ミニ政党

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ミニ政党(ミニせいとう)とは、規模の小さな政党のこと。

日本のミニ政党[編集]

ミニ政党とは、一般的に少数の国会議員を有する政党及び所属国会議員のいない政党・政治団体のことを指す。また、法律上の政党要件(1994年に制定された)を満たさない政治団体のみを指すこともある[1]。これらの政党・政治団体は報道などで諸派(しょは)と総称される。

参議院議員選挙[編集]

1983年、第13回参院選より全国区に代わって政党名のみを記載して投票する「比例代表選出議員選挙」を取り入れるようになった。このため、比例区に出馬するには政党の形を取らなければならなくなった(制度上は確認団体)。そこで、これまで無所属で全国区に出馬していた候補などにより、ミニ政党といわれる小規模の政党・政治団体が相次いで結成され、候補を立てて話題になった。この選挙で2議席を獲得したサラリーマン新党を筆頭に、第二院クラブ福祉党MPD・平和と民主運動無党派市民連合雑民党教育党地球維新党UFO党日本世直し党などがある。右翼団体左翼団体市民団体の一部もミニ政党として候補を立てたが、議会活動は視野に入れていない団体が多く、大多数の団体は候補を擁立していない。

しかし、1986年、1995年の選挙と相次いで供託金が引き上げられた。加えて1995年には確認団体に認められていた無料広告に「得票率が1%を切った場合は実費負担[注 1]」の制限が付いたのをきっかけに、ミニ政党の立候補が激減。特に無料広告の事実上の廃止はミニ政党への負担が重い。

ミニ政党が比例区で議席を獲得したのは1995年参院選の第二院クラブをもって20年以上途絶えていた。保守党は参議院選挙の獲得議席はミニ政党並みだが、衆議院選挙では所属議員個人の力である程度の議席を得ていた。

2004年の参院選比例区に、5大政党(自民民主公明共産社民)以外の政党(正確には政治団体)で候補を擁立したのはわずか3つだけ(みどりの会議女性党維新政党・新風。他に選挙区のみで世界経済共同体党、いずれも当選なし)となった。

2019年の参院選においては、れいわ新選組、NHKから国民を守る党(現・みんなでつくる党)の2つの政治団体が比例代表で議席を獲得した。それぞれ比例、選挙区で2%を獲得したことにより、要件を満たした政党となる。

続く2022年の参院選においても、参政党が比例代表で議席を獲得し、比例、選挙区のそれぞれで2%を超える得票を獲得したため、要件を満たした政党となった。

衆議院議員選挙[編集]

衆議院選挙では、第二次世界大戦敗戦直後の混乱期を例外として、ミニ政党が候補を立てても、議席を得た例はほとんど無い。また、議席を得た例でも、ほとんどがほどなく大政党に吸収されている。戦後長く用いられた「都道府県を基礎とする中選挙区制」は基本的にミニ政党には不利な制度であった。例外的なものとして社会民主連合が衆議院最大4議席の小勢力ながら15年間国会に勢力を維持したことがあった。また自由連合は、創立者の徳田虎雄が自由民主党へ一度は入党したが、日本医師会の意向で追放されたのちに結成されたいきさつもあり、虎雄の引退後も存続していた。しかし、虎雄の息子である徳田毅が一度は党代表を継いだが、その後自由民主党へ入党した。

衆議院に小選挙区比例代表並立制が導入されて以降に、政党助成法上の政党要件を満たしていない政治団体が比例区に立候補した例としては、2000年の衆院選において東京ブロックに候補者を擁立した社会党(現在の社会民主党とは無関係)、2005年の衆院選および2009年の衆院選2017年の衆院選において北海道ブロックに候補者を擁立した新党大地、第45回衆院選及び2012年の衆院選、2014年の2014年の衆院選、第48回衆院選において全11ブロックに候補者を擁立した幸福実現党、2009年の第45回衆院選において北海道ブロックに候補者を擁立した新党本質、2014年の第47回衆院選における北海道ブロックと2017年の第48回衆院選における東京ブロックに候補者を擁立した支持政党なしの例があり、現在のところ新党大地のみが衆議院の比例区で議席を獲得した唯一の政党要件を満たさない政治団体となっている。

