マンデラ効果

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マンデラ効果(マンデラこうか : Mandela Effect)またはマンデラ・エフェクトとは、事実と異なる記憶を不特定多数の人が共有している現象を指すインターネットスラング、およびその原因を超常現象陰謀論として解釈する都市伝説の総称である[1][2][3][4]

南アフリカの指導者ネルソン・マンデラの死亡時期について誤った記憶を持つ人が大勢現れたことに由来する造語で、それ以外の事例に対しても広く用いられている。

定義[編集]

大勢の人々が事実と異なる記憶を共有している現象を指す俗語で、主にサブカルチャーに関するインターネットコミュニティで使われるものである[5][6]。その原因を超常現象によるものとする空想的な解釈から比喩的に「効果」と称しているが、因果関係が解明された学術用語としての効果には該当しない。

より厳密には、記憶の元となった情報源が一切実在しないこと、関連する事実や記憶との整合性からその記憶の確かさや信憑性が裏付けられていること、ならびに社会的・地理的に関わりのない不特定多数によって一貫してその記憶が共有されていることを要件とする[6][7]。よって一般には、記憶の不確かさによる個人的な虚偽記憶とは異なる概念とされる。また、実在する誤報風説などに由来する謬説死亡説などの広く信じられた誤解)や、限られた集団の中だけで信じられている共同幻想の類は含まれないものとされる。

発祥と普及[編集]

「マンデラ効果」という用語は南アフリカの指導者ネルソン・マンデラに由来し、実際には2013年まで生存していたマンデラについて、それより以前の1980年代に獄中死したという誤った記憶を持つ人が大勢現れた現象に対して用いられたものである。これはアメリカの超常現象研究家フィオナ・ブルームが提唱した概念で、同氏が2009年にサブカルチャーイベントのドラゴン・コンに講演者として参加した際にイベントスタッフから聞いたマンデラ獄中死の記憶を持つ人々の体験談に端を発するとされる[8][9]。ブルームはそれらの体験談が自身もかつて体験したマンデラ獄中死の記憶と同じであったことに注目し[10]、この現象を合理的に完全には説明し得ない一種の超常現象と解釈した。

2010年にブルームが「The Mandela Effect」サイト(外部リンク参照)を開設したところ、同じような経験を持つ人たちからのコメントが数万件も寄せられ、マンデラ獄中死以外にも数多くの事実と異なる記憶が大勢の人々によって共有されていることが判明した[5]。2013年にアメリカのコミュニティサイトのRedditでも専用のサブレディット[11]が開設され、多くの体験談や考察が語られるようになった。

2015年頃より子供向け絵本『バーンスタインベアーズ』のスペルに関する事例(後述)によってマンデラ効果がネット上で注目を集めるようになり[5]、2017年にはKnow Your Memeのエピソード[12]に採用されるなどインターネット・ミームとして定着するようになった。ドラマ『X-ファイル』シーズン11のエピソードにも登場し、一般にも広く知られる概念となった。

日本では2017年にオカルトニュースサイトのTOCANA[13]や月刊誌ムー[1]で紹介され、以後「マンデラ効果」という用語がオカルトや超常現象に関するインターネットコミュニティで使われ始めるようになった。

事例[編集]

ネット上でマンデラ効果として語られている主な記憶の事例を以下に挙げる[14][15]

有名人の生死に関するもの[編集]

地理に関するもの[編集]

  • アメリカの州の数が実際よりも多い51か52であった記憶。

作品の内容やキャラクターに関するもの[編集]

  • 実際には存在しない台詞の記憶:レクター博士の「ハロー・クラリス」、白雪姫の「鏡よ、鏡、鏡さん」など。
  • C-3POが全身金色で片脚だけが銀色だったことはなかった記憶。

事件に関するもの[編集]

  • 天安門事件の無名の反逆者が戦車の前から立ち去ることはなく轢き殺された記憶。

作品名や商標に関するもの[編集]

日本固有の事例[編集]

