ヤマビワソウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤマビワソウ
沖縄本島北部・2004/08/11
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : キク亜綱 Asterdiae
: ゴマノハグサ目 Scrophulariales
: イワタバコ科 Gesneriaceae
: ヤマビワソウ属 Rhynchotechum
: ヤマビワソウ R. discolor
学名
Rhynchotechum discolor (Maxim.) B. L. Burtt
和名
ヤマビワソウ

ヤマビワソウ Rhynchotechum discolorイワタバコ科の植物。ビワに似た大きな葉を付ける。

特徴[編集]

常緑性の小低木[1]。高さは30-50cmと大きくはならない。若枝は全面に黄褐色の軟らかな毛が密生するが、後にやや無毛になる。

茎は直立し、枝を出さないか、せいぜい1-2の分枝がある程度、長さに比して太い。また、若枝にあるような軟毛は葉柄、葉裏、それに花序にも一面にある[2]

葉は互生。葉柄は長さ2-7cm、葉身は長さ10-20cm、幅2.5-6cm。葉身は倒披針形または倒卵状長楕円形で、先端は尖り、基部は次第に狭まって葉柄につながり、縁には少し尖った鋸歯が多数ある。

花期は8-10月。葉腋から長さ4-7cmの集散花序が出る。花序は長い柄があり、その先端付近から細く短い小花柄(長さ2-10mm)を出し、花をまばらに付ける。萼は5つに深く裂け、裂片は線状披針形で先端が尖っており、長さ5-6mm。花冠は長さ6mmで白く、釣り鐘型で先端が5つに分かれて広がる。果実は卵形から球形で、熟すると白くなり、径6-7mm。

和名は山枇杷草の意味で、全草がヤマビワに似るためである[3]

分布と生育環境[編集]

琉球列島、奄美大島以南に分布する。国外では台湾、フィリピンから知られる。林縁に生える。山地の川岸や湿気のあるところに多い[4]

分類[編集]

ヤマビワソウ属は東南アジアなどに13種ほどがあるが、日本には本種のみが知られる。

種内の変異としては、日本には以下のようなものがある。

  • R. discolor 基本変種
    • var. austrokiusiuense タマザキヤマビワソウ
    • var. incisum[5] キレバヤマビワソウ

タマザキヤマビワソウは花が小さく、密集して付く。基本変種より北まで分布域があり、九州の大隅半島から南西諸島にわたって見られる。キレバヤマビワソウは葉に切れ込みが入るもので、沖縄島の名護岳にのみ知られる[2]

利害[編集]

若芽を野菜として利用する例がある由[6]

出典[編集]

  1. ^ 以下、記載は主として佐竹他(1981),p.132
  2. ^ a b 初島(1975),p.557
  3. ^ 牧野(1961),p.573
  4. ^ 池原(1979),p.186
  5. ^ YList[1]2014年8月27日閲覧
  6. ^ 堀田(1997),p.181

参考文献[編集]

  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本III 合弁花類』,(1981),平凡社
  • 初島住彦 『琉球植物誌』 沖縄生物教育研究会、1975年、追加・訂正版
  • 堀田満、「ミズビワソウ」:『朝日百科 植物の世界 2』、(1997)、朝日新聞社:p.180-181