マルハシ

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マルハシ
𒈥𒄩𒅆𒆠
マルハシの推定所在地。シュメールおよびアッカド帝国の東方とされる。

マルハシMarhaši シュメール語Mar-ḫa-šiKI 𒈥𒄩𒅆𒆠 早期の記録ではWaraḫšeアッカド語:Parahshum 𒁀𒊏𒄴𒋧𒆠[1]紀元前3千年紀の国。イラン高原エラムからさらに東に位置する。メソポタミアの諸記録から知られているが、正確な場所は特定されていない。一部の学者はそれをジーロフトと結び付けている。フランクフルトとトランブレイは、アッカド語の文書と考古学的証拠に基づいて、マルハシ王国と古代マルギアナ王国を特定できたとしている[2]

歴史[編集]

マルハシ王アバルガマシュ(Abalgamash)とエラム諸都市に対するアッカド王リムシュの勝利の記述。ルーヴル美術館AO5476[3][4]。いくつかの碑文では、リムシュがシュメールから遙か東方で、メルーハ英語版インダス文明か)の軍勢すら撃破して、エラムとマルハシを征服したと書かれている[5][6][7]

アダブ英語版の王、ルガル・アンヌ・ムンヅ英語版の治世を記述した紀元前24世紀の碑文では、彼の帝国に含まれる7つの国の中でエラムやグティなどとともにマルハシにも言及している: 「杉の山エラム、マルハシ、グティアムルスバルツ英語版、スチウムまたはエアンナ山」[8]

同じ碑文には、反旗を翻した13人の族長たちを率いていたマルハシの太守(ensi )ミギル・エンリルと王が対決したことも記録されている [9]

また、エラムのアワン王朝の諸王とシュメールの諸王が、イラン高原のエラム付近にあると思われるワラシェ(マルハシ)王国の持つ、貴重な品々(特に貴石類が特筆される)に溢れた市場を掌握しようと争ったことも記録されている。

アッカド帝国の時代、パラシュム(シュメール語でのマルハシ)はサルゴン大王によって征服された。パラシュムの王アバルガマシュ(Abalgamash)と将軍シドガウは、アワン王ルーイシャンと共同でアッカド王リムシュに対して反乱を起こしたが失敗した。一方、アワン王ヒゼプラテプポーランド語版とワラシェの同盟は、アッカド王ナラム・シンに敗れた [10]

ウル第三王朝の王シュルギは治世18年目に自身の娘ナイリミダシュNialimmidashuをマルハシ王Libanukshabashに嫁がせて、同盟関係を築こうとした。しかしこれは短命な試みに終わった。シュルギの後継王アマル・シンは、新たなマルハシ王Arwilukpiに対して軍事遠征を行ったことが記録されている。

バビロニア王ハンムラビの治世30年目は次のように命名されている。 「マルドゥクの寵愛を受けし強盛なる王ハンムラビが、大いなる神々の至高の力とともに、マルハシ、スバルツ、グティ、Tupliash(エシュヌンナ)、マルギウム英語版など諸国中より数多集められしエラムの軍勢を、一度の遠征で打ち負かし、もってシュメールとアッカドの地を安んじた年」

マルハシの支配者[編集]

碑文から知られている主な支配者は次のとおり [11][12]紀元前2550年頃–

  1. ミギレンリル英語版(紀元前2550年頃)
  2. (無名の王)(紀元前2325年頃)
  3. アバルガマシュ英語版(紀元前2316年から2312年頃)は、アッカドリムシュに対して反乱を起こした)
  4. Hubshumkibi(紀元前2270年頃。アッカド王ナラム・シンと同時代)
  5. (無名の王)(紀元前2080年頃)
  6. Hashibatal (紀元前2070年頃。ウルシュルギと同時代)
  7. Arvilukpi(紀元前2050年頃、ウル王アマル・シンと同時代)
  8. Pariashum 紀元前2045年頃、ウル王アマル・シンと同時代)
  9. リバヌグシャバシュ英語版 (紀元前2044–2033年頃)
  10. Mashhundahli(紀元前2020年頃。ウル王イビ・シンと同時代)

