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ラーキー・グルザール

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ラーキー・グルザール
Rakhee Gulzar
Rakhee Gulzar
第55回インド国際映画祭英語版に出席するラーキー・グルザール(2024年)
本名 ラーキー・マジュムダール(Rakhee Majumdar、誕生時)
ラーキー・グルザール(Rakhee Gulzar、結婚後)
別名義 ラーキー(Raakhee)
生年月日 (1947-08-15) 1947年8月15日(77歳)
出生地 インドの旗 インド連邦 西ベンガル州ナディア県英語版ラーナーガート英語版
職業 女優
ジャンル ヒンディー語映画ベンガル語映画
活動期間 1967年-現在
配偶者 アジャイ・ビシュワース(1963年-1965年、離婚)
グルザール(1973年-現在)
著名な家族 メーグナー・グルザール(娘)
受賞
フィルムフェア賞
主演女優賞
1977年『Tapasya』
助演女優賞英語版
1974年『Daag』
1990年『Ram Lakhan』
その他の賞
国家映画賞
助演女優賞英語版
2003年『Shubho Mahurat』
栄典
パドマ・シュリー勲章
2003年
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ラーキー・グルザール(Rakhee Gulzar、1947年8月15日 - )は、インドヒンディー語映画ベンガル語映画で活動する女優。1970年代から1980年代にかけて最も人気のある女優として知られ[1][2]、キャリアを通して国家映画賞フィルムフェア賞を受賞したほか、2003年にはインド政府からパドマ・シュリー勲章を授与されている[3]

生い立ち

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1947年8月15日、インド独立宣言英語版採択の数時間後にラーナーガート英語版ベンガル人家庭に生まれ[4][5]、故郷の女子学校で初等教育を受けて育った。ラーキーの父は東ベンガル州(現在のバングラデシュ)のメヘルプル村を拠点に靴の販売業を営んでいたが、インドの独立を機に西ベンガル州に移住している。

キャリア

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1967年にベンガル語映画『Badhu Bharan』で女優デビューし、1970年にダルメンドラ主演の『Jeevan Mrityu』でヒンディー語映画デビューを果たした[6][7]。1971年には『Sharmeelee』でシャシ・カプール英語版と共演したほか、『Lal Patthar』『Paras』に出演した。これらの作品で興行的な成功を収めたことで、ラーキーはヒンディー語映画における主演女優としての地位を確立した。1972年は『Shehzada』でラージェーシュ・カンナー英語版と共演し、『Aankhon Aankhon Mein』ではラケシュ・ローシャン英語版と共演してコメディ女優としての才能を開花させたものの、両作とも興行成績は低調だった[8]。1973年は『Heera Panna』に出演した後、『Daag』でフィルムフェア賞 助演女優賞英語版を受賞している[9]。1974年に出演した『27 Down』は国家映画賞 ヒンディー語長編映画賞英語版を受賞するなど高い評価を得ており、『テレグラフ英語版』は彼女の演技について「彼女の自立した働く女性に対する繊細な解釈は、欠点のある主人公よりも強靭な精神を有したキャラクターを表現しており、当時の映画に登場した人工的な女性キャラクターとは一線を画す、まさに画期的な女性像だった」と批評している[10]

1976年は2本の映画に出演し、両作とも高い評価を得たことでラーキーのキャリアは全盛期を迎えた。ヤシュ・チョープラー英語版の『Kabhi Kabhie』ではフィルムフェア賞 主演女優賞にノミネートされた。同作はラーキーの出演を念頭に脚本が執筆され、『Daag』の撮影中に出演が決定した。『フィルムフェア』は「この映画は彼女の優雅さを完璧に称えるための作品であり、彼女のワイン色の瞳は数え切れないほどの感情のプリズムだ。彼女の痛ましい声が、押し寄せる悲しみを抑え込み、アミターブ・バッチャン演じる詩人を絶望の淵に突き落とす美しいミューズを演じた。この映画は彼女の第二のキャリアの扉を開き、その後、批評家を圧倒し、アートハウス俳優から羨望の的となる大ヒット作への出演を果たすスターへの道を切り開くことになった。当初、そのヘーゼル色の瞳からニンミー英語版と、悲劇的な姿からミーナー・クマーリーと比較されがちだったラーキーは、やがて、それらのすべてを乗り越えた独自の存在感を放つようになったのだ」と批評している[11]。続いて出演したラージシュリー・プロダクション英語版製作の『Tapasya』は、ラーキーが興行成績に影響を与えるドル箱女優としての地位を確立する作品となった。同作ではアスラーニー英語版パリークシト・サーヘニー英語版と共演し、弟妹のために自身の夢を諦める女性を演じて演技を絶賛され[12]、フィルムフェア賞主演女優賞を受賞した。後年、ラーキーは「キャリアの中で最も重要な作品の一つ」として『Tapasya』を挙げ、同作と『Blackmail』『Aanchal』を「キャリアの中で最高の演技を披露した作品」と語っている[13][14]

