ミノサイクリン

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ミノサイクリン
Minocycline structure.svg
Minocycline-from-xtal-PDB-2DRD-3D-balls.png
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
商品名 医療用医薬品検索
ライセンス US FDA:リンク
胎児危険度分類
  • AU: D
  • US: D
法的規制
投与方法 経口
薬物動態データ
生物学的利用能 100%
血漿タンパク結合 76%
代謝
半減期 11-22 時間
排泄 おもに糞便排泄, 一部排泄
識別
CAS番号 10118-90-8
ATCコード J01AA08 A01AB23
PubChem CID: 24960
DrugBank APRD00547
ChemSpider 16735907
KEGG D05045 D00850
化学的データ
化学式 C23H27N3O7
分子量 457.477

ミノサイクリン塩酸塩 (en:Minocycline hydrochloride) は、広域スペクトル性のテトラサイクリン系抗生物質である。抗菌スペクトルは他のテトラサイクリン系抗生物質よりも広い。抗菌性は静菌的である。生体内半減期が長いため、血漿中濃度は他の水溶性のテトラサイクリン系抗生物質よりも2〜4倍高く保たれる。テトラサイクリン系抗生物質では最も脂溶性が高く、特に前立腺に浸透する。

ミノサイクリンは天然に存在する抗生物質ではなく、米国のレダリー・ラボラトリーズ (Lederle Laboratoriesによって1966年に天然テトラサイクリンから半合成的に合成された。レダリー・ラボラトリーズは、後にワイス (Wyethとなり、2009年にファイザー (Pfizerに吸収合併された。

代表的な商品名は、日本ではミノマイシン、米国ではミノシン[1]である。

特徴[編集]

ミノサイクリンは、テトラサイクリン系抗生物質の中でも第一選択となることが多い。これはドキシサイクリンと並び体内半減期が長いため、1日の服薬回数が少なくて済むことと、古いテトラサイクリン系抗生物質に対する耐性菌にも効果が期待できるためである。服薬が1回1錠(又は1カプセル)を1日2回で済み、1日に4回服薬する必要のあるテトラサイクリンオキシテトラサイクリンよりも患者の負担が少ないからである。海外では放出調整剤も流通しており、1日1回の服薬で済むこともある。

主な適応症として、尋常性痤瘡(ニキビ)および、他の皮膚感染症、ならびにライム病の治療に用いられる。ミノサイクリンは、β-ラクタム系抗生物質に対する耐性菌にも効果があることがあり、一部のMRSA感染による症状を治療するのに用いられたり、β-ラクタム耐性アシネトバクターによる疾患を治療するのに用いられたりすることもある。ミノサイクリンは、髄膜炎菌に対する活性も有するなど、他のテトラサイクリン系抗生物質と比較しても幅広い抗菌スペクトルを有するが、予防薬としての投与は、副作用(めまい光線過敏)の問題や、耐性のつきやすさのために現在は勧められていない。

商品名[編集]

ミノサイクリンの150mgカプセル。

日本での先発品は、ミノマイシンの商品名で、ファイザー(旧ワイス株式会社)から発売されている。2008年9月には、ミノマイシン錠100mgは、長期保存品の試験に適合しない錠剤ロットが確認され、旧ワイス社によって自主回収されている[2]。翌年の2009年1月、ファイザーが米国ワイス社を買収することを発表し、その後合併している。2016年3月末時点で、ミノマイシン錠100mgは薬価基準に収載されたままである。再供給の目処は立っていない。

アメリカでは、カプセル剤のブランド品がMinocin[3]として、錠剤のブランド品がDynacin[4]として販売されている。放出調整 (Time release technology錠剤のブランド品がSolodyn[5]として、ジェネリック品としてMinocycline ER[6]が販売されている。

バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナル (英語版の2015年薬価インフレで、Solodyn 30錠 入りボトルは $1,000 以上に高騰した。

適応[編集]

適応菌種[編集]

ミノサイクリンに感受性のあるブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌腸球菌属、淋菌炭疽菌大腸菌赤痢菌シトロバクター属、クレブシエラ属(肺炎桿菌を含む)、エンテロバクター属、緑膿菌梅毒トレポネーマ、リケッチア属、クラミジア属、マイコプラズマ

適応症[編集]

