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ポケット一杯の幸福

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ポケット一杯の幸福
Pocketful of Miracles
予告編より、ホープ・ラング
監督 フランク・キャプラ
脚本 ハル・カンター
ハリー・テュージェンド
原案 ロバート・リスキン
一日だけの淑女』脚本
原作 デイモン・ラニアン
製作 フランク・キャプラ
出演者 グレン・フォード
ベティ・デイヴィス
音楽 ウォルター・シャーフ
撮影 ロバート・ブロンナー
編集 フランク・P・ケラー
配給 ユナイテッド・アーティスツ
公開 アメリカ合衆国の旗 1961年12月19日
日本の旗 1962年2月15日
上映時間 136分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
スペイン語
製作費 $2,900,000[1]
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ポケット一杯の幸福』(ぽけっといっぱいのしあわせ、Pocketful of Miracles, 「ポケットからあふれるほどの奇蹟」の意)は、1961年に公開されたアメリカ合衆国の映画である。フランク・キャプラ監督の最後の作品であり、主演はグレン・フォード、共演にベティ・デイヴィスピーター・フォークほか。ジャンルはコメディファンタジー、ヒューマンドラマである。同監督作品『一日だけの淑女』(1933年)のセルフ・リメイク作品でもある。本作で、ピーター・フォークはアカデミー助演男優賞にノミネートされた。

ストーリー

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1930年代初頭、クリスマスが間近なニューヨーク。同地で若くして暗黒街のトップへと上り詰めたギャングのボス、”デイヴ・ザ・デュード”は1つの迷信を信じている。それはりんご売りの貧しい初老の女性アップル・アニーからりんごを買うと、幸運がもたらされ、どんな危険なことでも上手く乗り切れるというもの。アニーはデュードに、最近仕入れたリンゴは特に幸運をもたらすと言う。その後、デュードは、デュードの友人でもぐり酒場のオーナーの娘であるエリザベス・”クイニー”・マーティンと出会う。彼女の父は、裏社会からの多額の借金を返済出来なかったことから、最近殺されてしまっていた。クイニーは、父親がデュードから借りていた2万ドルについて、自分のレジ係としての給料から毎週5 ドルを返済していくと申し出る。デュードは、アニーの気持ちを信じて、クイニーを自分が経営するナイトクラブのスターにしようと決める。デュードの右腕である”ジョイボーイ”が驚いたことに、デュードの目論見は見事に当たり、クイニーは2年間で父親の借金を返済することが出来た。それは丁度、禁酒法が終わる頃であった。

デュードは、シカゴで大きな力を持つ裏社会のボス、スティーブ・ダーシー、別名”ミスター・ビッグ”と重要な会合を持つ。ダーシーは、5万ドルと引き換えにニューヨークでの商売の権利を寄越すようにデュードに要求しているが、デュードは10万ドルを要求している。

アニーにはルイーズという私生児がいて、彼女を赤ん坊のときにヨーロッパに送り出している。ルイーズへの手紙の中で、自分は裕福な社交界の華であるE・ワージントン・マンヴィル夫人であると書いており、デュードやさまざまな「ゴッドペアレント」(彼女の仲間の物乞いたち)から貰ったお金をルイーズに送っている。成長したルイーズは、スペイン人の婚約者カルロスとその父アルフォンソ・ロメロ伯爵を連れてアニーに会いに来る。アニーは豪華なホテルに住んでいるふりをしてきており(盗んだホテルの便箋でルイーズに手紙を書いている)、そこに送られて来るルイーズの手紙を1人の従業員に頼んで密かに渡して貰っている。しかし、これが発覚すると、その従業員は解雇されてしまう。

デュードのガールフレンドとなっているクイニーは、デュードにアニーの芝居を続ける手伝いをするようにと頼む。デュードは、そうしないと自分の運が尽きてしまうのではないかと思い、しぶしぶ同意する。クイニーはみすぼらしいアニーを洗練された社交界の華に仕立て上げ、デュードは長期不在にしている友人の豪華なペントハウス・スイートを借り、そこの執事のハジンズまで借り出し、教養のあるビリヤードのハスラー、ヘンリー・G・ ブレイク”判事”にアニーの夫のふりをさせる。

