モルモット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
モルモット
Two adult Guinea Pigs (Cavia porcellus).jpg
モルモット
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネズミ目(齧歯目)Rodentia
亜目 : ヤマアラシ亜目 Hystricognathi
上科 : テンジクネズミ上科 Caviomorpha
: テンジクネズミ科 Caviidae
: テンジクネズミ属 Cavia
: モルモット C. porcellus
学名
Cavia porcellus (Erxleben, 1777)
和名
テンジクネズミ
英名
Guinea pig

モルモット(学名:Cavia porcellus英語: guinea pig(ギニー・ピッグ))は、テンジクネズミ属の一種。温和で比較的飼いやすいため、愛玩用実験動物として養殖されている齧歯類

形態[編集]

小型で丸い耳を持ち、尾を持たない。前足4本、後ろ足3本の指を持つ。雌雄とも乳房は1対である。体長は約20-40cm、体重は0.5-1.5kg。染色体数:2n=64本。歯式は切歯2(1/1 0/0 1/1 3/3)の20本、歯根は開放式で一生延びる。換毛は年2回。

盲腸の発達が顕著で、腸の半分近くを占め、繊維質は盲腸内細菌、プロトゾアによって消化を行う。Lグロノラクトンオキシターゼを持っておらず、ビタミンCを外部からの補給に頼っている。

寿命はおよそ5-8年と言われている。

生態[編集]

原産地は南米(ペルー南部、ボリビア南部、アルゼンチン北部、チリ北部)。古代インディオによって野生種を家畜化したものと言われている。基本的に夜行性で、群れを基本とした階級社会的な動物である。元々アンデスのような乾いた高地の穴の中で生息しており、高温多湿に弱い。モルモットが健康を維持できる気温は17℃から24℃とされている。限界温度は10℃から30℃と言われている。 

性格は温和で好奇心も旺盛、ただし用心深く、聞き慣れない物音に敏感で、警戒中はケージの隅に集まり食事を取らなくなる。環境変化を好まず、ストレスによって消化不良を起こしやすい。

跳躍することはほとんどなく、20-30cmの高さしか跳ぶことができない。

食性[編集]

モルモットは草食動物なので、基本的に主食牧草野草である。その他、野菜果物なども食べる。また未消化で腸内細菌が豊富な糞を食糞する習性を持つ。また、体内でビタミンCを合成することができない(後述)ため、飼養する場合にはこの点も考慮し、タンポポ、新鮮な野菜や果物を十分与える必要がある。

飼育する場合は、専用のペレットが販売されているので、牧草、野菜類と併用して利用するのが良い。与えてはいけない物は、ニラやネギ類、ニンニク、タマネギ類。ヒマワリの種、トウモロコシは良く食べるが、たんぱく質や炭水化物、脂肪過多によって消化不良を引き起こす。

絶食には弱く、空腹になると腸内細菌が減少し、体調を崩してしまう。また、体温調節のために多くの水を必要とするので、水は欠かせない(但し、水の多飲は下痢につながるので、高温にならないようにする方がよい)。

生殖[編集]

発情期以外は雄を受け入れず、後肢で蹴り飛ばす光景が見られる。メスの発情は生後30日から120日で始まり、およそ16日周期で1日間ほどの発情を繰り返す。オスの発情の周期は存在しない。着床後60日から72日で一回で数匹の子を産む。授乳期間は、およそ18日から28日。 

飼育[編集]

生後8時間の幼獣

ケージの広さは一頭につき一畳あれば理想的だが、定時的に散歩させればその半分でも飼育は可能。設置場所は静かで直射日光の当たらない明るい日陰が良い。風通しが良く、乾燥した所を選ぶ。体臭は強くないが、ケージの掃除は毎日必要。 

日本であれば夏場の温度管理が重要で、ケージ床面が32℃を超えると生命に危険が及ぶといわれている。そのため空調管理を行うか、ケージごと電気式の冷却板に載せておく必要がある。夏場の体温調節は主に排尿に頼っていることを知っておかないといけない。

人には良く慣れるが、犬や猫のように慣れて躾けられるということではない。生まれつき高いところが苦手で、幼いうちから慣れていないと抱かれるのを怖がる。寂しがりやで、一頭飼いの時には気をつけないといけない。鳴き声を交わす事で不安を軽減し、コミュニケーションを取ろうとする性質があるようである。

とても繁殖率の高い動物であり、つがいにすると持て余すほど増える。繁殖のタイミングはメスの体重が500g程度になった時を目安にすると良い。

人間とのかかわり[編集]

起源[編集]

パンパステンジクネズミアマゾンテンジクネズミペルーテンジクネズミなどと近縁の野生種から紀元前5000年アンデス地方で食肉用に家畜化されたと考えられている。16世紀スペイン人が南米に到達したときには、すでにインカ帝国で『クイ』という名で食肉用として家畜化されていた。現在では愛玩用や実験動物用とされることが多い。

食用として[編集]

