ポルスモア刑務所

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ポルスモア刑務所
Pollsmoor Prison
地図
所在地 南アフリカ共和国ケープタウン
座標 南緯34度4分7秒 東経18度25分56秒 / 南緯34.06861度 東経18.43222度 / -34.06861; 18.43222座標: 南緯34度4分7秒 東経18度25分56秒 / 南緯34.06861度 東経18.43222度 / -34.06861; 18.43222
現況 運営中
著名な収監者
ネルソン・マンデラ
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ポルスモア刑務所、正式には ポルスモア・マキシマム・セキュリティ刑務所 は南アフリカの ケープタウン 郊外に位置する トカイ英語版 にある。ネルソン・マンデラ はポルスモア刑務所に投獄された最も有名な人物の一人である。 マンデラはポルスモア刑務所について、「オスカー・ワイルドの詠った、"囚人たちは空と呼ぶがそれはむしろ青いテントだ"という、かの印象深い一節が、正にここにある。」と発言している。[1]

ポルスモア刑務のセキュリティは非常に高く、脱走はほとんど不可能である。 ポルスモアには南アフリカで最も危険な犯罪者たちも収監されている。1,278名のスタッフを有し、収監可能数は4,336名であるが、現実には、収監者数は現在7,000名以上にのぼる。

刑務所の構造[編集]

1964年設立。設立以来、体系的な拡張をなされ、今日ポルスモア刑務所は5つの刑務所から成っている。

  • 入所センター ケープ半島(ケープタウン、Mitchell's Plain、 Somerset West 、 Wynberg )にある数々の裁判所に従事している。
  • Medium A刑務所 未決囚、すなはち裁判または判決を待つ人々が収容される。加えて、14~17歳の少年受刑者も収容される。
  • Medium B刑務所 成人男性受刑者が収容される。
  • Medium C刑務所 刑期が一年以内の成人男性受刑者、及び近い内に釈放される予定の成人男性受刑者、デイパロールにあたるの成人男性受刑者が収容される。(デイパロールとは、受刑者に日中の外出を許可し、地域の活動に参加させ、夜間にまた収容施設に戻らせる、という制度のことである。)
  • 女子刑務所 成人女性・少年女性(18歳未満の女性を指す)の、受刑者及び未決囚が収容される。女子刑務所には2歳未満の乳幼児も多くいる。

入所センター[編集]

入所センター(The Pollsmoor Admission Centre)は5つの刑務所の中でも最も大きい。ポルスモア管理地区(Pollsmoor Management Area)を形成している。 ポルスモアでは、収監者のほとんど半数にあたる約3200名は判決待ちあるいは裁判待ち、もしくは更なる罪が予期されている人々である。裁判待ちの囚人の数は絶えず変動し、毎日、約300人がケープタウン周辺の様々な裁判所に出向き、有罪判決を受けて戻ってくる者もいれば、そのまま戻ってこない者もいる。だが、大部分は例えば半年後といったかなり先の裁判を待つ為に独房に戻る人々である。

非常に過密状態で、本来計画された建物の収容可能人数の約2倍以上の囚人を抱えている。 囚人の大多数が収容される独房は共同バンガローの形となっており、最大40人の囚人が2段ないし3段の寝台を使う。 また、単身用独房(2.5m×2m)でさえも1人~3人の囚人で使用するという現実だ。

ポルスモアにおけるギャング行為[編集]

ギャング行為はポルスモア刑務所における大きな特徴である。刑務所各階はそれぞれ3つの区域に分かれており、合計500~750のギャングが、各階各区域に分散して存在する。 刑務所のこの区域分けは、ギャングたちが新参収容者から新メンバーを継続的に募集することを規制しようとする意図がある。 しかし、看守が各区域にいる時間は一日の3分の2に満たないため、共同独房におけるギャングの力は強大である。 ギャングによる支配の上では、過激な暴力や性的暴力が行われる。

ポルスモアのギャングたちには「26」「27」「28」という3つの分派があり、このことから「ナンバーズギャング英語版」と呼ばれている。 ギャングを離脱できた構成員はほとんど存在しない。[2] 彼らは自分の階級を顔や体に入れ墨するので、刑務所の外においてもその階級は明らかである。 また、ギャングの中には刑務所内でのギャング文化があまりにも染み付き過ぎてしまった為に、刑務所外での市民生活に適応できず、犯していない虚偽の犯罪を自白してまで刑務所に戻ろうとする者すらいる。

囚人の大多数は、大規模な失業、教育施設やその他各種の施設の欠如、ホームレス、ギャング行為の蔓延する様な劣悪な地域の出身である。独立宗教組織や非政府組織による訪問といった外部からの提供以外に、ポルスモア刑務所自体から囚人たちに施されるような更生プログラムやリハビリテーションのようなものはほとんど無い。 受刑者はほとんど一日中を人口過密な独房で過ごし、中庭で野外運動をする時間は1日に1時間しか無い。 しかし、この一時間はもっぱら、ギャングのリーダーたちが他の独房の囚人と連絡を取り合ったり、ドラッグの交換をしたり、他の独房の囚人に制裁を与えたりなどする為の格好の機会として利用されている。(ドラッグが監獄内に流入する原因は主に、刑務所に再び戻って来たような囚人が持ち込んだものであったり、看守の買収によるものである。) さらに、運動しようとする受刑者がいるものなら、ギャングのリーダーから制裁を受ける事があるので、この野外運動の為の一時間に実際野外運動が行われることはほとんどないのだ。

メディア[編集]

BBCドキュメンタリー[編集]

2001年、Clifford Bestallによる BBC のドキュメンタリー番組でポルスモア刑務所が題材となった。近日釈放予定の2名の囚人(Erefan Jacobs、Mogamat Benjamin)に取材を行った。釈放後に、2人の市民生活への適応に着目した取材も続けて行われた。

Mikhael Subotzkyによる写真集[編集]

2005年の4月27日(自由の日)に南アフリカの写真家Mikhael Subotzky英語版がポルスモア刑務所内を撮ったパノラマ写真の展示を行った。 

Ross Kemp on Gangs[編集]

英放送局SkyOne によるドキュメンタリーシリーズRoss Kemp on Gangs英語版"でポルスモア刑務所が取り上げられた。

マンデラ 自由への長い道[編集]

マンデラによる自伝書Long Walk to Freedom英語版の映画化作品『マンデラ 自由への長い道』 (Mandela: Long Walk to Freedom) の中に、マンデラがロベン島での18年間にわたる収監の後にポルスモア刑務所へ移監されるシーンがある。

変革計画[編集]

ケープタウン大学の社会研究機関であるCentre for Conflict Resolution英語版が上述のBBCのドキュメンタリーに感銘を受けた事をきっかけに、刑務所の変革プロジェクトを行っている。リハビリテーションを通して囚人たちの自己意識を高めようと試みている。 このプロジェクトでは、囚人たちに、暴力に代わる問題解決の手段を教えたり、鳥や野生の猫を与えて世話をさせることにより尊厳を回復させようとする人道的な処置が行われる。

参考文献[編集]

  1. ^ Nelson Mandela: Long Walk to Freedom, p. 343.
  2. ^ Kemp, R (2007). Gangs. Michael Joseph. pp. 195–196. ISBN 0-7181-5328-6