ボリソフ彗星 (2I/Borisov)

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ボリソフ彗星[1][2]
2I/Borisov[3]
2019年10月12日にハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3が撮影したボリソフ彗星[4][5]。
2019年10月12日にハッブル宇宙望遠鏡広視野カメラ3が撮影したボリソフ彗星[4][5]
仮符号・別名 C/2019 Q4 (Borisov)[6]
分類 彗星
恒星間天体
軌道の種類 双曲線軌道
発見
発見日 2019年8月30日[3]
発見者 Gennady Borisov[3]
発見方法 自作の0.65 m望遠鏡による観測[3]
軌道要素と性質
元期:2019年12月20.0日[6]JD 2458837.5)
軌道長半径 (a) −0.85123±0.00014 au[6]
近日点距離 (q) 2.00644±0.00004 au[6]
遠日点距離 (Q) n/a[6]
離心率 (e) 3.35735±0.00043[6]
公転周期 (P) n/a[6]
軌道傾斜角 (i) 44.05296±0.0064°[6]
近日点引数 (ω) 209.12423±0.00194°[6]
昇交点黄経 (Ω) 308.14979±0.00036°[6]
平均近点角 (M) 14.36500±0.00722°[6]
次回近日点通過 TDB 2458826.053529[6]
(2019年12月8日13:17:05 (UTC) [注 1]
物理的性質
絶対等級 (H) 10.5±0.6(彗星全体)[6]
13.4±0.4のみ)[6]
Template (ノート 解説) ■Project

ボリソフ彗星[1][2](2I/Borisov[3]、C/2019 Q4 (Borisov)[6]、内部呼称名 gb00234)は、2019年8月に発見された恒星間彗星である[3]軌道離心率約3.36の双曲線軌道を持ち、太陽の重力に拘束されていない[6][8]

発見[編集]

2019年8月30日に、クリミア半島のNauchnij近郊にあるクリミア天体物理天文台の観測施設MARGO (Mobil Astronomical Robotics Genon Observatory) で、アマチュア天文家ゲナディ・ボリソフen:Gennady Borisov) が自作の0.65m望遠鏡による観測で発見した[3][9]。発見されたときは、太陽から3±0.13 天文単位 (au)の位置にあった。ペルセウス座との境界近くの、銀河面に非常に近いカシオペヤ座の領域から飛来しており[10]、2019年12月8日頃に近日点を通過すると予想されている[6]。近日点は太陽から約2 au[3][6]、その頃の地球からの距離も約2 auと予測されている[3]

2019年9月14日、カナリア天体物理研究所 (Instituto de Astrofísica de Canarias) は、カナリア諸島ラ・パルマ島ロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台にある口径10.4メートルのカナリア大望遠鏡による分光観測の結果、ボリソフ彗星のスペクトルは太陽系のD型小惑星や典型的な彗星核のスペクトルと似たものであったと発表した[11]。この結果から、他の恒星系で形成された彗星は、太陽系で形成されたものと同様の組成を持つ可能性があり、従って同様のプロセスによって生成される可能性が高いことを示唆する、としている[11]

軌道離心率[編集]

ボリソフ彗星とオウムアムアの軌道の比較

恒星間天体は、太陽重力の影響を受けず、わずかな速度変化が離心率の大きな変化をもたらすことから、e > 3 となるような大きな離心率を持つことが可能である。

12日間の観測弧から、ビル・グレイ (Bill Gray) のカーブ・フィッティングでは、2019年12月7日頃に2.0 auの近日点を通過する軌道離心率3.4の双曲線軌道が得られた。わずか12日間の観測弧のため、本当に恒星間天体であるか否かについての疑念が残されていた。しかし、既知のどの彗星よりも際立って大きな非重力の力(ガスの噴出による推力)を受けない限り放物線軌道にはならない。放物線軌道を想定した場合、軌道離心率がおよそ1で、2019年12月30日に地球からの最小交差距離0.35 au、近日点0.90 auを通過する軌道も得られた[12]。しかし、軌道は恒星間起源の天体であることを示す双曲解に収束し、非重力では運動を説明できなかった。30 km/sを超える双曲線離脱速度 (hyperbolic excess velocity, vinfinity) は、この天体が恒星間天体であることを強く示唆するものであった[10]

