ラーメン二郎

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ラーメン二郎三田本店のラーメン

ラーメン二郎(ラーメンじろう)とは、東京都港区三田本店を構えるラーメン店、および同本店の店主創業者である山田拓美の登録商標[1][注釈 1]1968年昭和43年)に創業し、2度の移転を経て1996年平成8年)から三田で「ラーメン二郎 三田本店」の名称で営業する[2][3]

歴史[編集]

ラーメン二郎三田本店

創業は1968年昭和43年)で、東京都目黒区東京都立大学近くに当初「ラーメン次郎」の名前で開店した[2][3]。これは開店前年の1967年1月エースコックから発売されて人気となっていたインスタントラーメン、「ラーメン太郎」[4]にちなんでいる[2][3]

店主の山田は和食料理人で、ラーメンについては全く知識がなかった[2][3]。最初は「ラーメンぐらい何とかなるか」とたかをくくってラーメン店を出店したが、開店当初から半年間は1日あたりの売上が昼前から深夜まで営業しても20杯以下と低迷していた[2][3]。様子を見かねた近所の中華料理店店主が自分の中華料理店で修業するようにすすめ、山田はその勧めに応じて3か月間の修行をした[2][3]。また、近隣にあった雪印乳業社員子弟学生寮に住んでいた北海道出身の客から受けた助言を参考にし、独自の味を作り出した[2][3]

1970年代前半、目黒区による下水道工事のために店舗を移転することとなり、客として来ていた慶應義塾大学の学生から情報提供された港区三田・三田通りの元洋食屋店舗にて営業を再開した[3]。その際、ペンキ屋が新店舗の看板の「次郎」とすべきところを間違えて「二郎」と書いてしまったことから、以降はそのまま「ラーメン二郎」表記で通している[2][3]。提供するラーメンのボリュームと味付け、山田の人柄が学生に受けたことから店は繁盛した[2][3]

1980年代1990年代にも書籍に取り上げられている。1986年4月発売の山本益博『東京味のグランプリ〈1986〉』で山本は飲食店星の数で評価した際、ラーメン二郎は無星の評価だった[5][6]1986年発売の『週刊少年マガジン』50号掲載の『ミスター味っ子』「焦がしネギの風味」の扉絵でぶたダブルが描かれており、慶應大学出身者である作者の寺沢大介が「ラーメンの帝王」というフレーズを使った紹介文を添えている[7]。1996年4月20日発売の『島耕作の優雅な1日』では、作者の弘兼憲史がラーメン二郎について取材した内容をイラスト入りでレポートしていた[8]

1990年代に三田通りの拡幅計画が実施される見通しとなり、これによって二郎も影響を受けることが判明したため[2][3]、山田は店を閉めることを考えた[9]。しかし、常連客は店の継続を望み、地元慶應義塾大学の学生有志は当時改装が予定されていた慶應義塾大学西校舎学生食堂へ誘致の署名活動を1990年代前半に行った[2][3][9]。これは「学内の食堂に、塾生以外の外部の客行列ができるのはまずい」など諸般の事情で実現に至らず[2][3]、三田通りの店舗は1996年平成8年)2月末に閉店した[2][3]。同年6月から桜田通り沿い(慶應義塾大学正門近く)に移転し、営業を再開した[2]。これが現在の三田本店である。

2003年には「ラーメン二郎」の名称が商標登録された[1]。権利者は「山田拓美」、区分は「ラーメンを主とする飲食物の提供」で、登録日は2003年(平成15年)3月14日である[1]

2009年(平成21年)には、イギリスの高級紙・ガーディアン紙の「世界で食べるべき50の料理」に選ばれている[10][注釈 2]

特徴[編集]

メニュー

麺の上には、野菜(モヤシキャベツ)と叉焼が載せられる[11][12]スープは豚の脂が混ざり脂肪分が多い[11]豚肉を主な材料とした出汁に、醤油味のタレを加えて調製する[11]。三田本店を含めた殆どの店舗で自家製麺[11]を行い、原材料として日清製粉強力粉「オーション」[13]を使用している。出来上がった麺は、基本的に、比較的太く、ごわごわした縮れ麺となっている。

