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マルチプレイヤーコンピュータゲーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

マルチプレイヤーコンピュータゲーム(英: Multiplayer video game)は、現地のローカルネットワークまたはインターネットなどを介して、複数のプレイヤーが同時に参加できるコンピュータゲームの形態である。

プレイヤーは互いに協力して共通の敵と戦ったり、対戦して勝敗を競ったりすることができる。初期のコンピュータゲームは、技術的な制約から1人プレイ(シングルプレイヤー)専用や、1つの画面を交代で使用する形式が主流であったが、ハードウェアと通信技術の発展により、リアルタイムでの同時プレイが可能となった。

歴史

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初期のマルチプレイヤー

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もっとも初期のコンピュータゲームである『Spacewar』(1962年)は、そもそも2人のプレイヤーが操作する宇宙船同士の対戦ゲームであった。当時はコンピュータが極めて高価であり、1台の大型コンピュータを共有して遊ぶ形式が取られていた。

1970年代後半、アーケードゲームの台頭とともに『ポン』(1972年)のような2人対戦型ゲームが商業的な成功を収めた。日本においても、タイトーセガが同様の卓球ゲームをリリースし、ゲームセンター(アミューズメント施設)での対戦文化が芽生え始めた[1]

コンソールとローカル対戦の発展

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1983年に任天堂が発売したファミリーコンピュータ(ファミコン)は、最初から2つのコントローラーが本体に接続されており、家庭内での「対戦」や「協力」を前提とした設計になっていた。『マリオブラザーズ』や『バルーンファイト』などの初期タイトルは、2人同時プレイを主要な機能としていた[2]

さらに、1990年代には『くにおくんシリーズ』などで使用される「4人プレイヤーアダプタ」などの周辺機器も登場し、多人数でのパーティーゲームというジャンルが確立された。

携帯型ゲームと通信ケーブル

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日本では特に、携帯型ゲーム機における通信対戦が独自の発展を遂げた。1989年に発売されたゲームボーイには「通信ケーブル」用の端子が標準装備されていた。当初は『役満』などのテーブルゲームや『F1レース』などで使用されていたが、1996年の『ポケットモンスター 赤・緑』の発売により、通信機能は「対戦」だけでなく「交換」という新しい遊び方を生み出し、社会現象となった[3]

インターネットとオンラインゲーム

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1990年代前半、『DOOM』の開発者ジョン・ロメロジョン・カーマックは、革新的なP2P(ピア・ツー・ピア)通信モデルを採用し、LAN接続による高速なデスマッチを実現した[4]。その後、Windows 95の普及とインターネット接続の一般化により、PCゲームの世界では『Diablo』や『Ultima Online』といった、遠隔地のプレイヤーと接続するオンラインゲームが定着し始めた。家庭用ゲーム機においても、ドリームキャストPlayStation 2以降、オンライン機能が標準搭載されるようになり、現代のMMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)やFPS(ファーストパーソン・シューター)へと繋がっていくようになった。

ローカルマルチプレイヤー

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ローカルマルチプレイヤーは、同じ場所にいるプレイヤーが同じゲーム機やコンピュータを共有して遊ぶ形式である。

  • 画面分割 (Split screen) : レースゲームやFPSなどで、テレビ画面を2〜4分割し、それぞれのプレイヤーの視点を表示する方式。『ゴールデンアイ 007』や『マリオカート』シリーズで一般的である。
  • ホットシート (Hotseat) : ターン制ストラテジーゲームなどで、1つの入力デバイス(マウスやコントローラー)をプレイヤーが順番に交代して操作する方式。

オンラインマルチプレイヤー

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オンラインマルチプレイヤーは、インターネットやWANを介して、離れた場所にいるプレイヤー同士が接続する形式である。

  • 同期とラグ : 地理的に離れたプレイヤーがリアルタイムで操作するため、通信遅延(ラグ)の解消が重要な技術的課題となる。
  • ロールバック方式 (Rollback Netcode) : 格闘ゲームなどで主流の技術。トニー・キャノン (Tony Cannon) が開発したミドルウェア「GGPO」が有名である。これは他プレイヤーの入力を「予測」して描画し、実際の入力と矛盾した場合に瞬時に過去のフレームへ「ロールバック(巻き戻し)」して修正再描画する仕組みである。これにより、プレイヤーは遅延を感じることなく操作できる[5]
  • マッチメイキング : 実力の近いプレイヤー同士を自動的に引き合わせるシステム。

非対称ゲームプレイ

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通常の対戦ゲームでは、プレイヤーは対等な条件(同じ強さのキャラクター、同じ勝利条件)で戦うが、**非対称ゲームプレイでは、プレイヤーごとに異なる役割や能力が与えられる。

代表的な例として、1人の「鬼(キラー)」と複数の「逃走者(サバイバー)」に分かれて戦う『Dead by Daylight』や、宇宙船のクルーの中に紛れ込んだ裏切り者を探す『Among Us』などがある。

不正行為

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オンラインマルチプレイヤーにおいては、他者に対する優位性を得るために不正なプログラム(チートツール)を使用する問題が存在する。

  • エイムボット (Aimbot) : シューティングゲームで、自動的に敵に照準を合わせるツール。
  • ウォールハック (Wallhack) : 壁の向こう側の敵を透視するツール。

開発者はこれらに対抗するため、アンチチートソフトウェア(BattlEye, Easy Anti-Cheatなど)を導入し、公正なゲーム環境の維持に努めている。例えばEasy Anti-Cheatは、クライアント側での署名スキャンと、サーバー側でのヒューリスティック分析(不自然な挙動の検知)を組み合わせたハイブリッド方式を用いて、不正プログラムを特定・ブロックしている[6]

脚注

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  1. ^ The Guardian - ‘I dreamed of blocky pixels’: the strange, sweaty, sociable early days of gaming
  2. ^ The National Videogame Museum - Famicom history
  3. ^ Inverse - The history of the Game Boy Link Cable
  4. ^ Romero, John (2023). Doom Guy: Life in First Person. Abrams Press. - 『DOOM』開発者ジョン・ロメロによる自伝(一次情報)
  5. ^ Cannon, Tony (2012). "GGPO: Lag-Free Fighting Games". Game Developer, September 2012. - GGPO開発者による技術解説(一次情報)
  6. ^ Easy Anti-Cheat - Technical Support & Features - 公式サイトによる機能説明(一次情報)