ラクメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
パリ・オペラ座でのオリジナルの舞台デザイン

ラクメ』(Lakmé)は、レオ・ドリーブ作曲による3幕のオペラ。台本はエドモン・ゴンディネ(Edmond Gondinet)とフィリップ・ジル(Philippe Gille)によるもので、ピエール・ロティの自伝的小説『ロティの結婚』(Rarahu ou Le Mariage de Loti)を原作とする。

概要[編集]

レオ・ドリーブ

ドリーブはバレエの『コッペリア』(Coppélia)と『シルヴィア』(Sylvia)で良く知られた作曲家で、「フランス・バレエ音楽の父」と呼ばれる。『ラクメ』は、1883年パリオペラ・コミック劇場で初演された。19世紀後半の多くのフランス・オペラ同様、『ラクメ』は19世紀後半に流行していた東洋的な雰囲気を描写した作品となっている(ビゼーの『真珠採り』やマスネの『ラオールの王英語版』などが同様の例)。本作はロマン派詩人の魅力に鼓舞され、フェリシアン・ダヴィッドを手本とするオペラ・コミックの伝統に従っている[1]。 このいかにもフランス的なオペラ・コミックの人気の秘密は、魅力的で創意に富んだ音楽にあり、その全てのアリアは現在でも良く覚えられている。しかし、残念なことに、台本、特に会話部分の稚拙さがこの作品の弱点となっている[2]。なお、メインの主題は西洋人男性と非西洋人女性の悲恋となっているが、非西洋人のラクメはジャコモ・マイアベーアによる『アフリカの女』におけるセリカを先駆け的存在とし、『蝶々夫人』に連なる悲劇のヒロインと見ることができる。

上演史[編集]

この作品の録音は複数存在し、マド・ロバン(Mado Robin)ジョーン・サザーランドマディ・メスプレナタリー・デセイなどの著名なソプラノ歌手による演技が含まれる。また、マリー・バン・ザント(Marie van Zandt)から、レイア・ベン・セディラ(Leila Ben Sedira)、リリー・ポンス、ピエレット・アラリー(Pierrette Alarie)、サビーヌ・ドゥヴィエル(Sabine Devieilhe)に至る歴代の優れた歌手によって歌われてきた。オペラ・コミック座での上演は1,500回を超え、ゲテ・リリック座では98回、トリアノン・リリック座でも64回の公演が行われている[3]。ドリーブ特有の複雑なメロディが特徴であるが、この作品が上演されることは少ない。

あらすじ[編集]

2014年のオペラ・コミック座での2幕の上演風景

物語の舞台は19世紀後半、イギリスに統治されていた時代のインドである。多くのヒンドゥー教徒たちがイギリス人によって、自分たちの信仰を秘密裏に行うことを余儀なくされていた。

第1幕[編集]

イギリス人将校のジェラルドは、神聖なバラモン寺院の敷地に誤って不法に侵入してしまう。彼はそこで、高僧ニラカンサの娘であるラクメ(サンスクリット語のラクシュミーに由来する名前)と出会い、二人は恋に落ちる。ニラカンサはイギリスの将校が不法侵入したことを知り、神聖なバラモン寺院を冒涜した男に対する復讐を誓う。この場面はグランド・オペラ並みの壮麗な場面となっている。

第2幕[編集]

市場で、ニラカンサはラクメに、侵入者をおびき出させるために「鐘の歌」を歌わせる。ジェラルドが近寄ってくるとラクメは卒倒してしまい、結果として彼が侵入者であると暴かれる。ニラカンサはジェラルドを刺し、ジェラルドは重傷を負う。

第3幕[編集]

ラクメはジェラルドを森の中にある秘密の隠れ家へ連れて行き、そこで彼が元気になるように介抱する。ラクメが、恋人達の誓いを確かめる聖なる水を汲みに行っている間に、ジェラルドの前に同僚の将校フレデリックが現れ、彼に軍人としての責務を思い出させる。ラクメが戻ってくると、彼女はジェラルドの心境の変化に気づき、自分が彼を失ったことを知る。彼女は屈辱の中で生きるよりも名誉ある死を選び、有毒のチョウセンアサガオの葉を食べることで自ら命を絶つ。

登場人物[編集]

