ミニ独立国
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ミニ独立国(ミニどくりつこく)は、日本国内において地域振興や自然保護運動の手段として「建国」を標榜する活動、およびその成果である「国家」のことである。
概要[編集]
観光客の増加など地域の振興を目的とした宣伝の一環として架空の国家を建国する形態が多い。政治的・思想的な主張からの独立運動や民族自決とは違い、現実に日本国からの分離独立を主張しているわけではないため国際機関によって承認されることはなく、主催者も正式な国家の設立を目的としてはいない。個人や少人数で独立を宣言するミクロネーションと関連付けられることもあるが、思想や信念ではなく観光客の増加など宣伝を目的にしていることが違いとされる。このため商工会・観光協会などが主体となって運営していることが多いが、町や村など地方自治体レベルで行っていることもある。
自治体の住民を『国民』、首長(市町村長)を『国家元首』としている国が多いが、観光大使や広報大使を国家元首に任命する国もある。
1977年8月に「独立宣言」をした新邪馬台国(大分県宇佐市)が第1号[1]。
東北地方の小さな村が突如日本から独立するという1981年に刊行された井上ひさしの小説『吉里吉里人』がヒットしたことをきっかけに、1982年に小説の舞台と同名の吉里吉里という地区を抱える岩手県大槌町が、町おこしの一環として「吉里吉里国」として独立宣言する。これが話題となったことから各地でミニ独立国の建国が相次ぐミニ独立国ブームが起こり、最盛期には200カ国を数えた。1986年にはミニ独立国オリンピックが銀杏連邦(東京都八王子市)で開かれ、テレビのゴールデンタイムで放送されるなどの盛り上がりを見せた。しかし、乱立によりインパクトが無くなったこと、後発国の無計画性などで飽きられ、ブームは沈静化した。1990年代から財政難や運営主体となっていた自治体の合併、『国民』の高齢化などさまざまな理由で減少し、2010年代に活動しているミニ独立国は少ない。
ミニ独立国国際連合[編集]
ミニ独立国国際連合(ミニどくりつこくこくさいれんごう)は、ミニ独立国同士の交流を目的に発足。年1回、ミニ独立国サミットと称する国連総会を開催している。吉里吉里国とサミットを開催した国が常任理事国となっている[2]。
1983年(昭和58年)に、第1回ミニ独立国サミット(USAサミット)が大分県宇佐市の新邪馬台国で開かれた。1984年(昭和59年)までは年2回、1985年(昭和60年)からは毎年1回開催されている[2]。
主なミニ独立国の一覧[編集]
- シャンシャン共和国(北海道室蘭市)
- 別海ミルク王国(北海道別海町)
- ウソタン砂金共和国(北海道枝幸郡浜頓別町)
- サンライズ王国(北海道紋別郡雄武町)
- 流氷あいすらんど共和国(北海道紋別市)
- ゆあみさわ村(北海道岩見沢市)[3]
- ポテト共和国(北海道ニセコ町)[3]
- クサグラーケ共和国(北海道倶知安町)[3]
- オルレアン84(北海道椴法華村)[3]
- 秋田カエル村(秋田県西仙北町)
- カシオペア連邦(岩手県二戸市、一戸町、九戸村、浄法寺町、軽米町)
- 吉里吉里国(岩手県上閉伊郡大槌町)
- ジパング国会津芦ノ牧藩(福島県会津若松市)
- ニコニコ共和国(福島県二本松市岳温泉、2006年、日本国と合併[4])
- まほろば連邦(宮城県大和町ほか、平成の大合併に伴い、2004年4月18日に解散[5])
- アルコール共和国(新潟県佐渡市)
- 立山連邦王国(富山県高岡市)
- 白山連峰合衆国(石川県旧鶴来町ほか、平成の大合併に伴い、2004年11月30日に事業終了、同年度末に解散[6])
- 西さがみ連邦共和国(神奈川県小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町、2010年4月統合解散[7])
- いかんべ共和国(栃木県那須郡南那須町、2005年10月1日、合併により終了)
- 天狗王国ゆづかみ(栃木県那須郡湯津上村)
- チロリン村(京都府宮津市)
- カニ王国(兵庫県城崎郡城崎町)
- そやんか合衆国(大阪府大阪市大正区、現存せず[8])
- ツチノコ共和国(奈良県吉野郡下北山村)
- イノブータン王国(和歌山県すさみ町)
- いずもオロチ王国(島根県出雲市)
- チカチカ共和国(愛媛県松山市)
- いなつき河童共和国(福岡県嘉麻市 稲築町)
- 新邪馬台国(大分県宇佐市、新型コロナウイルス感染症の流行を機に2020年、10年ぶりに活動を再開[9])
- ひしかりガラッパ王国(鹿児島県伊佐郡菱刈町)
- ヨロンパナウル王国(鹿児島県大島郡与論町)
- 銀河連邦(宇宙航空研究開発機構関係市町)
- しそう森林王国(兵庫県宍粟郡、現宍粟市)
- カセットボーイ共和国(国土なし、アイワによるイベント形式)
- ぺんた共和国(佐賀県 七山村、厳木町、富士町、三瀬村、脊振村)
- 川南合衆国(宮崎県児湯郡川南町)
- 末吉社会主義共和国連邦(鹿児島県曽於市末吉町)
ミニ独立国をテーマとした作品[編集]
- 吉里吉里人
