ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!

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ヤスジのポルノラマ
やっちまえ!!
DO・IT!
監督 三輪考輝
高桑慎一郎
脚本 吉田喜昭
原作 谷岡ヤスジ
製作総指揮 渡辺清(新倉雅美)
出演者 鈴木やすし
鈴木弘子
南利明
大塚周夫
コロムビア・トップ
音楽 橋場清
主題歌 ドバ・ドバ・ソング/ザ・ラニアルズ
ロンリーブルース/杉かおる
製作会社 東京テレビ動画
配給 日本ヘラルド映画
公開 日本の旗 1971年9月24日
北海道の旗 2005年2月24日
カナダの旗 2005年7月17日
東京都の旗 2018年2月6日/3月3日
上映時間 101分(無修正版)
96分(劇場公開版)
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
製作費 7000万円
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ヤスジのポルノラマ やっちまえ‼』(英題:DO・IT!)は、東京テレビ動画が制作した谷岡ヤスジ原作の劇場用アダルトアニメ1971年9月24日公開。2005年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭フォーラムシアター部門正式出品作品[1]東京国立近代美術館フィルムセンター「発掘された映画たち2018」上映作品[2]

アニメ映画として類を見ない破滅的で反社会的な表現が多用されており、映倫からのクレームで11カ所がカット、タイトルバックの修正、結婚という人生の墓場で主人公が割腹自殺を遂げるラストシーンは前年の三島事件を連想させるとのことで全面的に撮り直された[3]安藤健二は「日本のカルトムービーのひとつとして、伝説的な存在となっている」と述べている[4]

キャッチコピーは「サーモンピンクのふくらみにドバーッと鼻血をぶっかけてどぎつく割り込め! やっちまえ!」。

あらすじ[編集]

女にモテない、ついでに金ないチョンガー・ブス夫は、赤線も消えた日本でセックスに飢え悶々とした生活を送っていた。そんな彼は、就職先の自動車メーカーの同僚であるユキ子に懸想。彼女に自分を認めさせようとセールスマン稼業に精を出し、下半身も使って女性の顧客を獲得。社内成績をあげたブス夫は紆余曲折を経て、新妻となったユキ子とホテルで結婚初夜にまで漕ぎ着けたが、ついブス夫が麻雀に誘われている間、ユキ子は窓から飛び込んできたムジ鳥にレイプされ、恐るべき子供ムジ夫を産んでしまう…。

内容および製作・公開について[編集]

企画・経緯[編集]

“鼻血ブー”や“アサー”などの流行語を生みだしたナンセンスギャグ漫画の巨匠・谷岡ヤスジの原作をアニメ映画化したもの。東京テレビ動画社長および監督かつ制作者である新倉雅美(別名:渡辺清)の最初で最後の劇場製作作品。なおタイトルの「やっちまえ‼」は1971年4月に翻訳刊行されたジェリー・ルービンの著書『DO IT! やっちまえ 革命のシナリオ』(都市出版社)から拝借したものである。

東京テレビ動画が制作していたテレビアニメ『男どアホウ!甲子園』および『赤き血のイレブン』の放映が終了した直後の1971年春に、映画配給会社の契約も未定なまま映画製作に着手したとされ[5]、セル画4万枚・製作人数2万人・製作期間7カ月・制作費7000万円と東京テレビ動画が社運を賭け全精力を注いだ作品であった[6]。実質的監督である新倉がパンフレットに寄稿した「声明文」について、安藤健二は「左翼の活動家のような文体で、とてもアニメ会社の社長のものとは思えない」と評している[5]

演出[編集]

本作の原画には谷口守泰(のちに『装甲騎兵ボトムズ』作画監督)と村中博美(のちに『名探偵コナン』作画監督)を招き、演出は三輪考輝高桑慎一郎が担当した。また製作スタッフには女性も多く、作中に女性自身が頻繫に出て来るので「恥ずかしかった」という[7]

演出の三輪は手塚治虫の短編アニメ『展覧会の絵』の演出と原画、『まんが日本昔ばなし』の演出、『ふしぎの国のアリス』のアニメーションキャラクターおよび作画監督などで知られるアニメ演出家であり、一方の高桑は日本語版ハンナ・バーベラ作品を中心に担当した音響監督である。

