ミラージュF1 (戦闘機)

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ミラージュF1

フランス空軍のミラージュF1C(1979年)

フランス空軍のミラージュF1C(1979年)

ミラージュF1(Mirage F1)はフランスダッソー社製の戦闘機である。"Mirage"はフランス語で“幻影”や“蜃気楼”を意味する。

1970年代を代表する戦闘機の一つであり、多くの国で使用されている。ダッソー社が世に送り出した戦闘機ミラージュ・シリーズにおいて唯一、通常の水平尾翼を備えている。

概要[編集]

1963年フランス空軍は次期主力戦闘機について「全天候で高高度超音速飛行と低高度低速飛行が安定して可能で、これら両方の飛行性能が要求される作戦がどちらも充分に可能な機体」「時速140ノット(260 km/時)未満の着陸速度で、短距離滑走路または完全に整地・舗装されていない場所から運用できる」との要求仕様を策定した [3][注 1]

これに対して、ダッソー社では可変翼ミラージュG)や垂直離着陸(VTOL)ミラージュIII V)などの革新的な新機軸を採用した機体を開発していたものの、それらは価格面や各種新機軸に対する信頼性等からセールス面での不利や実用に手間取ることも予想されたため、ダッソー社では並行して自社資金でより保守的な設計思想の単発エンジン戦闘機の開発も進めていた。

このような事情から、堅実かつ安価な機体として開発が進められたのが本機である。結果として構想通り堅実な機体として完成したが、純粋な技術面では50年代の超音速戦闘機と比してさほどの進歩はなく、全体としては旧態依然としたものにとどまっていた。しかし、同時期に並行して開発されていた“新機軸戦闘機”の数々は、その高額な機体価格からフランス空軍をはじめとする顧客の要求との折り合いがつかず、また技術的には依然開発途上であり信頼性に難があったためにほとんどが頓挫し、結局のところは保守的な設計の本機が採用された。

ダッソー社では“ミラージュIII F(MirageIII F)”の名称で1963年11月21日に開発契約を締結[3]、試作初号機は“シュペル・ミラージュ(Super Mirage)”の名称で1966年12月23日に初飛行し、1967年5月に飛行試験中に墜落して失われている。1973年よりミラージュF1Cとしてフランス空軍への配備が開始され、12月には最初の飛行隊が編成された。こうして、“保険”的な存在であったはずの本機は、やや不本意な形ながら1970年代から80年代にかけてのフランス空軍の主力となる。

これまでのミラージュシリーズ同様海外セールスにも力が入れられ、本機の開発と同時期にはNATO諸国においてF-104戦闘機の更新が求められており、これに対する後継機として大規模な輸出を狙ったものの、同じエンジン単発の中小型機であるアメリカジェネラル・ダイナミクス社製F-16ファイティング・ファルコンと競合することになった。登場時期では数年の差に過ぎなかったものの、堅実だが1960年代のものとしても守旧的な設計の本機と、ブレンデッドウィングボディフライ・バイ・ワイヤCCV設計など当時の最新クラスの技術を採用・実用化したF-16との性能差は大きく、選定でことごとく敗れ去った。一方で、開発時に重視されていた「リーズナブルな価格」「シンプルかつオーソドックスな機体構造」といった面から南欧や中東・アフリカ諸国への輸出は比較的好調であり、F-16には遠く及ばないものの合計で約500機が輸出された。

なお、本機はミラージュIIIが不可能であった「航空母艦での運用」(後述「#構成・装備」の節参照)を可能にすることも念頭に置かれて開発された機体ではあったが、フランス海軍は航空母艦搭載の艦上戦闘/攻撃機は、1960年代よりアメリカから導入したF-8、および1970年代の末から実戦配備したシュペルエタンダールの2機種で特に問題はないと結論したことから、艦上機型の本格的な開発は行われぬままに終わった。

その後、ダッソー社は、本機において採用されなかった新機軸を積極的に取り入れた新型機としてミラージュ2000を開発した。-2000は無尾翼のデルタ翼形式を再び採用し、新技術によって設計のリファインがなされたほか、新型のM53エンジン(A/B推力8,500kg)を搭載してパワーを強化した。続いて、カナード翼を付加したデルタ翼機であるラファールを開発している。そのため、ダッソー社のマッハ2級の超音速実用量産機において通常の水平尾翼形式を採用した機体としては、2019年現在にいたるまで本機が唯一の存在となり、「ミラージュシリーズの異端児」と評されるゆえんである。

