ブランパン

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Blancpain SA
種類 子会社
本社所在地 スイスの旗 スイス
ヴォー州ル・ブラッシュ英語版
設立 1735年 (286年前) (1735)
業種 製造業
事業内容 機械式時計の設計・製造
代表者 マーク・A・ハイエック
所有者 スウォッチ・グループ
関係する人物 ジャン=ジャック・ブランパン
ジャン=クロード・ビバー
外部リンク 公式ウェブサイト
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ブランパン (Blancpain) は、スイスヴォー州ル・ブラッシュに本社を置く時計メーカーである。

概要[編集]

1735年に時計職人のジャン=ジャック・ブランパン(Jehan-Jacques Blancpain)によってスイスジュラ山脈にあるヴィルレで創業された[1][2]。2世紀にわたって創業家が運営していたが、20世紀に入って同家の断絶やクォーツショックによって壊滅的打撃を受け、1970年代後半に休眠状態に追い込まれた[1][2]

1981年、当時オメガを離れたジャン=クロード・ビバーと、ムーブメント専門メーカーフレデリック・ピゲ社長のジャック・ピゲらによって、ブランパンの商標は僅か2万1500フランで買収された[1]。そしてジュウ渓谷のル・ブラッシュに新会社を設立し、1983年に初の時計を発売した[1]。営業を再開するにあたり「クォーツは使わない」と宣言し支持を集めた[1]。その後、永久カレンダーやトゥールビヨン搭載時計を開発するなど、複雑機構の時計ブランドとして復興し、1992年に6,000万フランでSMH(現スウォッチ・グループ)に買収された[1]

コレクション[編集]

ヴィルレ Villeret[編集]

クラシックモデルのコレクション[3]。ラウンド型でダブルステップ・ベゼルのケースを特徴とする。名前は創業地の地名に由来する。ブランパンのコレクションの中で最も製品数が多く、2針のシンプルな時計から、複雑なカルーセルやミニッツリピーター搭載時計まで幅広く揃えている[3]

フィフティ・ファゾムス Fifty Fathoms[編集]

ダイバーズウォッチのコレクション[4]。最初に発売されたフィフティ・ファゾムスは、逆回転防止機構の付いた片方向回転ベゼル、100m近い防水能力(50ファゾムは約91m)を持ったダイバーズウォッチであり、1953年フランス海軍の依頼により開発された[2][5]。同年にロレックスは両方向回転ベゼルと100m防水を備えた「サブマリーナー」を開発しており、いずれか、あるいはいずれもが現代的な意味でのダイバーズウォッチのルーツである。

ベゼルを細くしたバチスカーフバチスカーフ型潜水艇に由来)や、クロノグラフ、トゥールビヨン、レディースモデルなども展開している[4]

ウーマン Women[編集]

ダイヤモンドマザーオブパールなどで装飾を施したレディース時計のコレクション[6]

メティエ・ダール Métiers d'Art[編集]

ダイヤルやムーブメントに彫金などによる装飾を施した時計のコレクション[7]。名前はフランス語で「職人技」を意味する。一点物が多い。腕時計だけでなく、ポケットウォッチもラインアップしている[7]

コンプリケーション[編集]

コンプリートカレンダー・ムーンフェイズ[編集]

ル・ブラッシュにて再スタートしたブランパンにとって初の複雑時計として、1983年に発売した[1]。月、曜日、日付のトリプルカレンダー表示と、ムーンフェイズ表示を組み合わせている。最初のムーブメントは、フレデリック・ピゲが1940年代に開発したが絶版になっていたものを、バルジュー7750やキャリバー1185の設計で知られるエドモン・キャプトの手で復活させたものである[1]

基本となるモデルの他に、8日間パワーリザーブ、クロノグラフ、GMT機構をそれぞれ追加したモデルがある[3]

ワンミニット・フライング・カルーセル[編集]

