ムーンサルトプレス

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コーナーからムーンサルト・プレスを放つクリストファー・ダニエルズ
コーナーからムーンサルト・アタックを放つショーン・マイケルズ
コーナーから場外へのムーンサルト・アタック。

ムーンサルト・プレスMoonsault Press)は、プロレス技の一種でトップロープから後方270度回転して放つプレスである。考案者は初代タイガーマスクと言われているが初めて披露したのはジョージ高野であり(DVD『最強マスクマン烈伝』で流智美清水勉が証言している)、ムーンサルト・プレスという名称で最初に呼ばれたのは武藤敬司である[1]

概要[編集]

リング四方に存在するコーナーポストによじ登り、リングのマットに対して背中を向けた状態からジャンプしてバック転をしながらリング上に横たわっている対戦相手めがけてボディ・プレスを仕掛ける。技を仕掛ける側の円弧を描くような動きが技の名称の由来となっている。

この技の問題点は技を仕掛ける側が着地をする際に最初に両膝がマットに叩きつけられることや不安定であるロープを踏み台にしてバック宙を決める運動が人間の膝関節が本来持っている動きと逆の動きになってしまうことから結果膝の半月板を損傷しやすいことである。

武藤敬司はフロリダ武者修行時代「この技だけで食っていた」と述懐しているが[2]グレート・ムタギミックで参戦していたWCW時代にこの技を多用したために結果、武藤の膝は変形して満足に歩けないまでに傷んでしまった[3]

空中技の中では比較的容易で見栄えもよいことから、この技を使用するレスラーは多いが使うレスラーによって技の見た目には個人差がある。小橋建太など多くのレスラーは大きな弧を描くように跳躍して体全体で上から叩きつける形であるが、武藤のムーンサルト・プレスは上に跳ぶというより、斜め後方に勢いをつけて跳ぶという形になっている。

また、体格が大きい選手でも使用することが多く、バンバン・ビガロビッグバン・ベイダーヘッドハンターAなどがビッグマッチで使用。

名称の変遷[編集]

初代タイガーマスクが斜め回転式のものを使用していた時期にはラウンディング・ボディ・プレス[4]と呼ばれていた。その後、初代タイガーが縦回転式のものを使用した際には実況アナウンサーの古舘伊知郎がムーンライト・コースターと呼んだ[5]武藤敬司が縦回転式のものを使い始めた後にムーンサルト・プレスの名称が登場して、こちらがより一般的になった。月面水爆(げつめんすいばく)という漢字名もある。

アメリカでは、この技を広めたのは武藤(グレート・ムタ)であるため、和製英語であるムーンサルトという技名が、そのまま使われている。

派生技[編集]