ミラージュF1は開発国フランスでは2014年6月13日に運用を終了し、7月14日のパリ祭で行われた軍事パレードで最後の飛行を行ったが、海外の各国軍または民間軍事会社などではまだ現役で運用されている。

構成・装備[編集]

ミラージュF1はダッソー社製にしては珍しく、無尾翼デルタ翼ではなく後退翼[注 2]に水平尾翼のある、一般的な機体形状となっている。

無尾翼形式を採用しなかった理由は、無尾翼デルタ翼の欠点(失速速度が高いために、低高度を安定して低速で飛ぶことには向かず、短距離離着陸性能に乏しい)を克服するためであり、また、STOL性能の向上のためである。前作ミラージュIIIは、無尾翼形式により低速飛行性能とSTOL性に劣り、フランス海軍艦上戦闘機として採用できないという問題を生じた。また、失速速度の高さから整備されていない飛行場での運用に向かないことや、低高度低速度での俊敏な飛行が苦手なことから、対地支援的な任務に不向きである、という難点があった。これに加え、無尾翼デルタ形式は水平飛行時には急加速からの高速巡航に優れるが、大仰角を取った急上昇&急加速に向かない(翼平面積が広いため、大迎角を取ると抵抗が大きくなる)という構造上の難点があるため、これを解消するためでもあった。

ミラージュF1と原型であるF2の平面形の比較
機体のサイズ以外はほぼ同一であることがわかる

本機の基本設計は、ダッソー社において並行して開発されていた機体のうち、有尾翼式の高翼配置後縁後退角付きデルタ翼機としたミラージュIII F2(仏語版)、および-F2を単座型の設計に改めたミラージュIII F3と同様である。-F2は前述の無尾翼デルタ形式の難点を解消した機体形状に大推力エンジンを搭載し、縦列複座の乗員配置とした「低空高速侵入戦闘爆撃機」として開発されたものであり、-F3は-F2の設計を踏まえつつ短距離離陸性能と上昇力の高い「即応高速迎撃機」として開発されたものだが、本機はそれらの設計を踏まえて、いわば“翼設計を改めたミラージュIII”として、迎撃から制空戦闘、対地支援まで幅広い任務をこなせる機体(いわゆる「マルチロール機」)として、また低空飛行性能の向上によりそれらの任務により適した機体として設計されている。

要求仕様の「高高度超音速飛行と低高度低速飛行が安定して可能な機体」に応えるため、軽量薄型の翼形ながら高揚力装置を充実させており、「短距離滑走路または完全に整地・舗装されていない場所から運用できる」に対処するため、車輪は前脚・主脚共にダブルタイヤとなっており、脚自体も頑丈な設計になっている。前脚は長く伸ばして滑走状態で高迎角状態とすることが可能で、これらの特徴は開発元のフランス本国のみならず、高度に整備された飛行場を持たないことが多い国へのセールスに大いに貢献した。

胴体下と主翼下に増槽を搭載したミラージュF1CR。
胴体下と主翼下それぞれの増槽の下部と地上との距離に注目。

ミラージュF1は主翼が胴体上部に配置された高翼機であることも特徴の一つである[注 3]。このため、主翼下により大直径の兵装を搭載することが可能となった。さらに後述のフランス空軍向け戦術偵察機型#ミラージュF1CRにおいても、「主翼下の増槽が、胴体下の偵察ポッドの側方視界を妨げない」という利点を恵んだ。

このほか、量産機では主翼前縁の外側3分の2に前縁スラットを装備することで迎え角限界を向上させているが、これはSEPECAT ジャギュアから着想を得たものである[1]。これに伴い、高い迎え角でのヨー方向の安定性を維持するために、後部胴体下面に2枚のベントラルフィンを装備している。

武装はDEFA 553 30mmリヴォルヴァーカノン航空機関砲2門を固定武装として搭載している。ハードポイントは胴体下、左右主翼下部に2つずつ、主翼端の合計7か所に配置されており、胴体下と主翼下内側には増槽も搭載できる。空対空ミサイルは最大で4発を搭載可能であった。通常爆弾およびロケット弾空対艦ミサイルまたは空対地ミサイルを搭載できる他、各種の偵察機材を内蔵したポッド(偵察ポッド)も搭載できる。

