ラストタンゴ・イン・パリ
ラストタンゴ・イン・パリ | |
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Ultimo tango a Parigi Last Tango in Paris | |
監督 | ベルナルド・ベルトルッチ |
脚本 |
ベルナルド・ベルトルッチ フランコ・アルカッリ アニエス・ヴァルダ(仏語台詞) |
製作 |
ベルナルド・ベルトルッチ アルベルト・グリマルディ |
出演者 |
マーロン・ブランド マリア・シュナイダー |
音楽 | ガトー・バルビエリ |
撮影 | ヴィットリオ・ストラーロ |
編集 |
フランコ・アルカッリ ロベルト・ペルピニャーニ |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
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上映時間 |
136分 129分 250分(オリジナル) |
製作国 |
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言語 |
英語 フランス語 |
製作費 | $1,250,000[1][2] |
興行収入 |
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配給収入 |
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『ラストタンゴ・イン・パリ』(伊: Ultimo tango a Parigi、英: Last Tango in Paris)は、1972年のイタリア映画。
概要[編集]
1970年代前半の映画にして大胆な性描写(一般映画として、アナル・セックスの描写がある初の映画と言われる)が世界中に物議を醸し、本国イタリアに至っては公開後4日にして上映禁止処分を受け、日本でも下世話な話題ばかりが先行し、当時の興行成績は芳しくなかった。反対に支持者も多く、ミッキー・ロークはこの映画の大ファンであり『ナインハーフ』を作るきっかけになったという。
主演のマーロン・ブランドにとっては辛い映画であり「役者として拷問のような体験だった」と語っており、私生活でも泥沼の裁判劇のあげく敗訴という憂き目に遭った。ヒロイン役のマリア・シュナイダーに至っては波乱万丈の人生を余儀なくされ、この映画に出演した事を「人生最大の痛恨」と語っている[4]。しかし両名の演技の評価は高く、特にブランドの中年男の悲哀感をたっぷりにじませた迫真の演技は圧倒的なものであり、本作でブランドはニューヨーク映画批評家協会賞を受賞している。
当初はドミニク・サンダがヒロイン役として考えられていたが、妊娠のため降板した。映画冒頭ではフランシス・ベーコンの絵画が2点起用されており、主人公達のコスチュームデザインもベーコンの絵画から作られている[5]。
2016年、ベルトルッチが2013年に応じたインタビュー動画が公開され、その中でレイプシーンの撮影はマリア・シュナイダーに告知せず、了承を得ないで行われていたことを明らかにした。ベルトルッチは自身とブランドがシュナイダーに詳細を言わないままレイプシーンを撮影する計画を共謀したと告白、「罪悪感はあるが後悔はない」と述べた[6]。
批判的な反響が巻き起こり、ベルトルッチは12月5日に声明を発表。脚本に強姦場面が含まれていることはシュナイダーも事前に知っていて、知らせなかったのはバターを使うという点だけだったと説明し、実際の性行為はなかったと反論した[7]。
海外同様に日本国内でもメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)、ユナイテッド・アーティスツ(UA)、オライオン・ピクチャーズ作品のソフト販売を2020年6月30日をもってウォルト・ディズニー・ジャパン(旧:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン)と契約を解消し、2020年7月から一部の国でのソフト販売をワーナー・ブラザースに移行。日本国内でも2020年11月11日からワーナー ブラザース ジャパンが発売元を、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパンが販売元となりメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)、ユナイテッド・アーティスツ(UA)、オライオン・ピクチャーズ作品のソフト販売を開始した[注 1]。2021年8月2日に、日本における20世紀フォックス オフィシャルサイトが閉鎖され、2020年12月にオープンした日本における20世紀スタジオ公式サイトへ移行した。2021年5月26日、IT企業のAmazon.comは、MGMを84億5000万ドル(日本円で約9200億円、負債を含む)で買収すると発表した。2022年3月17日、買収が正式に完了し[8]、MGMが保有する4000本以上の映画(UA作品も含む)を、Amazonの定額制動画配信サービス「Amazon Prime Video(プライムビデオ)」で全世界に提供することになった。これにより、本作の提供(字幕版)は、Amazon.co.jpが担当することになった。
あらすじ[編集]
パリ・パッシーのアパルトマンの空室でうらぶれた中年男(マーロン・ブランド)とブルジョア系の若い娘ジャンヌ(マリア・シュナイダー)は単に部屋を探していた身であったが、間違って掛かってきた電話の男に刺激され、男はジャンヌを犯す。ジャンヌにはTVディレクターのトム(ジャン=ピエール・レオー)というれっきとした恋人が居たものの、アパートで会う時は互いにただのオス・メスとして行為に耽る。やがて、実は男の妻が最近自殺したばかりだという暗い過去が明らかに。男はジャンヌを牝の肉玩と見なしていたが、次第に2人の立場が逆転していき男が中年の哀れで醜い姿を晒した時、二人の間の肉欲の関係は終わりを告げる。
キャスト[編集]
- マーロン・ブランド:中年男(ポール)
- マリア・シュナイダー:ジャンヌ
- ジャン=ピエール・レオ:トム(TVディレクター)
- マッシモ・ジロッティ
- カトリーヌ・アレグレ
- カトリーヌ・ブレイヤ
- ヴェロニカ・ラザール
スタッフ[編集]
- 監督・脚本・製作:ベルナルド・ベルトルッチ
- 製作:アルベルト・グリマルディ
- 脚本:フランコ・アルカッリ
- 撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
- 音楽:ガトー・バルビエリ
サウンドトラック[編集]
『ラスト・タンゴ・イン・パリ』 | ||||
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ガトー・バルビエリ の サウンドトラック | ||||
リリース | ||||
録音 |
1972年11月20-25日 Rome | |||
ジャンル | Film Score | |||
レーベル |
United Artists UA-LA-045-F | |||
