モモタマナ

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シクンシ科
クロンキスト体系
Starr 080608-7528 Terminalia catappa.jpg
モモタマナ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: フトモモ目 Myrtales
: シクンシ科 Combretaceae
: モモタマナ属 Terminalia
: モモタマナ T. catappa
学名
Terminalia catappa L.
図版
Terminalia catappa

モモタマナ Terminalia catappa L. は、シクンシ科に属する樹木。太平洋諸島などに広く分布する。葉が大きく、枝振りが美しいので植栽されることが多い。

概説[編集]

シクンシ科に所属する植物は熱帯を中心に種数が多いが、日本に産するものは3種ほどしかない。本種はそのうちの1つである。太平洋諸島からインドにわたる熱帯域を中心に分布し、日本では琉球列島小笠原に分布する。葉が大きくて倒卵形をしている。果実が水に浮いて分散する。

大きな木になるが、枝が水平に伸び、また大きな葉をまとめて広げるので、木陰を作る。その為もあり、古くから村落の集会所や墓地などに植栽されてきた。現在でも街路樹公園樹としてよく利用される。また果実は食用にもなる。

特徴[編集]

半落葉性の高木[1]。大きいものでは高さ25m、幹の径は1mにも達し、樹冠は平らに広がる。小枝は輪生するように出て、無毛、またはほぼ無毛。葉はその先端に束生する。葉は革質で、長さ20-25cm、全体にほぼ無毛ながら葉柄と中脈に多少の毛がある。葉柄は短くて太く、溝があり、先端には蜜線がある場合がある。葉身は倒卵形で、縁は滑らかで先端は丸く、基部は耳状、つまり葉柄に着くところはくぼんで両側が丸く突き出す。落葉する前には、往々にして紅葉する。

花期は5-7月。穂状花序を葉腋に生じる。花序は長さ6-8cmで、先端の方には雄性花を、基部の方には雌性花、あるいは両性花をつける。花は白くて径5mm、学は鐘型で内側に星状毛が密生し、裂片5個は早くに脱落する。花弁はない。果実は熟すると長さ3-6cmになり、楕円形で多少とも扁平、両側に竜骨状の突起があって、緑色か、その上に赤みを帯びる。果皮は繊維質で、内側の内果皮は硬く、海水に浮くことが出来る。

樹形について[編集]

この木は枝が横に広がり、上が平らな樹形になりやすい。これは上向きの枝があまり伸長せず、その前にその下から側方に伸びる枝がより発達するためである。その側枝が横に伸びてゆくために、平らに広がった枝振りが作られる。この様な茎の伸び方を添伸型(てんしんけい)と言うが、本種はこの型の成長をするものの代表的なものである[2]

和名[編集]

モモタマナが標準和名であるが、別名はコバテイシである。ただし初島(1975)はコバテイシの方を標準名に採用している[3]。この名は沖縄における方言名に由来するようで、沖縄県各地でコバテイシ、あるいはクファディーサ、あるいはそれらに類する方言名が伝えられる[4]

分布と生育環境[編集]

日本では沖縄島以南の琉球列島、及び小笠原諸島に分布し、国外では台湾中国南部から旧世界の熱帯域に広く分布する[5]

下述のようによく栽培されるが、自生のものは海岸にある。果実が水に浮くため、海水に浮かんで漂流し[6]潮流によって分散するものと考えられる。

分類[編集]

モモタマナ属には世界に250種ほどが知られる。日本には本種ともう1種、以下の種が知られる。

  • Terminalia nitens Presl テリハモモタマナ
葉は本種よりやや小さくて長さ10-15cm、葉の基部はくさび形であること、全株無毛である点などで区別出来る。日本では琉球列島の西表島にのみ産し、国外ではフィリピンから知られる。

利用[編集]

水平に広がって出る枝先に束生する大きな葉が広がり、その下は気持ちの良い木陰となる。そのため日陰を作る街路樹として広く植栽される[7]。沖縄では古来より村落の集会所や墓地によく栽培された[8]

材質として、辺材は淡黄色で、中心はより色濃くて暗褐色になる。材質は緻密で、工作は比較的容易である。建材や家具材、造船材に使われる[9]。南洋ではカヌーを作るのに用いる[10]

果実からはが取れる。を炒って食べるとラッカセイに似て美味である[11]。これを Country almond と呼ぶ[12]。ただし、日本ではこの形での利用はない模様。

他に、葉が染料に使われる[13]

琉歌に以下のような本種を詠んだものがある[14]

こはでさの御月(おつき)まどまどど照ゆる よそめまどはかて忍いでいまうれ
(こはでさ(本種)の木に照る月影は、枝葉の隙間から漏れてくる位で薄暗く、恋を語るに絶好の場所だから、よそ目にかからぬようこっそり忍んでおいで)

出典[編集]

  1. ^ 以下、記載は主として佐竹他(1989),p.106
  2. ^ 甲山(1997),p.126-127
  3. ^ ただし、彼も属名はモモタマナ属を採用している。
  4. ^ 天野(1982),p.106
  5. ^ 佐竹他(1989),p.106
  6. ^ 佐竹他(1989),p.106
  7. ^ 戸部(1997),p.189
  8. ^ 城間(1977)p.41
  9. ^ 天野(1982),p.106
  10. ^ 佐竹他(1989),p.106
  11. ^ 天野(1982),p.106
  12. ^ 佐竹他(1989),p.106
  13. ^ 天野(1982),p.106
  14. ^ 城間(1977)p.41

参考文献[編集]

  • 佐竹義輔他編著、『日本の野生植物 木本 II』、(1989)、平凡社
  • 戸部博、「モモタマナ」:『朝日百科 植物の世界 4』、(1997)、:p.188-189
  • 天野鉄夫、『琉球列島有用樹木誌』、(1982)、琉球列島有湯樹木誌刊行会
  • 城間朝教、『カラー百科シリーズ⑦ 沖縄の自然 植物誌』、(1977)、新星図書
  • 甲山隆司、「樹形はどのようにしてできあがるか」:『朝日百科 植物の世界 7』、(1997)、:p.126-128