メルセデス・ベンツ・W140

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メルセデス・ベンツ・Sクラス
W140/V140
300SE 前期型 (1991-1993)
Mercedes W140 front 20071109.jpg
販売期間 1991 - 1998 年
乗車定員 4 - 5 人
ボディタイプ 4ドアセダン
エンジン 直6 DOHC 2.799 L
直6 DOHC 3.199 L
V8 DOHC 4.196 L
V8 DOHC 4.973 L
V12 DOHC 5.987 L
直6 OHC ターボディーゼル 2.996 L / 3.449 L
駆動方式 FR
変速機 4速AT / 5速AT
サスペンション 前:ダブルウイッシュボーン / 後:マルチリンク
全長 標準:5,120 mm / ロング:5,220 mm
全幅 1,885 mm
全高 1,490 mm
ホイールベース 標準:3,040 mm / ロング:3,140 mm
車両重量 2,040 - 2,240 kg
トランク容量 525 L
最高速度 215 -250 km/h (リミッター付)
先代 メルセデス・ベンツ・W126
後継 メルセデス・ベンツ・W220
-自動車のスペック表-

メルセデス・ベンツ・W140Mercedes-Benz W140 )は、ドイツ自動車メーカーであるダイムラーメルセデス・ベンツブランドで展開しているSクラスの、3代目モデルである。W140はそのコードネーム。1991年から1998年まで製造・販売された。なお、そのモデル名称は販売期間中に大きく変更されており、注意が必要である(後述)。

派生モデルとしてクーペタイプ(C140)が登場している。なおロングボディ仕様には別途「V140」というコードネームがあるが、通常はそれも含め「W140」と呼ばれる。

概要[編集]

W140(以下、V140も含む)は、メルセデス・ベンツが有名な「最善か無か」(Das Beste oder nichts. )というスローガンに象徴される、妥協無き車造りの理念(およびその結果としての高コスト体質・製品の高価格化)のもと車造りをしていた最後の車であるとも評されている。以降のW220からは、品質とコストの狭間での苦悩が見られる。

W140には通例通りセダンに標準ボディ仕様とロングボディ仕様が設定された。そのボディサイズは先代W126から大幅に拡大され(全長で100mm、全幅で65mm、全高で50-60mm)、なおかつデザイン自体にも強い威圧感が与えられている。その巨大さとデザインゆえ、ドイツ本国をはじめとするヨーロッパでは「環境破壊車」などと批判を浴び、販売台数は低迷した。しかし逆に日本では、その押し出しの強さから販売好調であり、次期型(W220)登場後もしばらくは人気が高かった。しかしW140の販売低迷はアメリカでも同様であり、そのことがW140の世界的不人気ぶりを端的に表している。なおメルセデス・ベンツ自身はW140のボディ拡大の理由を「人間の平均身長が伸び続けているから」と述べていた。

39年間メルセデス・ベンツに在籍し、デザイン部門のチーフを務めていたブルーノ・サッコは、『Automobile』誌とのインタビューのなかで、自身の手によるW140のデザインが、結果として彼の理想より4in(約10cm)全高が高かったとし、痛恨の作だったことを明かしている[1]

グレード名称は、前期モデルはエンジンのおおよその排気量の数字上3桁+モデル名称を示すアルファベットの列(Sクラスの"S"+インジェクション仕様の"E"またはディーゼルエンジンの"D"+ロングボディの"L"またはクーペボディの"C")を付加する、当時のメルセデスの流儀に則ったもの(300SD、500SEL、600SECなど)であった。

中期モデルからは名称が変更され、当時の他のメルセデス同様、モデル名称"S"+排気量を示す数字3桁(S320、S500L、S600クーペなど)に改められた。ただし、クーペおよびロングモデルには、前期のようなそれらを示す符号は後部エンブレムに付加されない(S500もS500LもS500クーペも、エンブレムは全て同じS500)。

日本での販売モデル(正規輸入車)[編集]

300SE 前期型(1991–1993)
300SE 前期型(1991–1993)
S500L 中期型(1994-1996)
S320 中期型(1994–1996)
S320 後期型(1996–1998)
S320 後期型(1996–1998)