とくに高桑は 『チキチキマシン猛レース』でオープニング曲を作り替え、日本向けのキャラクター名を設定し、台詞を全く話さないキャラにも台詞を与えるなど大幅にアレンジを加えた日本語吹き替え版演出で注目された人物でもあり[8]、また本作に参加したメインキャストの鈴木やすし大塚周夫雨森雅司南利明関敬六コロムビア・トップなどはいずれも高桑演出作品の常連声優であることから[8]、本作の作風は高桑による演出が非常に大きいとみられている。なおサブキャラクターのキャストには小原乃梨子増山江威子肝付兼太納谷六朗田中亮一といった、のちに著名となる有名声優陣も多数起用されている[9]

映画は3部構成で、第1章「私生活」、第2章「経験」、第3章「めまい」という題が付けられている。第1章「私生活」では主人公ブス夫の独身時代のセックスを描き、第2章「経験」では猛烈セールスマンとなってセックスを武器に車を売る。第3章「めまい」は結婚したものの破局を迎え自殺する[7]。「私生活」「経験」「めまい」のタイトルはいずれも当時の流行歌手である辺見マリの曲名から引用したものである[3]。また色彩は基本的に原色を多用しているので全体的にサイケデリックな印象が見受けられる[6]

封切り[編集]

セックス」「レイプ」「インポ」「奇形」「獣姦」「幼児姦」「近親相姦」「割腹自殺」「日本刀で斬殺」「映倫パロディ」「オ○ンコマーク」など映画という条件の枠にも度を越す過激な内容で、原作者が危惧した通り映倫管理委員会からのクレームで11カ所がカット、タイトルバックの修正、主人公がメスゴリラ姦通した後、割腹自殺を遂げるラストシーンは前年の三島由紀夫事件を連想させるとのことで全面的に撮り直された[3]。なお作品のラストは「結婚は人生の墓場」という教訓を比喩するシーンとなっており、事実、結末は救いようのない悲劇的なものとなっている[6]

作品内容は谷岡ヤスジの支離滅裂でメチャクチャな世界観を彷彿させ、原作者の谷岡からは好評を得たが[6]、いざ蓋を開けると内容が内容だけに全然客が入らず、2週続映が1週で打ち切られたとされる[3]。性と暴力を全面的に打ち出した描写かつ無軌道な内容のため、アニメーション研究家渡辺泰からは「結局、時流に乗っただけの作品で、内容も何もない愚作に終わった」と酷評され[7]興行的にも作品的にも全く評価されずに東京テレビ動画は本作を最後に活動を停止した[5]。なお本作が公開された翌日の9月25日には、奇しくも東京テレビ動画が制作した『男どアホウ!甲子園』の再放送が終了しており、これで東京テレビ動画が前身の日放映時代に製作したアニメとびだせ!バッチリ』以来4年10カ月・全5作にわたって独占していた日本テレビ系列夕方6時35分の帯アニメ枠は完全に消滅することとなった。

本作は手塚治虫虫プロダクションが製作し日本ヘラルド映画が配給した「アニメラマ3部作」のヒットに便乗したとも言われ、1969年には映画『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』の併映でレオ・プロダクションの『㊙劇画 浮世絵千一夜』が、1971年には日本ヘラルド映画の企画・配給で本作が上映された。前者は東映系の全国53館の劇場で上映されたが、映倫の審査を通過していたにもかかわらず、警視庁からは猥褻な場面を削除するようにとの警告を受け、後者の本作は「ポルノなら何でも当たる」と言われた時代に1週で上映が打ち切られるなど、この2本の便乗作の内容に対する評価は芳しいものではなかった。

本作のあと、オリジナルビデオアニメ(OVA)が盛んに作られるようになる1980年代半ばまでアダルトアニメはほとんど製作されることはなかった[6]

リバイバル[編集]

後にプリントがアメリカ合衆国にわたり、「DO・IT!」の題で興行収入15億のヒットを飛ばした[6]。しかし日本では製作会社の東京テレビ動画が解散していたこともあり、長らく上映・ビデオ化されず、存在そのものが忘れられていたが、当時現像を行った東洋現像所(現・IMAGICA)からネガの原盤が近年発見された[10]

ネガは谷岡の未亡人の意向でニュープリントに焼かれ、2004年川崎市市民ミュージアムで開催された谷岡ヤスジ展で日本国内では実に32年ぶりに再上映された[10]。その後、2005年2月ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でも正式上映され[10]、これが好評を得てカナダモントリオールで開催されている北米最大のジャンル映画祭ことファンタジア国際映画祭に正式出品される運びとなり、同年7月ワールドプレミアとして初上映される快挙を成し遂げた[11]