ラクメを演じたマリー・バン・ザント
人物名
(英語名)
声域 初演時のキャスト
(1883年4月14日)指揮:
ジュール・ダンベ
ラクメ ソプラノ ニラカンタの娘、
バラモン教の巫女
マリー・バン・ザント
ジェラルド テノール イギリスの陸軍士官 ジャン=アレクサンドル・タルザック
マリカ メゾ・ソプラノ ラクメの侍女 エリザ・フランダン
ニラカンタ バス バラモン教の僧侶 コバレ
フレデリック バリトン イギリスの陸軍士官
ジェラルドの上官
バーレ
エレン ソプラノ 総督の娘 レミー
ローズ ソプラノ エレンの友人 モレ=トリュフィエ
ハジ テノール ニラカンタの召使 シュンヌヴィエール
ベンソン女史 ソプラノ エレンとローズの家庭教師 ピエロン
中国人商人 テノール - ダヴスト
占い師 テノール - テステ
スリ バリトン - ベルナール

合唱:音楽家たち、女性たち、バラモン教徒、商人、役人、水夫など
バレエ団。

演奏時間[編集]

第1幕50分、第2幕55分、第3幕35分  合計約2時間20分

楽器編成[編集]

楽曲[編集]

この作品で最も有名な曲は「花の二重唱」(フラワー・デュエット、The Flower Duet)で、さまざまな映画やテレビ番組、コマーシャルなどに用いられている。 このほか、ラクメ(ソプラノ)が歌うアリア「若いインド娘はどこへ」( Où va le jeune Indoue)《鐘の歌》もコロラトゥーラの超絶技巧を要する名曲で、多くのソプラノを惹きつけている。さらに、イギリス人将校ジェラルドが歌う「高貴な儚い幻影よ」(Fantaisie aux divins mensonges)といった優れたナンバーもある。

「花の二重唱」が用いられた作品[編集]

主な録音・録画[編集]

配役
ラクメ
ジェラルド
マリカ
ニラカンタ
フレデリック
指揮者
管弦楽団及び合唱団
レーベル
1967 ジョーン・サザーランド
アラン・ヴァンゾ
ジャーヌ・ベルビエ
ガブリエル・バキエ
クロード・カレ
リチャード・ボニング
モンテカルロ歌劇場管弦楽団
及び合唱団
CD: Decca 
ASIN: B0000041VR
1970 マディ・メスプレ
シャルル・ビュルル
ダニエル・ミレ
ロジェ・ソワイエ
ジャン=クリストフ・ブノワ
アラン・ロンバール
パリオペラ=コミック座管弦楽団
及び合唱団
CD: EMI Classics 
ASIN: B000063UM9
1994 ナタリー・デッセイ
グレゴリー・クンデ
デルフィーネ・ハイダン
ジョゼ・ヴァン・ダム
フランク・ルゲリネル
パトリシア・プティボン
ミシェル・プラッソン
トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
トゥールーズ・キャピトル劇場合唱団
CD: EMI Classics 
ASIN: B00000C2JP
2011 エマ・マシューズ
アルド・ディ・トーロ
ドミニカ・マシューズ
スティーヴン・ベネット
ルーク・ガベッディ
エマニュエル・ジョエル=オルナック
オーストラリア・オペラ・バレエ管弦楽団
オペラ・オーストラリア合唱団
演出:ロジャー・ホッジマン、
アダム・クック版を基にした演出
DVD: ナクソス・ジャパン
ASIN: B007C7FFNG
CD: Opera Australia 
ASIN: B007C7FDNS

関連項目[編集]

  • ヤニー - "Aria"はラクメから実現化した曲

脚注[編集]

  1. ^ 『オックスフォードオペラ大事典』P431
  2. ^ 『ラルース世界音楽事典』P1860
  3. ^ 『ラルース世界音楽事典』P1860

参考文献[編集]

  • 『オペラ名曲百科 上 増補版 イタリア・フランス・スペイン・ブラジル編』永竹由幸 (著),音楽之友社ISBN 4-276-00311-3
  • 『オックスフォードオペラ大事典』ジョン・ウォラック (編集), ユアン・ウエスト (編集), 大崎 滋生 (翻訳), 西原 稔 (翻訳),平凡社(ISBN-13: 978-4582125214)
  • 『ラルース世界音楽事典』福武書店
  • 『フランス・オペラの魅惑 舞台芸術論のための覚え書き』澤田肇 (著)、出版社: ぎょうせい (ISBN-13: 978-4324094037)
  • 『パリ・オペラ座』-フランス音楽史を飾る栄光と変遷-竹原正三 (著) 芸術現代社 (ISBN-13: 978-4874631188)

外部リンク[編集]