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ポール・ロワイヤル論理学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

『ポール・ロワイヤル論理学』(Logique de Port-Royal)、正式名称『論理学、あるいは思考の技法』(La logique, ou l'art de penser)とはアントワーヌ・アルノーとピエール・ニコルの共著として記され、1662年に出版された論理学に関する書籍である[1]。

経緯

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本書は著者であるアントワーヌ・アルノー、ピエール・ニコルによってルネ・デカルトの『省察』の仏訳者リュイヌ(Duc de Luines)公爵の子息であるアルベール伯爵(後にシュヴルーズ公爵)に論理学の主要部分を伝えるために著された。

その後も著者らは改訂を行い、本書のはしがきにその理由として、直筆原稿から幾人かの人を経て写筆・印刷される過程で誤った内容が伝わることを防ぐためであったと記している[2]。本書は1662年の初版以後、著者らの存命中に4度の大きな改訂が行われ、最後の改訂版は1683年に刊行された[2]。

構成と内容

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本書は、人間の思考における4つの精神的操作に対応した4部構成となっている。第1部では「観念」、第2部では観念から形成される「判断(命題)」、第3部では「推論」、第4部では知識を秩序立てるための「方法」を扱う。また、正しい推論の規則だけでなく、推論が誤る場合(謬論・謬見)についても論じられている[2]。

本書は伝統的なアリストテレス論理学の枠組みを維持しつつも、ルネ・デカルトの哲学から強い影響を受けている。特に認識論におけるデカルトの影響が顕著であり、デカルトの二元論や機械論的自然学の原理も本書の哲学的背景となっている[3]。

言語と意味論

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本書は単なる論理学の教科書にとどまらず、言語哲学、認識論、形而上学、文法に関わる問題も幅広く扱っている[2]。特に、観念と言語表現との関係や、命題における主語と述語の関係などが論じられている[2]。

第1部では観念の対象、単純観念と複合観念、普遍・特殊・個別の観念、用語の外延と内包、明晰・判明な観念と曖昧・混乱した観念などが論じられる。また、思考における観念が言語によって表現されるという関係を踏まえ、命題における主語・述語や肯定・否定についても論じられている[2]。このような議論は後世の意味論研究でも取り上げられており、観念、命題、真理、外延などの関係について現代でも研究が行われている[3]。

影響と評価

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『ポール・ロワイヤル論理学』は、アリストテレス以後19世紀末までの論理学史において、非常に大きな影響を持った論理学書と評価されている。Ian Hackingは本書を、アリストテレス以後19世紀末までで最も影響力のある論理学書と位置づけている[4]。

本書は多数の版を重ね、19世紀後半までオックスフォード大学やエディンバラ大学で論理学の教科書として使用された[4]。また、1981年の批判校訂版では、フランス語版63版、英語版10版が確認されており、1818年の英語版はケンブリッジ大学とオックスフォード大学で使用された[2]。

その他、『ポール・ロワイヤル論理学』は論理学だけでなく、哲学の言語哲学、認識論、形而上学、文法などに関わる問題も扱っており[2]、その議論は後世の哲学者にも影響を与えている。Hackingはニコラ・マルブランシュやジョン・ロックとの関係を指摘し、ジョージ・バークリーの著作を理解するうえでも本書が重要であると述べている[4]。

日本語訳

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  • アントワーヌ・アルノー/ピエール・ニコル『ポール・ロワイヤル論理学』
山田弘明・小沢明也訳、法政大学出版局、2021年。ISBN 4588151207

脚注

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  1. ↑ “Notice bibliographique La Logique ou L'art de penser” (フランス語). フランス国立図書館(BnF). 2026年8月31日閲覧。
  2. 1 2 3 4 5 6 7 8 “Port Royal Logic”. Stanford Encyclopedia of Philosophy. 2026年8月31日閲覧。
  3. 1 2 Martin, John N. (2019). The Cartesian Semantics of the Port Royal Logic. Routledge. ISBN 978-1351249195
  4. 1 2 3 Hacking, Ian (1975). “Port Royal's ideas”. Why Does Language Matter to Philosophy?. Cambridge University Press. pp. 26–33. doi:10.1017/CBO9780511627873.004

関連項目

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