伝統的な飼育法、ペルー
モルモットの丸焼き、ペルー

ウシブタに比べて場所をとらず、都会の住宅でも飼育が容易で、繁殖力が強く成長が速いモルモットは、南アメリカのアンデス地方ではクイ(cuy)、クイェ(cuye)またはクリ(curí)と呼ばれ、現在でも食肉用として、野菜くずなどを与えて台所の周りなどで飼育されている。味はウサギ鶏のもも肉に似ているといわれる。かつてはアンデス高地の先住民によって祝い事の際のみに供されるご馳走だったが、1960年代から日常的にも食べられるようになった。ペルーでは、年間6500万匹のモルモットが消費される。

調理法は主に揚げ物焼き物ローストなどで、都会のレストランではキャセロールフリカセにもする。エクアドルではロクロ・デ・クイ(locro de cuy)というスープにする。野菜と一緒に地中に埋めて焼き石を使って蒸し焼きにする(パチャマンカ)こともある。

実験動物として[編集]

モルモットの接種

かつてモルモットは病理学の実験動物としてよく用いられており、ジフテリアの病原体はモルモットを用いた研究によって解明された。また病理学以外の分野でも使われる事があり、例えば日本海軍の戦艦・武蔵が、爆風の影響を調べるために、モルモットの入った篭を甲板上に置いて主砲射撃実験を行ったという逸話もある。

その後、実験動物の主役はマウスラットなど、より小型の齧歯類に取って代わられたものの、その生理学的な特性によってアレルギーに関する実験などには欠くことのできない動物種として存在している。モルモットが特に実験動物として優れている点として、ヒトと同様にL-グロノラクトンオキシダーゼと呼ばれるブドウ糖ビタミンCに変換する酵素を持っていないため、ビタミンCを体内で生成できないこと、薬物に対する感度が高いことが挙げられる。

以上の理由から、肉体的・心理的に試される(実験される)人間を表す比喩として、「モルモット(にする/される)」という表現が使われる。

名称の由来[編集]

頭が大きくずんぐりとした、ブタのような体つきをしているため、英語では西アフリカの国ギニアのブタという意味で「ギニーピッグ」(Guinea pig)と呼ばれている。学名の種小名porcellusも「小さなブタ」を意味する。この名前の由来については、テンジクネズミの肉の味が豚肉に似ているためという説、鳴き声がブタに似ているという説、ブタのように長い時間を摂食に費やし、ブタのように狭い小屋で飼えるからという説もある。ドイツ語の名称「メールシュヴァインヒェン」(Meerschweinchen)は「海の小さなブタ」を意味し、新大陸を経由する航海中に新鮮な肉を食べられるように、モルモットが船に積み込まれていたことに由来する。テンジクネズミ属の動物はギニアには分布しない。ギニアという言葉の由来として、イギリスに初めてこの動物が持ち込まれたとき、持ち込んだ船がアフリカ経由の船であり、当時のヨーロッパ人にとってギニアとは漠然とアフリカ、転じて遠方の地を表す言葉であったためにこの名が付けられた、とする説がある。別の説では、テンジクネズミの原産地である南米のギアナ(“Guyana”)の転訛として、この語の由来を説明する。フランス語の名称「コション・ダンド」(cochon d'Inde)やポルトガル語の名称「ポルキーニョ・ダ・インディア」(porquinho da Índia)は共に「インドの小さなブタ」を意味し、日本語の「天竺」の用法と同じである。日本では戦前まで医学関係者の一部によってドイツ語の名称の直訳である海猽(かいめい、かいべい、猽は子豚の意)と呼ばれていたこともあるが、戦後はわずかな論文の中に見られる程度となり、現在は死語となっている。日本でのモルモットという言葉の由来は、1843年にオランダ人が長崎にモルモットを伝えたとき、この動物を(誤って)「マルモット」 (Marmot) と呼んでおり、これを音写したモルモットという呼び方が定着したようである。[1]

英語圏では属名から「ケィビィ」 (Cavy) とも呼ばれている。

品種一覧[編集]

野生の他種のテンジクネズミの体色は褐色または灰色だが、モルモットには白、黒、黄褐色、縞や斑点など、様々な体色のものがいる。1200年頃からインカ帝国の征服までに様々な系統が作り出され、今日の品種群の元となった。

  • イングリッシュ(直毛短毛種・最も一般的な品種)
  • アビシニアン(中毛種・全身にロゼットと呼ばれるつむじを持つ)
  • シェルティ(直毛長毛種・頭部と脇が長くなる)
  • ペルビアン(直毛長毛種・頭部と背の毛が長くなる)
  • テディ(ティディとも。縮れ毛の短毛種)
  • レックス(縮れ毛の短毛種だが、テディとは違う遺伝子で生じる)
  • テッセル(縮れ毛長毛種)
  • クレステッド(クレスト、梵天とも。頭部につむじを持つ短毛種)
  • スキニーギニアピッグ(スキニーとも。無毛か、頭部や手足に少量の縮れ毛を持つ)

なお、日本に流通しているモルモットの多くはミックス(俗に言う「雑種」)で、ペットショップ等でも単にその個体にもっとも形質の近い品種名が割り当てられる場合が多い。

脚注 [編集]

  1. ^ 早稲田大学Web展覧会 描かれた生き物たち 前編。マルモットは本来オランダ語においてもまったく別種の動物であるマーモットを指す言葉であり、商人たちが誤用していたものと思われる。

関連項目[編集]