ラーメン二郎で使う醤油は、以前は千葉県の柴崎味噌醤油店が製造し[14]カネシ商事[15]が販売していた「ラーメン二郎専用醤油」とラベルに表示されている醤油を使用していた[15][13]。現在はカネシ商事ではなく[16]、株式会社エフゼットと契約。しかしながら、現在も「ラーメン二郎専用しょうゆ」と表記された特注品の醤油を使用している[17]。この専用の醤油は、ラーメン二郎系列店に対して特別に製造して卸している醤油であり、裏ルートに通じていない限り、外部からは入手不可能である。

店舗

三田本店、また多くの店舗の看板は黄色で[18][19]カウンターは赤色である[11][20][21]

また、店の前には飲料自販機があり、購入した飲み物を持込可である事が多い。

前払いの食券制である。

メニュー[編集]

提供されるのはラーメンが主である。メニューは麺の量と叉焼(「ブタ」と表記される)の量の組み合わせで構成されている[11][12][19]。三田本店以外の多くの店舗では、つけ麺や有料トッピングなどのメニューも取り扱っている[11][12][19]。 ラーメン二郎では、普通のラーメンのことを小(しょう)、大盛りラーメンのことを大(だい)と呼んでおり、中や普通や並といったメニューはない。また小と言っても、一般的なラーメンに比べると量が多い。なお、店舗によってはミニ、プチなど、小よりも量を抑えたメニューがある。

基本、豚骨ベースの醤油味のラーメンではあるが一部の支店では味噌味・塩味も提供している。

汁なし、すなわち、まぜそば風のメニューがある店舗もある。

トッピング[編集]

基本的に「ニンニク」と「ヤサイ」「アブラ」「カラメ」の4つのトッピングが無料で可能である。「カラメ」とはタレ汁を付け加えることである。慣行として、ラーメンを供する直前に、店員が客に向けて「ニンニク入れますか?」などと問うので、客は「ニンニク」の有無や「ヤサイ」「アブラ」「カラメ」の追加の希望について返答をしなければならない[11][19][21][22][23]。実際は、必ずしも定型的な文句ではないかたちで返答を促される場合が多いので、この点、客は注意を要する。基本、4つのうちトッピングしたいもののみを言葉にする。全てトッピングしたい場合は「全マシ」と返答する。とくに量を増やしたい場合は、それぞれのトッピングの後に「マシマシ」の語を添える。また「少なめ」など、トッピングの量も融通をきかせてもらえる店舗が多い。食券提示の際に「アブラ少な目」「味薄目」などと申し出れば、当初の油やタレの基本量を調整してくれる店舗もある。

ラーメン二郎三田本店 社訓[編集]

一、清く正しく美しく、散歩に読書にニコニコ貯金、週末は釣り、ゴルフ、写経
二、世のため人のため社会のため
三、Love & Peace & Togetherness
四、ごめんなさい、ひとこと言えるその勇気
五、味の乱れは心の乱れ、心の乱れは家庭の乱れ、家庭の乱れは社会の乱れ、
   社会の乱れは国の乱れ、国の乱れは宇宙の乱れ
六、ニンニク入れますか?

ラーメン二郎三田本店 社訓 [24]

スラング[編集]

ジロリアン[編集]

下記の条件に該当する一部のラーメン二郎ファンを「ジロリアン」と表現することがある[23][25][26][27][28]

ライターの速水健朗は、彼らの多くが「二郎のラーメンが特別に美味しいわけではないが、食べずにいられない」「二郎はラーメンではなく二郎という食べ物である」といった価値観を持っていることを指摘し[29]、ラーメン二郎を食べることを修業とし巡業のように何度も訪れたり各地を回る信者のようだと考察している[30]。また、ラーメン二郎は他の多くのラーメンチェーン店と違って店舗ごとに味が異なるため、様々な店舗を訪れてその味の違いなどの情報交換をインターネット上(ブログなど)で行ってコミュニケーションの素材として楽しんでいる[30]。このようにジロリアンはラーメン二郎を「勝手なルールを元にしたゲーム」のように消費している面があるという[31]

家二郎[編集]

ラーメン二郎のファンが、その味の再現を目指して自宅で作る二郎風ラーメンを意味する語[32]

三田本店以外のラーメン二郎[編集]

ラーメン二郎大宮店のラーメン全増し

三田本店以外にもラーメン二郎と名乗る店舗が複数存在する[18][33]。基本的に[34]のれん分け[34][35][36]によるもので、三田本店で修行した人[34]弟子[33][35][37][38]や、それらの弟子が開店した二郎直系店で修行した人[34]が「ラーメン二郎」の名称を使用して出店している[18][34][35][37]。各店舗、営業時間中は修行を経験した責任者が厨房に立つ鉄則に従っており[38]経営はそれぞれ独立して行っている[37]

