モーディフォードの竜

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モーディフォード村の教会

モーディフォードの竜(モーディフォードのりゅう、: Dragon of Mordifordモーディフォード・ドラゴン[1]とも)は、英国ヘレフォードシャー[1]モーディフォード村(Mordiford)の伝承である。モーディフォード村は州都ヘレフォードに近い場所にある。なお参考文献を除き「竜」の表記で統一する。

物語の概要[編集]

英国のモーディフォード村に住むモードという少女が、森の中で鮮やかな緑のと膜状のを持つ小さな生き物を見つけた。少女はその生き物を家に持ち帰ったが、その生き物は獰猛なだということがわかり、家で飼うことに両親から猛反対された。しかし、少女は生き物が大好きだったので隠れて竜を育てた。竜は大きくなり、少女が与えるミルクでは空腹が満たせなくなって、ついには村の家畜を襲いだした。農民は反撃したが竜になすすべくなく敗れた。この時、竜はとうとう人間を食い殺し、人間の味を覚えてしまった。自分を襲ってくるため、竜は人間には決してなつかなかったが、育ての親である少女だけは例外であり、また少女も一緒に遊んだり黒い爪をなでたりと、竜と友情を育んでいた。しかし、これ以上人間が殺されるわけにもいかず、モーディフォードの名家ガーストン家の男が竜との戦いに赴き、剣と槍での死闘の末に竜を退治した。ガーストンがたずさえていた剣で首を刺して竜を退治した瞬間、怒りのあまり少女は、ガーストンに向かって石を投げた。そして、退治された竜の元に駆けつけて、自身が血だらけになるのにも構わず、瀕死の竜にすがりついて泣き崩れた。この光景を呆然と見つめていたガーストンは、悄然としたままで、竜退治の喜びに沸く村に戻ったという[2]

また別の伝承では、ガーストンは農民で、竜は「蛇の道」に沿ってラグ川に向かう途中でガーストンに殺された。ガーストンは沢山の釘を突き出させた樽に隠れ、これを襲った竜は体をバラバラに裂かれてしまった[1]

竜の壁画[編集]

モーディフォードの教会には、竜が壁画に描かれていたことが各種文献に報告されている[1][3]。17世紀末には、8枚の翼と8本の足を持つ竜の姿が描かれていたという。18世紀に竜の壁画は2枚の翼と2本の足を持ったワイバーンのような姿で描き直されたと伝えられる[3]。1810年から1812年にかけて教会の改修が行われた際に壁が取り壊されたため、この壁画は失われてしまった[1][3]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e ハーグリーヴス,斎藤訳 (2009), 58頁。
  2. ^ シューカー,別宮訳 (1999)、62-67頁。
  3. ^ a b c Dragons of the Marches”. 2015年1月4日閲覧。

参考文献[編集]

  • シューカー, カール「モードとワイヴァン」『龍のファンタジー』別宮貞徳監訳、東洋書林、1999年10月、62-67頁。ISBN 978-4-88721-378-4 
  • ハーグリーヴス, ジョイス「モーディフォード」『ドラゴン - 神話の森の小さな歴史の物語』斎藤静代訳、創元社〈アルケミスト双書〉、2009年11月、58頁。ISBN 978-4-422-21476-4 

関連項目[編集]