ベガーズ・バンケット

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ベガーズ・バンケット
ローリング・ストーンズスタジオ・アルバム
リリース
録音 1968年3月17日 - 7月25日
ジャンル ロック
カントリーロック
時間
レーベル イギリスの旗 デッカ・レコード
アメリカ合衆国の旗 ロンドン・レコード[1]
プロデュース ジミー・ミラー
専門評論家によるレビュー
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ローリング・ストーンズ 年表
サタニック・マジェスティーズ
(1967年)
ベガーズ・バンケット
(1968年)
スルー・ザ・パスト・ダークリー
(1969年)
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ベガーズ・バンケット』(Beggars Banquet)は、ローリング・ストーンズ1968年に発表したオリジナルアルバム。プロデュースはジミー・ミラー。全英3位[2]、全米5位[3]を記録。

解説[編集]

1960年代後半のストーンズはルーツであった黒人音楽から離れ、サイケデリック・ムーブメントに完全に浸かり、当時のストーンズ・ファンクラブではバンドの将来についてディスカッション大会まで開かれるほど、ファンの間では不安が広がっていた[4]。その不安を吹き飛ばすかのように、1968年5月にリリースしたシングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」は全英1位の大ヒット[2]。そしてそれに続く本作は、ロックバンドとして原点に立ち返ったストーンズの姿を誇示したものとなった。

ミック・ジャガーはバンドがその方向性を決定づけるプロデューサーが必要であると考え、1968年初めにスペンサー・デイヴィス・グループトラフィックのプロデューサーであったジミー・ミラーの招聘を決定した[5]。結果は成功し、以降『レット・イット・ブリード』、『スティッキー・フィンガーズ』、『メイン・ストリートのならず者』という傑作アルバムを次々と生み出し、その関係は1973年まで続いた。

バンドは7月のリリースを目標にして3月15日よりロンドンオリンピック・スタジオにてレコーディングを開始した[6]。以降、レコーディングは散発的に行われ、ロサンゼルスで最終的なオーバーダブとミキシングを行い、7月5までには完成した。本来であればジャガーの25回目の誕生日である7月26日に発売される予定だったが[7]、後述するようにジャケットデザインをめぐってバンドとレーベルの間に対立が起き、リリースは結局年末までにずれ込んだ。

悪魔を憐れむ歌」や「ストリート・ファイティング・マン」のようなバンドの新しい方向性を示す曲がある一方で、エレキギターよりもアコースティックギターを中心に据えたサウンドが目立ち、ドラムスを使用しない曲が3曲もあるなど(「ノー・エクスペクテーションズ」、「ディア・ドクター」、「ファクトリー・ガール」)、ルーツであるブルースへの回帰がより強調された内容となっている。

本作でのギターは大半がキース・リチャーズによるものである。一方、ブライアン・ジョーンズの心身の不調は前年以上に深刻なものとなっており、彼の本作への貢献度は前作『サタニック・マジェスティーズ』以上に少なかった[8]。ジョーンズはレコーディング期間中の1968年5月21日に、保護観察中にもかかわらずカナビス樹脂所持の罪で再起訴されている[9]。結局罰金刑に処せられ収監は免れたものの[10]、バンドはジョーンズの解雇と新メンバーの採用を考え始めるようになった。ジョーンズの当時の様子は、ジャン=リュック・ゴダールによるドキュメンタリー映画ワン・プラス・ワン』に描かれている。

1968年12月10日、11日にバンドは本作のプロモーションとして、『ロックンロール・サーカス』と名付けられたTVショウを、ジョン・レノンエリック・クラプトンザ・フーなど多数のゲストを招いて収録した。映像と音源は当時のマネージャーのアラン・クレインが掌握しており、クレインとの関係が切れたことにより作品は封印されてしまうが[11]1996年VHSサウンドトラックアブコ・レコードから発表。四半世紀以上経てようやくファンの元に届けられた。

アートワーク論争[編集]

現在の本作のジャケットとして採用されている「汚れた便所の落書き」の写真は、映像監督のバリー・フェスティンとニューヨークデザイナー、トム・ウィルクスによってデザインされた[7]。落書きの中には「ジョンヨーコを愛してる」「リンドン毛沢東を愛してる」「ボブ・ディランの夢」などといった文字も見える。だがデッカ・レコードは、「いかがわしい」とバンドから提示されたこのジャケットデザインを拒否した[12]

バンドはこれに抵抗し、茶色の紙袋に入れて「Unfit for Children(子供達には不向き)」というラベルを貼って出すという代案を提示したり、メロディ・メイカー誌に例のジャケット予定写真と共に「デッカにこれをジャケットに採用するよう手紙を出して欲しい」とファンに訴える広告を出したりもした[13]。それでも事態は好転せず、アメリカのディストリビューターであるロンドン・レコードもデッカの決定を支持し、バンドの不満は高まった。ストーンズはその報復としてデッカとロンドンの態度が軟化するまでアルバムを提供しなかった。しかしながら、11月までにストーンズは招待状を真似た単純なジャケットでリリースすることを渋々認め、屈服することとなった[14]

