ヘキサボラン(10)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヘキサボラン(10)
識別情報
CAS登録番号 23777-80-2
特性
化学式 H10B6
モル質量 74.95 g mol−1
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ヘキサボラン(10)(Hexaborane(10))または単にヘキサボランは、化学式B6H10無機化合物である。無色の液体で、空気中では不安定である[1]

構造[編集]

NMR interpretation of hexaborane(10), showing its structure

ヘキサボラン(10)は、nido-型のクラスターに分類される[2]:152ホウ素原子は五角錐の形で、架橋水素原子4つ、末端水素原子6つを伴っている。分子の点群は、Csである[3]

合成と反応[編集]

研究室では、ペンタボラン(11)ホウ素化の後に脱プロトン化臭素化することで[BrB5H7]-とし、このアニオン性クラスターをジボランで還元して中性生成物を得る[1]

K[BrB5H7] + 1/2 B2H6 → KBr + B6H10

また、ペンタボラン(11)の熱分解でも生成する。

脱プロトン化すると、[B6H9]-プロトン化すると[B6H11]+を与える[1]。反応性の高いボランラジカルに対してはルイス塩基として働き、様々なconjuncto-クラスターを形成する[2]:162

出典[編集]

  1. ^ a b c Remmel, R. J.; Johnson, H. D.; Brice, V. T.; Shore, S. G.; Gaines, D. F. (1979). “Hexaborane(10)”. Inorganic Syntheses 19: 247-253. doi:10.1002/9780470132500.ch58. ISBN 9780470132500. 
  2. ^ a b グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン英語版. ISBN 978-0-08-037941-8
  3. ^ Hirshfeld, F. L.; Eriks, K.; Dickerson, R. E.; Lippert, E. L.; Lipscomb, William N. (1958). “Molecular and Crystal Structure of B6H10” (英語). The Journal of Chemical Physics 28 (1): 56-61. doi:10.1063/1.1744080. ISSN 0021-9606. http://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.1744080.