1991年8月、MBJにより販売を開始。初期のラインナップは300SE/500SE/500SEL/600SEL(いずれも左ハンドル仕様のみ)であった。導入間もなくして後席を2人掛けのセパレートタイプにした「600SEL・4シーターリミテッド」を限定販売。

1992年の小変更で300SE/500SE/500SELに右ハンドル仕様が加わり、右ハンドルのみの400SELも追加された。同時にアルミホイールが新造形の8穴タイプに変更されている。

1993年5月にはクーペモデルである600SECの販売を開始する。しかし、後述する1994年モデルから呼称をS600クーペへと変更しているので、正規輸入車のSECは極めて少ない。

1993年8月より導入された1994年モデルでは名称を変更し、300SE→S320、400SEL→S400L、500SE/SEL→S500/S500L、600SEL→S600Lとなり、エントリーモデルのS280(右ハンドルのみ)とノーマルホイールベースのS600(左ハンドルのみ)、S600Lに右ハンドルも追加され、クーペには新たにS500クーペ(右ハンドルのみの設定)が追加された。このときがW140において正規輸入の車種が一番多くなり、ドイツさながらのバリエーションが揃うことになる。装備面ではS600/S600L/S600クーペにしか設定のなかったガラススライディングルーフが標準装備され、S320のウッドパネルがゼブラからウォールナットになり、質感のアップがはかられた(S280はゼブラ)。

1994年8月にマイナーチェンジモデル(1995年モデル)の販売を開始、前後バンパーおよびサイドプロテクトパネル(サッコプレート)が量感あるデザインに変更され、フロントウインカーのレンズがアンバーからホワイトに変わり、アルミホイールも半光沢タイプの物に変更された。またラインナップも、セダン系はS320/S500/S500L/S600Lと4グレードに削減。同時にS600Lは専用の目の細かいフロントグリル(通称「S600グリル」)が与えられ、シートもクーペ系の本革製スポーツタイプが標準装備となりベロアの設定が落とされた。このときから正規輸入車ではスライディングルーフがガラス製のみの設定となる(S320のみオプション、その他は標準装備)。

1996年8月に1997年モデルが発表され、クーペが新たにCL500/CL600と名称を変え、新たに設定されたCLクラスに移行。C140については、同一モデルであっても、販売時期により名称が2度変更される結果となっている。

同時に、ディスチャージヘッドランプを採用。リアウインカーの色がホワイトになり、ボディ上下でトーニングとなっていたボディカラーが他のメルセデス・レンジに併せてモノトーンとなった。アルミホイールもセダンが新造形の6穴タイプ、クーペが18インチの5穴タイプに変更されている。機能面ではナビゲーションシステム対応のモニターが採用された他、サイドエアバッグが追加装備されている。そのため、フタの付いたアームレスト兼用のドアポケットがなくなり、小型のドアポケットが下部につけられた。またW140の特徴的な装備のひとつだったリアガイドロッド(リアフェンダーの左右後端に格納された細いポール。ATをRレンジに入れることで伸び、車両後端の目安になる)が廃止され、600系ではパークトロニックが標準装備された。機関系における最大の変更点は、熱を起因とする故障の多かった600用M120の点火方式にダイレクトイグニッション式を採用、あわせてガスケットの素材をベークライトからポリアセタールにアルミ板の芯材を入れたものに変更するなど、主に熱対策を中心に大幅な改良を施し信頼性を向上させた。駆動系ではそれまでの機械式4速ATから電子制御5速ATに変更、最終減速比を引き上げることによって燃費を約15%改善させ、燃料タンク容量を100リットルから90リットルに減らした。

1998年にはモデル末期のてこ入れとしてS320/S500/S500Lに本革シートなどを標準装備としたリミテッドモデルを投入し、600系ではセダンにブラックバーズアイ、クーペにチェストナットのウッドパネルをオプションに追加した。同年秋W220系の販売を開始。約7年という当時のメルセデス・ベンツとしては異例の短いスパンで販売を終えた(クーペのみ1999年5月まで受注販売)。

特徴[編集]

