ブリゲード・ド・キュイジーヌ

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Pastry Class NGM-v31-p352.jpg
The Kitchen at Delmonico's, 1902.JPG

ブリガード・ド・キュイジーヌ: Brigade de cuisine)は直訳すると「料理団」であり、主にフランス料理を提供するレストランおよびホテルの厨房内に組織されている、役割分担と責任が明確に定められた調理師たちの集団である。英語圏の厨房でも一般にこのフランス式の呼称が用いられる。調理プロセスの効率化を目的にして、19世紀末にフランス人シェフのオーギュスト・エスコフィエによって考案された。

それまでの厨房では、一つのテーブルオーダーに対する全工程を一人のシェフが担当する縦割り作業が行われていたが、エスコフィエは調理過程を複数の工程に分割し、それぞれに専門シェフを置いて分担させる横割り作業を導入して調理全体の効率化を図った。この調理過程の機能的な構造化(責任と役割の制定)は成功し、特にフルコースメニューにおいて一定の品質を保った料理を迅速に提供出来るようになった。

料理団の構成員は、シェフ、副シェフ、部門シェフ、准シェフ、コミ、アプランティの六種に格付けされた。部門シェフ以下は、ソーシエ(仕上げ)、ロティシュール(主菜)、アントルメティエ(温前菜)、ガルドマンジェ(冷前菜)、パティシエ(菓子)、トゥルナン(控え)の各部門に振り分けられた。なお、下記の職位と部門一覧は古典的かつ代表的な一例であり、実際は厨房ごとに様々な違いが見られる。

職位[編集]

シェフ
シェフ・ド・キュイジーヌChef de cuisine)「シェフ」
料理長である厨房運営の総責任者であり、全調理過程の統括、スタッフ管理と人材採用および教育、勤務シフトの制定、料理のレビューと衛生状態のチェック、メニューの創案とレシピの作成および購入食材の選定などその職務は多岐に渡る。またホテルないしレストランの支配人と共に経営や広報にも参画するマネージメント業務を担う事もある[1]
スーシェフ・ド・キュイジーヌ(Sous-chef de cuisine)「副シェフ」
シェフの補佐役であり、シェフの不在時は代理となる。基本は一人だが大きな料理団では複数名置かれる事もあり、小さな料理団では省略される事もある。
シェフ・ド・パルティ(Chef de partie)「部門シェフ」
厨房内の部門責任者であり、調理師たちを監督する。主にアメリカの小さな料理団では准シェフ(綴りは’’Demi-chef’’だけ)と呼ばれる所もある。
ドミシェフ・ド・パルティ(Demi-chef de partie)「准シェフ」
部門シェフの補佐役であり、部門内で一つの係を受け持つ。小さな料理団では置かれない事もある。
コミ(Commis)「調理師」
初年コミは部門シェフの指導を受けながら調理を行う。また調理用具の手入れも行う。熟練コミは一人前扱いとなり、指示された中での任意の調理が許される。
アプランティ(Apprenti(e))「見習い」
研修段階の者達であり、厨房内で実務経験を積みながら下準備や清掃などの雑用を行う。

部門[編集]

ソーシエ(Saucier)「ソース部門」
ペッパーソース
ソース作りを担当する。肉料理(主菜)の仕上げをして完成させる。ソテー料理も作る。小さな厨房では魚料理も担当する。厨房内で最も名誉な役割とされる[2]
ポワソニエ(Poissonnier)「魚料理係」
魚料理を担当する。小さな厨房ではソーシエが兼任する。レストランによっては部門シェフが監督する一つの部門になってる所もある。


ロティシュール(Rôtisseur)「肉料理部門」
ロースト
遠火焼き直火焼き揚げ焼きの調理を担当する。大きな厨房では直火焼きはグリヤーディンに、揚げ焼きはフリチュリエに分担される。
グリヤーディン(Grillardin)「グリル係」
直火焼きを担当する。小さな厨房ではロティシュールが兼任する[3]
フリチュリエ(Friturier)「フライ係」
揚げ焼きを担当する。小さな厨房ではロティシュールが兼任する。


