ベギン会

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
1489年に書かれたベギン会の女性
ドイツのベギン会の修道院

ベギン会(Beguines)は、中世ヨーロッパで発生した半聖半俗の姉妹団である。修道会とは異なる[1]。その専用居住集落たるベギンホフ(Begijnhof, beguinage)は、中世においては、現在のベルギーの主要都市のほとんどすべてに存在し、隆盛をほこったが、フランス革命時、革命防衛軍の進攻によって接収され、資産を没収されたことなどを契機に衰退にむかった。ベルギー、オランダでは、その跡地が現在も保存されており、うち、ベルギーの13箇所は、世界遺産に指定されている[2]

ベギンは修道女とは異なる。13世紀に生まれたベギン会は女性達の互助組織として、独自の共同体を形成していた[1]。結婚か、修道院に入る以外に人生の選択肢があまりなかった時代にあって、教育、執筆、看護、織布関連産業などの多様な分野での活動の機会を生み出し、さまざまな境遇の女性のつどう場となっていた。また、ベギンホフをでれば結婚も可能であったといわれるが、かならずしも推奨されていなかったとみられる時代、地域もある。

ベギン会の組織としての性格であるが、広域的なネットワークをもつ統一的な組織は形成せず、共通の指導者、会則、創始者なども存在しておらず、会の実態は、地域毎の婦人会のようなもので、ひとつの都市に複数の会が存在する状態であった。その生活様式は両親との同居や仲間数人との共同生活のほかに単独居住なども含んでいた。現在のベルギーにあたる地域では13世紀中頃にベギン専用居住区たるベギンホフが形成され、その外に住む女性はベギン風の生活をしており、ベギン風の衣装をまとっていても、ベギンとみなされるべきではないとされた[1]

この女性たちの動向は、そのため、会というより、自然発生的な運動とみなす研究が20世紀なかごろまでに主流となった[要出典]。女性のベギンに対して、半聖半俗の生活をおくる男性は、ベガルドとよばれたが、その数は、ベギンにくらべると問題にならないほど少なかった[1]。男性の場合は安全な住居の確保の必要性が薄かったためとかんがえられる。

ベギンの出身階層は、貴顕のものから、下層民まですべての階層にわたり、ドイツで、その数、20万と14世紀初頭の史料にはある[要出典]

女性の集団であるため偏見にさらされることも多かった[1]。一方でその生活態度は、質実剛健、堅実そのものであり、良家の子女が将来を思い、教育と生活訓練のために托されることも多く、たとえば、ヘントのベギンホフを描いた図版などをみると、ベギンホフの広大な敷地に、盛装した都市貴族なのか市民がおとずれ、あたかも、見合いのための社交の場を呈している[要出典]。他方で共同体成員の結婚を祝福しないかのような文言をきざんだ札をかかげるベギンホフ施療院、結婚を物理的にむずかしくする規約の存在なども確認できることから、通俗的にいわれる、共同体をでれば結婚もできた、に関しては、地域差もさることながら、時代差などを慎重に考慮したうえで実態を把握すべき問題であろう。こころみに、見合いの場とかしているかの様相をていしているのは、近代にはいってからの図版であるうえ、ベルギー全域からの出身者をあつめていたことで例外的なヘントのベギンホフのものであることから、この一枚をもって、全体を理解してよいのかという問題はある。

会則などをみると、男性と同席しての食事などが禁止の対象となっており、看護にあたるばあいも、訪問看護は、ふたりひとくみでーーふたりで行動するのは、もちろん看護名目で男性と不適切な関係になるなどを避けるためであり、路上など公共の場所も含め際限ないおしゃべりにうつつをぬかすためではない。当時にあっても女性の悪徳のさいたるものはおしゃべりとされており、街中でくらだない話にうつつをぬかす女性はそれだけで評判をあやうくしたーーなどの規定がもうけられており、風紀と評判をまもるために最大限の努力がされていた。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e 上條敏子「単身女性の住まい方ー中世北西ヨーロッパにおけるベギンの居住及び組織形態」、赤坂俊一、柳谷慶子編『ジェンダー史叢書第8巻ー生活と福祉』明石書店、2010、pp. 193 - 230。
  2. ^ 上條敏子「ベギンホフ」、森洋子編『図説ベルギー美術と歴史の旅』河出書房新社、2015、pp. 35 - 36。

参考文献[編集]

  • 『ベギン運動の展開とベギンホフの形成』上條敏子 刀水書房(2001年)
  • 上條敏子「単身女性の住まい方ー中世北西ヨーロッパにおけるベギンの居住及び組織形態」、赤坂俊一、柳谷慶子編『ジェンダー史叢書第8巻ー生活と福祉』明石書店、2010、pp. 193 - 230。
  • 上條敏子「ベギンホフ」、森洋子編『図説ベルギー美術と歴史の旅』河出書房新社、2015、pp. 35 - 36。
  • Toshiko Kamijo, 'Flemish Beguinages: Invention in the Thirteenth Century. How Independent Life for Women became Possible in the Middle Ages'藤女子大学キリスト教文化研究所紀要 第15号(2014年7月)pp.47--67.