遺物[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Bryce, Trevor (2009) (英語). The Routledge Handbook of the Peoples and Places of Ancient Western Asia: The Near East from the Early Bronze Age to the fall of the Persian Empire. Routledge. p. 449. ISBN 978-1-134-15907-9. https://books.google.com/books?id=AwwNS0diXP4C&pg=PA449 
  2. ^ Francfort H.-P., Tremblay X. Marhaši et la civilisation de l'Oxus // Iranica Antiqua, vol. XLV (2010), pp. 51–224. doi: 10.2143/IA.45.0.2047119.
  3. ^ CDLI-Found Texts”. cdli.ucla.edu. 2021年3月27日閲覧。
  4. ^ Frayne, Douglas (英語). Sargonic and Gutian Periods. pp. 55-56. https://www.academia.edu/29704423/Sargonic_and_Gutian_Periods 2021年3月27日閲覧。 
  5. ^ Hamblin, William J. (2006) (英語). Warfare in the Ancient Near East to 1600 BC: Holy Warriors at the Dawn of History. Routledge. pp. 93-94. ISBN 978-1-134-52062-6. https://books.google.com/books?id=biyDDd0uKGMC&pg=PT93 2021年3月27日閲覧。 
  6. ^ CDLI-Archival View”. cdli.ucla.edu. 2021年3月27日閲覧。
  7. ^ Frayne, Douglas (英語). Sargonic and Gutian Periods. pp. 57-58. https://www.academia.edu/29704423/Sargonic_and_Gutian_Periods 
  8. ^ CDLI-Found Texts”. cdli.ucla.edu. 2021年3月27日閲覧。
  9. ^ The names of the 13 rebel chiefs in the inscription (as given by Guterbock) are: Migir-enlil, ensi of Marhashi; Enlil-ezzu, ensi of [...]; SHESH-kel (?), ensi of Kel; Su-Anum, ensi of Kagalla (?); [...]-Ellum, ensi of Amdama; Ibi-mama, ensi of Ardama; Nurshu-eli, ensi of [...]; Adad-sharrum, ensi of [...]; Badganum, ensi of [...]; Zumurtanu, ensi of [...]; Rimshunu, ensi of [...]; Abi-han[ish?], ensi of [...]; and [...]-bi-maradda(?), ensi of [...]. in CDLJ 2017:1”. cdli.ucla.edu. 2021年3月27日閲覧。
  10. ^ Álvarez-Mon, Javier; Basello, Gian Pietro; Wicks, Yasmina (2018) (英語). The Elamite World. Routledge. p. 248. ISBN 978-1-317-32983-1. https://books.google.com/books?id=yClKDwAAQBAJ&pg=PT248 
  11. ^ Qashqai, 2011.
  12. ^ Legrain, 1922; Cameron, 1936; D’yakonov, 1956; The Cambridge History of Iran; Hinz, 1972; The Cambridge Ancient History; Majidzadeh, 1991; Majidzadeh, 1997.
  13. ^ Álvarez-Mon, Javier; Basello, Gian Pietro; Wicks, Yasmina (2018) (英語). The Elamite World. Routledge. p. 368. ISBN 9781317329831. https://books.google.com/books?id=yClKDwAAQBAJ&pg=PT368 
  14. ^ Thomas, Ariane; Potts, Timothy (2020) (英語). Mesopotamia: Civilization Begins. Getty Publications. p. 180. ISBN 978-1-60606-649-2. https://books.google.com/books?id=VsHEDwAAQBAJ&pg=PA180 
  15. ^ Potts, D. T. (2016) (英語). The Archaeology of Elam: Formation and Transformation of an Ancient Iranian State. Cambridge University Press. p. 91. ISBN 978-1-107-09469-7. https://books.google.com/books?id=WE62CgAAQBAJ&pg=PA91 
  16. ^ Álvarez-Mon, Javier; Basello, Gian Pietro; Wicks, Yasmina (2018) (英語). The Elamite World. Routledge. p. 372. ISBN 978-1-317-32983-1. https://books.google.com/books?id=yClKDwAAQBAJ&pg=PT372 
  17. ^ Potts, D. T. (2016) (英語). The Archaeology of Elam: Formation and Transformation of an Ancient Iranian State. Cambridge University Press. pp. 93-94. ISBN 978-1-107-09469-7. https://books.google.com/books?id=WE62CgAAQBAJ&pg=PA93 
  18. ^ Daryaee, Touraj (2012) (英語). The Oxford Handbook of Iranian History. Oxford University Press. p. 65. ISBN 978-0-19-020882-0. https://books.google.com/books?id=KjQ_AwAAQBAJ&pg=PT65 

参考文献[編集]