表在性皮膚感染症深在性皮膚感染症リンパ管リンパ節炎、外傷熱傷及び手術創による二次感染乳腺炎骨髄炎
咽頭炎喉頭炎、扁桃炎気管支炎肺炎肺膿瘍慢性呼吸器病変の二次感染
膀胱炎腎盂腎炎前立腺炎精巣上体炎、尿道炎、淋菌感染症、梅毒外陰炎細菌性膣炎子宮内感染
腹膜炎感染性腸炎
  • 感覚系器官
涙嚢炎麦粒腫外耳炎中耳炎副鼻腔炎、化膿性唾液腺
歯周組織炎歯冠周囲炎上顎洞炎顎炎
  • 全身性感染症
炭疽つつが虫病オウム病

その他[編集]

アメーバ性赤痢炭疽症コレラ淋病ペニシリンが投与できない場合)、融合性細網状乳頭腫症グジュロー・カートイド症候群)、ライム病腺ペスト歯周病肺炎など呼吸器疾患ロッキー山紅斑熱梅毒尿路感染症直腸感染症、ある種の微生物感染による子宮頚部の症状、精神刺激薬精神病[要出典]

酒さ (Rosacea眼瞼炎 (Blepharitisの治療用途として、ミノサイクリンと眼瞼洗浄剤を合剤にした薬剤を、StoneBridge Pharmaが販売している。

疾患修飾性抗リウマチ薬 (DMARDとして米国リウマチ学会 (英語版がガイドラインで慢性関節リウマチの治療に推奨している[7]。作用機序はアラキドン酸-5-リポキシゲナーゼ阻害 (5-LO inhibitorとされる[8]

未だ治療法がみつかっていない致死性家族性不眠症 (Fatal familial insomniaへの有効性が動物研究で示されている[9][10][11][12][13]

副作用[編集]

アメリカ食品医薬品局FDA)により、2008年~2009年に、有害事象報告制度(AERS)から、潜在的な安全性の問題が特定されていることが報告されており、調査中であるがこの報告は服用の中止などは意味しない。ミノサイクリン使用と、甲状腺疾患、小児における小児自己免疫疾患DRESS症候群英語版が関連を示した。[14][15]

白血球数(好中球)に影響することがあり、急性熱性好中球性皮膚症が起こることがある。2015年から添付文書に追加された[16]

アメリカの添付文書では、男女共に妊娠を希望している場合には使用できないことが記載され、限られた研究は精子形成に有害であり、動物研究では毒性や、甲状腺における発がん性が確認されている[17]

青少年のニキビ治療において一時的な自己免疫性甲状腺炎と、より深刻で永続的な免疫性ではない甲状腺機能障害が報告されている[18]。他のテトラサイクリン系よりも深刻で頻繁に有害事象が報告されている。頭蓋内圧亢進肝障害自己免疫疾患好酸球増加と全身症状DRESS症候群)がミノサイクリンで多かった[19]。テトラサイクリン系の有害事象報告は ミノサイクリン > ドキシサイクリン > テトラサイクリン の順で頻繁かつ重大であった[20]

副作用には、吐き気、嘔吐、下痢、頭痛、疲労感、目まい、かゆみ、光過敏性、歯の変色や小児における骨発育の減少がある[21]。中枢神経系に関連する副作用には、軽い興奮、偽脳腫瘍(かすみ目や頭痛)、前庭障害運動失調めまい)、薬物誘発性の離人症が報告されている[22]。ミノサイクリンを延長期間以上にわたって長く使用していると、皮膚が灰青色になったり[23]、歯が着色したりする可能性がある。

ミノサイクリンは腹痛下痢目眩、落ち着きのなさ、傾眠口内炎頭痛嘔吐を引き起こす可能性がある。光線過敏症を増悪させる。また狼瘡の原因とされることもある。経口避妊薬の効果を減弱させる可能性がある[24]

また、ミノサイクリンは、ほかのテトラサイクリン系抗生物質よりも高い頻度で、突発性頭蓋内圧亢進という症状を引き起こしうる。この症状の初期兆候としては、頭痛、視野の揺らぎ、めまい、嘔吐、混乱がある。脳浮腫自己免疫性関節リウマチも、まれに現れうるミノサイクリンの副作用である[25]

他のテトラサイクリン系抗生物質には無くてミノサイクリンに特有の副作用には、耳鳴目眩運動障害といった前庭障害がある。この副作用は男性よりも女性に格段に起きやすく、ミノサイクリンを服用している女性の50-70%に発症する。こういったかなり発症率が高くまた不快な副作用があるため、ミノサイクリンは女性患者に投与されることは滅多にない[26]

