ミナミメダカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミナミメダカ
Oryzias latipes(Hamamatsu,Shizuoka,Japan,2007)-1.jpg
ミナミメダカ(メス) 浜松市
Nihonmedaka.jpg
ミナミメダカ(オス)静岡県富士市
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 顎口上綱 Gnathostomata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 棘鰭上目 Acanthopterygii
: ダツ目 Beloniformes
亜目 : メダカ亜目 Adrianichthyoidei
: メダカ科 Adrianichthyidae
亜科 : メダカ亜科 Oryziinae
: メダカ属 Oryzias
: ミナミメダカ O. latipes
学名
Oryzias latipes
(Temminck et Schlegel, 1846)
英名
Japanese rice fish
Japanese medaka
Japanese killifish
ミナミメダカとカダヤシの違い

ミナミメダカ(南目高、学名Oryzias latipes)は、ダツ目メダカ科メダカ属に分類される硬骨魚類の一種。淡水魚体長 4センチメートル程度の小魚である。

名称[編集]

学名のうち、種小名の latipes(ラティペス)は、「広い足」を意味するラテン語 "lātipēs(ラーティペース)" であり[語構成: la: lāti-(=wide. 広い)+ pēs(=foot. )]、「広いひれ)を有する」の意味で用いられている。属名 Oryzias(オリュジアス、オリジアス)のほうは、「」や「イネ(稲)」を意味する後期ラテン語 (Late Latin "orȳza(オリューザ)" か、あるいはそれを語源とするイネの学名 "Oryza" のいずれかと、ラテン語名詞作成用接尾辞との組み合わせで造語されており[語構成: Late Latin: orȳz(a)(=rice. 稲…)〈もしくは、New Latin: Oruz(a)〔イネの学名 Oryza〕〉+ la: -ias(= …の者、…にゆかりの者)]、「稲にゆかりの者」、あるいは意訳で「稲の周りにいる者」などと訳すべき語になっている。したがって、属名と種小名を合わせた本種の学名には、「広い鰭を持つ、稲にゆかりの者」あるいは「広い鰭を持つ、稲の周りにいる者」という意味があり、種を特定する名称になっている。

生物的特徴[編集]

従来はキタノメダカと共にメダカ1種とされていたが、2012年にキタノメダカと分離された。学名は旧「メダカ」のものを本種が引継ぎ、キタノメダカは新設された。本種とキタノメダカは遺伝的には別種といってよいほど分化英語版がみられるが、生殖的隔離は観察できず、両者の分布境界にあたる丹後但馬地方では雑種の存在が確認されている[1]。この大きな遺伝的分化は少なくとも400〜500万年前には発生していたと推定されている[1]

本種は、アロザイム (Alloenzyme分析によれば生息している水域ごとに「東日本型」「東瀬戸内型」「西瀬戸内型」「山陰型」「北部九州型」「大隅型」「有明型」「薩摩型」「琉球型」の9種類の地域型に細分されるとの結果がでている[1]。さらに、ミトコンドリアDNAの解析からは、これらの水域ごとの遺伝的に異なる個体群にはそれぞれ相互に異なる環境適応の構造が検出されている[2]

日本外来種カダヤシとよく似ており、間違われることがある(■画像も参照のこと)。よく見掛けるカダヤシがミナミメダカと誤認されていることで、「メダカは今でも変わらず十分な数が生きている」「世間で言われているほどには減っていない」などという勘違いが、少なからず一般人の認識として散見される[3]ことは、種の保全の観点から危惧すべき問題点の一つである。

保全状態[編集]

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

Status jenv VU.svg

環境省レッドリスト絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト)(絶滅の危険が増大している種)として記載されている。以前は「メダカ」1の記載であったが、2013年2月の第4次レッドリストでは「メダカ南日本集団 (Oryzias latipes)」に分けて記載された[4]

参考文献[編集]

  • 竹花佑介[人 1]、北川忠生「メダカ:人為的な放流による遺伝的攪 < 日本の希少魚類の現状と課題」(PDF)『魚類学雑誌』第57巻第1号、日本魚類学会、2010年4月26日、76-79頁。 CRID 1390282680489286656doi:10.11369/jji.57.76

関連文献[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c 竹花 & 北川 (2010), p. 77.
  2. ^ 竹花 & 北川 (2010), p. 82.
  3. ^ マーシー 20210803.
  4. ^ 環境省報道発表資料「第4次レッドリストの公表について(汽水・淡水魚類)」 (別添資料7)環境省第4次レッドリスト(汽水・淡水魚類)[リンク切れ]
研究者
  1. ^ 竹花 佑介”. KAKEN. 文部科学省日本学術振興会. 2022年9月13日閲覧。
  2. ^ 入口 友香”. researchmap. 科学技術振興機構 (JST). 2022年9月13日閲覧。
  3. ^ 須山 知香”. KAKEN. 文部科学省、日本学術振興会. 2022年9月13日閲覧。
  4. ^ 尾田 正二”. KAKEN. 文部科学省、日本学術振興会. 2022年9月13日閲覧。
  5. ^ 中尾 遼平”. KAKEN. 文部科学省、日本学術振興会. 2022年9月13日閲覧。

外部リンク[編集]