なお、本来の予定では本機の開発に併せて開発された新型の空対空ミサイルであるシュペル530 セミアクティブ・レーダー・ホーミング中距離空対空ミサイルR.550(マトラ・マジック) 赤外線ホーミング短距離空対空ミサイルを搭載する予定であったが、両ミサイルの開発が遅延したため、配備開始直後は空対空ミサイルを旧型のR.530のみ、しかも機体下面に1発しか搭載できず[注 4]、更にはフランス空軍が「とりあえず旧式のシステムで運用し、新型の開発完了後に更新する」ことによる二重の予算負担と改修作業による戦力空白を嫌ったためにR.530の装備も積極的には行われず、最初に本機を受領した迎撃機部隊では1976年まで武装は機銃のみであった[注 5]。結果的には1977年からR.550の、1979年にはシュペル530の装備が始まり、1980年代に入ってようやく本来の搭載武装での運用が開始されている。


運用史[編集]

ミラージュF1は、保有している国のほとんどで実戦に参加している。

モロッコ空軍機は西サハラでのポリサリオ戦線との戦闘に投入され、少なくとも3機が地対空ミサイルによって失われた。リビア空軍機は1980年代チャド内戦への介入で、チャドに基地を置いていたフランス空軍機と同機種同士で交戦した。

イラン・イラク戦争ではイラク空軍機が実戦に参加し、イラン空軍機との交戦で数機が撃墜されたが、中射程のシュペル530FミサイルによりF-4と互角の戦闘を行い、数機を撃墜している。

湾岸戦争時の「砂漠の盾作戦」に参加するフランス空軍のミラージュF1C(先頭)とカタール空軍のミラージュF1EDA(2列目手前)。他の機体は奥から順にカナダ空軍のCF-18A、アメリカ空軍のF-16C、カタール空軍のアルファジェット

1990年のイラクによるクウェート侵攻の際はクウェート空軍機15機がサウジアラビアに逃れ、その際イラク軍のヘリコプター1機を撃墜した。続く湾岸戦争では、イラク空軍機の多くが地上で破壊され、空中でも多国籍軍の機体(主にF-15)に対して、早期警戒管制機の支援を受けての視程外戦闘能力に大差があったこともあり一方的な損害を被った。一部はイランへ逃げ込み、イラン空軍に接収されている。多国籍軍側のミラージュF1(フランス、クウェート、カタール空軍所属機)は、敵味方の識別に失敗して友軍が撃墜してしまう可能性があったため飛行が一時的に中止され、再開されてからは局地的防空や対地攻撃、偵察を行った。

エクアドル空軍機は、1995年のセネパ紛争でペルーSu-22Aと交戦し少なくとも1機を撃墜している。

2003年イラク戦争では、イラク空軍機1機がアメリカ空軍のF-15に撃墜されている。

2011年リビア内戦では、リビア空軍機2機が反政府デモ隊への爆撃を拒否しマルタへ亡命した。

ギリシャ[編集]

ギリシャ空軍は、1974年6月に40機のミラージュF1CGを発注した[4]。しかし、実際の到着は翌1975年の8月4日までずれ込んだ[5]。このため、キプロス紛争においてキプロス島に上陸したトルコ軍との戦闘英語版には参加しなかった。

ギリシャ空軍のミラージュF1CGは、アメリカ製のAIM-9サイドワインダーを装備した[4]

ミラージュF1CGはタナグラ空軍基地ギリシア語版英語版の第114戦闘航空団(114 Πτέρυγα Μάχης)に所属する第334飛行隊(334 Μοίρα)と第342飛行隊(342 Μοίρα)に配備された[5]

このうち第334飛行隊は、1989年7月にクレタ島のイラクリオン基地に駐屯する第126戦闘航空群(126 Σμηναρχία Μάχης)に転属し、2000年7月に解散するまでミラージュF1CGを運用していた[6]

2003年6月30日に、最後の運用部隊であった第342飛行隊が解散したことに伴い、ギリシャ空軍のミラージュF1CGは全機退役した[5][4]

南アフリカ[編集]

南アフリカ空軍は、1975年から32機の昼間戦闘爆撃機型ミラージュF1AZ[7]と、16機の全天候迎撃戦闘機型ミラージュF1CZを導入した[8]

南アフリカ空軍では、ミラージュF1AZは第1飛行隊1 Squadron SAAF)に[9]、ミラージュF1CZは第3飛行隊3 Squadron SAAF)に[10]、それぞれ配備された。