日本ではマンデラ効果が提唱される2009年以前から、ファンタ・ゴールデンアップル天空の城ラピュタの別エンディング、ならびに事実だと信じられていた有名人死亡説など、現実には存在しない事物に関する具体的な記憶が不特定多数で共有されている現象がいくつか知られていた。これらはネットなどで都市伝説として語られていたものであるが、後に日本固有のマンデラ効果の事例とみなされるようになった。

原因の解釈[編集]

都市伝説としての解釈[編集]

ネット上でマンデラ効果について言及される場合は、超常現象や陰謀論を前提とした都市伝説として語られるのが通例である。

その原因の解釈として様々なものが語られているが、パラレルワールドからの記憶の干渉や、仮想現実の不具合によるものとする説が主流となっている[16]。またスピリチュアル理論による解釈も試みられており、ダリル・アンカは宇宙生命体バシャールからのメッセージとして、マンデラ効果が意識の拡大によってパラレルワールドの記憶を認識することによるものであると主張している[17]

提唱者のブルーム自身は量子論多世界解釈疑似科学的な解釈を援用したパラレルワールド説を好んで引き合いに出し、それが同氏の主張としてしばしば紹介されているが[1][4]、ブルーム本人はそれはあくまで空想的な考察の一つであり、絶対的な主張として述べたものではないとしている[18]

懐疑論[編集]

懐疑主義の立場からは、マンデラ効果を人間の記憶の不確かさによる虚偽記憶としている主張が多く見られる。主な説としては、他の記憶からの連想によるものとする説、記憶の抽象化や再構築の過程で生じた作話によるものとする説、フェイクニュースの影響によるものとする説などが挙げられる[2][4][19][20]

ブルームはマンデラ効果の事例の中にも、それら懐疑的な理論で説明できるものがあることを認めている。しかし、それらは同じ記憶が不特定多数で広く共有されている事実について十分に説明できるものではなく、全ての事例について合理的に説明できる有力な説は現在のところ存在しないと主張している[18]

学術的な研究[編集]

マンデラ効果のように事実と異なる記憶を多くの人が共有する現象は、学術的には集合的虚偽記憶: Collective False Memory)と称し、その現象の認知科学的な解明が試みられている。