2014年には谷岡の未亡人から委託を受け、谷岡作品の版権を管理しているソニー・デジタルエンタテインメントが本作の原盤フィルムを入手し[12]、同社の福田淳社長によって2016年2月に原盤フィルムが東京国立近代美術館フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)に寄贈された[13][14]。この原盤フィルムから作製されたニュープリント版は2018年1月30日から同年3月4日にかけて同センターで開催された「発掘された映画たち2018」で2度にわたりリバイバル上映され[2]東京都内では1971年の初公開以来、実に47年ぶりの再上映となった。

2017年には本作を市販用DVDとして制作・販売する企画が立ち上がり、幻の映画復刻レーベル「DIG」を運営している株式会社ディメンションが著作権者の捜索を行った[15]。しかし原作者およびその周辺、上映原盤管理者周辺、映画製作および配給に関わったスタッフ、その他関係者に連絡を取るも、製作元の東京テレビ動画および後継会社にあたる日本テレビ動画が既に解散していることもあり、現在に至るまで著作権者(製作会社およびその代表)は判明しておらず、本作がいわゆる権利の所在が不明な孤児著作物であることが明らかになった[15]

本作の実質的監督を務めた東京テレビ動画社長の新倉雅美は後に日本テレビ動画というアニメ制作会社を新たに立ち上げ『ドラえもん』(第1作)を日本テレビ系で放送するが、放送中に突然失踪したのち、1986年拳銃密輸逮捕されて以降、その後の行方は分かっていない

映像ソフト化 [編集]

本作は興行的・批評的・作品的に大失敗に終わった不遇の作品であるが、それに加えて「製作会社の消滅」「フィルムの散逸」「製作者の失踪」「代表者の逮捕」といった致命的なアクシデントに多々見舞われたことから非常に露出の乏しい作品となっており、いわゆる封印作品としてVHSDVDなどの映像ソフト化はおろか、過去に地上波BS放送CS放送を含むメディアで放映されたことも全くなかった。

なお本作品は『日本アニメーション映画史』(山口且訓・渡辺泰、1977年)や『劇場アニメ70年史』(アニメージュ編集部、1989年)などに僅かながら記述があり、制作されていた事実は古くからマニアの間で認識されていたが、ほとんど誰からも顧みられることなくアニメ評論家からは黙殺され、少なくとも公開後30年間は完全にアニメ史から葬り去られた存在であった。

だが、2000年代に入って作品の存在とフィルムの所在が再確認されて以降、国内外での再上映を契機に再評価が進み、初公開から47年の歳月を経た2018年後半にDIGレーベルより初ソフト化される運びとなり、ついに陽の目を見ることになった。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

主題歌[編集]

「ドバ・ドバ・ソング」
キャニオン・レコード
作詞 - 島村葉二 / 作曲 - 橋場清 / 浪曲部担当 - 沢田敏子 / 曲師 - 吉野静歌 / 歌 - ザ・ラニアルズ
「ロンリーブルース」
作詞 - 島村葉二 / 作曲 - 橋場清 / 歌 - 杉かおる
挿入歌
「私生活」
作詞 - 安井かずみ / 作曲 - 村井邦彦 / 歌 - 辺見マリ
経験
作詞 - 安井かずみ / 作曲 - 村井邦彦 / 歌 - 辺見マリ
「めまい」
作詞 - 安井かずみ / 作曲 - 村井邦彦 / 歌 - 辺見マリ

エピソード[編集]

吉川惣司の証言によると1972年1月頃、旅行で立ち寄った青森の映画館で深夜に2本立て(いわゆるグラインドハウス映画)の1本で本作が上映されており、それを偶然見たという[17]。吉川はスタッフロールに旧虫プロ時代の同僚である鈴木満のクレジットを見つけ、鈴木が新潟のアニメスタジオに移ったと聞いていたため、帰路に鈴木のいるスタジオを訪れた[17]。それが、新倉雅美が新たに興した日本テレビ動画であったという[18]。吉川は帰京後、TBSプロデューサーの忠隈昌に「男子バレーのアニメを作るのにいい会社はないか?」と聞かれ、日本テレビ動画を紹介し、その結果『アニメドキュメント ミュンヘンへの道』を日本テレビ動画が制作することになったという[17]

幻の日放映版『千夜一夜物語』[編集]

