ヤルコフスキー・オキーフ・ラジエフスキー・パダック効果

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ヤルコフスキー・オキーフ・ラジエフスキー・パダック効果(Yarkovsky–O'Keefe–Radzievskii–Paddack effect)とは、おもに小惑星のように固有の自転運動をする不均一な形状の天体において、太陽から受ける光の圧力(輻射圧)と天体表面からの熱放射のバランスが天体上の場所によって異なることで回転力が生じ、自転速度が変化する効果である。ヤルコフスキーらにより予測され、小惑星の自転周期の観測により証明された。頭文字をとってYORP(ヨープ)効果と略す。

概要[編集]

地球のように球形の天体にはこのような回転力は生じないが、形状が歪な小天体の場合はこの回転力が自転運動に影響を与えてしまう。この力は非常に小さなものであるが、数百万年から数千万年を経て積み重なることで、観測により検出できるほどの変化量となる[1]

さらにはラブルパイル天体の場合、YORP効果によって数百万年かけて自転が加速され赤道付近に物質が集まっていくと、やがて集積していた破片が表面から分離し周回軌道に投入されて衛星が形成されうるという[2][3][4]

観測例[編集]

  • YORP (2000 PH5) - YORP効果が初めて確認された天体。名称もこれに因む。1年に1ミリ秒ずつ自転が加速しており、そのうちバラバラになってしまう可能性が指摘されている。
  • アポロ - 2007年、光度曲線の測定からYORP効果が確認された[5]
  • (66391) 1999 KW4 - 二重小惑星。その形成過程にYORP効果が大きく関与しているとされる[4]
  • パンスターズ彗星 (P/2013 P5) - その軌道や組成から、実際は彗星よりも小惑星に近い天体であると推定されている。2013年9月10日に6本の尾が観測されたが、13日後の9月23日に撮影された画像では様子が劇的に変化しており、尾の向きが完全に変わっていた。尾の変化は自転に基づくものと推定された。このことから、YORP効果によって自転速度が増大し、その遠心力によって表面の物質が放出された結果、長い尾のような形状になっているのではないかと推測されている[6][7]
  • P/2013 R3 - 彗星の認識符号が付けられているが、実際は岩石主体で形成された、メインベルトにある小惑星である(2013年9月発見)。2013年後半から2014年初めにかけて、10個以上に分裂した破片が時速約1.6kmというゆっくりとした相対速度でばらばらになっていく様子が観測された。天体同士の衝突破壊ではなかったため、YORP効果による自転速度の増大により遠心力で崩壊していったとみられる[8][9]。このことからラブルパイル天体だと推測されている。
  • イトカワ - 探査機はやぶさの観測結果からYORP効果によって自転速度が遅くなることが推定され、観測によりYORP効果が確認されたとの報告があったが[10][11]、これについては解析上のミスによる間違いだったという話が出ている[12]。その後ケント大学のステファン・ローリーらがイトカワの自転にともなう輝度変化を観測し、その自転速度が遅くなるどころか1年に45ミリ秒ずつ速くなっていると発表した[13][14][15]。予測通りにYORP効果が働いていない理由は、くびれた領域を境にしてイトカワの部分ごとに密度が異なるためと考えられている。このことから、イトカワは2つの小天体が衝突で一体化したことで形成されたと推察される。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ D. P. Rubincam, Radiative Spin-up and Spin-down of Small Asteroids, Icarus, Vol. 148, Issue 1, pp. 2-11, 2000.
  2. ^ K. J. Walsh, et al., (2008), Rotational breakup as the origin of small binary asteroids
  3. ^ Study Puts Solar Spin on Asteroids, their Moons & Earth Impacts :: University Communications Newsdesk, University of Maryland
  4. ^ a b 小惑星の自転が加速、表面が飛び出して衛星に - AstroArts 天文ニュース
  5. ^ M. Kaasalainen, et al., Acceleration of the rotation of asteroid 1862 Apollo by radiation torques, Nature, Vol. 446, pp. 420-422, 2007.
  6. ^ D. Jewitt, et al., (2013), The Extraordinary Multi-Tailed Main-Belt Comet P/2013 P5
  7. ^ スプリンクラーのようにダストを放出する小惑星 - AstroArts 天文ニュース
  8. ^ Hubble Witnesses Asteroid's Mysterious Disintegration - NASA Science
  9. ^ ゆるやかに分裂していった小惑星 - AstroArts 天文ニュース
  10. ^ 北里宏平、(2007) Solid State Planetary Science Group Seminar 2007 first half
  11. ^ 地上観測によって検出された小惑星イトカワの YORP 効果 | 木曽シュミットシンポジウム2007
  12. ^ 阿部新助Twitter 2014年3月8日閲覧
  13. ^ S. C. Lowry, et al., (2014), The internal structure of asteroid (25143) Itokawa as revealed by detection of YORP spin-up
  14. ^ 小惑星イトカワ、ラッコの頭は重かった - AstroArts 天文ニュース
  15. ^ 「はやぶさ」が観測した小惑星イトカワ 二つの小惑星が合体か くびれの両側で密度の違い | レスポンス

参考文献[編集]

  • O'Keefe, John A. (1976). Tektites and Their Origin. Elsevier. 
  • Paddack, Stephen J., Rotational bursting of small celestial bodies: Effects of radiation pressure, J. Geophys. Res., 74, 4379–4381 (1969)
  • Radzievskii, V. V. (1954). "A mechanism for the disintegration of asteroids and meteorites". Doklady Akademii Nauk SSSR 97: 49–52. 
  • Rubincam, David P., Radiative spin-up and spin-down of small asteroids, Icarus, 148, 2–11 (2000)
  • Statler, Thomas S. (2009年). “Extreme Sensitivity of the YORP Effect to Small-Scale Topography”. arXiv:0903.1119. 

外部リンク[編集]