アントルメティエ(Entremetier)「温前菜部門」
オムレツ
アントレを担当する。肉と魚以外の温かい料理を専門とし卵料理スープ料理野菜料理などを調理した。大きな厨房ではスープ料理はポタジエに、野菜料理はレギュミエに分担される。
ポタジエ(Potager)「スープ料理係」
スープ料理を担当する。小さな厨房ではアントルメティエが兼任する[3]
レギュミエ(Légumier)「野菜料理係」
野菜料理を担当する。小さな厨房ではアントルメティエが兼任する。


ガルドマンジェ(Garde manger)「冷前菜部門」
オードブル
オードブルを担当する。冷たい料理を専門としパテテリーヌアスピックなどを調理した。またサラダも作った。ハムソーセージベーコンなどの食肉加工品も揃えるが、大きな厨房ではシャルキュトリに分担される。また、それらを盛り付けたディッシュをビュッフェテーブルに並べてその飾り付けも専門とした。
シャルキュトリ(Charcuterie)「食肉加工品係」
ハムソーセージベーコンなどの食肉加工品を担当する。小さな厨房ではガルドマンジェが兼任する。
ブーシェ(Boucher)「肉切り係」
肉の切り分けを担当する。肉にパン粉をまぶす下ごしらえも行う。ロティシュール(肉料理部門)にも協力する。ガルドマンジェに属する事が多いが、ここは余り兼任されない。


パティシエPâtissier)「デザート部門」
ペイストリー
デザートを担当する。ブーランジェがいない時はパンペイストリーも作る。またパスタを作る事もある。大きな厨房では菓子一般はコンフィズールに、氷菓子生菓子はグラシエに、工芸菓子はデコラテュールに分担される。
ブーランジェ(Boulanger)「製パン係」
パン作りとペイストリーを担当する。小さな厨房ではパティシエが兼任する。
コンフィズール(Confiseur)「製菓係」
キャンディプチフールなど菓子一般を担当する。小さな厨房ではパティシエが兼任する。
グラシエ(Glacier)「冷菓係」
アイスクリームプリンなどの氷菓子と生菓子を担当する。小さな厨房ではパティシエが兼任する。
デコラテュール(Décorateur)「工芸菓子係」
ピエスモンテとショーピースを担当する[4]。小さな厨房ではパティシエが兼任する。


トゥルナン(Tournant)「控え部門」
様々な料理分野に通じる多芸な部門シェフがここに置かれ、他の部門シェフの不在時にその代理を務めた。またその日の調理状況で手の空いたコミ達はここに回される事になり、彼らは各部門を渡り歩いて臨機応変に調理を助けた。

補助部門[編集]

コミュナー(Communard)「賄い係」
料理団同僚たちの賄い料理を作る。大きな厨房では専門のコミ達が置かれ准シェフが監督した。小さな厨房では各部門の当直がそれぞれ料理を作って同僚全体に提供した。


プロンジュール(Plongeur)「皿洗い係」
食器
食器と調理用具の洗浄を担当する。また調理場の片付けや清掃、厨房開始前の下準備も行う。大きな厨房では鍋器具の洗浄はマルミトンに分担される。初年コミかアプランティの役目となる。
マルミトン(Marmiton)「鍋洗い係」
深鍋や平鍋などの洗浄を担当する。小さな厨房ではプロンジュールが兼任する。アプランティの役目となる。
ギャルソン(Garçon)「雑用係」
厨房内外の雑用を行う。アプランティの役目となる。

その他[編集]

アボユール(Aboyeur)「応待役」
迎賓
来客、賓客にその日のメニュー状況やお薦め品を説明し、また必要に応じて客席とコミュニケーションを取った。客前でパフォーマンスを兼ねた料理の仕上げをする事もある。専らシェフか副シェフが担当し、部門シェフが務める事もあった[3]

文献[編集]

  • Dominé, André (ed.). Culinaria France. Cologne: Könemann Verlagsgesellschaft mbh, 1998. ISBN 978-3833111297
  • The Culinary Institute of America. The Professional Chef. 8th ed. Hoboken, NJ: John Wiley & Sons, INC, 2006. ISBN 978-0764557347

出典[編集]

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  1. ^ Dominé, 32.
  2. ^ Dominé, 33.
  3. ^ a b c The Culinary Institute of America, 8.
  4. ^ The Culinary Institute of America, 8,9.

関連項目[編集]