マンステール・チーズ
| マンステール・ジェロメ | |
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| 別名 | マンステール・フェルマンテ, メンシュテルカース(Menschterkas) |
| 原料 | 牛 |
| 原産国 | フランス |
| 原産地 | マンステール, ジェラールメ |
| 州 | ヴォージュ県, オー=ラン県, バ=ラン県, モゼル県 |
| 大きさ | 直径7〜20 cm、高さ2〜9 cm |
| 重量 | 150〜1500 g(平たい円筒形) |
| 脂肪分 | 45 % |
| 表皮 | ソフト[1] |
| 熟成 | 5週間〜3か月 |
| 呼称統制 | AOC 1978年5月31日(1986年改訂) |
マンステールまたはマンステール=ジェロメ(仏:Munster / Munster-Géromé、ロレーヌ・フランク語では Minschterkäs、アルザス語では Minschterkaas)は、フランス東部で生産される牛乳由来のソフトチーズである。1969年に原産地統制呼称(AOC)を取得し、1996年には欧州連合全体でAOP(原産地名称保護)として認定されている。
歴史
[編集]このチーズの起源は、リュクスイユ修道院にアイルランドからコロンバンに率いられて移住した修道士たちの活動に遡る[2]。彼らはその後、ヴォージュ山脈へと広がっていった。
イタリアから来たベネディクト会修道士たちがこの地に惹かれ、660年にマンステール修道院(聖グレゴリウスに献堂)をジェラルメとコルマールの間に創設し、チーズ製造の技術を持ち込んだ[3]。この修道院(ラテン語:monasterium)の名が、後にドイツ語を経由して「マンステール(Munster)」となり、マンステール市の名に由来する[4]。
アルザス語では「マンステールのチーズ」という意味で「ミンシュテルカース(Minschterkaas)」と呼ばれる。修道院を通じて製法はヴォージュ山脈一帯に広まり、ロレーヌ側ではジェラルメ市で販売されていたことから、この方言に由来する「ジェロメ(Géromé)」という名称でも呼ばれるようになった。こうして、同じチーズがアルザス側では「マンステール」、ロレーヌ側では「ジェロメ」と呼ばれるようになり、中世以来、2つの名称が併存している。
18世紀末までは、ロレーヌ側の生産者がロレーヌ公に対し、一部の租税をこのチーズで支払っていた。
説明
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このチーズは生乳または加熱殺菌した牛乳を使用したウォッシュチーズで、円筒形、直径13〜19cm、厚さ2.4〜8cm、重量は450g〜1.5kgである。強い匂いを放つ。
「プチ・マンステール(Petit-Munster)」または「プチ・マンステール=ジェロメ(Petit-Munster-Géromé)」という名称は、直径7〜12cm、高さ2〜6cm、最低重量120gの小型のチーズに限って使用される。皮はブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens)という赤色菌で手作業により洗浄される。
生産
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製造・熟成が認められている地域は、ヴォージュ山脈のアルザス、ロレーヌ、フランシュ=コンテ側に広がる以下の7県である。
- オー=ラン県(アルザス平野の一部カントンを除く)
- ヴォージュ県(県全域。ただし最西端のいくつかのコミューンは除く)
- ムルト=エ=モゼル県(南部・東部の一部カントン)
- モゼル県(南部・東部の一部カントン)
- オート=ソーヌ県(北端のいくつかのコミューン)
- テリトワール・ド・ベルフォール県(一部カントンを除く)
2007年の生産量は8120トンで、1997年から11.3%減少。うち14%が生乳使用、9%が農家製。現在の生産の大部分はロレーヌ地域で行われている。2017年時点で、全体の94%が大手乳業メーカーによって製造され、6%がヴォージュ山脈の農家によるチーズである[5]。
製造には、1280の酪農家、80の農家製造者、8の専属熟成業者、6の大手乳業者が関与している(2014年INAOデータ)[6]。
製造工程
[編集]熟成期間は規定により、通常のマンステール(またはマンステール=ジェロメ)は最低21日間、小型の「プチ・マンステール」は最低14日間である。この間、チーズは2日おきに手作業で擦られ、裏返される。熟成は11℃前後の湿った熟成庫で行われる。
チーズに用いる牛乳は、新鮮なレンネット添加済みの全乳でなければならない[7]。乳を凝固させ、洗浄や攪拌を行わずに型に流し込み、脱水、塩蔵、表皮の整形を行う。その後、Brevibacterium linens を用いて皮を手作業で擦り、表皮に黄〜オレンジ色を付与する。他のウォッシュチーズと同様、強い香りが特徴である。
食べ方
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21日以上の熟成後、最も美味しいとされる時期は5月〜10月である[8]。ただし、4月〜12月にわたっても食べられる。
香りは強いが、味はまろやかで、キャラウェイ(西洋クミン)と一緒に食べることもある。アルザスワインとの相性がよく、特にリースリングやゲヴュルツトラミネール(遅摘み・貴腐ワインを含む)と合わせることが多い。
ラクレットのように溶かして食べたり、タルトやキッシュ、タルト・フランベ(フラメクーシュ)に使用される。最近ではタルティフレットの材料としても使われ、「ミュンスティフレット(munstiflette)」という名称で知られる[9]。
脚注
[編集]- ^ Fox, Patrick. Cheese: Chemistry, Physics and Microbiology. p. 200.
- ^ Pierre Brunet (編) (1987). Histoire et géographie des fromages. Université de Caen. p. 67
- ^ Repères pour une histoire du Val et de la ville de Munster
- ^ “Le Munster, toute une histoire”. fromage-munster.com. 2016年1月31日閲覧。
- ^ Marie-Béatrice Baudet, « Le munster, une bataille des Vosges », lemonde.fr, 2017年8月17日。
- ^ L’AOP Munster partagée entre les exigences des producteurs fermiers et des gros transformateurs, Traces Ecrites News, 2017年1月5日。
- ^ “Le Munster, un fromage d'Alsace et des Vosges : fabrication, histoire et traditions”. 2017年11月19日閲覧。
- ^ “Manger du reblochon l’été, du mont-d’or l’hiver : quelle saisonnalité pour les fromages ?”. Le Monde.fr. (2018年8月2日) 2021年11月4日閲覧。
- ^ “Tartiflette au munster (munstiflette)”. fromages-aop.com. 2021年1月25日閲覧。