プロデュース | Alberto Grimaldi | |||
チャート最高順位 | ||||
Billboard: The Billboard 200 #166 (1973)[9] | ||||
ガトー・バルビエリ アルバム 年表 | ||||
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専門評論家によるレビュー | |
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レビュー・スコア | |
出典 | 評価 |
Allmusic | ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
ガトー・バルビエリが作曲、オリヴァー・ネルソンが編曲・指揮を担当した。1972年に録音、翌1973年にユナイテッド・アーティスツからリリース。[11][12]オールミュージックのリッチー・アンターバーガーは「スモーキーなサックス・ソロが1970年代のフュージョンの型にはまって少々鼻につくが、ガトー・バルビエリがベルトルッチの1972年の一流映画に提供した楽曲は、総じて大成功している。サスペンスに満ちたジャズ、メランコリックなオーケストレーション、躍動的なタンゴの調べが、エロティックな切望、憂鬱な欲望、不運な運命といった映画の空気に見事にフィットしている。」と評している。[10]
受賞歴[編集]
1973年グラミー賞: 最優秀インストゥルメンタル作曲賞[9]
収録曲[編集]
全曲、ガトー・バルビエリによる作曲。
- "Last Tango in Paris - Tango" - 3:32
- "Jeanne" - 2:34
- "Girl in Black - Tango (Para mi Negra)" - 2:06
- "Last Tango in Paris - Ballad" - 3:43
- "Fake Ophelia" - 2:57
- "Picture in the Rain" - 1:51
- "Return - Tango (La Vuelta)" - 3:04
- "It's Over" - 3:15
- "Goodbye (Un Largo Adios)" - 2:32
- "Why Did She Choose You?" - 3:00
- "Last Tango in Paris - Jazz Waltz" - 5:44
パーソネル[編集]
- Gato Barbieri (ts, fl, vo)
- Franco D'Andrea (p)
- Franco Goldani, Wolmer Beltrani (acc)
- Jean-François Jenny-Clark, Giovanni Tommaso (b)
- Piero Munari (ds)
- Afonso Vieira (perc, berimbau)
- Ivanir "Mandrake" do Nascimento (perc, tamb)
- Oliver Nelson (arr, cond)
主な受賞歴[編集]
アカデミー賞[編集]
ゴールデングローブ賞[編集]
- ノミネート
- 作品賞 (ドラマ部門):
- 監督賞:ベルナルド・ベルトルッチ
全米映画批評家協会賞[編集]
- 受賞
- 主演男優賞:マーロン・ブランド
ニューヨーク映画批評家協会賞[編集]
ポルノ裁判[編集]
本国イタリアでは上映禁止になっただけでなく、猥褻映画だとして主演のブランドとシュナイダーの両名は出頭しなければならなくなり、ポルノ裁判に掛けられ有罪になってしまった。結局同国では1987年になりようやく解禁され、ビデオソフトなども発売できる様になったと言う。『地獄のハリウッド(宝島社)』によると、この事件がき切っ掛けでブランドは前妻に「こんな恥晒しなセックス映画に出た人に父親の資格はない!」と言われ、全面的に親権を奪われてしまったと言う。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)のソフト販売を担当していたのは、1991年 - 1999年までにかけてワーナー・ホーム・ビデオが発売元を担当していた以来21年振りとなり、ユナイテッド・アーティスツ(UA)作品のソフト販売を担当していたのは、1983年 - 1999年までにかけてワーナー・ホーム・ビデオ(ワーナー・ホーム・ビデオ(初代:ワーナー・パイオニア株式会社)→ワーナー・ホーム・ビデオ(ワーナー・ブラザース映画会社→ワーナー・ブラザース・ジャパン・インコーポレーテッド))が発売元を担当していた以来21年振りとなる。
出典[編集]
- ^ “Last Tango in Paris (1973)” (英語). Box Office Mojo. 2011年5月19日閲覧。
- ^ a b c “Ultimo tango a Parigi (1972) - Box office / business” (英語). IMDb. 2011年5月19日閲覧。
- ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)312頁
- ^ “Downhill ride for Maria after her tango with Brando” (英語). The Sydney Morning Herald (2006年6月22日). 2011年5月19日閲覧。
- ^ 参考
- ^ “‘Last Tango in Paris’ Rape Scene Was Not Consensual, Director Bernardo Bertolucci Admits”. バラエティ. (2016年12月3日)
- ^ “「映画 『ラスト・タンゴ・イン・パリ』の暴行場面めぐる非難に監督反論」…知らせなかったのはバターを使うという点だけだったと説明”. BBC News Japan(BBCニュース). 英国放送協会 (2016年12月7日). 2019年6月27日閲覧。
- ^ “MGM joins Prime Video and Amazon Studios” (英語). US About Amazon (2022年3月17日). 2022年3月18日閲覧。
- ^ a b “Gato Barbieri Awards”. AllMusic. All Media Network. 2016年6月18日閲覧。
- ^ a b Unterberger, Richie. Last Tango in Paris – Review - オールミュージック. 2016年6月18日閲覧。
- ^ Edwards, D., Eyries, P., Watts, R., Neely, T. & Callahan, M., Discography Preview for the United Artists label "LA" Consolidated Series (1972-1981) 2016年6月18日閲覧。
- ^ Payne, D., Oliver Nelson dicography 2016年6月18日閲覧。