1967年独立系成人映画製作会社(いわゆるエロダクション)の最大手の一つだった国映の傘下にあった日本放送映画矢元照雄代表は、虫プロダクション劇場用アニメの新企画『千夜一夜物語』に対抗し、虫プロより一足先に『千夜一夜物語』の企画制作に着手したという記録が残っている[19]。矢元は脚本監修寺山修司[20]原画には宇野亜喜良を招き、6000枚(30分)ほどの原画も完成していたというが、陽の目を見ることなく1968年に日放映は活動を停止した[19]

その後、元日放映の新倉雅美が新たに興した東京テレビ動画は、当時実現しなかった劇場用大人向けアニメ事業にリベンジするかのように、2万人の人員と7000万円の製作費を投じて本作『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』を制作した(1960年代の一般的なピンク映画の製作費は300万円程度であり、国映が制作していたピンク映画でも多くて500~600万円の製作費だった[21])。

タイトルにある「ポルノラマ」からも分かるように本作品は虫プロの「アニメラマ」を意識した形がとられ[22]、頓挫した日放映版『千夜一夜物語』との間で受け渡しがあったかのような構図となっている。

評価・分析[編集]

  • 谷岡ヤスジ - へぇ、奇想天外に動きますねぇ。僕自身が作品を描いているときは随分画面の飛躍と動きを意識しているつもりですけど、映画になってみると予想外の効果が出てくる。それに映画になると一段とエロですねぇ[23]
  • 田山力哉 - 面白いこと無類。出し惜しみなくセックス描写をどしどし見せてくれる。たっぷり楽しませる大人の大娯楽アニメ[24]
  • 佐藤重臣 - ナマの裸のオンナがあえぐよりもポルノ度がずっと凄い気がする[25]。柄の悪さで日本一、バンカラポルノで世界一。と、フレコミ以上に凄い。何しろ“キンタマ”なんてコトバが、飛び出すだけでも、映画史上、始めてのことじゃなかろうか[24]
  • 内田栄一 - 主人公は「やっちまえ!」と突進する。限界を感じ、向こうの果てまで攻撃しつくせないのを知りながら、当面、噴き出す鼻血を止めるためにも目の前やら手近にいる女と“やる”ことの実現に集中する。そこで理解できるのは、やることや性の遊びやその変化のしかただけに集中するような、そしてそのことを〈文化的〉に高いところで評価してもらおうと、いわば〈上昇志向〉にあふれている俗流ポルノのもろもろとは違って、やったり遊んだりすることが谷岡ヤスジの作品においては少しも完結の目標になっていないということだろう。(中略)そしてそのような一切のリクツを抜きにしても、ワイドのスクリーンいっぱいに何度も出てきて拡がるなつかしいオマンコマーク、それを目撃することができるだけでもぼくらは感動してしまうに違いない。少なくともぼくの経験した範囲で言えば、それは地上最大のオマンコマークであり、それを見るだけでも谷岡ヤスジの作品世界との、攻撃的で破壊的な気配を持っている〈共犯関係〉が成立するような気がする[24]
  • 村上賢司 - リミッターなしの狂気的に発情した性描写をとことん放出し続ける精神構造は同時期開業の元祖国際秘宝館と同じであり、終映後の疲労感も同質なものであった。まさに時代がつくった怪作であり、このような映画はもう二度と生まれないだろう[26]
  • 小黒祐一郎 - 怪作です。カルトです。とにかくインパクトがありました[27]。僕がこの作品を知ったのは『日本アニメーション映画史』(山口且訓・渡辺泰、1977年)だった。「いつかは観たい」どころか「一生観る機会はないだろう」と思っていた作品だった。内容はかなり無茶苦茶。作り手は意図して無茶苦茶なものを制作しているはずなので、これは悪口ではない。中盤からクライマックスにかけて「ええっ!」と驚く展開がいくつもあった。この作品を自分の中でどう位置づけすればいいのかはまだ分からない[28]
  • 穂積昭雪 - 一言でいうと70年代のサイケ文化が幼くして爆発したような怪作。成人アニメという触れ込みではあるがエロというか演出が目に悪い。話らしい話はあるが見どころは谷岡ヤスジの世界観。最初は貴重な作品ということもありストーリーを追ってしまったが演出を楽しむ映画だと途中で気づいた。この作品が歴史に残るとすれば『チキチキマシン猛レース』音響監督・高桑慎一郎さんがキレキレの演出を見せてること。ラストは三島由紀夫をイメージした(かなり生々しい)切腹シーンで締めるんだが、裏にかかってるBGMが「君が代」そっくりのアレンジソングで「うわ!攻めてる」と思った。直前には高倉健さんイメージの『昭和残侠伝』パロディも出てきたし、ラストはむちゃくちゃ。まあなんだかんだで楽しめたけど一度見れたなら、もういいかな?…ただ心に残るものがないだけで90分は丸々楽しめる作品[9]