Interstellar velocity inbound
天体 速度
エレーニン彗星 (C/2010 X1)
(太陽から200 auの距離での比較)
2.96 km/s[注 2]
0.62 au/年
オウムアムア (1I/2017 U1) 26.33 km/s[13]
5.55 au/年
ボリソフ彗星 (2I/Borisov) 30.7 km/s[10]
6.47 au/年

名称[編集]

2019年9月24日、国際天文学連合 (IAU) は、公式にボリソフ彗星を恒星間天体と認め、「2I/Borisov」と命名したことを発表した[3]。それまでは、長周期彗星の命名規則に従って C/2019 Q4 という名称が主に使われていた[6]

注釈[編集]

  1. ^ ユリウス日からの換算には国立天文台暦計算室のCGIを使用[7]
  2. ^ エレーニン彗星は1798年9月29日に太陽から200 auの距離にあった。以下のサイトによる計算。JPL Horizons”. 2019年9月13日閲覧。

出典[編集]

  1. ^ a b ボリソフ彗星”. 天文学辞典. 日本天文学会. 2019年12月8日閲覧。
  2. ^ a b “観測史上2例目の恒星間天体、新発見のボリソフ彗星”. (2019年9月20日). https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10834_c2019q4 2019年9月29日閲覧。 
  3. ^ a b c d e f g h i j “Naming of New Interstellar Visitor: 2I/Borisov” (プレスリリース), 国際天文学連合, (2019年9月24日), https://www.iau.org/news/pressreleases/detail/iau1910/ 2019年9月29日閲覧。 
  4. ^ National Aeronautics and Space Administration (2019年10月16日). “Comet 2I/Borisov Compass Image”. Hubblesite. 2019年12月8日閲覧。 “C/2019 Q4 (Borisov); HST WFC3/UVIS F350LP; Oct. 12, 2019”
  5. ^ National Aeronautics and Space Administration (2019年10月16日). “Hubble Observes First Confirmed Interstellar Comet”. 2019年12月8日閲覧。 “Hubble took a series of snapshots as the comet streaked along at 110,000 miles per hour. [...] The comet was 260 million miles from Earth when Hubble took the photo. [...] This Hubble image, taken on October 12, 2019 [...] reveals a central concentration of dust around the nucleus (which is too small to be seen by Hubble).”
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s JPL Small-Body Database Browser: C/2019 Q4 (Borisov)”. Jet Propulsion Laboratory. 2019年9月29日閲覧。
  7. ^ ユリウス日→年月日”. 天文情報センター 暦計算室. 国立天文台. 2019年9月26日閲覧。
  8. ^ COMET C/2019 Q4 (Borisov)”. Minor Planet Center. 2019年9月11日閲覧。
  9. ^ King, Bob. “Is Another Interstellar Visitor Headed Our Way?”. https://www.skyandtelescope.com/astronomy-news/possible-interstellar-comet-headed-our-way/ 2019年9月12日閲覧。 
  10. ^ a b c Bill Gray. “Is gb00234 an Interstellar Comet or Asteroid”. Minor Planet Mailing List. 2019年9月10日閲覧。
  11. ^ a b “The Gran Telescopio Canarias (GTC) obtains the visible spectrum of C/2019 Q4 (Borisov), the first confirmed interstellar comet” (プレスリリース), Instituto de Astrofísica de Canarias, (2019年9月14日), http://iac.es/divulgacion.php?op1=16&id=1610&lang=en 
  12. ^ Bill Gray. “Pseudo-MPEC for gb00234 (non-grav A1+A2)”. Project Pluto. 2019年9月11日閲覧。
  13. ^ Pseudo-MPEC for A/2017 U1 (FAQ File)”. Bill Gray of Project Pluto (2018年7月22日). 2019年9月12日閲覧。

関連項目[編集]

  • オウムアムア (1I/2017 U1)- 2017年に史上初めて発見された恒星間天体。1.19951の軌道離心率を持つ。
  • ボーエル彗星 (C/1980 E1) - 太陽系の彗星として最大の軌道離心率1.057の長周期彗星。

外部リンク[編集]