭車両”を開発”. 乗りものニュース (2024年8月18日). 2025年1月26日閲覧。
  26. Rojoef Manuel (2025年1月30日). Italy to Buy 1,000 Lynx Combat Vehicles, Up to 380 Panther Tanks”. TheDefencePost. 2025年8月7日閲覧。
  27. EDR On-Line編集部 (2025年2月3日). LRMV details the Italian Army MBT and AIFV programmes”. Europian Defence Review-ON-LINE. 2025年10月26日閲覧。
  28. Nicholas Fiorenza (2026年1月30日). LRMV delivers first four Lynx IFVs to Italian Army, launching A2CS programme (英語). Janes. 2026年1月31日閲覧。
  29. ウクライナ軍ついに“最新鋭装甲車”取得か 2018年に発表されたばかりのドイツ製車両”. 乗りものニュース (2025年1月10日). 2026年1月15日閲覧。
  30. Greece agrees procurement of 205 KF41 lynx IFVs and 123 upgraded Leopard 2A4 tanks”. armyrecognition.com/. 2023年3月19日閲覧。
  31. GRECY BLISKO POZYSKANIA BRADLEYÓW”. konflikty.pl/. 2023年3月19日閲覧。
  32. Raytheon, Rheinmetall partner to offer new Lynx fighting vehicle to US Army”. Defense News (2018年10月8日). 2018年10月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月8日閲覧。
  33. economedia.ro (2025年5月12日). EXCLUSIV: KF41 Lynx de la Rheinmetall, în „pole position” pentru contractul de peste 2,5 miliarde de euro al României pentru IFV-uri / De ce germanii au cele mai mari șanse să bată palma cu MApN / Contractul ar putea fi atribuit direct, fără licitație”. Adrian Popa. 2025年10月26日閲覧。
  34. 韓国の歩兵戦闘車が独ラインメタルを破り豪軍に採用! 約6700億円規模の契約”. 乗りものニュース (2023年7月30日). 2024年2月21日閲覧。
  35. “Schützenpanzerwettbewerb: Slowakisches Verteidigungsministerium entscheidet sich für den CV90 Mk IV” (ドイツ語). 2022年5月30日. 2022年7月20日閲覧.
  36. Waldemar Geiger (2022年7月20日). “Tschechien will CV90-Schützenpanzer beschaffen”. Europäische Sicherheit und Technik. 2022年7月21日閲覧.
  37. Martin Smisek und (2022年8月31日). “Tschechien und die Slowakei beschaffen und betreiben den CV 90 gemeinsam”. Europäische Sicherheit & Technik (esut). ESUT. 2022年10月11日閲覧.

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]