南アフリカの博物館に展示されているミラージュF1CZ。
キャノピー側面下部に、アンゴラ空軍機の撃墜マークが描かれている。

南アフリカ空軍機は、南アフリカ国境紛争英語版においてアンゴラ空軍MiG-21と交戦し、少なくとも1機を撃墜しているが、南アフリカ側も1機がキューバ空軍のパイロットの操縦するMiG-23により撃墜され(後日、修復)、これとは別個にアンゴラはMiG-23による数機の撃墜を主張している。当時、南アフリカ空軍では短射程のR550マジック及び国産のククリ空対空ミサイル(ドイツ語版)しか装備しておらず、主力であったR530系ミサイルが供給されていなかったため、稼働率は低いとはいえ中射程のR-23/R-24を装備したMiG-23に対抗することは困難であった。ただし、ほとんどの場合は損傷したものの帰還しており、損失の多くは離着陸の失敗及び機体トラブルであった。

南アフリカ空軍のミラージュF1CZは1992年9月30日付で第3飛行隊の解散に合わせて退役し[10][8]、ミラージュF1AZも1997年11月25日付で第1飛行隊の解散に合わせて退役した[9][7]

派生型[編集]

ミラージュF1A[編集]

南アフリカ空軍のミラージュF1AZ。
機首上面に折り畳み式の空中給油プローブ、機首下面の突起部にレーザー測距儀を内蔵している。

ミラージュF1Cの電子装備を簡略化し、燃料搭載量を増やした昼間戦闘爆撃機型。南アフリカ空軍の要請により開発された[1]

ミラージュF1Aは、ミラージュF1Cと比較すると、以下の改修が行われている。

  • 機首をより細く鋭い形状に変更[7]
  • シラノIVレーダーを撤去し、アイーダII(Aïda II)測距レーダーに換装したうえで、機首下面にレーザー測距儀を追加装備[7]
  • 機首上面に折り畳み式の空中受油プローブを追加[7]
  • アビオニクスをコクピット後部から機首に移設し、空いたスペースに燃料タンクを追加[7]
  • 航法用のドップラーレーダーを追加[7]

フランス空軍では採用されず、海外輸出も南アフリカとリビアの2か国にとどまる。

  • ミラージュF1AZ - 南アフリカ向け、32機製造[7]
  • ミラージュF1AD - リビア向け、16機製造。

ミラージュF1B[編集]

フランス空軍のミラージュF1B

複座練習機型。元々はクウェート空軍の要請で開発されたが、後にフランス空軍でも導入された[1]

本来の座席の後部に座席を追加するために、胴体を30㎝延長したうえで機関砲を撤去した。アビオニクスはミラージュF1Cと同等のため、限定的ながら戦闘任務にも投入できる。

フランス空軍以外では、各国向けに以下の機体が生産された。

  • ミラージュF1BD - リビア向け、6機製造。
  • ミラージュF1BE - スペイン向け、6機製造。スペイン空軍ではCE.14Aと表記。
  • ミラージュF1BJ - ヨルダン向け、2機製造。
  • ミラージュF1BK - クウェート向け、2機製造
  • ミラージュF1BK-2 - クウェート向け、ミラージュF1D相当の多用途型、4機製造。
  • ミラージュF1BQ - イラク向け、18機発注されるが、実際にイラクに引き渡されたのは15機。

ミラージュF1C[編集]

ギリシャ空軍のミラージュF1CG。

全天候迎撃戦闘機型。ミラージュF1の基本型。機首にシラノIVレーダーを装備。

後には、機首の風防右前部に空中受油プローブを追加可能な機体が生産されており、こちらはミラージュF1C-200と呼ばれる。

フランス空軍以外にも、各国向けに以下の機体が製造された。

  • ミラージュF1CE - スペイン向け、45機製造。スペイン空軍ではC.14Aと表記。
  • ミラージュF1CG - ギリシャ向け、40機製造[4]
  • ミラージュF1CH - モロッコ向け、30機製造。
  • ミラージュF1CJ - ヨルダン向け、17機製造。
  • ミラージュF1CK - クウェート向け、18機製造。のちにCK-2仕様にアップグレード。
  • ミラージュF1CK-2 - クウェート向け、ミラージュF1E相当の多用途型。9機製造。
  • ミラージュF1CZ - 南アフリカ向け、16機製造[8]

ミラージュF1CR[編集]

フランス空軍のミラージュF1CR
前脚前方の張り出しは、偵察用カメラ窓。

フランス空軍向けの戦術偵察機型。ミラージュIII R/III RDの後継機として、ミラージュ2000の配備により余剰化したミラージュF1Cを改修した機体。副次的に対地攻撃にも投入可能[2]