すべて相手に背を向けた状態から仕掛ける。

アラビアン・プレス
サブゥーのオリジナル技。リング内からリング外に向かって高くジャンプしてトップロープに尻餅をつき、両腿をトップロープにバウンドさせて後方へバック転ムーンサルト・プレスを放つ。サブゥーはパイプ椅子や机をリング内に持ち込み、それを踏み台にして敢行するなど多彩なバリエーションを持つ。技のプロセスに類似点が多い、ロブ・ヴァン・ダムハリウッドスター・プレスとは元来区別されていたが(アラビアン・プレスが直接トップロープに飛び座り込むのに対してハリウッドスター・プレスはコーナー上へ立ってから座り込む)最近は両者が仕掛けるバリエーションの増加などの事情から異名同技として扱われている。
ハリウッドスター・プレス
ロブ・ヴァン・ダムのオリジナル技。コーナー前でリング内に背を向けて立ち、コーナーを登ってコーナー最上段に尻餅をつき、同時にトップロープに両腿をバウンドさせるようにして後方へバック転しながら放つムーンサルト・プレス。ジョン・モリソンは横360度回転のアラビアン・プレスをスターシップ・ペインの名称で使用。ドラゴン・キッドジーザスの名称で使用。本来はサブゥーアラビアン・プレスとは似ているが違う技(アラビアン・プレスが直接トップロープに飛び座り込むのに対してハリウッドスター・プレスはコーナー上へ立ってから座り込む)であった。最近は両方とも同じ技として扱われる場合が多い。
ライオンサルト
クリス・ジェリコのオリジナル技。リングの中央に仰向けに寝かせた相手を走って飛び越えて、そのままセカンドロープに足をかけて素早くを放つムーンサルト・プレス。リングロープの中央はコーナーに比べ安定感に欠ける上に相手の回避や膝での剣山を察知して体勢を変え着地することもあるためジェリコの高い技術が垣間見える技である。
スカイツイスター・プレス
チャパリータASARIのオリジナル技。トップロープから後方に270度、横に540度から720度回転して放つムーンサルト・プレス。主な使用者は赤城赤城プレス初代えべっさん開運トルネードくいしんぼう仮面関空トルネードKUSHIDAミッドナイト・エキスプレスの名称で使用。なお、前向きから飛ぶ1回半捻りプレスもスカイツイスター・プレスと呼称していた(当時、ASARIからTAKAみちのくが直接指導を受けて使用していた)。KAMIKAZEレッスル夢ファクトリー時代にカミカゼ・トルネードの名称で完成させている(KAMIKAZEの場合はヘビー級の体格で飛ぶために見ごたえがある)。
フェニックス・スプラッシュ
ハヤブサのオリジナル技。トップロープから縦450度、横180度回転して放つムーンサルト・プレス。初代タイガーが'タイガー・トルネード・プレスの名称で考案したが試合で使用したことはない。こちらを正調のムーンライト・コースターであるとする説もある。獣神サンダー・ライガースターダスト・プレスの名称で試合で初めて試みたが失敗に終わった(後述)。離陸後すぐに180度ひねり、体を前に向けてからの450スプラッシュとするのが難易度的に低く、基本である(見た目的には振り返ってからの450スプラッシュ)。DDT飯伏幸太が、この形のフェニックス・スプラッシュを得意技としている。その後、ハヤブサが、ひねりを加えずに離陸して90度後方回転してから180度ひねりと360度前方回転を同時に行う(途中からひねりが入るため、体の向きを基準とする前後の回転方向が入れ替わる)という難易度の高いフェニックス・スプラッシュを完成させている。このタイプの場合観客に「何がどうなっているのか分からない」といわれるほどの不思議な回転を見せる。その後、このタイプのフェニックス・スプラッシュをB×Bハルクがハヤブサから直接指導を受けて使用。ハヤブサのフェニックス・スプラッシュと類似技にファイヤーバード・スプラッシュがある。
カンクーン・トルネード
トップロープから後方1回宙返り2回捻りの要領で放つムーンサルト・プレス。技の手順はムーンサルトと同じだが伸身で1回宙返りを行いながら2回捻ることから脚力と腕力に勢いが必要であり、難易度が高い技である。主な使用者は空中殺法が得意な選手が使用することが多い。テレビゲーム『闘魂炎導2』ではある方法で、この技を習得してゲーム中で使用することができる。
スターダスト・プレス
獣神サンダー・ライガーのオリジナル技。1996年1月4日に新日本プロレス東京ドーム大会の対金本浩二戦で一度だけ披露。当初は名称だけが先に伝わり、技の全貌が明らかでない時期があったため、「幻の必殺技」とも呼ばれた。リング外を向いたまま後ろ向きにジャンプして体を左方向180度捻った後、270度前方回転して更に180度左方向に錐揉み回転させてプレスする。元々、ライガーが獣神ライガーを名乗る前にすでにスターダスト・プレスを完成させていたがプロレス誌の記者一人に新日本の道場内でしか見せた事が無かった。しかし、ライガーが披露するより前にハヤブサが同形の技を披露してしまったため、また、違った形のスターダスト・プレスを編み出したという経緯がある。金本との試合後にライガーは「僕の(スターダスト・プレス)は、これでいいです」と語り、ハヤブサのフェニックス・スプラッシュと区別を付けた。ライガーが使用して以来、長らく使い手が現れなかったが同じ新日本所属で後輩にあたる内藤哲也が会得して、ここ一番の大技として使用。
ヴァルキリー・スプラッシュ