カルーセル (フランス語: Carrousel) はトゥールビヨンと同じくキャリッジを回転させる機構で、搭載したムーブメントは2008年に開発された[2]

カルーセルは1892年デンマーク出身の時計師バーネ・ボニクセン(Bahne Bonniksen, 1835年-1935年)が発明したものだが、部品数が多いこともありほとんど使われてこなかった。ヴィンセント・カラブレーゼらがこのカルーセルを復活させるとともに改良し、構想2年、開発に4年かけて初めて腕時計に搭載した。従来のカルーセルはキャリッジを一周させるのに数十分かかっていたが、ブランパンは一分でキャリッジを一周させることに成功した。

現在では、カルーセルとトゥールビヨンと組み合わせたモデルや[8]ミニッツリピーターと合わせたモデル[9]、ミニッツリピーターおよびフライバック・クロノグラフ機能を加えたモデル[10]などが発売されている。

トラディショナル・チャイニーズ・カレンダー[編集]

2012年に登場した[11]太陽暦および太陰太陽暦機能を搭載する。パーペチュアルカレンダー機能は無いため、カレンダーの調整やうるう月の挿入は手動で行う[11]。ダイアル上に、今年の十二支十干での年、二十四節気での太陰月と日付、十二時辰での時刻を表示できる[12]

1735 グランド・コンプリケーション[編集]

1991年に、当時において最も複雑な機械式腕時計として発表[13][14]。時計師ドミニク・ロワゾーにより制作された[15]。複雑機構として、トゥールビヨン、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、スプリットセコンド クロノグラフ、ムーンフェイズおよび自動巻き機構を搭載し、80時間のパワーリザーブをもつムーブメントを、直径42mm、厚さ16.5mmのプラチナ製ケースに収めている[13]。30個限定で販売された[13]

ル・ブラッシュにあるブランパンのアトリエ『ファーム』の三階では、分解された『1735』の全パーツが展示されている[16][17]

年表[編集]