アレルギー反応の症状として発赤瘙痒むくみ、激しい目眩、呼吸困難が起こることもある[21]。ミノサイクリンによって突発性頭蓋内圧上昇が起きた報告も成されている。

多くの目眩は血中濃度消失に伴って軽快するが、長時間に続くことを完全に否定されたわけではない。

健康な男子学生での実験では、200mg単回投与で徐波睡眠 (Slow-wave sleepが明らかに減少し、偽薬に変更後2回の夜も持続した。レム睡眠 (Rapid eye movement sleepは全ての夜で減少しなかった[27]

使用時における注意[編集]

大部分のテトラサイクリン系抗生物質(ドキシサイクリンは例外とする)とは異なり、ミノサイクリンは腎不全の場合でも使用されることがありうる。しかし全身性エリテマトーデスを引き起こす可能性もある[28]。ミノサイクリンは自己免疫性肝炎を引き起こすきっかけになることもありうる[29]

ミノサイクリンの吸収は、カルシウム鉄剤と同時に服用すると減弱する。ほかのテトラサイクリン系抗生物質とは異なり、ミノサイクリンは、たしかに吸収量をやや弱めはするものの、牛乳などのカルシウムの豊富な食品と同時に服用されることがある[30]

ミノサイクリン服薬時は、長時間または過剰の直射日光を浴びるのを避けるべきである。

ミノサイクリンは他のテトラサイクリン系抗生物質と同様に小児に対しては第一選択とならない。これは特に8歳未満の小児において歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全などを起こす可能性があるためである。しかしながら耐性等の問題で本剤以外に選択肢がない場合は例外となりうる。

ミノサイクリンは、他のテトラサイクリン系抗生物質と同様、使用期限を過ぎると危険性が生じてくる。ほとんどの処方薬は、使用期限を過ぎると薬効が弱まっていくのみであるが、テトラサイクリン系抗生物質は時間が経つに連れ、カプセル剤内に含まれるある種の化学物質の分解によって毒性が生じるようになる。もっとも、このことは先進国で製造される医薬品では問題になることはない。製造時期が古くて使用期限の切れたテトラサイクリン系抗生物質は、腎臓に重大な障害を起こす可能性がある。

2007年11月23日付のサイエンスのニュース記事によれば、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の患者にミノサイクリンを投与することは危険であるとされている。ミノサイクリンを服薬した患者はプラセボを服薬した患者よりも衰弱するのが早かった。現時点ではこの副作用の機序は不明である。コロンビア大学の研究者によると、服薬量が多いからといって服薬量が少なかった患者よりも容態が悪化したわけではないため、この副作用は用量依存性ではないと考えられる[31]

ニキビ治療薬として[編集]

ミノサイクリンは、尋常性痤瘡(いわゆるニキビ)の治療に対して適応外処方であり、本来レセプト上は表在性皮膚感染症でなければ保険適用されない[32]

2008年の日本皮膚科学会による「尋常性痤瘡治療ガイドライン」では、27のランダム化比較試験 (RCT) をシステマティック・レビューした研究を根拠として、ミノサイクリンの内服は強く推奨された推奨度Aである[33]。このシステマティックレビューでは[34]、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クリンダマイシン外用、エリスロマイシン外用、イソトレチノインが比較されている[33]。長期の継続使用における証拠は存在せず、長期使用においては皮膚粘膜や歯牙への色素沈着には留意が必要である[33]

上記ガイドラインで証拠として採用されているのは、2003年のコクラン共同計画のシステマティック・レビューであり[34]、このレビューでは集められた研究の研究規模が小さく低品質であるが、尋常性座瘡に有効だと示しており、ただ2つの研究だけが他のテトラサイクリンよりも優れていることを結論していた。その2つは深刻な方法論的な問題を有していた。また有害事象の発生率は、研究間で変動が大きく同定できなかった。他の治療に抵抗を示す、耐性にきびに推奨できる証拠はない。結論として、中等症の尋常性痤瘡に有効である可能性が高いが、価格と安全性を考慮すると治療の第一選択とするには証拠がなく、また適切な使用量についても同様に推奨を行うことができなかった。