『Heera Panna』『Banarasi Babu』『Joshila』『Lootmaar』ではデーヴ・アーナンド英語版と共演したほか、『Sharmeelee』『Janwar Aur Insaan』『Kabhie Kabhie』『Doosra Aadmi』『Trishna』『Baseraa』『Bandhan Kuchchey Dhaagon Ka』『Zameen Aasmaan』『Pighalta Aasman』『Ek Do Teen Chaar』ではシャシ・カプールと共演している[15][16]。また、アミターブ・バッチャンとは『Kabhie Kabhie』『Muqaddar Ka Sikandar』『Kasme Vaade』『Trishul』『黒いダイヤ英語版』『Jurmana』『Barsaat Ki Ek Raat』『Bemisal』で共演し、『Hamare Tumhare』『Shriman Shrimati』で共演したサンジーヴ・クマールとのコンビは観客から人気を集めた[17][18]。1981年にアニル・シャルマー英語版の監督デビュー作『Shradhanjali』に出演した後、ラーキーのもとには「力強い女性主人公」のオファーが殺到し、『Aanchal』『Shaan』『Dhuan』『Shakti』『Yeh Vaada Raha』などに出演したほか、1984年にはアパルナー・セーン英語版の『Parama』でベンガル映画ジャーナリスト協会賞 ヒンディー語映画部門主演女優賞英語版を受賞している[19]。1980年代後半から2000年代にかけて『Ram Lakhan』『Anari』『Khal Nayak』『Baazigar』『カランとアルジュン英語版』『デザート・フォース英語版』『Soldier』『Ek Rishtaa: The Bond of Love』『Dil Ka Rishta』などに出演し[20][21][22]、2003年にはリトゥポルノ・ゴーシュ英語版の『Shubho Mahurat』で国家映画賞 助演女優賞英語版を受賞した[23][24]。2019年にはゴータム・ハルダル英語版の『Nirbaan』で強い信念を持つ70歳の女性ビジョリバーラー役を演じている[25]

フィルモグラフィー

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私生活

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10代のころにジャーナリストから映画監督に転身したアジャイ・ビシュワースと結婚したが、数年後に離婚している[11]。1973年にグルザールと結婚して娘メーグナー・グルザールを出産するが、1974年に夫と別居している[26]。別居理由については「結婚後も女優業を続けることを巡って意見が対立し、『Kabhi Kabhie』への出演契約を結んだことで関係修復が困難になったため」と言われており、グルザールは彼女について「私の人生で最も長い短編小説」と称している[11]。現在はムンバイ郊外のパンヴェル英語版の農園で隠遁生活を送っている[27][28][29][30]

受賞歴

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部門 作品 結果 出典
栄典
2003年 パドマ・シュリー勲章 N/A 受賞 [31]
国家映画賞
2003年英語版 助演女優賞英語版 『Shubho Mahurat』 受賞 [32]
フィルムフェア賞
1973年 主演女優賞 『Aankhon Aankhon Mein』 ノミネート [33]
[34]
1974年 助演女優賞英語版 『Daag』 受賞
1977年英語版 主演女優賞 『Tapasya』
『Kabhi Kabhie』 ノミネート
1978年英語版 主演女優賞 『Doosra Aadmi』
助演女優賞
1979年英語版 主演女優賞 『Trishna』
1980年英語版 『Jurmana』
1982年英語版 『Baseraa』
1983年英語版 『Shakti』
1987年英語版 助演女優賞 『Saaheb』
1990年英語版 『Ram Lakhan』 受賞
1994年英語版 『Anari』 ノミネート
1996年英語版 『カランとアルジュン』
1998年英語版 『デザート・フォース』
1999年英語版 『Soldier』
ベンガル映画ジャーナリスト協会賞英語版
1973年 ヒンディー語映画部門助演女優賞英語版 『Daag』 受賞 [35]
1984年 ヒンディー語映画部門主演女優賞英語版 『Parama』 [19]

