リコーオートハーフシリーズ

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オートハーフ(初期)

リコーオートハーフシリーズは、理研光学(現リコー)によって1961年から1979年まで製造されたハーフサイズカメラである。

基本性能・機種名称について[編集]

理研光学の若手技術者・安宅久憲(あたか ひさのり 1934-)が個人的な着想から1961年に原設計に着手。安宅は「自分の50歳の母親でも撮れるカメラ」という基本構想から、可能な限りの撮影自動化と、女性のハンドバッグ、男性の上着のポケットに入るサイズの小型化を目指して設計した。この個人プロジェクトが上司の目に止まって正式なプロジェクトに採用、商品化されて1962年から市販された。最大の特徴は、当時流行していたハーフサイズカメラの中でも特に小型化を徹底していたことと、ぜんまいばねによる自動巻き上げ機能を備え、撮影のほとんどの自動化を実現したことにある。

開発過程では多くのパーツの小型化という困難な課題を解決せねばならず、社内はもとより社外取引先の部品メーカー複数を口説き落してパーツ製作を依頼した(これは、先行するハーフカメラの「オリンパス・ペン」開発時にオリンパスの技術陣も同様に苦心した問題であった)。ぜんまいばね製造メーカーからの「要求されたスペックの小型ぜんまいは、耐久性が落ちてしまうので作れない」との意見に対しては、使用頻度の高いアマチュアが10年使った場合を想定しても一般的なぜんまいの命数までは格段の余裕があり、小型化と引き換えにぜんまいの命数をある程度減らしても実用上問題は生じない、と説得し、小型カメラのフィルム巻き上げ用に特化したぜんまいを作ってもらったという(後年の中古カメラ市場でも、オートハーフに生じている問題の多くは大量使用された遮光用モルトプレーンの劣化、または他社製品にも見られるセレン光電池式露出装置の経年劣化が多く、ぜんまい切れの事例は少ない)。

オートハーフSLを除く機種は理研光学設計、富岡光学(現京セラオプテック)製造の3群4枚リコー25mmF2.8レンズが搭載され、オートハーフSLとオートハーフゾーンフォーカスを除いては、焦点距離2.5mにピント固定されたパンフォーカスとして、構造を単純化した。精工舎(現セイコープレシジョン)が製作したレンズシャッターの速度は、通常時1/125秒とエレクトロニックフラッシュ使用時1/30秒の二速が自動的に切り替えられる。またセレン光電池を用いた自動露出機能を持つ。機種名につけられるSは「セルフタイマー装備」をあらわし、2のつく機種にはホットシューが備えられる。

「オートハーフ」は、小型軽量なうえにレンズの突出がない平滑な前面レイアウトで携帯しやすく、自動露出と固定焦点の組み合わせに自動巻き上げ機能を備えて、ミスの少ない簡便な操作を実現した。それまで重厚なカメラを敬遠していたライトユーザーを開拓、先発のオリンパス・ペンシリーズと競い合いつつ、20年間で600万個を販売するベストセラーとなった。

しかし高価な一眼レフカメラなどにしか搭載されなかったICによる自動露出機能が1970年代に至ってコンパクトカメラにも搭載されるようになり、オートハーフの機械式シャッターや自動露出機構は陳腐化してしまった。またオートハーフEFなどに見られるようにエレクトロニックフラッシュを内蔵するなどのバージョンアップが図られたが、基本設計に無理やりエレクトロニックフラッシュを搭載したようなデザインはオートハーフ本来の小型性を相殺する結果となった。オリンパスペンタックスなどの他社製品にはライトユーザー向けの小型軽量、簡便な操作を実現した小型一眼レフカメラも登場し始め、オートハーフは前時代的なカメラとなってしまい、1979年のEF2を最後にシリーズは終焉を迎えた。

機種リスト[編集]