このコクラン・レビューの2012年の改定では、12の新しいRCTが追加されたが結論は同様であった[35]。中等症、および中等症から重症の尋常性痤瘡に有効ではあるが、他の治療よりも有意であるという証拠はなかった。自己免疫反応の危険性は使用期間に比例しており、また高価な徐放剤が、一般的なミノサイクリン製剤よりも安全であるという裏付けはなかった。他のテトラサイクリン系と比較して安全性に懸念が残った。

2016年改定の日本皮膚科学会による 尋常性痤瘡治療ガイドライン2016[36] では、39件のRCTをもとにしたシステマティック・レビュー[35]において推奨されているとした[36]。有効性が同等とされるドキシサイクリンと比較して、めまい や色素沈着などの副作用の頻度が高く、自己免疫疾患薬剤性過敏症症候群などの重篤な副作用があることから、委員会の意見としてドキシサイクリンを 推奨度 A で強く推奨し、ミノサイクリンについては 推奨度 A* で推奨されている[36]。また、1970年の文献[37]を参考に、ドキシサイクリン50mgとミノサイクリン100mgの同等性が示されているとした[36]

ミノサイクリンの ベネフィット/リスク比 は明らかにドキシサイクリンよりも低かった。もはや炎症性皮膚疾患やニキビの第一選択肢と考えてはならない[19]

米国皮膚科の調査報告では、ニキビ治療における抗生物質内服の平均期間が 331.3 日で、33.6% が1年以上。複数の医療機関を利用していたケースに限ると平均期間は 380.2 日。抗生物質内服の第一選択肢としてミノサイクリン44.4%ドキシサイクリンが 40.5%、アジスロマイシンが 3.2%。第二選択肢はアジスロマイシンが 20.3%。ドキシサイクリン使用者の 80% が次にミノサイクリンを使用した可能性が高い[38]

米国におけるニキビ治療用ミノサイクリン
体重 1日用量 体重1kgあたりの用量 名称
045 - 049 kg 045 mg 1.00 - 0.92 mg/kg Minocycline ER
050 - 059 kg 055 mg 1.10 - 0.93 mg/kg Solodyn
060 - 071 kg 065 mg 1.08 - 0.92 mg/kg Solodyn
072 - 084 kg 080 mg 1.11 - 0.95 mg/kg Solodyn
085 - 096 kg 090 mg 1.06 - 0.94 mg/kg Minocycline ER
097 - 110 kg 105 mg 1.08 - 0.95 mg/kg Solodyn
111 - 125 kg 115 mg 1.04 - 0.92 mg/kg Solodyn
126 - 136 kg 135 mg 1.07 - 0.99 mg/kg Minocycline ER

ミノサイクリンの 1 mg/kg 放出調整錠剤である Solodyn の添付文書には「非炎症性病変に対して改善または悪化に影響しない」と記載されている[17]

ALS治療薬として[編集]

412人の筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 患者を対象とした第III相の臨床試験[39]では、9ヶ月間、1日最大 400mg の投与量でプラセボ対照比較試験を行った。結果は、ミノサイクリン群が改訂ALS機能評価尺度(ALSFRS-Rスコア)が有意に低下した。非有意でFVCスコアとMMTスコアの低下傾向があり、死亡率も高かった。重篤ではない消化管や神経系の有害事象はミノサイクリン群で多かったが、それはALSFRS-Rスコアの低下には関連していなかった[40]

この結果は大きな論争を呼んだ。モデル動物での実験では成功していたため[41][42][43]。ヒトALS患者への使用量が適切ではなかった可能性が高い。他の神経疾患の臨床試験では 200 mg/日 が選ばれている。ミノサイクリンにもう一度チャンスを与えるべきとの意見[44]
ミノサイクリン処置群が急速な認知機能の低下を来したため、神経認知障害について調査中である[45]

リルゾール (Riluzole 3-30 µM の濃度で神経毒性作用。それは、グルタミン酸 30 µM や、ALS患者の脳脊髄液(10%希釈)による神経毒性と類似。①メマンチン 0.1-30 µM、②ミノサイクリン 0.03-1 µM、③リチウム 1-80 µg/mL はALS患者からの脳脊髄液誘発性の神経毒性に対して 10-30% の保護を与え、リルゾール 1-10 µM は①〜③の保護を拮抗した[46]

ミノサイクリン 90, 170 mg/kg とリルゾール 10 mg/kg の組み合わせは、リルゾールの脳AUC (Area under the curveを 2倍 へ増加誘導し、マウスで神経筋毒性を誘発した。ミノサイクリンのこの効果は、低濃度 (10 mg/kg) は有意ではなかった[47]