  • 複層ドアガラス(二重構造)、オートドアクロージャー、OBDCAN プロトコル)が装備されている。
  • ワイパーは、当時のメルセデス・ベンツ各車が採用していたパノラマワイパー(伸縮する1本のワイパー。伸び縮みすることで、左右上端の拭き残しを減らす)に加え、助手席側にもう1本の補助ワイパーを追加している。これは、通常の1本ワイパーだとワイパーブレードが長くなりすぎ、ワイパー作動時の周囲への飛沫が問題となるから、というのが主な理由とされた。
  • 質実剛健だった先代W126と比べ、過剰装備を指向していた。一例として、ルームミラーの調節すら電動化されていた。

車種・シャシ・エンジンコード[編集]

S600クーペ V12エンジン
  • S280(直列6気筒 DOHC 2,799cc)
  • 300SE/300SEL/S320/S320L(直列6気筒 DOHC 3,199cc)
  • 400SE/400SEL/S420/S420L/S420クーペ/CL420(V型8気筒 DOHC 4,196cc)
  • 500SE/500SEL/500SEC/S500/S500L/S500クーペ/CL500(V型8気筒 DOHC 4,973cc)
  • 600SE/600SEL/600SEC/S600/S600L/S600クーペ/CL600(V型12気筒 DOHC 5,987cc)
  • 350SD/350SDL (直列6気筒 OHC ターボディーゼル 3,449cc)
ボディ シャシ・コード 生産時期 モデル エンジン エンジン・タイプ 生産台数
セダン W140.135/W140.134 1996-1998年 S300 2,996ccOM606型直6 ターボディーゼル 7,583台
1991-1996年 300 SD / S 350 3,449ccOM603型直6 2万,518台
W140.028 1993-1998年 300 SE 2.8 / S 280 2,799ccM104型直6 ガソリン 2万2,784台
W140.032 1991-1993年 300 SE 3,199ccM104型直6 18万3,441台
1991-1993年
1993-1999年
W140.042 1991-1993年 400 SE 4,196ccM119型V8 4万9,468台
W140.043 1991-1993年 400 SEL 4,196ccM119型V8|
1993-1998年
W140.051 1991-1993年 500 SEL 4,973ccM119型V8 8万7,006台
1993-1999年
W140.057 1992-1993年 600 SEL 5,987ccM120型V12 3万5,910台
1993-1999年
クーペ W140.063 1994-1998年 S 420 / CL 420 4,196ccM119型V8 2,496台
W140.070 1992-1993年 500 SEC 4,973ccM119型V8 1万4,953台
1993-1999年
W140.076 1992-1993年 600 SEC 5,987ccM120型V12 8,573台
1993-1999年

その他に下記のシャシコードも存在していた。

ボディ シャシ・コード 生産時期 モデル エンジン エンジン・タイプ 生産台数
セダン W140.033 1991-1998年 300 SEL / S 320 L 3,199ccM104型直6 ガソリン
W140.050 1991-1993年 500 SE 4,973ccM119型V8
1993-1998年
W140.056 1992-1993年 600 SE 5,987ccM120型V12
1993-1999年

日本における価格設定の変遷[編集]

発売当初(1991年)と、呼称変更を含めた小変更後(1994年)における主なモデルの正規販売価格は次の通り。

(1991年)

  • 600SEL; 2,100万円 →
  • 500SE: 1,400万円 →
  • 300SE: 1,000万円 →

(1994年)

  • S600L; 1,620万円
  • S500: 1,180万円
  • S320: 820万円


1991年に発表された600SELの値札は2100万円であった。これは前モデル(W126)のフラグシップ560SELの最終価格1355万円の1.5倍弱であり世間を驚かせたが、実際は値引きされ1800万円ほどで販売されていた[注釈 1]

1994年の価格改定は、実質的におよそ180-500万円もの値下げであった。いずれもバブル景気終末期までに策定された強引な価格政策の失敗によるものと同時に、バブル崩壊後の急激な円高進行の差益還元とも言えるだろう。この時期の大幅値下げの類例には、1994年のレンジローバーにおける価格改定(1000万→700万円と約300万円の値下げ)があり、クライスラー・ネオンサターンなど低価格な輸入車が相次いで発売された。

各モデルの画像[編集]

注釈[編集]

  1. ^ なお直後に発表されたベントレー・ブルックランズのコーンズ正規輸入車が1950万円だった。

出典[編集]

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参考文献[編集]

関連項目[編集]