  • 1735年 - ジャン=ジャック・ブランパンがスイスのヴィルレで創業[18]
  • 1797年 - カンポ・フォルミオ条約によりヴィルレがフランス領になる[19]
  • 1803年 - ナポレオン戦争が勃発。ヴィルレの若い男が全員徴兵されたため、ブランパンも規模の大幅縮小を余儀なくされたが、時計製造が中断することはなかった[19]
  • 1815年 - ナポレオン戦争が終結し、ヴィルレがスイスに戻る。ジャン=ジャックの孫であり、兵役から帰還したフレデリック=ルイ・ブランパンにより再興される[1][19]
  • 1830年 - フレデリック=ルイの息子フレデリック=エミールが会社を引き継ぎ、社名を「時計製造所エミール・ブランパン(Fabrique d'horlogerie Emile Blancpain)」とする[18]
  • 1932年 - ブランパン家最後の当主フレデリック=エミール(上記人物と同名の子孫)が69歳で死去。当時のスイスの法規制(経営陣に一族がいなければその名を社名にできない)により社名を「Rayville SA」に変更[1]
  • 1953年 - ダイバーズウォッチ「フィフティ・ファゾムス」を発売[4]
  • 1961年 - RayvilleがSSIH(現スウォッチ・グループ)の傘下になる[18]
  • 1975年 - この年以降、Rayvilleは徐々にブランパンブランドを撤退させ、ムーブメント製造事業のみになる[1]
  • 1980年 - Rayvilleが操業停止。ヴィルレにある製造拠点はオメガ用に切り替えられる[1]
  • 1981年 - SSIHがブランパンの商標をジャック・ピゲ(フレデリック・ピゲ社の社長)とジャン=クロード・ビバーに売却。ジャン=クロード・ビバーの下でブランパン再興計画が開始され、ジュウ渓谷のル・ブラッシュに新会社「Blancpain SA」を設立する[1]
  • 1983年 - コンプリートカレンダー・ムーンフェイズ搭載腕時計を発売[1]
  • 1986年 - ミニッツリピーター搭載腕時計およびパーペチュアルカレンダー搭載腕時計を発売[1]
  • 1988年 - フライバック・クロノグラフを発売[1]
  • 1989年 - 世界初の自動巻きスプリットセコンド・クロノグラフを発売[20][2]
  • 1991年 - トゥールビヨン搭載腕時計およびグランド・コンプリケーション「1735」を発売[1][14]
  • 1992年 - SMH(旧SSIH、現スウォッチ・グループ)がフレデリック・ピゲとブランパンを買収する[18][21]
  • 2002年 - ジャン=クロード・ビバーがCEOを辞任し、マーク・A・ハイエックが新CEOに就任する[1][21]
  • 2004年 - 世界初のランニング・イクエーション・オブ・タイム搭載腕時計を発売[22]
  • 2008年 - ヴィンセント・カラブレーゼを研究開発部門に迎え入れ(2012年まで在籍)、世界初のカルーセル搭載腕時計を発売[19]
  • 2010年 - フレデリック・ピゲがブランパンに完全統合される[18]
  • 2011年 - 自動車のGTレースであるブランパンGTシリーズのタイトルスポンサーになる(2019年まで)。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Blancpain, F. Piguet, Biver, and the Path Forward”. Grail Watch. 2021年5月28日閲覧。
  2. ^ a b c d e History - Blancpain”. Fondation de la Haute Horlogerie. 2020年10月21日閲覧。
  3. ^ a b c ヴィルレコレクション "Villeret Collection"”. ブランパン. 2020年10月22日閲覧。
  4. ^ a b c フィフティ ファゾムスコレクション Fifty Fathoms collection”. ブランパン. 2020年10月28日閲覧。
  5. ^ A Deep Dive into the Fifty Fathoms MILSPEC-1's Past”. WatchTime. 2021年6月9日閲覧。
  6. ^ ウーマンコレクション Women Collection”. ブランパン. 2020年10月28日閲覧。
  7. ^ a b 職人技術コレクション "Métiers d'Art Collection"”. ブランパン. 2020年10月28日閲覧。
  8. ^ ヴィルレ トゥールビヨン カルーセル”. ブランパン. 2020年10月21日閲覧。
  9. ^ ヴィルレ カルーセル ミニッツリピーター”. ブランパン. 2020年10月21日閲覧。
  10. ^ ヴィルレ カルーセル ミニッツリピーター フライバッククロノグラフ”. ブランパン. 2020年10月21日閲覧。
  11. ^ a b The Complex Challenge of Chinese Time”. ニューヨーク・タイムズ. 2020年10月21日閲覧。
  12. ^ トラディショナル チャイニーズ カレンダーを理解する”. ブランパン. 2020年10月21日閲覧。
  13. ^ a b c A Product of Passion: Blancpain 1735 Grande Complication Watch”. Haute Time. 2020年10月21日閲覧。
  14. ^ a b 時計用語辞典 ブランパン”. webChronos. 2021年5月31日閲覧。
  15. ^ 腕時計パーフェクト入門. 学研パブリッシング. p. 106. ISBN 978-4056066821 
  16. ^ A Watch Aficionado’s Guide to Geneva – Part 2”. 2020年10月21日閲覧。
  17. ^ バーチャルツアー”. ブランパン. 2020年10月21日閲覧。
  18. ^ a b c d e 年表”. ブランパン. 2021年5月28日閲覧。
  19. ^ a b c d Blancpain, the history of the oldest watch brand”. Time and Watches. 2021年5月29日閲覧。
  20. ^ Lettres du Brassus Issue 03. page 37.
  21. ^ a b JEAN-CLAUDE BIVER: PAST, PRESENT, FUTURE”. Europa Star. 2021年5月28日閲覧。
  22. ^ Lettres du Brassus Issue 09. page 11.

参考文献[編集]

外部リンク[編集]