マルテンサイト

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マルテンサイト(martensite, α'鋼)は、Fe-C系炭素鋼を安定なオーステナイトから急冷する事によって得られる組織。体心正方格子の鉄の結晶中に炭素が侵入した固溶体で、硬くて脆い組織である。ドイツの冶金学者アドルフ・マルテンス(Adolf Martens)が発見したためこの名称がある。

マルテンサイトの形成[編集]

炭素鋼の結晶は、高温ではオーステナイト(面心立方格子)が、常温ではフェライト(体心立方格子)が安定している。このため高温のオーステナイトを冷却するとフェライトに変態しようとする。フェライトはオーステナイトと比べ少量の炭素しか固溶できないため、変態する際には結晶中から炭素を移動させなければならず、移動のための拡散が伴わなければならない(拡散変態)。

炭素鋼をゆっくり冷却すると、炭素はフェライト組織から追い出されてセメンタイト(鉄炭化物)を生じ、パーライト(フェライトとセメンタイトの層状組織)が形成される。しかし拡散が十分に起きない速さで急冷すると、炭素が体心立方格子の一軸を引き伸ばし、そこへ炭素が侵入した準安定状態の結晶構造となる(無拡散変態)。このようにして形成される組織をマルテンサイトと言う。

また、常温でオーステナイトの状態の鉄に応力を加えることによりマルテンサイトを生じることもある。これを応力誘起マルテンサイトとよぶ。ステンレスのSUS304(18-8ステンレス)などをプレス加工、切削加工、鍛造など行うとこのマルテンサイトを生じることがある。またマルテンサイト系の形状記憶合金はこの変態を利用したものである。

利用[編集]

マルテンスが19世紀末に発見したが、それ以前から経験的に利用されていた鋼の組織である。一時期マルテンサイトであることが鋼の定義でもあった。日本でもすでに日本刀などの刃先に形成されていたものを科学的に再認識したものである。

焼入れとは鋼をこの組織へ変態させる作業である。変態によって歪んだ結晶となるため、焼入れを行うと変形を伴う。マルテンサイトが形成されると硬度が向上する一方で靭性が低下するため、さらに焼き戻しを行った上で利用することが多い。

なお、鉄系マルテンサイトはかつては硬質磁性材料に使われた。この硬質とはマルテンサイトの硬さに由来している。

参考[編集]

関連項目[編集]