金色で縁取られた薄クリーム色のジャケットには「Rolling Stones Begger's Banquet」と真ん中に、左下隅に「R.S.V.P.」('Reponse s'il vous plait, ご返事願います、の略)と黒字の筆記体で記入された。見開きジャケットの内側には、タイトルどおりこじき(Beggar)風の格好をしたメンバー5人が宴会(Banquet)を開く様子が写されている。ビートルズが二週間前に『ホワイト・アルバム』をリリースしていたことで、ストーンズが再びビートルズの真似をしたと指摘する者もいた[15]

「便所ジャケット」は、クラインの指示により1984年製造分から採用されるようになった[4]。一連の論争についてジャガーは「全くの時間の無駄だった」と振り返っている[16]

評価[編集]

イギリスでは3位、アメリカでは5位とダブル・プラチナを獲得[4]。チャート最高位こそ前作『サタニック・マジェスティーズ』を越えられなかったものの、音楽に関してはほとんどの批評家がその曲と彼らのルーツへの回帰を高く評価、前作で下がったバンドへの評価を回復する事に寄与した。ローリング・ストーン誌のヤン・ウェナーは、「ストーンズはロックンロールと共に帰ってきた。彼らの新しいアルバムは、短いロックンロールの歴史に足跡を残すだろう」と書いて賞賛した[17]。本作の成功により、ストーンズは彼らが進むべき方向性を確認した。キース・リチャーズ2002年のインタビューで、『メイン・ストリートのならず者』と本作を挙げて「最高傑作の一つ」と語っている[18]

ローリングストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム5002002年の大規模なアンケートで選出)において58位[19]VH1によるグレーティスト・アルバムに於いては67位となった。

リイシュー[編集]

1984年初CD[20]2002年8月にアブコ・レコードよりリマスターされた上で、SACDとのハイブリッドCDとしてデジパック仕様で再発された。また、ある時期までのマスターは現行マスターに比べてピッチが若干低く、キーが不明瞭になっている曲がいくつか存在した。

本作リリース時にはステレオ盤と共にモノラル盤も製作されていたが、リイシューされる際には全てステレオの方が採用されていた。2016年、デッカ時代のオリジナルアルバムのモノラル版を復刻したボックスセット『ザ・ローリング・ストーンズ MONO BOX』で、モノラル版が初めてCD化された[21]

収録曲[編集]

特筆無い限り、作詞・作曲はジャガー/リチャーズ

A面
  1. 悪魔を憐れむ歌 - Sympathy for the Devil - 6:18
    • 本作およびストーンズを代表する1曲。謎めいた歌詞が悪魔崇拝ではないかと受け取られ、議論を呼んだ。
  2. ノー・エクスペクテーションズ - No Expectations - 3:56
    • スライドギターはブライアン・ジョーンズによる。ジャガーは「100%マジで打ち込んでるブライアンを見たのはこの曲が最後だった」と回想している。アメリカではシングル「ストリート・ファイティング・マン」のB面として初登場。
  3. ディア・ドクター - Dear Doctor - 3:21
  4. パラシュート・ウーマン - Parachute Woman - 2:20
  5. ジグソー・パズル - Jigsaw Puzzle - 6:05
    • スライドギターはキース・リチャーズによる。歌詞の中にメンバー5人を指すと思われる箇所がある。
B面
  1. ストリート・ファイティング・マン - Street Fighting Man - 3:15
    • アメリカでは、アルバムの先行シングルとしてリリース。
  2. 放蕩むすこ - Prodigal Son (Rev. Robert Wilkins) - 2:51
    • 戦前はブルース歌手として、戦後は牧師として活動したロバート・ウィルキンスの曲のカヴァー。リリース当時は作者不明であったため「ジャガー/リチャーズ」とクレジットされたが、後に修正。
  3. ストレイ・キャット・ブルース - Stray Cat Blues - 4:37
  4. ファクトリー・ガール - Factory Girl - 2:08
  5. 地の塩 - Salt of the Earth - 4:47

参加ミュージシャン[編集]

ローリング・ストーンズ

ゲストミュージシャン

[22][23]

脚注[編集]

  1. ^ a b The Rolling Stones - Beggars Banquet (Vinyl, LP, Album) at Discogs
  2. ^ a b ROLLING STONES | full Official Chart History | Official Charts Company:
  3. ^ The Rolling Stones | Awards | AllMusic:
  4. ^ a b c 日本版リマスターCD(2002年)の越谷政義による解説より。
  5. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年ISBN 4-7897-0781-4)285頁
  6. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年ISBN 978-4401616541)163頁
  7. ^ a b 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)173頁
  8. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)304頁
  9. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)169頁
  10. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)175頁
  11. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)184頁
  12. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)309頁
  13. ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」株式会社ロッキング・オン(2003年)、53頁
  14. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)321頁
  15. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)322頁
  16. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)177頁
  17. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)325頁
  18. ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」株式会社ロッキング・オン(2003年)、25頁
  19. ^ The Rolling Stones, 'Beggars Banquet' - 500 Greatest Albums of All Time | Rolling Stone:
  20. ^ The Rolling Stones - Beggars Banquet at Discogs:” (英語). 2016年12月14日閲覧。
  21. ^ THE ROLLING STONES | ザ・ローリング・ストーンズ - ザ・ローリング・ストーンズ MONO BOX (7インチ紙ジャケット仕様) - UNIVERSAL MUSIC JAPAN:
  22. ^ Beggars Banquet - The Rolling Stones | Songs, Reviews, Credits, Awards | AllMusic:
  23. ^ Beggars Banquet: