ヘゲモニー政党制

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ヘゲモニー政党制(ヘゲモニーせいとうせい)は、一つの大政党のほかに、小さな政党または衛星政党が存在を許されるが、公式上も事実上も権力をめぐる競争が許されない政党制(政党システム)である。このような大政党をヘゲモニー政党と呼ぶ。イタリア政治学者ジョヴァンニ・サルトーリが唱えた政党制類型の一つである。ヘゲモニー(Hegemonie)とはドイツ語で「主導権」「指導的立場」を意味する語である。

概念[編集]

ヘゲモニー政党制の分類上の要点は、形式的特徴により一党制から区別すること、競合の有無によって一党優位政党制と区別することにある。サルトーリは、野党が完全に禁止される時と、そうでない時には政治の様相が違ってくるだろうと指摘し、一党制からヘゲモニー政党制を区別する。また、与党が選挙で連勝したことを、競争が許されていない証拠とみなす考え方に反対し、ヘゲモニー政党制から一党優位政党制を区別する。それまで一党制や支配政党(制)という名の下に一括されていたものは、サルトーリの提唱以後、3つに分けられることになった。

ヘゲモニー政党制の例[編集]

サルトーリはヘゲモニー政党制を、イデオロギー指向とプラグマティズム指向という2つの異なるタイプに分類した。

イデオロギー指向型[編集]

冷戦期の東ヨーロッパの社会主義国
ポーランドや旧東ドイツなど、かつての「東欧」には過去の経緯から複数政党制を採っているが多くあった(人民民主主義)。これらの国では衛星政党にも国家のポストが割り振られており(例えば旧東ドイツでは衛星政党4党の党首は国家評議会副議長となっていた)、宗教的・イデオロギー的に支配政党である共産主義政党に馴染めない国民各層を間接的に体制内に取り込む効果を有していた[1]。ただし大抵は憲法に共産主義政党の指導権が明記されていたり、議会の選挙が形式的なものであったりと、実態は一党独裁制とあまり変わらなかった。現在の中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国も衛星政党を有する。
開発独裁」型国家
シンガポールスハルト政権時代のインドネシア朴正煕全斗煥政権時代の韓国蒋介石蒋経国政権での戒厳令下の中華民国党国体制も参考)、プーチン政権のロシアなど、いわゆる「開発独裁」型国家も野党が存在するものの、選挙制度などが圧倒的に政権政党に有利にできているため、実態としてはヘゲモニー政党制であるといえる。

プラグマティズム指向型[編集]

1940年代から1990年代までのメキシコの制度的革命党の長期政権
政権党があらゆる政治勢力を取り込み、党内での権力闘争により政策決定が行われる。

一般的には、ヘゲモニー政党という言葉が使われる場合(とくに独裁の形態として批判的に用いられる場合)は、イデオロギー指向型のケースを指すことが多い。

両者が異なることに異議を唱える者はいないが、こちらの用語法は普及していない。

参考文献[編集]

  • ジョヴァンニ・サルトーリ『現代政党学』(普及版)、岡沢憲芙川野秀之訳、早稲田大学出版部、2000年(原著:1976年)。

脚注[編集]

  1. ^ 仲井斌『もうひとつのドイツ』朝日新聞社、1983年 P167-168

関連項目[編集]