- 1981年に発表された井上ひさしの長編小説。東北地方の寒村が独立宣言を行う。ブームのきっかけとなった。
- サクラクエスト
- 2017年に放送されたテレビアニメ。ブームの終焉により寂れたミニ独立国「チュパカブラ王国」の2代目国王(観光大使)となった主人公が、仲間たちと共に地域おこしを開始する。
出典[編集]
- ^ “サントリー地域文化賞 地域別受賞者一覧 新邪馬台国”. サントリー文化財団 (1999年11月). 2016年12月22日閲覧。
- ^ a b “ミニ独立国国際連合”. ツチノコ共和国. 2016年12月22日閲覧。
- ^ a b c d ミニ独立国が一同に北海道連邦岩見沢サミット - 岩見沢新聞1986年8月4日
- ^ “ニコニコ共和国の観光戦略”. 岳温泉 陽日の郷あづま館 (2006年8月22日). 2012年12月22日閲覧。
- ^ “大和市のあゆみ(年表)市制施行以後” (PDF). 大和市. p. 5. 2012年12月22日閲覧。
- ^ “第17回合併協議会会議録” (PDF). 松任・石川広域合併協議会. p. 7 (2004年8月20日). 2012年12月22日閲覧。
- ^ 西さがみ連邦共和国|小田原市 小田原市
- ^ 大正デモクラシー
- ^ コロナと戦うため「新邪馬台国」開国 宇佐の「ミニ独立国」10年ぶりに活動 「アマビエ」シール販売 /大分、毎日新聞、2020年6月13日地方版。
参考文献[編集]
- 白石 太良「地域づくり型ミニ独立国のいま--4つの事例から」『流通科学大学論集, 人間・社会・自然編』第22巻第2号、流通科学大学学術研究会、2010年1月、2010-01頁、ISSN 13465538、NAID 40017002333。
- 大塚亮太、初沢敏生「わが国におけるミニ独立国運動の特徴」『福島地理論集』第47巻、福島地理学会、2004年9月、16-22頁、ISSN 09196854、NAID 40006612866。
- 瀬沼克彰「第16回全国ミニ独立国サミットに出席して (特集 「地域学」と生涯学習)」『社会教育』第52巻第11号、全日本社会教育連合会、1997年11月、39-41頁、ISSN 13425323、NAID 40001633873。
- 倉原 宗孝、後藤由紀・日景敏也「住民主体のまちづくりに向けての北海道ミニ独立国の活動に関する考察」『日本建築学会計画系論文集』第488号、日本建築学会、1996年10月30日、165-175頁、ISSN 13404210、NAID 110004654464。
- 後藤有紀、倉原宗孝「7376 北海道ミニ独立国の活動にみる地域・自己の世界生成に関する考察 : その2. 5つの典型事例にみる考察」『学術講演梗概集. F, 都市計画, 建築経済・住宅問題, 建築歴史・意匠』、日本建築学会、1994年7月25日、751-752頁、ISSN 09150161、NAID 110004205747。
- 倉原宗孝、後藤有紀「7375 北海道ミニ独立国の活動にみる地域・自己の世界生成に関する考察 : その1. 道内の独立国の概要」『学術講演梗概集. F, 都市計画, 建築経済・住宅問題, 建築歴史・意匠』、日本建築学会、1994年7月25日、749-750頁、ISSN 09150161、NAID 110004205746。
- 倉原宗孝、後藤有紀「095 北海道ミニ独立国の活動にみる生活者意識・行動の生成過程とその評価(まちづくり,都市計画)」『日本建築学会北海道支部研究報告集』第67号、日本建築学会、1994年3月18日、377-380頁、ISSN 13440705、NAID 110006879437。
- 白石太良「地域づくり型ミニ独立国運動の変容(II)」『流通科学大学論集. 人文・自然編』第5巻第1号、流通科学大学、1992年9月30日、1-10頁、ISSN 09153047、NAID 110000508858。
- 白石太良「地域づくり型ミニ独立国運動の変容」『流通科学大学論集. 人文・自然編』第4巻第1号、流通科学大学、1991年9月30日、93-116頁、ISSN 09153047、NAID 110000508846。
- 白石太良「<研究ノート>ミニ独立国運動による地域づくりの現況 : アンケート調査の整理を中心に」、流通科学大学、1990年9月30日、ISSN 09153047、NAID 110000508834。
- 白石太良「兵庫県における村おこし型ミニ独立国の動向」『流通科学大学論集. 人文・自然編』第2巻第1号、流通科学大学、1989年9月30日、23-40頁、ISSN 09153047、NAID 110000508811。
- 大沼一雄「過疎の町・過疎の島-2-瀬戸の海に浮かぶミニ独立国」『地理』第31巻第12号、古今書院、1986年12月、97-102頁。
- 小林章「「ミニ独立国」「○○村」構想は商業の販促に利用できる(2)村おこしから始まる商業活性化」『商店界』第71巻第8号、誠文堂新光社、1990年8月、134-136頁。
- 内閣府、総理府「ミニ独立国"チクリン村"で町おこし――(鹿児島県・宮之城町)」『時の動き』第12巻第8号、国立印刷局、1988年1月、74-76頁。