コンテンツにスキップ

ラリー・テスラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ラリー・テスラー
生誕 (1945-04-24) 1945年4月24日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨークブロンクス
死没 2020年2月17日(2020-02-17)(74歳没)
研究分野 インタラクションデザイン
出身校 スタンフォード大学
プロジェクト:人物伝
テンプレートを表示

ローレンス・ゴードン・テスラー (Lawrence Gordon Tesler, 1945年4月24日- 2020年2月16日[1]は、 アメリカ合衆国コンピュータ科学者。 人間とコンピュータのインタラクションデザインが専門。テスラーは、これまで、Xerox PARCAppleAmazonYahoo!に務めてきた[2][3]

現在最も使用されている「カット」「コピー」「ペースト」のコマンドを発明した。同氏の元勤務先で、死亡情報をツイートしたXeroxは、「テスラー氏の革新的なアイデアによって日々の作業はより楽になった」と追悼の言葉を贈った[4]

経歴

[編集]

ラリー・テスラー(Larry Tesler)はニューヨークブロンクス地区出身。1961年にブロンクス科学高等学校を卒業した。スタンフォード大学ではコンピュータ科学を学び、スタンフォード人工知能研究所に入る。 そこでHorace Eneaと共に、彼は初期の単一割り当て言語であるCompelを設計した。この関数型言語は、並行処理をより自然に行うためのもので、初心者にプログラミングの概念を導入するために使用された。

1960年代後半には、Midpeninsula Free Universityに参加し、『IBMの独占を終らせる方法』、『コンピュータの今』、『先延ばし』などの講義を行った[5]。1973年から1980年まで、Xerox PARCで働き、GypsyワードプロセッサSmalltalkの仕事をした[3]。テスラーがバッファをクリップボードと呼び[6]コピー・アンド・ペーストやサーチ・アンド・リプレイスは1973年に、テスラーとティム・モットによって最初に実装された。彼らはPARCの為にGypsyに取り組んでいた[7]。彼は、

1980年、テスラーはAppleに移り、AppleNetのVP、Advanced Technology GroupのVP、チーフサイエンティストなどのさまざまな職を歴任した[8][9][10]。彼はLisaチームの仕事(「コピー」「ペースト」「カット」のコマンド利用に、commandキーとC, V, Xの組合せを決定[11])をした後、Macintoshの開発に熱心に取組んだ[3]。1985年、テスラーはPascalにオブジェクト指向の言語拡張を追加し、Object Pascalと呼ぶ新しい言語開発でニクラウス・ヴィルトと協力した。 また、アプリケーション開発における、最初のライブラリの1つであるMacAppの開発にも携わった。 その結果、2つの技術はApple製品となった。また、テスラーは、スティーブ・サコマンの後任として1990年から1996年にAppleを辞めるまでNewtonの開発責任者であった[12]。1990年、Newton MessagePadに新しく採用するARM CPUの為、ARM設立に奔走し初代CEOとなって[13]、その後は2004年までARMの取締役を務めた[11]

テスラーは、viのように、以前のアクションに応じてその意味を変更するのではなく、ユーザーのアクションが一貫した効果を持つモードレスソフトウェアを強く好む[14] 。例えば、彼のGypsyエディタは、ユーザーがいつでも現在の挿入ポイントにテキストを入力するか、挿入ポイントを再配置する場所をクリックできる「クリックアンドタイプ」のインターフェイスを提供した。以前のほとんどのエディタは、現在のモードに応じて、キーボードを使用してテキストを入力したり、コマンドを発行したりしていた。 彼の好みを促進するために、2010年現在、テスラーは自分のスバル車にライセンス番号「NO MODES」とパーソナライズされたカリフォルニア州ナンバープレートを装備した。他の人とともに、モードを止めたり減らしたりするラリーの叫び声として、“Do not Mode Me In”という言葉を何年も使っており[15][16]、2009年6月からのTwitterアカウント名も@nomodesである。

参考文献

[編集]
  1. ^ 「コピペ」生みの親死去 米科学者のテスラー氏死去”. 山陽新聞. 220-03-05閲覧。
  2. ^ Yahoo!、ラリー・テスラー氏をユーザー体験責任者に起用
  3. ^ a b c バリー・M・カッツ 著、髙増春代 訳『世界を変える「デザイン」の誕生: シリコンバレーと工業デザインの歴史』CCCメディアハウス、2017年。ISBN 978-4484171012 
  4. ^ https://twitter.com/xerox/status/1230228728992714752”. Twitter. 2020年10月24日閲覧。
  5. ^ Wolpman, Jim. “Alive in the 60s: The Midpeninsula Free University”. 17 December 2013閲覧。
  6. ^ A User Experience Retrospective”. web.archive.org (2018年2月2日). 2024年5月2日閲覧。
  7. ^ Tesler, Larry (July–August 2012). “A Personal History of Modeless Text Editing and Cut/Copy-Paste”. Interactions 19 (4): 70–75. doi:10.1145/2212877.2212896. 
  8. ^ Larry Tesler personal home page, CV
  9. ^ Crotty, Cameron (July 1, 1996). “Tesler attacks Internet (Apple VP Larry Tesler speaks at Worldwide Developers Conference about Apple's Internet strategy)”. Macworld 
  10. ^ Apple Worldwide Developers Conference Convenes”. web.archive.org (1999年5月5日). 2022年11月7日閲覧。 “Apple's Internet strategy was detailed in a WWDC opening session by Larry Tesler, Apple's vice president of Internet platforms and chief scientist.”
  11. ^ a b Schofield, Jack「Larry Tesler obituary」『The Guardian』2020年2月28日。ISSN 0261-30772024年9月20日閲覧。「he did come up with the names, keystroke combinations (Ctrl-X, Ctrl-C, Ctrl-V) and definitions for a simpler, modeless regime that became universal.」
  12. ^ 第32回 ペンコンピュータに賭けた男 脇英世 2009/3/24
  13. ^ Larry Tesler, Legendary Apple Employee Behind Cut, Copy, And Paste Passes Away Aged 74” (英語). The Mac Observer (2020年2月19日). 2021年6月30日閲覧。
  14. ^ vi, command and input modes”. rcsg-gsir.imsb-dsgi.nrc-cnrc.gc.ca. 2016年8月3日閲覧。
  15. ^ Tesler, Larry (1981). “The Smalltalk Environment”. Byte Magazine 6 (8): 90. 
  16. ^ Origins of the Apple Human Interface”. 2004年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月1日閲覧。 by Larry Tesler, Chris Espinosa

外部リンク

[編集]