レーダーを、グラウンドマッピングおよびコンターマッピングモードを搭載したシラノIV-MRに改修したほか、各種の偵察装備を装備可能とした。

偵察装備

ミラージュF1CRには、以下の偵察装備を搭載可能[2]

  • Omera 33 - 垂直下方撮影カメラ。レンズは焦点距離150mm、300mm、600mmの3種類を選択可能。
  • Omera 40 - パノラミックカメラ。左右方向180度までを撮影可能。
  • Super Cyclope - 赤外線センサー。収集したデータはリアルタイムで地上基地へ送信可能。
  • Raphael TH - 側方監視レーダー(Side Looking Airborne Radar:SLAR)ポッド。最大100㎞までの距離をレーダー画像で偵察する。
  • Astac - 電子偵察用ポッド。各種レーダーの場所と種類を偵察する。
  • RP35P - 写真偵察ポッド。焦点距離75mm、150mm、200mm、600mmのカメラを搭載可能。
  • Desire - 電子光学ポッド。デジタル式のビデオ撮影装備で、最大で610mmの高解像度光学撮影が可能。また、撮影した映像はリアルタイムで地上基地へ送信可能。

ミラージュF1CT[編集]

フランス空軍のミラージュF1CT
前脚前方の張り出しに、レーザー測距儀を装備。

フランス空軍向けの全天候戦術戦闘爆撃機型。ミラージュIIIEおよびミラージュ5Fの後継機として、ミラージュ2000の配備により余剰化したミラージュF1Cを改修した機体。

レーダーは、偵察機型のミラージュF1CRと同型のシラノIV-MRに改修。前部胴体下面に、レーザー測距儀を搭載。

ミラージュF1D[編集]

後述するミラージュF1Eの複座型。

フランス空軍では使用されず、以下の国々に輸出された。

  • ミラージュF1JE - エクアドル向け、2機製造。
  • ミラージュF1DDA - カタール向け、2機製造。

ミラージュF1E[編集]

エクアドル空軍のミラージュF1JA。
主翼端にR.550マジック2、主翼下にパイソン3を装備。

ミラージュF1の輸出型で、F1Cよりも対地攻撃能力が強化されている。

フランス空軍では使用されず、以下の国々に輸出された。

  • ミラージュF1JA - エクアドル向け、16機製造。
  • ミラージュF1ED - リビア向け、16機製造。
  • ミラージュF1EDA - カタール向け、12機製造。
  • ミラージュF1EE - スペイン向け、22機製造。スペイン空軍ではC.14Bと表記。
  • ミラージュF1EH - モロッコ向け、14機製造。
  • ミラージュF1EH-200 - モロッコ向け、空中給油用のプローブを装備、6機製造。
  • ミラージュF1EJ - ヨルダン向け、17機製造。
  • ミラージュF1EQ - イラク向け、16機製造。
  • ミラージュF1EQ-2 - イラク向け防空戦闘機型。16機製造
  • ミラージュF1EQ-4 - イラク向けの多用途戦闘・攻撃・偵察機型。28機製造。
  • ミラージュF1EQ-5 - イラク向けの対艦攻撃機型。20機製造。
  • ミラージュF1EQ-6 - イラク向けの対艦攻撃機型。30機製造。

ミラージュF1 M53[編集]

ミラージュF1Eを元に、スネクマ M53ターボファンエンジンを装備した派生型。NATOにおけるF-104Gの後継戦闘機候補として開発するが、F-16に敗れる。

ミラージュF1M[編集]

スペイン空軍のミラージュF1M。
奥の機体(14-39/C.14-67)は、主翼端にAIM-9Pサイドワインダーを装備。

スペイン空軍が、1990年代後半に自国のミラージュF1を近代化改修した機体で、以下の要素が盛り込まれている[11]

  • コクピットを改修し、Sextant Avionique社製のカラーLCDとSmart HUDを搭載。
  • Sextant Avionique社製の慣性航法装置とGPSを搭載し、航法装置を近代化。
  • NATO標準規格のHave Quick 2秘話通信装置と、モード4のデジタル式敵味方識別装置フライトレコーダーを搭載。
  • レーダーをシラノIV-M規格に改修し、洋上捜索モードと空対地測距モードを追加。

退役後に、22機がアメリカの民間軍事会社ドラケン・インターナショナル」に売却される[11]