PARP-1阻害作用[編集]

ミノサイクリンは強力なポリADPリボースポリメラーゼ1 (PARP-1阻害作用を有している。

PARP-1競合阻害定数 Ki=13.8 ± 1.5 nM[48]

100 nM でPARP-1を 74.4 ± 8.5% 阻害した[48]

ニトロソグアニジン (MNNGによる神経細胞死を IC50=42.0 ± 9.5 nM で抑制した[48]

ミノサイクリンのPARP-1阻害定数 Ki=13.8 nM[48]は、進行癌に対する標的治療薬であるオラパリブ (Olaparibの IC50=5 nM[49]や、ベリパリブ (Veliparibの Ki=5.2 nM[50]に匹敵する。ミノサイクリンはDNA損傷の研究用試験薬として販売されている[51]

ヒト正常細胞においてもPARP阻害薬は作用し、ゲノム不安定性を招き染色体異常が増加する。進行癌 以外でPARP阻害薬を使用する場合は注意が必要[52]

ミノサイクリンは動物研究[53]で、甲状腺の腫瘍と発癌性が有意に確認されている[17]。慢性毒性試験[54]においても肝細胞の空胞化が認められている [55]

ミノサイクリンはヒト前立腺癌 細胞株で著しい増殖阻害作用を示した[56]。ミノサイクリンは上皮性卵巣癌の増殖を阻害する[57]

PARP阻害剤 (PARP inhibitor抗がん剤としてだけでなく、脳卒中や心筋梗塞および神経変性疾患などの潜在的な治療薬と示唆されている。PARP阻害剤はDNA修復を阻害し、最終的に細胞死を引き起こす。

ミノサイクリンはPARP-1阻害によって、ラット心筋細胞の虚血再灌流誘導死を IC50=126.3 ± 24.2 nM で阻止した[58]。これは、小膠細胞や神経細胞の他にもPARP-1阻害が作用することを示唆している[58]

ミノサイクリンはラット皮質細胞においてグルタミン酸 500 µM による神経細胞死を IC50=10 nM で抑制した[59]

これはメマンチンのラット皮質細胞におけるグルタミン酸誘発神経細胞傷害への抑制作用 IC50=1.66 ± 0.36 µM[60]と比較して 166倍 低濃度で同等の作用を示している。

ミノサイクリンは 300 µM のN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDAによるラット皮質神経細胞死を 20 nM で抑制した[61]

これはメマンチンのラット皮質細胞におけるNMDA誘発神経細胞傷害への抑制作用 IC50=1.47 ± 0.36 µM[60]、Ki=0.67 µM[60]と比較して 73倍 低濃度で同等の作用を示している。

ミノサイクリンは 500 µM のNMDA誘発小膠細胞 (Microglia増殖を 200 nM で阻止した[61]

これは 10 µM のジゾシルピン (MK-801と同等であった[61]

驚くべきことにミノサイクリン[62]は出生後早期マウスの脳で広範囲にわたって皮質アポトーシスを誘発し、ジゾシルピン[63]に誘発される細胞死や神経変性を悪化させた。海馬台のような一部の部位では、ジゾシルピンに誘発されるよりもミノサイクリンのアポトーシス促進作用の方が顕著であった。子供たちが使用するため、脳の発達に影響することが懸念される[64]

ジゾシルピンはオルニーの病変(Olney病変)を引き起こすことが知られている(ジゾシルピン#オルニーの病変)。
ミノサイクリンはALS臨床試験[40]で急速な認知機能の低下を来したため、神経認知障害について調査中である[45]

メマンチン20mg/日を投与した場合、定常状態の血漿中メマンチン濃度70~150ng/mL(0.5~1μmol)に達し、個人差は大きい。5~30mg/日の投与量では、平均脳脊髄液(CSF)/血清比は0.52であった。分布容積は約10L/kgである。メマンチンの約45%は血漿たん白に結合する。 メマンチンを20mg/日投与した場合、CSF濃度はメマンチンのki値(ki:阻害定数)、すなわちヒト前頭葉皮質における0.5μmolと一致する。 前臨床安全性試験成績 ラットにおける短期投与試験において、血清中濃度のピーク値が著明に高くなる用量においてのみ、他のNMDA拮抗薬と同様、メマンチンにより神経空胞化及び壊死(Olney病変)が認められた。運動失調及び他の前臨床兆候が空胞化と壊死の前に発現した。