  • 眠田直 - 珍品。まさに珍品としかいいようがない。「幻の名作」ではないので、谷岡ヤスジのファン以外は無理して観る必要は無いよ[9]
  • 浅野潜 - 映像処理が一番自由に出来、かなり制限が大幅に許容されているアニメーションだと言う事があったとしても、徹底して視点を人間の肉体の一部でしか無いセックスに絞った事は、原作が僅かでも持っていた精神を見失わせる結果となり、なにか、極端にまでデフォルメされた主人公の空虚な残像だけが空しく残る結果となっている。(中略)夢と現実の混合の中に、まだしも強烈な自意識を見せたブス夫が、父親と妻を殺したあげく自分の腹をかっさばいて、セックスに乗って昇天するラストに、なんとも言えない「70年代楽観主義」が後味悪く感じられて仕方がないのもそのためである[6]
  • 渡辺泰 - 四十六年九月二十六日〔ママ〕封切の『DO IT! ヤスジのポルノラマ・やっちまえ!!』もお粗末な作品であった。東京テレビ動画製作、日本ヘラルド映画配給の長編動画で、原作は“鼻血ブー”で売り出した谷岡ヤスジ。タイトルの“やっちまえ!!”はアメリカの黒人が体制破壌〔ママ〕の言葉としている。“DO IT!”で、主人公のプス夫〔ママ〕が女を次々に犯し「女はやってしまうものだ」と行動で示す。映倫のクレームでタイトルバックの作り直し、十一ヶ所のカット、結婚という人生の墓場でプス夫が割腹自殺するラスト・シーンは三島事件を類推させるとのことで全面的な撮り直しとなった。興行成績も悪く二週続映が一週で打ち切られたそうだ[3]。結局、時流に乗っただけの作品で、内容も何もない愚作に終わった[7]
  • 天野ミチヒロ - 不遇の作品ゆえ、いまだに40年前の酷評が独り歩きしているが、谷岡ヤスジの作品は単なるエログロバイオレンスではない。その不条理さの中には、我々凡人が考え及ばない哲学が内包されている。天才・谷岡ヤスジのキャラクターがアニメーションで動く、それだけでもアニメ史上に残る奇跡の作品だ。今こそ再評価される時が来た。初ソフト化が待たれる[12]
  • ガンジー北京 - 「鼻血ブー」「アサー」など数々の流行語を生んだギャグ漫画の鬼才・谷岡ヤスジ原作の劇場アニメ。スクリーンにドアップで出る女性器マーク。主人公の嫁は新婚初夜で「アサー」と叫ぶ鳥にレイプされ、その赤ん坊も母親を犯す。赤ん坊は主人公の家で育てられるが、隣家の幼女とエッチ三昧。寝たきりの父親と姦通した嫁を日本刀で殺した主人公は、動物園でメスゴリラと獣姦してから割腹自殺。よく公開できたと思うが(笑)、これでも映倫に11カ所を削除され、割腹シーンも前年の三島由紀夫自決事件を連想させると撮り直しを命じられていたというから、初号フィルムはもっと過激なのだろう。2014年、谷岡作品の版権管理をしているソニー・デジタルエンタテインメント・サービスが行方不明のネガ原盤を発見し権利を取得した。作品は2018年東京国立近代美術館フィルムセンターで上映されたが、未だDVDは未発売だ。ちなみに作品のプロデューサー新倉雅美は、1973年日本テレビ版『ドラえもん』を制作したが、諸事情で現在も封印されたまま。新倉は失踪後、86年に拳銃密輸で逮捕された[29]
  • 新倉雅美 - われわれの製作意図は、既成の歪んだエロティシズム、つまり、支配者が目論んだ性の管理統制だ。(中略)映画配給会社との契約決定もないまま、製作していた。このDo it宣言に最初の共鳴、支持をよせたのが日本ヘラルド映画であった。まず、製作期間はまる六ヶ月を要した。これに投入された延人数は二万一千六百人になる。(中略)東京テレビ動画は、常に未来にむかって前進しています。エロス革命の戦士として活躍するヤングウーマンを控えて、未来にむかってとどまることを知らない会社─は、きっと若者の真の解放を達成することでしょう[5]
  • 安藤健二 - 勇ましい文句が並んでいるが、東京テレビ動画が、未来に向かって前進することはなかった。上映直後に活動を停止してしまったからだ。「製作期間はまる六ヶ月」という言葉から逆算すると、『男どアホウ!甲子園』が放送終了した直後に、「映画配給会社との契約決定もないまま」見切り発車で製作を開始したことになる。しかし、一週間で打ち切りという結果を見るかぎり、新倉の一世一代の賭けは失敗に出たようだ[5]