KAORUのオリジナル技。180度ひねりを加えてセントーンの形で相手の上に背中から放つムーンサルト・プレス。KAORUが1996年2月16日のGAEA JAPAN後楽園ホール大会で初披露。ミラノコレクションA.T.が使用するアルマニッシュ・エクスチェンジはライオンサルトの形から同様にひねりを加えて相手の上に背中から落ちる技である。なお、金本浩二が「ライガーのスターダスト・プレスは不細工だ。俺の方が技にキレがある」と発言してヴァルキリー・スプラッシュと同型の技を一度だけ披露している。
ラ・ケブラーダ
エプロンサイドから場外にいる相手に放つムーンサルト・プレス。エプロンから仕掛けるのでコーナーからではなくロープの反動で回転する。技名はメキシコアカプルコにある飛び込みのパフォーマンスが行われることでも知られる断崖の名前が由来。また、英語圏では開発者であるウルティモ・ドラゴンの本名である「浅井」を冠してアサイ・ムーンサルトの名称で呼ばれてWWEを、はじめとするプロレス団体でもアサイ・ムーンサルトの呼称が多用されている。ルチャリブレではペチョ・コン・ペチョ(胸と胸)とも呼ばれる。この技に、さらに後方1回転加えて630度回転するものをジャック・エバンススタンティン101の名称で使用。ウルティモが初披露した際のインパクトは大きく、彼やザ・グレート・サスケが自身の代名詞的な技として使用した他に2人が当初、所属していたユニバーサル・プロレスリングのロゴマークとしても採用されている。
ラ・ブファドーラ
ラ・ブファドゥーラとも呼ばれる。ラ・ケブラーダとは逆にリング内にいる選手にセカンドロープを使いムーンサルト・アタックを行う技である。クリス・ジェリコライオンサルトミラノコレクションA.T.エンポリオ・アルマニッシュは同じ要領で寝ている相手にプレスする技を使用。丸藤正道はコーナー付近のトップロープで反動をつけて、さらに直角方向にあるロープで2段階式で反動するブファドーラ(ゲームでは名称はトライアングル・ブファドーラとされている)を一時期使用。ハヤブサは試合中に、この技を失敗して頚椎を損傷して一時は全身不随になる重傷を負った。なお、技名はメキシコのバハカリフォルニア州の都市のエンセナーダにあるラ・ブファドーラ岬が由来。
ムーンサルト・フット・スタンプ
福岡晶のオリジナル技。ムーンサルト・プレスにもう90度余計に回転を加えてフット・スタンプで相手の腹部に放つムーンサルト・プレス。主な使用者はスコーピオ宮崎有妃紫雷イオ
ムーンサルト・ムーンサルト
飯伏幸太のオリジナル技。1回目のムーンサルト・プレスはトップロープからのムーンサルト・プレスで、この技を相手がよけた時に、その場飛びのムーンサルト・プレスを出してフォールするという形をとる。1回目で着地した時には武藤敬司ラウンディング・ボディ・プレスと同型だが、さらに、その場で次を出すと言うところにポイントがある。見せ技としても完成度が高いが、かなりの膝へのダメージが心配されるためか追随するレスラーがいなかったが2011年8月1日に新日本プロレス福岡国際センター大会で開催された「G1 CLIMAX」開幕戦でラ・ソンブラが一回目のムーンサルト・プレスをセカンドロープからにした物を対戦相手の井上亘に繰り出した事がある[1]。その時、中継の解説者から「飯伏みたいだ」と言われていた。
ダブル・ローテーション・ムーンサルト・プレス
リコシェのオリジナル技。通常のムーンサルト・プレスより、1回転多く、トップロープから630度後方に回転して放つムーンサルト・プレス(フォームなどは通常のムーンサルト・プレスと同一)。ラ・ケブラーダの形やケージ上からの630度回転であれば前述の通り、ジャック・エバンスが使っていたコーナートップからリング内に向けて成功させたのはリコシェが初である。リコシェの極めて高い身体能力だから、こそなせる技という事もあり、他の使用者はチバ・キッドやアンドリュー・エヴァレットぐらいしか居ない。
ちなみにテレビゲーム『オールスタープロレスリングII』ではゲームオリジナルキャラクターの有里優作が使用するレボリューション・サルトという名で、また、『ファイプロ外伝ブレイジングトルネード』ではオリジナルキャラのハヤテが使用する、この技と同型の技が存在する。

脚注[編集]

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  1. ^ 実録!!プロレス必殺技大図鑑”. 双葉社. 2012年12月27日閲覧。
  2. ^ 武藤敬司25周年記念 特別インタビュー第1弾
  3. ^ 同じく若手時代に、この技をフィニッシング・ホールドとしていた小橋建太も同様に膝を痛めて5度の手術を繰り返すこととなる
  4. ^ 本来これはトップロープにのぼり、マットに背を向けた状態から1/4から半回転のひねりを加えた宙返りで相手にボディを浴びせて、そのままフォールに入る技である。しかし、武藤敬司が縦回転式を出したときに実況アナウンサーの古舘伊知郎が、これもラウンディング・ボディ・プレスと呼んでしまった。よって、武藤が始めた頃はラウンディング・ボディ・プレスもムーンサルト・プレスも同じ技の別名になってしまっていた。
  5. ^ これが現在一般的に使われている縦回転式での最初の呼び名である。しかし、初代タイガーマスクが使用したのは新日本プロレス時代の最後の試合になった対寺西勇戦等数回のみで対寺西勇戦では、かわされ失敗に終わっている。その際に実況アナウンサーの古館伊知郎が「ムーンライト・コースター自爆」と叫んでいる。

関連項目[編集]