第一三共株式会社メマンチン塩酸塩 国際共通化資料(CTD)「前臨床安全性試験成績」

ミノサイクリンの 76% は血漿タンパク質結合する。中枢移行性は良好。ミノサイクリン 100 mg 単回投与時の Cmax は約 1,000 ng/mL である。200 mg 反復投与時はおよそ 4,000 ng/mL に達する。

電離放射線を 1Gy 照射するとラット皮質神経細胞は 40-50% 減少する[65]。ミノサイクリン 20 nM 添加は、それを完全に阻止した (p < 0.0005)[65]第三世代セフェム系抗生物質セフトリアキソン (Ceftriaxone 1 µM 添加は 87% 阻止した (p < 0.05)[65]

中枢作用[編集]

中枢神経に及ぼす影響
マウスに 0.5mg/kg 以上の腹腔内投与により、自発運動の抑制が認められる。

ファイザー株式会社医薬品インタビューフォーム(2015年1月改訂 第13版)ミノマイシン

基礎研究[編集]

類薬ドキシサイクリン神経保護は、Gタンパク質共役受容体 (GPCRの活性強化により作用する。ミノサイクリンも同様の活性を示した。スコポラミン (Hyoscine誘発健忘に対し、ドキシサイクリン 100 µg/kg (0.1 mg/kg) での長期治療は重大な影響を示した[66]

スコポラミン誘発認知障害に対するドネペジルの ED50 は 0.002 mg/kg、ガランタミンの ED50 は 0.7 mg/kg である[67]。ドネペジルは 0.5 mg/kg 以上から効果が減少に転じる[67]

ミノサイクリンは選択的にミクログリアの M1分極 (Activatedを阻害し、M2分極 の強化には影響を及ぼさない[68]

ミクログリアが低下しているマウスは学習や記憶に欠陥があることが示されている。これらの発見は、多くの神経精神医学的障害の症状である社会的行動や認知行動に生じる変化は、ニューロン間の接続が発生過程で変化したために起こるという考えを支持するものである。ミクログリアの数を一時的に減少させたマウスでは、他のマウスとの社会的接触の減少と同時に、毛繕い行動の増加が見られ、強迫性障害 (OCD自閉症スペクトラム (Autism spectrumのような疾患に見られる常同行動 (Stereotypyとの類似が示唆される。これらのマウスではシナプス刈り込みが不十分で、認知および社会的行動に関わる2つの脳領域である海馬前頭前野との間の機能する接続が減少していることを示した。この報告は、社会的行動の神経生物学に新たな光を投げかけ、自閉症 (Autismや強迫性障害における社会的欠陥の理解を深める可能性がある[69]

九州大学で行われた、成人男性(健常者)を対象とした臨床試験において、信頼ゲーム (Trust gameで 強い 状態不安 が観察され、スコアが低い 傾向であった。ミノサイクリン投与群における実験のスコアと、:TCI:STAIの尺度との間に相関を認めた[70][71][72]

エストラジオール誘発性PGE2上昇をミノサイクリン 0.2 µg / 0.2 µL 脳室内投与により阻害し、男性脳化を阻止した。発達中の脳におけるミクログリア M1 が陽性であったという事実は、潜在的に炎症誘発性分子が成人の脳の病気や怪我の状態での損傷の役割とは対照的に、発達中の脳内の異なる、有益な役割を果たしていることを強調している[73]

AM-251[74]とAM-630[75]は、マウスにおける外傷性脳損傷 (TBI後のミノサイクリン誘導性神経保護を阻止した。この結果は、脳浮腫神経障害びまん性軸索損傷、およびミクログリア活性化に対するミノサイクリンの神経保護におけるエンドカンナビノイドシステム (ECS) 関与の最初の証拠を提供した[76]

ミノサイクリンの神経保護の全てはAM-630により阻止された。ミノサイクリンはミクログリアにおけるカンナビノイド2受容体発現mRNA タンパク質の増加につながることを見出した。JWH-133[77]がミノサイクリンと同一の神経保護を示したという仮説を強化した[78]

ミノサイクリンは、一時的にミクログリアとマクロファージの活性化を減少させるが、新生仔ラットにおける反復的な外傷性脳損傷後の認知障害を悪化させる。ミノサイクリン処置動物は損傷によって誘発された空間的な記憶障害を悪化させることを実証した[79]

