ヒルムシロ属

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ヒルムシロ属
オヒルムシロ Potamogeton natans
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉植物 monocots
: オモダカ目 Alismatales
: ヒルムシロ科 Potamogetonaceae
: ヒルムシロ属 Potamogeton
L.

本文参照

ヒルムシロ属学名Potamogeton)またはポタモゲトンは、ヒルムシロ科の1属で、多年生水生植物からなる。

分布[編集]

寒帯から熱帯まで、幅広い地域に分布する。日本では、さまざまな種が全国各地に生息するが、近年は、各地で生息数が減っている。農薬の使用、水質汚濁、生息地の埋め立てなど、様々な環境破壊が原因である。中でも、ガシャモクの減少は著しく、今では千葉県印旛沼等ごく一部にしか生息していない。野生下では生息数が減っているが、アクアリウム用や、個体の保全及び環境教育を目的とした教材として栽培されているので、入手することは出来る。

一方で、エビモのように北米に帰化し、侵略的外来種として扱われる例もある。

生育環境[編集]

湖沼ため池、流れの緩やかな河川、水路などに生育する。水中葉を展開し、水中で生活するものが主だが、水上葉を展開し水上に暮らすものもある。

形態、生態[編集]

リュウノヒゲモの塊茎

ヒルムシロ属の各種は、形態的にも生態的にも非常に多様化している。また生育環境によって大きく形態を変える種もある[1]

基本的な形態としては、細長い水中茎を持ち、左右に葉を付ける。葉の付き方(葉序)は互生。葉の質感は、セロハンのようで、透明感がある。形状は種により様々であるが、水にたなびく柔軟性と太い葉脈を持つものが多い。地下茎と側茎で、四方八方に広がり、大きな群落を作ることもある。塊茎をもつ種もある。

栄養生殖種子散布で繁殖する。地下茎を伸ばし、横へと群落を広げる。水上に花を咲かせ、種子で増える場合もある。また殖芽をつくって越冬する場合もある。

利用[編集]

日本において、ガシャモクなどが有機肥料として利用されていた。しかし、近年は、生息数が激減している上、他の肥料を使用するほうが効率的であるため、このような利用法は減っている。

また一部の種類が、アクアリウムにて観賞用に栽培されることがある。

栽培法[編集]

水槽で栽培されているガシャモク

栽培環境[編集]

睡蓮鉢、アクアリウムなど、水を入れる容器を用い、水中で栽培することが多い。水中に漂った状態では、うまく育たないので、土に植えて育てる。植木鉢や、アクアリウムの底砂に植えて栽培される。適度な光がないと育たないので、観賞魚用蛍光灯や太陽の光が当たる場所で育てる。地下茎を伸ばすので、栽培時はそのことも考慮したい。

用土[編集]

園芸用やアクアリウム用の砂、砂利、土を用いる。

繁殖[編集]

地下茎で増える。他に、茎を切り取って土に差す「茎差し」でも増やすことが出来る。

環境への配慮[編集]

アクアリウム用や緑化事業用の水草が、野外に出て移入種となっている場合がある。遺伝子汚染を防ぎ、遺伝的多様性を守るためには、国内に生息している種であっても、安易な放流は避けるべきとされる。

主な種[編集]

ヒルムシロ属に分類される種は、およそ80-100種とされる。また種間雑種を作ることも多く、イギリスだけでも少なくとも26種の雑種が確認されている[2]

以下に代表的な種を挙げる。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 角野康郎『日本水草図鑑』文一総合出版、1994年。  p.32
  2. ^ Flora of North America

参考文献[編集]

  • ピーシーズ(監修・発行)『アクアリウムで楽しむ水草図鑑』 2001年10月10日発行

外部リンク[編集]