2009年にイタリアの認知科学者ステファニア・デヴィートらは爆破テロ事件によって故障したボローニャ中央駅の時計の記憶に関する研究で集合的虚偽記憶が実際に起こり得ることを実証し[21]、この現象は多くの人々に印象付けられた集合的な記憶像が関連する記憶に干渉して起きたものと結論した[22]。また、集合的虚偽記憶が多くの人々に共有された認知的な要因によるものとする説[23]や、社会的圧力への同調によるものとする説[24][25]も提唱されている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 宇佐和通 (2017年8月31日). “ニセ記憶による歴史改竄!? マンデラ効果都市伝説”. ムーPLUS. 学研プラス. 2019年1月20日閲覧。
  2. ^ a b McPherson, Douglas (2016年9月20日). “Are you living in an alternate reality? Welcome to the wacky world of the 'Mandela Effect'” (英語). The Telegraph (London). https://www.telegraph.co.uk/news/2016/09/20/are-you-living-in-an-alternate-reality-welcome-to-the-wacky-worl/ 2019年1月20日閲覧。 
  3. ^ Martin, Sean (2017年2月4日). “Mandela Effect: Conspiracy theorists state MEMORIES seep over from parallel universes” (英語). Express (London). https://www.express.co.uk/news/weird/763194/Mandela-Effect-Conspiracy-theory-parallel-universes 2019年1月20日閲覧。 
  4. ^ a b c Dagnall, Neil; et al. (2018年2月15日). “The Mandela effect: Explaining the science behind false memories” (英語). Independent (London). https://www.independent.co.uk/news/science/mandela-effect-false-memories-explain-science-time-travel-parallel-universe-matrix-a8206746.html 2019年1月20日閲覧。 
  5. ^ a b c Broome, Fiona. “About” (英語). The Mandela Effect. 2019年1月20日閲覧。
  6. ^ a b Broome, Fiona (2018年6月17日). “Mandela Effect - What is it?” (英語). YouTube. 2019年1月20日閲覧。
  7. ^ Broome, Fiona (2018年6月17日). “Mandela Effect - What to do if your memories are different” (英語). YouTube. 2019年1月20日閲覧。
  8. ^ Broome, Fiona (2010年9月9日). “Nelson Mandela Died in Prison?” (英語). The Mandela Effect. 2019年1月20日閲覧。
  9. ^ 「マンデラ効果(Mandela Effect)」の命名者は一般にブルームとされているが、最初にその用語を用いたのが誰であるのか明らかになっていない。
  10. ^ ブルームは自身がテレビで見たと記憶しているマンデラ追悼式の様子が他の人たちの体験談と一致し、同氏があえて伏せていた詳細についても完全に同じ内容であったと主張している。
  11. ^ r/MandelaEffect” (英語). Reddit. 2019年1月20日閲覧。
  12. ^ Spool, Ari. “The Mandela Effect” (英語). Know Your Meme. 2019年1月20日閲覧。
  13. ^ 仲田しんじ (2017年5月8日). “「記憶違い(マンデラ効果)」がパラレルワールドの影響であることを証明する10例! あなたの勘違いも並行宇宙情報かも!?”. TOCANA. サイゾー. 2019年1月20日閲覧。
  14. ^ Broome, Fiona. “Mandela Effect Examples – Memories/Comments” (英語). The Mandela Effect. 2019年1月20日閲覧。
  15. ^ Mandela Effect Wiki” (英語). Reddit. 2019年1月20日閲覧。
  16. ^ Broome, Fiona. “Theories” (英語). The Mandela Effect. 2019年1月20日閲覧。
  17. ^ ダリル・アンカ、喜多見龍一 『BASHAR 2017 世界は見えた通りでは、ない』 ヴォイス、東京、2017年ISBN 978-4-89976-470-0
  18. ^ a b Broome, Fiona (2018年5月17日). “Misinterpreting the Mandela Effect” (英語). 2019年1月20日閲覧。
  19. ^ Ludden, David (2015年11月9日). “Ben Carson and the Mandela Effect” (英語). Psychology Today. Sussex Publishers. 2019年1月20日閲覧。
  20. ^ Resnick, Brian (2018年7月24日). “We’re underestimating the mind-warping potential of fake video” (英語). Vox. 2019年1月20日閲覧。
  21. ^ 時計は実際には1980年の事件直後すぐに修理され、以後自然故障する1996年まで動き続けていたが、駅の利用者や職員の9割以上が、時計は事件発生から現在までずっと止まったままだったと記憶していた。なお、1996年に止まった時計は以後修理はされず、事件のシンボルとして事件発生直後と同じ状態で保存されている。
  22. ^ De Vito, Stefania; et al. (2009年5月). “Collective representations elicit widespread individual false memories” (英語). Cortex 45 (5): 686-687. https://www.researchgate.net/profile/Stefania_De_Vito/publication/256375079_Collective_representation_elicit_widespread_individual_false_memories/links/00463530cced638f87000000/Collective-representation-elicit-widespread-individual-false-memories.pdf 2019年1月20日閲覧。. 
  23. ^ Aamodt, Caitlin. “Collective False Memories: What’s Behind the ‘Mandela Effect’?” (英語). Discover. 2019年1月20日閲覧。
  24. ^ Edelson, Micah; et al. (2011年7月1日). “Following the Crowd: Brain Substrates of Long-Term Memory Conformity” (英語). Science 333: 108-111. https://www.researchgate.net/profile/Micah_Edelson/publication/51458167_Following_the_Crowd_Brain_Substrates_of_Long-Term_Memory_Conformity/links/0f31753c3dccd4ebc8000000/Following-the-Crowd-Brain-Substrates-of-Long-Term-Memory-Conformity.pdf 2017年2月27日閲覧。. 
  25. ^ Brown, Adam D.; et al. (2012年7月23日). “Memory's Malleability: Its Role in Shaping Collective Memory and Social Identity” (英語). Frontiers in Psychology 3: 257. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3402138/ 2017年2月27日閲覧。. 

外部リンク[編集]