ベニバナインゲン
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| 分類 | |||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||
| Phaseolus coccineus L. | |||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||
| Runner bean |
ベニバナインゲン(紅花隠元、学名:Phaseolus coccineus)はマメ科インゲンマメ属の植物である。「花豆」の名称で知られ、豆が食用とされる。
形態
[編集]蔓性のマメで、蔓は最大7m程度にまで達する。葉は茎に対して互生し三出複葉となる。
花はマメ科らしい蝶形花で、色は赤色の他に白色もある。種実は腎臓型で長径は大きいもので3㎝に達し、食用のマメ類としては最も大きいものの一つである。ただし、大きさは個体によってかなりの差がある。色合いも紫色で斑模様のもの、白いものに大別され、紫色の種では斑模様の量にも差がある。普通赤い花からは紫色の豆が、白い花からは白い豆ができる。
十分に大きく育った植物体の根系は塊根を形成する。
ベニバナインゲンの子葉は地下性(英:hypogeal germination)で、発芽時にも地下に残る。このタイプの子葉は栄養分の保管に特化し光合成は行わず、やがて地中で枯死する[1]。地上に出てくるのは初生葉である。ベニバナインゲンの葉は三出複葉だが、初生葉だけは単葉が対生する。これに対しインゲンマメの子葉は地上性であり、発芽時には地上に出て光合成も行う。
- 発根時のマメの様子。豆から伸びる葉は初生葉で豆は地下に残る
- 若いベニバナインゲンの根系
生態
[編集]新大陸の中米地域、メキシコとグアテマラ国境付近の標高2000m前後の高原地帯が原産とされる。
虫媒花で長野県における観察では訪花昆虫ではミツバチが最も多い[2]
上手く育つと一株当たり数千もの花が咲くが、着鞘結実まで至るものは多くても1割程度とされ非常に少ない[3]。本種は形態節のように地下部に塊根を形成するが、種子繁殖以外での繁殖と生存への適応とも考えられている。
人間との関わり
[編集]栽培
[編集]霜に弱く、日本の場合一年草として行われる。作型は営利栽培では「晩春まき秋取り」が一般的である。花の鑑賞目的の場合は暖地でも栽培はできるが、開花期に熱帯夜であると非常に結実しにくい。このため豆を目的とした商業的な栽培は寒冷地や高冷地で行われる。ただし、あまりにも寒冷地であると早霜による鞘への被害などもあり適地は限られる。暖地の家庭菜園などで種実を目的に栽培する場合は盛夏に種をまき、高温期を避けた秋開花からの結実を狙う作型がある。
栽培方法として日本語で読めるものとしては有馬(1986)がある[3]。
蔓性種なので支柱を立てて栽培する。蔓性のマメ類に共通の課題であるが、各種の工程が機械化もしづらく手間であり、産地によっては高齢化や農家の減少で作付面積の減少の一因となっている。一方で支柱で誘引しないと収量は減少し、これは一因として訪花昆虫の減少による受粉の失敗などが考えられている[4]。
育苗後の移植もできるが、直播での栽培が多い。豆の臍付近から発根するので、臍を下にして土に埋めると発芽の失敗が少なくなる[5]。
フザリウム、ピシウム、リゾクトニアなどによる幾つかの土壌病害が知られており、過度な連作栽培は推奨されない[6][7]。薬剤が有効なものもある[8]。
使用できる農薬は少ない。作物名は「べにばないんげん」(「はなまめ」も同じ)を使う。上位分類は「豆類(種実)」、および「野菜類」である。上位分類に「豆類(未成熟)」が含まれていないので、さやいんげんとして出荷したい場合などには、農薬の使用に注意が必要である。
日本の主な産地は北海道、長野県、群馬県、茨城県など。最大産地は北海道北見市である。品種については紫色の豆を付ける赤花種、白い豆を付ける白花種くらいの分け方に留まり、農家が自家採取した在来種の栽培が多いとされているが、これらの道県の研究所では経済的価値の高い大粒種などの品種育成も行われている[9]。
- 支柱を立てて栽培する
食用
[編集]豆の他、地下にできる塊根(いわゆる芋)も食用に出来るとされる。日本では主に種実が利用され、若さやや塊根の利用は稀である。
マメ類全般に言えることであるが、有毒タンパク質を含み、食用とするにはこれを分解するために十分に加熱する必要がある。特に本種は毒性が強いとされ、不適切な調理法で中毒を起こした事例が日本でも複数報告されている[10]。大量の水と共に十分に軟らかくなるまで茹でるという毒抜きを行ったうえで、調理することが求められる[11]。
