ブローチ (装身具)

ブローチ(英語: brooch)とは、衣服に装着するように作られた装身具である。ブローチは通常金属で作られ、銀や金などの貴金属以外にも、ブロンズやニッケル、ステンレススチールなどの卑金属も使用される。
エナメルや宝石で装飾され、ストマッカーのように単に装飾のために用いられることもあれば、外套などの留め具の機能のために用いられることもある。
歴史
[編集]ブローチの原型は古代ギリシャのキトン(服)を留めるための「フィビュラ(フィブラ)」と呼ばれる装身具である[1]。現在の安全ピンのように、横に長い構造をしており、ルネッサンス期に入りボタンが一般的になるまでは、フィビュラが衣服を留めるために使用された。フィビュラの針の上にさまざまな装飾を施したものがブローチとして発展していった[2]。
最も初期のブローチは、青銅器時代にすでに存在したことがわかっている[要出典]。その流行の移り変わりがかなり激しかったので、ブローチは年代を知る重要な指標となり得る。
フィビュラはローマ人やギリシア人、あるいはケルト民族や移動民族によって、ヨーロッパで青銅器時代初期より使用されていた装飾的な留め具である。遅くとも800年ごろには、骨など、新石器時代の腐食しやすい素材がフィビュラに取って代わった。[要出典] フィビュラは有用なオブジェである。地方的類型を慎重に列挙すれば、フィビュラの年代や分布状態により、貨幣や陶片によるものとも違う年代測定が可能になる。
フィビュラは大きな安全ピンのような形をしており、衣類を留めてずりおちないようにするために使われた。様々な種類があり、民族衣装がローマ風に統一されるまでは、着用する者の民族性や身分など、そのアイデンティティを示す非常に重要なアイテムであった。精巧にデザインされたフィビュラは古代衣装において重要な部分を占め、よりシンプルなフィビュラはローマ軍の軍備の一部となっていた。[要出典]
同じタイプのフィビュラが、ローマの長城・リーメスのローマ居住側とバヴァリア居住側の両方から発見されている[要出典]。 地位を表すようなデザインに見られる文化的な相互作用は、非常に複雑である。 例を挙げると、ローレンス・ニースは「中世初期の芸術(英語: Early Medieval Art)」で、スティリコと彼の取り巻きを刻んだ象牙のディプティク[注 1]に見られるフィビュラについて、こう述べている[3]。
「スティリコと彼の息子が着用し、またターシアス2世(Turcius Secundus)が着用したフィビュラのタイプは、一般にバヴァリアンと呼ばれる新しいゲルマン語派が、帝国の権威の象徴を真似て作った金属作品にも見られる。 このタイプのフィビュラはケルト民族を起源とし、ローマ貴族によって異国趣味なファッションとして取り込まれ、ローマの重要な紋章に'帰化'したのちにローマ外に輸出されたとも考えうる。」
このフィビュラは通常はブロンズ製で、時に貴金属で作られ、まれには宝石が散りばめられた。鷲のフィビュラはしばしばペアで着用され、太陽崇拝を賛美し、多神教の民族の間でも一般的である。
古代のフィビュラは、多くの場合保存状態が良く、入手も困難ではないため、重要なコレクターズアイテムとなっている。その文化的背景を考慮に入れずとも、様々な装飾や形態など、フィビュラは未だ魅力的な存在であるといえる。
留め具の分類
[編集]ブローチは留め具の種類によって、いくつかの種類に分類することができる。
安全ピンタイプ
[編集]多くのブローチでこの留め具が使用されており、最も一般的なタイプである。受け具の種類には「風車式」と「鉄砲式」がある[4]。風車式は小さな突起を回して針をロックする仕様で、鉄砲式はシリンダーをスライドし、針をその中に格納するタイプである。鉄砲式のほうが製造コストが高いため、比較的高価なブローチに採用されることが多い[1]。その他に単純に針を引っ掛けるのみの方式もあり、これはより古い時代に多く例を見ることができる。
また、高額であったり、重量が重いブローチにはダブルピンが採用されることがある。何かの原因で一つのピンが外れても、地面に落とさずに保持することができる[4]。
スティックピンタイプ
[編集]長い針で布地を刺し、キャッチで留めるタイプである。このタイプのブローチを着用した場合、ピンは服の外側に出る[5]。ハットピンやクラバットピン[注 2]などはこのタイプにあたる。古い時代のものはキャッチがついていない場合もある。
タックピンタイプ
[編集]短い針の先に飾りがついていて、服の裏からキャッチを使用して留めるタイプである[5]。一般的にピンズ(ピンバッジ)と呼ばれるものはこのタイプである。校章や弁護士記章など所属を証明するための装身具として使用されることが多い。
クリップタイプ
[編集]バネで布地をはさんで留めるタイプである。背広などの衣服の襟や胸ポケットにはさんで使用する[5]。ネクタイピンはこのタイプにあたる。
脚注
[編集]出典
[編集]- 1 2 一般社団法人 日本ジュエリー協会 2016, p. 207.
- ↑ 山口 2016, p. 156.
- ↑ Nees 2002, p. 75.
- 1 2 一般社団法人 日本ジュエリー協会 2016, pp. 206–207.
- 1 2 3 一般社団法人 日本ジュエリー協会 2016, p. 208.
参考文献
[編集]- Nees, Lawrence (2002), Early Medieval Art, Oxford Univ Pr, ISBN 978-0192842435
- 『ジュエリーコーディネーター検定 3級』一般社団法人 日本ジュエリー協会、2016年。ISBN 978-4-931414-01-3。
- 山口遼『ジュエリーの世界史』2016年。ISBN 978-4-10-120491-8。