運用国[編集]

2014年時点での運用国(青)
2014年時点で退役させた国(赤)
現用
退役済み

要目[編集]

三面図
  • 全幅:8.4m
  • 全長:15.0m
  • 全高:4.5m
  • 主翼面積:25.0m2
  • 空虚重量:7,400kg
  • 最大離陸重量:16,200kg
  • エンジン:スネクマ アター9K-50 (アフターバーナー時7,200kg)1基
  • 最大速度:M2.1
  • 海面上昇率:12,780m/min
  • 実用上昇限度:20,000m
  • 航続距離:1245nm(フェリー)
  • 戦闘行動半径:749nm(Hi-Lo-Hi)
  • 乗員:1人
  • 固定武装:30mm DEFA550機関砲 2門
  • 武装:搭載量 設計最大 6,300kg/運用実際値[注 6] 4,000kg
翼端パイロンR550 マジック 空対空ミサイル/AIM-9 サイドワインダー 空対空ミサイル(フランス空軍以外)
主翼下パイロン:シュペル530F 空対空ミサイル(最大2発)、AM39 エグゾセ 空対艦ミサイル(一部のタイプのみ、左右どちらかに1発のみ搭載可能)、AS30 空対地ミサイル(最大2発)、各種爆弾、ロケット弾ポッド等
この他、胴体下に増加燃料タンクおよび偵察用機器ポッドを搭載可能

登場作品[編集]

エアポート'80
フランス本土近海でコンコルドを攻撃する、国籍・所属組織不明のF-4 ファントムII要撃に緊急発進したフランス空軍機として登場。実機を撮影したライブフィルムと模型を用いた特撮が使用されている。
エリア88
原作での出番は無いが、平成テレビアニメ版でキトリの搭乗機として登場する。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ なお、これらの要求は後にパナビア・トーネードとして結実するMRCA計画や、イギリスと共同で行われる予定であったAFVG計画のものとほぼ同様だが、フランスが1966年北大西洋条約機構の軍事部門から脱退したこともあり、両計画ともにフランスは辞退もしくは参加していない。
  2. ^ ただし、空力設計としては後縁に後退角を付けたデルタ翼に近い。
  3. ^ 無尾翼デルタ翼を装備した前任のミラージュIII/5や、後継機のミラージュ2000は、いずれも胴体下部に主翼を配置した低翼機である。
    ミラージュGミラージュF2/F3フランス語版英語版も高翼機であるが、これらは量産・実戦配備に入ることなく試作機にとどまった。
  4. ^ 配備開始よりしばらく経過した後にはR.530は主翼下に左右1発ずつ、計2発が搭載可能となった。
  5. ^ フランス空海軍ではアメリカのAIM-9 サイドワインダーも導入して運用しているが(アメリカから導入したF-100 スーパーセイバーおよびF-8 クルセイダーに搭載された)、これも同様の理由(システム更新に伴う予算および期間の負担増の回避)でF1への運用は行われず、搭載テストが行われたのみである。
    フランス以外でF1を導入した国(スペインとギリシャ[4])では、AIM-9の搭載運用も行われた。
  6. ^ 各種の組み合わせとして実際に搭載可能な範囲での数値

出典[編集]

  1. ^ a b c d Dassalt Aviation. “Mirage F1” (英語). 2019年11月5日閲覧。
  2. ^ a b c FAS Military Analysis Network (1999年). “MIRAGE F1 (DASSAULT-BREGUET)” (英語). 2019年11月5日閲覧。
  3. ^ a b Dassalt Aviation. “Mirage III F2 F3” (英語). 2019年11月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e Hellenic Air Force. “Dassault-Breguet Mirage F.1CG” (英語). 2019年11月5日閲覧。
  5. ^ a b c Hellenic Air Force. “114 Combat Wing” (英語). 2019年11月23日閲覧。
  6. ^ Hellenic Air Force. “126 Combat Group” (英語). 2019年11月23日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h The South African Air Force. “Mirage F1AZ” (英語). 2019年11月4日閲覧。
  8. ^ a b c The South African Air Force. “Mirage F1CZ” (英語). 2019年11月4日閲覧。
  9. ^ a b The South African Air Force. “1 Squadron” (英語). 2019年11月23日閲覧。
  10. ^ a b The South African Air Force. “3 Squadron” (英語). 2019年11月23日閲覧。
  11. ^ a b c DRAKEN International. “Mirage F1M” (英語). 2019年11月5日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]