オートハーフとタバコ
  • リコーオートハーフ1962年11月発売) - 安宅久憲設計。当初は「L&M」のたばこ箱サイズを目標に設計され、実際はぜんまいばねの巻き上げノブの部分と厚さが越えたものの非常にコンパクトになった。そのため大胆なモナカ構造の採用、レリーズボタンをボディ前面に配置するなど、前衛的で従来のカメラ設計の常識を覆す構造になっている。またぜんまいばねによるフィルムの自動巻き上げ機能、セレン光電池による自動露出機能を採用し、後の全自動コンパクトカメラの原型となった。ただし前述の大胆なモナカ構造はカメラ後面全体を覆う必要があるため、完全暗室を達成せねばならないフィルム室に漏光という致命的な欠点を持つことになる。これをリコーはモルトプレーンを貼ることによって防ごうとしたが、2000年代に手に入れられる中古品にはモルトプレーンが劣化しておりフィルム室の遮光が十分でないものもあるので適宜交換修理を施す必要がある。
  • リコーオートハーフゾーンフォーカス1963年11月発売) - 初代オートハーフに3点ゾーンフォーカス機能を付加したもの。また後のシリーズに引き継がれる、アルマイト板による装飾も施された。操作性の問題からゾーンフォーカス機能は後の機種には引き継がれなかった。
  • リコーオートハーフS1965年3月発売) - セルフタイマーが装備される。これに伴い設計の大幅な見直しが行われ、この機種以降オートハーフのレリーズボタンは上部に備えられることになった。
オートハーフEの一般向けデザインの一例
オートハーフEの特別モデル。大阪万国博覧会、リコー館において販売されたもの
  • リコーオートハーフE1966年11月発売) - オートハーフSからセルフタイマーを省いたもの。前部のアルマイト板を交換することによって、多数の特別デザインが作られ、特に大阪万国博覧会において販売されたEXPO'70モデルは有名である。また一般向けの製品にも当時流行していたサイケデリック調やアールヌーボー調のアルマイト板が貼られ、人気を博した。
リコーオートハーフSE(波紋柄ブラック)
  • リコーオートハーフSE1967年9月発売) - オートハーフEセルフタイマー、オートスタート機能(新しいフィルムを装填した際に、自動的に1コマ目までフィルムが送られ、空写しをしなくて済む機能)が付加されたもの。鏡面シルバーと波紋柄ブラックの二色が発売された。
  • リコーオートハーフSL1970年4月発売) - 。この機種のみとなる4群6枚の大口径レンズリコー35mmF1.7、またCdSを用いた測光機能が搭載され、シャッター速度も1/30~1/250秒の段階調節が可能なものとなっており、セルフタイマーも備える高性能機種。ピントは可動式であり、ゾーンフォーカス方式となっている。また他機種のように強制的な絞り優先機構ではなく、任意に絞り、シャッター速度を変化させられるため、ある程度写真機の操作に慣れた中級者向けのカメラと言える。しかし、小型のボディに大口径レンズや測光機能といった高性能部品を詰め込みすぎた印象は否めず生産数は少ない。またボディの厚みも他の機種に比べるとかなり厚くなっている。鏡面シルバーと波紋柄ブラックの二色が発売された。
  • リコーオートハーフSE21976年11月発売) - オートハーフSEにホットシューが追加されたもの。
  • リコーオートハーフE2(1976年11月発売) - リコーオートハーフSE2からセルフタイマーを省略したもの。オートハーフEと同様、前部のアルマイト板には多彩なデザイン展開が見られる。
  • リコーオートハーフEF1978年3月発売) - オートハーフSE2にガイドナンバー21のエレクトロニックフラッシュが内蔵され、そのため以前と比較し横長のボディとなった。またこれ以降アルマイト板による装飾が廃された。後期型はエレクトロニックフラッシュに補強のためのひさしがつけられた。
  • リコーオートハーフEF21979年12月発売) - オートハーフEFの内蔵エレクトロニックフラッシュがポップアップ式になった。シリーズ最終機。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

株式会社リコー『リコーカメラ全機種リスト』

リコーオートハーフ研究所『開発者 安宅久憲氏の手記』