他に、ラーメン二郎に似せたラーメンを提供しそれを売りとした「ラーメン二郎インスパイア系」と表現される店も複数存在している。

近年、インスパイア店は増加傾向にある。元々はラーメン二郎同様、インスパイア店も関東近辺に固まっていたが、雑誌テレビインターネットで注目されてきた為か、関東以外の地方でも目にする機会が増えてきている。[18][33][39][40]

脚注[編集]

注釈[編集]

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  1. ^ 登録番号は第4652738号[1]
  2. ^ "50. Best place to eat: Ramen Ramen Jiro, Tokyo" の項に掲載[10]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 商標出願・登録情報(詳細表示)|J-PlatPat”. 独立行政法人 工業所有権情報・研修館. 2016年7月17日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n “ラーメンではない食べ物?「ラーメン二郎」って何”. G-Search "side B" (ジー・サーチ). (2010年1月22日). http://db.g-search.or.jp/sideb/column/20100122.html 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 伊藤剛寛 (1996年4月13日). “[ひゅーまん探訪]「ラーメン二郎」経営 慶大生と歩んで四半世紀” (日本語). 読売新聞朝刊 東京版 (読売新聞社): p. 7 
  4. ^ “インスタントラーメン大研究 半世紀に渡る進化の歴史と次の商品”. 日経トレンディネット (日経BP社). (2008年9月24日). http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20080818/1017681/?P=6 
  5. ^ 山本益博 『東京味のグランプリ〈1986〉』 講談社1986年4月ISBN 978-4062025904
  6. ^ 人気グルメの解剖学 / 第1回 ラーメン二郎〔3〕”. フード・ラボ. 柴田書店. 2012年6月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年7月18日閲覧。
  7. ^ 寺沢大介 『ミスター味っ子』2、講談社、1986年2月ISBN 978-4063112153
  8. ^ 弘兼憲史 『島耕作の優雅な1日』 講談社、1996年4月20日ISBN 978-4063001624
  9. ^ a b 向後淳 (1991年7月13日). “[キャンパる]ラーメン店残せと署名運動 道路拡張で立ち退き?--慶応大学生” (日本語). 毎日新聞夕刊 東京版 総合面 (毎日新聞社): p. 4 
  10. ^ a b “The 50 best things to eat in the world, and where to eat them”. ガーディアン (ガーディアン). (2009年9月13日). http://www.theguardian.com/lifeandstyle/2009/sep/13/best-foods-in-the-world 
  11. ^ a b c d e f g h “【ラーメン戦記】麺、具、スープ全てがメガトン級 - ライフ - ZAKZAK”. ZAKZAK (産経デジタル). (2010年4月8日). http://www.zakzak.co.jp/life/gourmet/news/20100408/grm1004081603000-n2.htm 
  12. ^ a b c “@nifty:デイリーポータルZ:はじめてのラーメン二郎”. デイリーポータルZ (ニフティ). (2010年5月16日). http://portal.nifty.com/2010/05/16/b/2.htm 
  13. ^ a b 牧田幸裕「機能する差別化:収益性を高めるビジネスモデルのつくり方 第2回 顧客に「有意差」を感じさせられるか?」、『Think!』№34、2010年夏号、東洋経済新報社2010年7月20日、 p.109、 ISBN 978-4492830390
  14. ^ カネシ醤油 - 醤油ソムリエ
  15. ^ a b 神奈川県川崎市中原区中丸子
  16. ^ 今日のラーメン二郎@三田本店 2013/05/10
  17. ^ 二郎戦奇 • 二郎を取り巻く環境の変化(小ネタ)
  18. ^ a b c d 清川仁 (2011年1月26日). “[注目ワード]ラーメン二郎 ジロリエンヌ 超大盛りペロリ” (日本語). 読売新聞夕刊 東京版 (読売新聞社): p. 8 
