ブロック取引

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ブロック取引(ブロックとりひき、block trade)は、公開市場での立会(個別競争売買)によらず[1]証券会社を介した私的な相対取引によって[2]、特定の銘柄に関して発行済み株式の1 - 10%程度におよぶ大量の株を[3]一度に売買すること[2]。大口投資家にとっては、マーケットインパクトを抑えながら短時間で大口取引を終えられる利点がある[4][1]。多くの証券会社は、機関投資家向けに「ブロック取引」サービス[5]を提供している[6]米国カナダにおいて、ブロック取引は一銘柄あたり少なくとも1万株の株式か、あるいは10万ドル相当の債券が対象となるとされるが、実際にはそれよりはるかに多いケースが多い[7]

例えば、あるヘッジファンドが X 社の株を大量に保有し、それを全て売却したいとしよう。もしこれが多量の売り注文として板に出されれば、株価は急落する。必然的に、株は需給に影響を与えるほどの量であったために、マーケット・インパクトを引き起こしてしまうことなる。市場で売買する代わりに、投資銀行を通じて別の会社とブロック取引を行えば、売り手であるヘッジファンドは本来より魅力的な売却価額を享受でき、買手は相場より割安で買える機会を得られるなど、双方にとってのメリットが存在する。必要な書類を準備するのに数ヶ月かかることが多い大規模な売り出しとは異なり、ブロック取引は通常はショートノーティスで実施され、クローズも早い。

様々な理由から、ブロック取引は他の取引に比べて難しく、証券会社はより多くのリスクを負うこととなる。特に、証券会社は多量の有価証券の価格についてコミットしているため、市場が不利な方向に動いた場合、ポジションを解消できていなければ、大きな損失を被ることとなる。このように、ブロック取引は証券会社の資金繰りを圧迫する可能性がある。さらに、事情に精通した多額の資産を運用するマネージャーが特定の有価証券を大量に売りたがっている(あるいは買いたがっている)ということは、将来の価格変動を示唆している場合があり(言い換えれば、その資産運用管理者は情報面で優位になっている可能性がある)、その取引の逆サイドに立つのであれば、証券会社は逆選択のリスクを負うということになる[6]

ブロック取引は、アナリストにとり、機関投資家がどのように株をプライシングしているのかを分析するのに有用な指標である。なぜなら、M&Aにおいては、その付け値で市場の需給が一致する必要がある(つまり、十分な数の株主の入札する必要がある)ため、大規模な株式のブロックが取引される価格帯を確認することが最も有用だからである。これらの価格は、最大の株主が自分の株式をいくらで売りたいかを表している。したがって、ブロック取引の分析では、データの偏りを避けるため、小さな取引は無視される。

脚注[編集]

  1. ^ a b 7-1. ブロック取引とは - 先物・オプション入門”. 東京商品取引所. 2021年3月31日閲覧。
  2. ^ a b ブロック取引”. 大和証券. 2021年3月31日閲覧。
  3. ^ Block Trade”. 三田証券. 2021年3月31日閲覧。
  4. ^ ブロック取引 - 資産運用・関連用語解説”. 時事エクイティ. 2021年3月31日閲覧。
  5. ^ 「アップステア・トレーディング・デスク」(階上取引デスク)とも呼ばれる。
  6. ^ a b Lemke and Lins, Soft Dollars and Other Trading Activities, §2:33 (Thomson West, 2013 ed.).
  7. ^ Institutional Trading Costs”. 2009年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月6日閲覧。

外部リンク[編集]