小学生の頃から覚せい剤 (Stimulantを使用していた17歳の覚せい剤精神病 (Stimulant psychosis患者(女性)が、抗精神病薬 (Antipsychoticなどの複数の薬剤で数カ月治療を続けたが目立った効果がなく、ミノサイクリン 100 mg/日 (朝夕2回)を追加したところ大幅な改善が見られ、副作用もなかったとのこと[80]

マウス 25-50 mg/kg 経口単回投与はヒト 100-200 mg 経口単回摂取と Cmax が同等であると示された[81]

臨床試験[編集]

  • ミノサイクリンの鎮痛効果の検証を目的とした第III相の臨床試験が行われている[82]
  • 2014年から大うつ病性障害の補助療法としてミノサイクリンの有効性を検証する第III相の臨床試験が行われている[84]
世界各地で精神病治療薬として臨床試験が行われている[85]

2014年6月までの「PubMedPsycINFO英語版Google ScholarCochrane Library databases」のRCTメタ分析した結果では、PANSS陰性症状スコアと総合スコアを低減し、副作用の錐体外路症状スコアがプラセボよりも低く、忍容性が良好であった。陽性症状スコアと抑うつ症状はプラセボと差がなかった[86]

抗炎症作用と神経保護作用[編集]

近年の研究結果では、ミノサイクリンが、神経変性疾患、とくに多発性硬化症関節リウマチ筋萎縮性側索硬化症ハンチントン病パーキンソン病[87]といった一連の神経変性疾患に対して、神経保護英語版と抗炎症作用を示しうることが報告された[88][89][90]

ミノサイクリンの神経保護には、脳の老化に関係している炎症酵素のアラキドン酸-5-リポキシゲナーゼ阻害作用[8][91]がかかわっている可能性があり、アルツハイマー症患者への適用が研究されている[92]。ミノサイクリンは、エイズ患者のトキソプラズマ症に対する 土壇場治療薬としても使用されている。ミノサイクリンはALSやハンチントン病のモデルマウスで神経保護を示し、またヒトで2年間以上にわたってハンチントン病の経過を安定させることも示された。

抗炎症薬としては、ミノサイクリンは、炎症を起こす前のサイトカインの出力を抑制することによって腫瘍壊死因子 (TNF-α) のはたらきを減弱させ、これにより細胞のアポトーシスを阻害する。この効果は、活性化T細胞小膠細胞へミノサイクリンが直接作用することによってもたらされ、その結果、T細胞の小膠細胞との連絡能力を減衰させ、T細胞-小膠細胞シグナル伝達によるサイトカインの産生を減少させる[93]。ミノサイクリンは、NF-κB核内転写を阻害することにより、小膠細胞の活性化も抑制する。

ミノサイクリンの神経保護は、その抗炎症能とは無関係に機能すると考えられている[94]

最近の研究で、24か月間にわたる非盲検のミノサイクリン治療による、多発性硬化症の患者における臨床上および核磁気共鳴画像法 (MRI) および血清免疫分子に対するミノサイクリンの効果が報告された。研究に先立ち、患者らがやや高い割合で疾患を再発したものの、6か月めから24か月めまでのあいだ、再発は一例も起きなかった。12か月めから24か月めまでの間MRIでガドリニウム強調病変を有していた唯一の患者は、ミノサイクリンの投与量が半量にされた。インターロイキン-12の血中濃度は、高いとIL-12レセプタに拮抗作用を示しうるが、治療期間の18か月にわたり上昇し、水溶性血管細胞接着分子-1 (VCAM-1) の血中濃度と同様の傾向を示した。マトリックスメタロプロテアーゼ-9の活性は治療によって減衰した。この研究での臨床上およびMRI結果は、全身性免疫学的変化によって支持されたものであり、多発性硬化症におけるミノサイクリンのさらなる考察が待たれる[95][96][94][97]

2007年の研究では、脳虚血発作を起こしてから24時間以内に200mgのミノサイクリンを5日間にわたり服用した患者では、プラセボを服用した患者と比較して、脳機能と発作の激しさが3か月以上にわたって改善されるという結果が出た[98]

ミノサイクリンは、炎症性サイトカイン誘発の神経幹細胞に対する神経膠腫遺伝子効果を軽減する[99]

脚注[編集]

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外部リンク[編集]