  19. ^ a b c d “@nifty:デイリーポータルZ:はじめてのラーメン二郎”. デイリーポータルZ (ニフティ). (2010年5月16日). http://portal.nifty.com/2010/05/16/b/ 
  20. ^ “食べても食べても終わらない恐怖、あの「ラーメン二郎」を必死で攻略してきました”. GIGAZINE (GIGAZINE). (2009年4月19日). http://gigazine.net/news/20090419_ramen_jiro/ 
  21. ^ a b c “ラーメン二郎初心者も戸惑わずどんな注文もクリアできるコールジェネレーター”. GIGAZINE (GIGAZINE). (2011年11月17日) 
  22. ^ ラーメン二郎 驚異の行列の秘密〔1〕 - 経(ダイヤモンド社) 2007年11月21日
  23. ^ a b c d 二郎とマラソンは"似て蝶"!? 生粋のジロリアンが語るラーメン二郎の経営学 - 楽天woman 2011年3月1日
  24. ^ a b 世のジロリアンに捧ぐ ラーメン二郎「社訓Tシャツ」 - J-CAST 2009年5月12日
  25. ^ a b 速水健朗 2011, p. 229.
  26. ^ a b “二郎はラーメンではなく二郎という食べ物なのだ。 ジロリアンとは、何者?”. All About (ジー・サーチ). (2001年10月15日). http://allabout.co.jp/gm/gc/216564/ 
  27. ^ a b “ジロリアン”が語る「ラーメン二郎」の3つの魅力って? - News-gate(角川書店)・東京ウォーカー 2010年5月22日
  28. ^ a b c 人気グルメの解剖学 / 第1回 ラーメン二郎〔2〕 - フード・ラボ(柴田書店)
  29. ^ 速水健朗 2011, pp. 230-231.
  30. ^ a b 速水健朗 2011, pp. 232-235.
  31. ^ 速水健朗 2011, pp. 236-237.
  32. ^ [自宅でできる二郎風ラーメンの作り方 - デイリーポータルZ:@nifty http://portal.nifty.com/kiji/141020165435_1.htm]
  33. ^ a b c 河田剛 (2007年11月21日). “ラーメン二郎 驚異の行列の秘密〔2〕” (日本語). 経スペシャル. ダイヤモンド社. 2011年3月12日閲覧。 “その後、三田の本店で修業し、弟子として二郎を名乗る店、その流れを汲む店、本店とまったく関係はなく、二郎のラーメンに影響を受け似たようなラーメンを出す店など、二郎系ラーメンは首都圏ではかなりの数になった。”
  34. ^ a b c d e 牧田幸裕 『ラーメン二郎にまなぶ経営学 ―大行列をつくる26(ジロー)の秘訣』 東洋経済新報社2010年12月3日、pp.148-149。ISBN 978-4492502136。「三田直系店はフランチャイズではなく、のれん分け制をとっている。二郎直系の新店主は基本的に三田本店または直系店での修行をこなす。」
  35. ^ a b c 北日本新聞 (2008年1月21日). “ぐるっと人往来 ラーメン二郎目黒店店主 若林 克哉さん(44)富山市出身、東京都目黒区在住 熱烈ファンから開業” (日本語). 北日本新聞朝刊 (北日本新聞社): p. 8. "大学時代から通い詰め、熱烈なファンだったラーメン二郎(本店、東京・三田)に弟子入り。のれん分けを許され、平成七年に目黒店をオープンさせた。" 
  36. ^ 清川仁 (2011年1月26日). “[注目ワード]ラーメン二郎 ジロリエンヌ 超大盛りペロリ” (日本語). 読売新聞夕刊 東京版 (読売新聞社): p. 8. "東京・三田の本店は、安さとボリュームで、近くの慶応大の学生たちに愛されてきた。ところがここ10年で、都内近郊にのれん分けの店舗が急増。" 
  37. ^ a b c 伊藤剛寛 (1996年4月13日). “[ひゅーまん探訪]「ラーメン二郎」経営 慶大生と歩んで四半世紀” (日本語). 読売新聞朝刊 東京版 (読売新聞社): p. 7. "二郎の味は弟子によって広がり、慶応のOB二人も含め現在都内などに七店。経営はそれぞれ独立している。" 
  38. ^ a b ラーメン二郎に“お家騒動”破門店「こじろう」衣替えで挑発”. ZAKZAK. 産経デジタル (2011年2月9日). 2011年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年6月8日閲覧。
  39. ^ ぐうたび北海道 札幌の今ブームなラーメン「二郎インスパイア」系
  40. ^ “ラーメン二郎に似たようなラーメンが増えてきた!! 二郎インスパイア系?”. All About (ジー・サーチ). (2003年6月24日). http://allabout.co.jp/gm/gc/216634/ 

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]