脚注[編集]

  1. ^ ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2005 アーカイブ
  2. ^ a b 発掘された映画たち2018 東京国立近代美術館フィルムセンター
  3. ^ a b c d e 安藤、2008年、p.72。なおこの内容は山口且訓・渡辺泰『日本アニメーション映画史』有文社、1977年、p.176の引用である。
  4. ^ 安藤、2008年、p.71
  5. ^ a b c d e 安藤、2008年、p.73。新倉がパンフレットに掲載した「声明文」の一部が転記されており、「配給会社が未定」という点がこの中で述べられている。
  6. ^ a b c d e f g 記憶のかさブタ 幻のポルノアニメ特集
  7. ^ a b c d 山口且訓・渡辺泰『日本アニメーション映画史』有文社、1977年、p.317
  8. ^ a b 作り変えた男【訃報 高桑慎一郎】 唐沢俊一ホームページ 2011年4月23日
  9. ^ a b c 谷岡ヤスジ原作の幻の劇場版ポルノアニメ『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』が東京で47年ぶりの再上映‼︎ - Togetter
  10. ^ a b c 安藤、2008年、p.71 - 72
  11. ^ Yasuji no Pornorama - Yacchimae!! ©︎2005 Fantasia Festival
  12. ^ a b ギャグ漫画の鬼才・谷岡ヤスジの“幻の劇場版アニメ”のフィルムが発見される! 日テレ版『ドラえもん』との関係も発覚! - TOCANA
  13. ^ 谷岡ヤスジ氏原作の映画原版フィルムを東京国立近代美術館フィルムセンターに寄贈 ソニー・デジタルエンタテインメント
  14. ^ Atsushi Fukudaのツイート 2015年1月7日
  15. ^ a b 映画「ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!」を市販用DVD(レンタル含)として制作・販売するにあたり、映画の著作者を捜しています。本映画の著作権者(製作会社およびその代表)、もしくは著作権承継者の連絡先に関する情報をお持ちの方は、上記までご連絡ください。 著作権情報センター. 権利者を捜しています
  16. ^ 資料によっては「プス夫」の表記がある(これは本作の伝聞資料が乏しく記述がまちまちなため)。
  17. ^ a b c 安藤、2008年、p.74 - 75
  18. ^ スタジオ自体は東京テレビ動画の新潟スタジオを流用している(安藤、2008年、p.73)
  19. ^ a b [1]
  20. ^ 寺山修司日放映が同時期に製作・放映していたテレビアニメ冒険少年シャダー』の主題歌作詞も手掛けている。
  21. ^ 二階堂卓也『ピンク映画史 欲望のむきだし』彩流社、2014年、p.71
  22. ^ 本作品は虫プロの『アニメラマ』を配給した日本ヘラルド映画が配給しており、当時の新聞広告にも「『千夜一夜物語』で女護ヶ島にもぐり込み『クレオパトラ』では世紀の美女をも脱がせた日本ヘラルド映画がヤスジのポルノ・アニメに強烈アタック」というキャッチコピーがある。
  23. ^ 記憶のかさブタ 旧ドラ特集其の参・日本テレビ動画とは?
  24. ^ a b c 映画評論』1971年11月号
  25. ^ 双葉社週刊大衆』1971年9月23日号
  26. ^ 村上賢司のツイート 2018年3月3日
  27. ^ 小黒祐一郎のツイート 2018年6月25日
  28. ^ 144 アニメ様日記 2018年2月25日(日)~ - WEBアニメスタイル
  29. ^ 取材・文◎ガンジー北京+虚無祖雲「テレビ史の闇に葬られた二度と見られない禁断映像集 放送禁止大ブーイングSPECIAL!!」(ミリオン出版『封印発禁TV DX 2018夏超拡大号 ミリオンムック93』2018年6月発行)

関連項目[編集]

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

画像外部リンク
ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!
1971年9月24日公開
東京テレビ動画日本ヘラルド映画