マンチェスタ符号

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マンチェスタ符号(マンチェスタふごう、英語: Manchester coding)とは伝送路符号の一種である。磁気記録方式においては位相符号化(いそうふごうか、英語: phase encoding、PE方式)とも言う。

マンチェスタ符号において、各データビットの符号化は「高→低」「低→高」のいずれかである。従って、同じレベルが連続することはないのでDCバイアスがなく、信号自体にクロックが含まれている(自己クロック信号英語版)。これは、誘導結合英語版あるいは容量結合であり、符号化データからクロック信号を復元できることを意味する。その結果、マンチェスタ符号を使用した電気接続は、簡単な1対1絶縁変圧器英語版であるネットワークアイソレータ英語版を使用して簡単に絶縁英語版される。

背景[編集]

この名前は、マンチェスター大学に由来する。同大学で開発されたコンピュータ・Manchester Mark Iにおいて、磁気ドラムメモリにデータを保存する方式として使用された。

位相符号化(PE)は、1600bpiの磁気テープでの磁気記録に広く使用されていたが、後に、より効率的な群符号記録英語版を使用する6250bpiテープに置き換えられた。

マンチェスタ符号化は、10BASE-Tイーサネット(IEEE 802.3)やコンシューマIR英語版プロトコル(RFID近距離無線通信も参照)などで広く使用されている。

シスコシステムズによれば、マンチェスター符号は、より高いデータレートでの使用に適用すると、いくつかの困難な周波数関連の問題を引き起こす[1]

機能[編集]

マンチェスタ符号はクロックレートに正比例する信号電圧の遷移を保証する。これはクロック回復に役立つ。

符号化された信号の直流成分はデータに依存しない。よって、直流成分を伝達しない媒体(イーサネットなど)で信号を運ぶのに都合が良い。

説明[編集]

マンチェスタ符号化の例

受信した符号化値から元のデータの抽出は、以下のように行える(IEEE 802.3の規則による)。

元のデータ クロック 符号化値
0 = 0 XOR
0
1 1
1 0 1
1 0

要約:

  • 各ビットは固定長の時間(ピリオド)の間に送信される。
  • ビット0は低から高への遷移で表現され、1は高から低への遷移で表現される(G.E.トーマスの規則による。IEEE 802.3の規則では逆になっている)[2]
  • 01を意味する遷移は、ピリオドの中間点で起こる。
  • あるピリオドの開始時の遷移はオーバーヘッドであり、データを示すものではない。

マンチェスター符号では、各ビット周期の中間に必ず遷移があり、送信される情報によっては期間の開始時にも遷移がある。各ビット周期の中間のビット遷移の方向はデータを表す。期間の開始時の遷移は情報を持たず、中間のビット遷移を可能にするために信号を正しい状態にするためだけに存在する。遷移の存在が保証されているため、信号は自己クロッキングが可能になり、受信側も正しく同調することができる。

位相偏移変調としてのマンチェスタ符号[編集]

マンチェスタ符号は、二位相偏移変調(BPSK)の特殊なケースであり、データは周波数がデータレートである方形搬送波の位相を制御する。そのような信号は生成しやすい。

データ表現の規則[編集]

マンチェスタ符号による11011000100の符号化(G.E.トーマスの規則による)

マンチェスタ符号のデータの表現には、2つの対立する規則がある。

最初に作られた規則は、1949年にG.E.トーマスが発表したもので、多くの人(アンドリュー・タネンバウム[3]など)が採用した。これは、ビット0の場合、信号レベルは「ロー・ハイ」(ビット期間の前半は低レベル、後半は高レベル)、ビット1の場合、信号レベルは「ハイ・ロー」になる。

2つ目の規則もまた多くの人(ウィリアム・スターリングス英語版[4]など)が採用しており、IEEE 802.4トークンバス)や低速のIEEE 802.3イーサネット)などの標準にも採用されている。これは、ビット0の場合、信号レベルは「ハイ・ロー」、ビット1の場合、信号レベルは「ロー・ハイ」になる。

マンチェスタ符号化された信号を反転すると、一方の規則から別の規則に変換することができる。この曖昧さは、差動マンチェスタ符号化英語版によって克服することができる。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ http://docwiki.cisco.com/wiki/Ethernet_Technologies
  2. ^ “Manchester encoding: Opposing definitions resolved”. Engineering Science & Education Journal 9 (6): 278. (2000年). doi:10.1049/esej:20000609. 
  3. ^ Computer Networks (4th ed.). Prentice Hall. (2002). pp. 274–275. ISBN 0-13-066102-3. 
  4. ^ Data and Computer Communications (7th ed.). Prentice Hall. (2004). pp. 137–138. ISBN 0-13-100681-9. 

 この記事にはアメリカ合衆国連邦政府一般調達局が作成したアメリカ合衆国政府の著作物である文書"Federal Standard 1037C"MIL-STD-188内)本文を含む。