また、地域政党では、沖縄社会大衆党参議院に議席を有している。沖縄社大党は過去複数回議席を獲得したことがあるが、与党入りしたことはなく、扱いは一貫して諸派である。

中選挙区制時代には衆院選でも確認団体制度が存在し、日本労働党雑民党国民党などが確認団体となっている。1996年の小選挙区制導入後は確認団体制度が廃止され、ミニ政党の立候補そのものが極めて困難となっている。そのため、新党結成に際しても、全くの新規参入は少なく、既成の国会議員を引き入れ、政党要件である5人の国会議員を確保して結党する例が多い(日本維新の会など)。

欧米のミニ政党[編集]

ドイツ[編集]

ドイツでは連邦議会および各州の議会に5%阻止条項があるため、これを乗り越えられない政党はミニ政党(Kleinpartei)として扱われる。

アメリカ[編集]

アメリカでは民主党共和党二大政党制が確立しているため、それ以外のミニ政党は第三党英語版と呼ばれる。連邦議会はいずれかの二大政党所属議員が大多数を占める「多数党」(Majority)と「少数党」(Minority)の2会派で構成され、第三党所属議員もどちらかの会派に加わらなければ十分に院内活動が行えない。また公営予備選挙が二大政党にのみ提供される州も多く、大手マスメディアの討論会も通常は二大政党の候補のみで行われる。このように第三党での活動には障害が多い一方で、人気と資金の獲得能力さえあれば二大政党の予備選挙への参入は容易であるため、政治家が二大政党に集約される傾向がある。

なお、二大政党以外の地域政党が特定の州において一定の勢力を維持し続けることはある(バーモント進歩党)。また、地域政党が二大政党の州組織と合併し、二大政党の系列に属する地域政党となることもある(ミネソタ民主農民労働党ノースダコタ民主=無党派連盟党英語版[注 2])。1968年アメリカ合衆国大統領選挙では民主党が分裂し、アメリカ独立党が五つの州で共和党・民主党を破って1位になり選挙人46人獲得しているが、支持層がもう一方の二大政党である共和党に吸収されるなどしてその後の活動は低調であり、州をまたぐ第三党が勢力を維持することは難しい。

韓国のミニ政党[編集]

韓国では2020年の総選挙から新たな準連動型比例代表制が導入され、小選挙区の獲得議席が少ない政党に、比例代表の得票率に応じて30議席を配分する制度が導入された[2]。この制度は多様な民意を国政に反映させる目的で導入されたが、未来統合党が比例代表の議席を拡大するためミニ政党「未来韓国党」を設立し、共に民主党もミニ政党の「共に市民党」を結党した[2]。選挙の結果、ミニ政党「未来韓国党」とミニ政党の「共に市民党」が比例議席の8割近い36議席を獲得したが、多数党によって結成されたミニ政党であり京郷新聞などから批判を受けた[2]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 通常の新聞広告は、出稿料が定価より値引きされることが多い。しかし、選挙広告は必ず定価となるため、負担額は大きくなる。ただし、定価の設定は新聞社によって違い、全国紙は通常広告の定価よりやや安く、逆に地方紙は高くする傾向にあるという。(『週刊ポスト』2010年7月16日号「国民の皆さん、知ってますか!? 血税年間200億円を貪る大新聞テレビ《選挙ビジネス》のカラクリ」)
  2. ^ 日本語名は 竹尾隆 <論説>アメリカにおける二大政党制の特質 神奈川法学 12巻 2/3号, pp.145-225(1976年)における前身政党NPLの訳「無党派連盟」(非政党同盟)による。

出典[編集]

  1. ^ 東奥日報 ニュース百科「ミニ政党」 2007年9月14日
  2. ^ a b c 二大政党、選挙制度骨抜き 議席の地域偏重復活 韓国・総選挙”. 西日本新聞. 2021年9月27日閲覧。

関連項目[編集]