豆としては大きいので煮る場合は吸水を24時間程度を目安に行う。茹でる最中には何度か茹でこぼしを行うが、熱い豆が空気に触れるとすぐ皮が破けるので、なるべく空気に触れないように蓋で抑えるなどして茹で汁を変える。1時間程度煮てある程度軟らかくなったら、何度かに分けて味付けを行う[3]。
日本では熟した豆を煮豆や甘納豆、餡の原料とすることが多い[12]。
冷涼なイギリスはこの豆の栽培に適しており、広く栽培される。主に若さやを目的とした「さやいんげん」として扱われ人気があるという。
その他
[編集]草勢が強く蔓がかなり伸びるので生け垣として使うことがある。また、花を数千も付けるので観賞用としても有用である。
名称
[編集]「ベニバナインゲン」は赤い花を付けるという形態、およびインゲンマメ属に属するという分類的な命名を併せたものとなっている。なお、形態節の通りアカバナだけでなく白花の種類もある。「花豆」という名前が有名であるが、これは花の数が非常に多いこと、元々が食用というより花を観賞する目的だったことなどからの命名である。「紫花豆」「白―」などは豆の色に因む。
地方名として「花ササゲ」、「おいらん豆」など形態的な特徴に因む名前が知られる。霧が出るような高原地帯で生産されることから「高原豆」、「霧下豆」などとも呼ばれるという。九州中央部の祖母山の山麓で栽培される豆は「そぼさん豆」と呼ばれているという。
脚註
[編集]- ↑ ヴェルナー・ラウ著, 中村信一, 戸部博訳 (2009) 『植物形態の事典 新装版』. 朝倉書店, 東京. ISBN 978-4-254-17144-0
- ↑ 野々村豪二, 西幸大斗, 中野顕洋, 岡部繭子 (2017) ベニバナインゲンにおける受粉様式の検討~特に訪花昆虫に注目して~. 北陸作物学会報. 52号, pp.45-48. doi:10.19016/hokurikucs.52.0_45
- 1 2 3 有馬博 (1986) ベニバナインゲンの栽培方法. 信州大学農学部農場報告, 4巻, pp.1-11. hdl:10091/14112
- ↑ 野々村豪二, 西幸大斗, 中野顕洋,井口利江菜, 志津野匡人, 松永慎太朗, 岡部繭子 (2018) ベニバナインゲン栽培における蔓の誘引が収量および訪花昆虫に及ぼす影響. 北陸作物学会報, 53巻, pp.39-42. doi:10.19016/hokurikucs.53.0_39
- ↑ 元木悟, 岸田知丈, 小澤智美, 小松和彦, 塚田元尚, 小口伴二 (2000) 豆類 2 種の播種方法と出芽. 北陸作物学会報, 35巻, pp.56-58. doi:10.19016/hokurikucs.35.0_56
- ↑ 柴田聡 (2002) ベニバナインゲンおよびインゲンマメ萎凋症の原因解明. 群馬県農業試験場研究報告, 7号, pp.21-32.
- ↑ 渡邊健, 本橋みゆき (2005) ベニバナインゲンに発生した白絹病 (新称) およびリゾクトニア根腐病 (新称). 関東東山病害虫研究会報, 2005巻52号, pp.19-23. doi:10.11337/ktpps1999.2005.19
- ↑ 渡邊健, 柴田夏実, 本橋みゆき (2006) ベニバナインゲンの白絹病およびリゾクトニア根腐病に対する簡易な薬剤防除. 関東東山病害虫研究会報, 53号, pp.1-4. doi:10.11337/ktpps1999.2006.1
- ↑ 横田国夫, 飯田幸彦, 桐原俊明, 須賀立夫 (2000) ベニバナインゲン新品種「常陸黒」の育成. 茨城農総セ生工研研報, 3号, pp.31-39.
- ↑ 江花恭子, 斉藤公男, 新村牧子ら (1986) 豆類の加熱によるデンプン粒と青味臭成分の変化について 白いんげん豆生煮えによる食中毒事件の解明の一環として. 福島県衛生公害研究所年報, 3号, pp.76-84.
- ↑ 野村千枝, 粟津薫, 吉光真人, 北川幹也, 尾花裕孝, 池辺克彦, 田中之雄 (2006) 白花豆のレクチン活性に対する加熱調理の影響. 大阪府立公衆衛生研究所研究報告, 44号, pp.55-59.
- ↑ 星川清親 (1980)『新編 食用作物』. 養賢堂. pp.496. doi:10.11501/12642648(国立国会図書館デジタルコレクション)
外部リンク
[編集]- ベニバナインゲン - 厚生労働省