デュードがアニーを助けるために忙しく、”ミスター・ビッグ”との契約を延期し続けていることから、”ジョイボーイ”はますます苛立ち、恐ろしくなってくる。デュードは、ルイーズと将来の夫と義父がヨーロッパに帰る前夜、ニューヨーク市長やニューヨーク州知事を賓客とした豪華なレセプションを開催し、ルイーズの母親の正体は露見せずに済んだ。”ミスター・ビッグ”はデュードの条件に同意し、デュードはクイニーと結婚して身を固めることにする。

キャスト

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役名 俳優 日本語吹替
NETテレビ NHK[2]
デイヴ・コンウェイ グレン・フォード 柳沢真一 近藤洋介
アップル・アニー ベティ・デイヴィス 北林谷栄 初井言榮
エリザベス(クイーニー)・マーティン ホープ・ラング 二階堂有希子 此島愛子
ジョイ・ボーイ ピーター・フォーク 大塚周夫 藤村有弘
ジュニア ミッキー・ショーネシー英語版 雨森雅司
アルフォンソ・ロメロ アーサー・オコンネル 河村弘二
ヘンリー・G・ブレイク トーマス・ミッチェル
ハジンズ エドワード・エヴェレット・ホートン英語版
知事 デヴィッド・ブライアン英語版
スティーブ シェルドン・レナード
カルロス ピーター・マン
ルイーズ アン=マーグレット
不明
その他
N/A 桑山正一
千葉順二
小原いずみ
細井重之
塩見竜介
田村錦人
相模太郎
加藤治
千葉耕市
水島晋
野本礼三
国坂伸
寺田彦右
沢田敏子
浅井淑子
牧野和子
島美弥子
立壁和也
神山卓三
演出 近森啓祐
翻訳 木原たけし
効果 芦田公雄
熊耳勉
調整 前田仁信
制作 東北新社
解説 淀川長治
初回放送 1970年12月20日
日曜洋画劇場
1976年2月8日
『劇映画』
15:30-17:30

※日本語吹替はNETテレビ版がDVD収録(短縮版・正味82分[3]

エピソード

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前作『一日だけの淑女』から約30年近く経過したリメイク作品で、本作では、ヒロインの老女中心の視点のみではなく、ギャング達の視点からも描き、暗黒街の抗争とショービスの華やかさを克明に描写したせいか、アクションシーンも大幅に増えた[要出典]

また、共演陣もベティ・デイヴィス扮した老女役の他、ギャングの首領の側近ジョイ・ボーイ役で出演したピーター・フォークは、一時、監督のキャプラに対し「自分は演技者であり、コメディアンの真似事は出来ない」と、舞台で培った演劇エリート然としたプライドをぶつけたが、キャプラが「肩の力を抜いて、もう一度コミカルをシリアスに演技すればいい」と絶妙に宥めたことから、新境地を開くきっかけともなった[要出典]

この作品を意識して香港で再びリメイクした作品が、ジャッキー・チェン主演の『奇蹟/ミラクル』(1989年)である。ここでは、出稼ぎに来た青年が、ひょんなことからマフィアの抗争に巻き込まれて首領に担がれた、というストーリーで始まり、りんご売りの老女が花売りの老女に設定が変っている。

フランク・キャプラ監督は当初、主人公デイヴ役にディーン・マーティン(※)かフランク・シナトラを、またクイーニー役にシャーリー・ジョーンズを希望していたが、グレン・フォードがデイヴ役に決まり、映画に出資することになると、フォードは当時の恋人ホープ・ラング(夫ドン・マレーとの正式離婚前)をクイーニー役に推した[4]

撮影期間は1961年4月20日から同年6月まで[1]

※『リオ・ブラボー』でボラチョン(スペイン語:飲んだくれ)と罵倒されていた保安官補佐(マーティン)は心機一転“デュード”と名乗るが、本作のフォードは部下たちからデュードはと呼ばれている。デュードは伊達男、ハンサム、お洒落な奴、イケメンの意味。

日本語訳

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脚注

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  1. ^ a b Pocketful of Miracles (1961) - Box office / business” (英語). IMDb. 2013年4月18日閲覧。
  2. ^ 番組表検索結果詳細”. NHKクロニクル. 2020年9月21日閲覧。
  3. ^ パッケージには「計約93分」と誤記されている。
  4. ^ Pocketful of Miracles (1961) - Trivia” (英語). IMDb. 2013年4月18日閲覧。

外部リンク

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