出典

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  1. ^ 75 Bollywood Actresses Who Ruled The Silver Screen With Grace, Beauty And Talent”. Outlook India. 2022年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  2. ^ Rakhee occupied a special place though she was neither an arthouse fave nor had western chutzpah”. The Telegraph. 2023年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  3. ^ “Rakhee Gulzar is Unrecognizable as She Makes a Rare Public Appearance”. News18. オリジナルの2018年7月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180704005935/https://www.news18.com/news/movies/rakhee-gulzar-is-unrecognizable-in-her-recent-photos-1389213.html 2025年6月12日閲覧。 
  4. ^ Saran, Renu (2014-02-25) (英語). Encyclopedia of Bollywood–Film Actresses. Diamond Pocket Books Pvt Ltd. ISBN 978-93-5083-691-0 
  5. ^ “Raakhee” (英語). Film World (T.M. Ramachandran): p. 11. (1972年2月). オリジナルの2023年4月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230410060907/https://books.google.com/books?id=ZnhTAAAAYAAJ 2022年7月30日閲覧。 
  6. ^ Baghini (1968) Cast - Actor, Actress, Director, Producer, Music Director”. Cinestaan. 2021年12月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  7. ^ Phani Sarma (1978). অসমীয়া কথাছবি 
  8. ^ “Aankhon Aankhon Mein (1972) - The Hindu”. (2016年9月8日). オリジナルの2023年12月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231217175500/https://www.thehindu.com/features/friday-review/Aankhon-Aankhon-Mein-1972/article14628607.ece 2025年6月12日閲覧。 
  9. ^ Daag, Yash Chopra's debut as producer, broke the mould with its shades of bigamy”. The Print (2020年10月3日). 2020年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  10. ^ Rakhee occupied a special place though she was neither an arthouse fave nor had western chutzpah”. 2023年9月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  11. ^ a b c She walks in beauty”. Filmfare. 2023年9月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  12. ^ “Tapasya (1976)”. The Hindu. (2015年1月8日). オリジナルの2023年9月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230924081135/https://www.thehindu.com/features/friday-review/blast-from-the-past-tapasya-1976/article6767871.ece 2025年6月12日閲覧。 
  13. ^ Shubhra Gupta (2012年7月7日). “Silences of the heart”. The Indian Express. オリジナルの2013年3月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130315141820/http://www.indianexpress.com/news/silences-of-the-heart/971265/0 2025年6月12日閲覧。 
  14. ^ “Raakhee Gulzar remembers Tarachand Barjatya the pioneer of Hindi cinema who produced many success stories”. The Times of India. (2023年5月10日). オリジナルの2023年9月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230906120602/https://timesofindia.indiatimes.com/entertainment/hindi/bollywood/news/raakhee-gulzar-remembers-tarachand-barjatya-the-pioneer-of-hindi-cinema-who-produced-many-success-stories/articleshow/100128870.cms?from=mdr 2025年6月12日閲覧。 
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  16. ^ “The only memory”. Pune Mirror. (2011年5月29日). オリジナルの2013年11月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131111152952/http://www.punemirror.in/article/56/20110529201105290608173525ca4ac7d/The-only-memory.html 2025年6月12日閲覧。 
  17. ^ Retrospect: Vijetha (1985)”. 2016年8月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  18. ^ Mir, Raza (2014). The Taste of Words: An Introduction to Urdu Poetry. Penguin Books. p. 210. ISBN 978-93-5118-725-7. オリジナルの2023-12-17時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231217175458/https://books.google.com/books?id=nCehAwAAQBAJ&pg=PT210#v=onepage&q&f=false 2025年6月12日閲覧。 
  19. ^ a b 1978 Bangla Cinema Chameli Memsaheb”. 2020年2月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  20. ^ Dhawan, M. L. (2002年10月27日). “On the sands of time: 1989 | Year of spell-binding films”. The Sunday Tribune. 2022年6月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  21. ^ Bollywood Movie Karan Arjun Shooting Location” (英語). bollylocations.com. 2017年6月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
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  23. ^ BBC - Films - review - Ek Rishtaa (Bond of Love)”. BBC. 2008年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  24. ^ “'Shubho Mahurat' - Rituparno Ghosh and his memorable National Award-winning films”. オリジナルの2023年4月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230406055245/https://timesofindia.indiatimes.com/entertainment/bengali/movies/photo-features/rituparno-ghosh-and-his-memorable-national-award-winning-films/Shubho-Mahurat/photostory/64556573.cms 2025年6月12日閲覧。 
  25. ^ Lalwani, Vickey (2012年9月18日). “Today's hits are 7-day wonders: Rakhee”. Mumbai Mirror. オリジナルの2018年7月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180709131330/https://timesofindia.indiatimes.com/entertainment/hindi/bollywood/news/Todays-hits-are-7-day-wonders-Rakhee/articleshow/16445127.cms?from=mdr 2025年6月12日閲覧。 
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  27. ^ Bipasha to rebuild home to suit her 'energy'”. Sify (2008年7月2日). 2015年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  28. ^ Dasgupta, Priyanka (2009年2月24日). “Rakhee-Meghna delight on Gulzar's win”. The Times of India. オリジナルの2012年10月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20121025161445/http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2009-02-24/news-interviews/28051771_1_gulzar-oscar-night-lyrics 2025年6月12日閲覧。 
  29. ^ Megna Gulzar (2004). Because He is. Rupa & Co.. p. 67 
  30. ^ De, Hemchhaya (2018年10月28日). “The life and times of Rakhee Gulzar”. 2019年11月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
  31. ^ Padma Awards”. Ministry of Home Affairs, Government of India (2015年). 2015年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。
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  33. ^ Filmfare Awards Winners from 1953 to 2020”. Filmfare. 2024年2月11日閲覧。
  34. ^ Filmfare Nominees and Winner”. deep750.googlepages.com (2006年). 2009年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月11日閲覧。
  35. ^ 37th Annual BFJA Awards”. BFJA Awards. 2008年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年6月12日閲覧。

外部リンク

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