コンテンツにスキップ

ブダイ亜科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ブダイ亜科
生息年代: 中新世現世
アオブダイ属の一種 Scarus ferrugineus
分類(Eschmeyer's Catalog[1]
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: ベラ目 Labriformes
: ベラ科 Labridae
亜科 : ブダイ亜科 Scarinae
学名
Scarinae Rafinesque, 1810[2]
和名
ブダイ亜科[3]
英名
Parrotfish

ブダイ亜科学名Scarinae)は、ベラ科に所属する魚類の分類群の一つ[3]ブダイアオブダイなど少なくとも10属99種が属する。かつては独立のブダイ科Scaridaeとされていた[4]

分布・生態

[編集]

すべて海水魚で、大西洋インド洋太平洋など世界の熱帯亜熱帯域に広く分布する[4]サンゴ礁魚類の代表的なグループの一つである。

他のベラ類が肉食性であるのに対し、ブダイ類は一般に草食性で、死んだサンゴに付着した藻類を削り取るように摂食する[4][5]。ブダイ類はをもたず、齧りとったサンゴを発達した咽頭歯で細かくすりつぶすことで、藻類のみを効率よく摂取している[6][7]。一部の種は海草を主食としているほか、カンムリブダイのように生きたサンゴを食べる種も知られている[4][7]

ブダイ類が摂食する死サンゴは1個体あたり年間1トン以上に及び、サンゴ礁の死滅と再生のサイクルに深く関与すると考えられている[8]。ブダイ類は死んだサンゴの群落を速やかに除去し、新たなサンゴの生育場所を提供することで、サンゴ礁の生態系維持に貢献しているとみられる[8]。咽頭歯ですりつぶされたサンゴは細かい砂となって環境中に戻されるため、ブダイ類はサンゴ礁における砂の供給源としても重要な役割を果たしている[9]

すべて昼行性で、夜間はサンゴや岩陰に身を潜め休息する[7]。一部の種類は体表から粘液を分泌し、寝袋のように体を包むことが知られている[4]。他のベラ科魚類と同様に、ほとんどが性転換をする[4]。多くは成長につれて雌から雄に変化する雌性先熟であるが、雌を経ずに直接雄として成熟する、いわゆる「一次雄」をもつ場合もある[4]

一般に鮮やかな斑紋と色彩をもつ。生時の体色は重要な分類形質であるが、死後は速やかに褪色するうえ、性別や成長時点による差異も大きい[4]観賞魚としての価値は高いが、歯板が成長し続けるために、水槽内での維持は難しい[9]。食用魚として漁獲対象となる種類も多く、日本の沖縄では貝塚から咽頭骨が出土するなど、古代から利用されていたとみられる[7]

形態

[編集]

やや左右に平たく側扁した、いわゆる鯛型の体型をもつ。一般に他のベラ類よりも大型で、最大で1mを超える種類もいる[6]。顎の歯は癒合して一枚の歯板となり、オウム状となっていることが最大の特徴である[4]。他のベラ類とは異なり、口を突出させることはできない[4]は大きく円鱗で、側線鱗は22-24枚[4]

背鰭は9本の棘条と10本の軟条で構成される[7]。腹鰭と臀鰭はそれぞれ1棘5軟条および3棘9軟条で、尾鰭の分枝鰭条は11本[4]椎骨は24-26個[4]

分類

[編集]

Nelson(2016)の体系において10属99種が認められている[4]。FishBaseでは100種が認められている[9]。本項では和名のある種を挙げる。

アミメブダイ(雄型) Scarus frenatus (アオブダイ属)。青緑色の尾柄部が特徴の種類。通常は藻類を食べるが、生きたサンゴを摂食する姿も観察されている[7]
ナガブダイ(雌型) Scarus rubroviolaceus (アオブダイ属)。体の前後で二分された体色をもつ。本種は一次雄をもたず、雄の個体数は少ない[7]
イロブダイ(雄型) Cetoscarus ocellatus (イロブダイ属)。成長に伴う体色の変化と、雌雄差がともに著しい種類[7]
ハゲブダイ(雄型) Chlorurus sordidus (ハゲブダイ属)。琉球諸島では最もありふれたブダイ類で、夜間は粘液に身を包んで眠る[7]

出典・脚注

[編集]
  1. ^ Eschmeyer's Catalog of Fishes Classification”. 2026年1月7日閲覧。
  2. ^ Richard Van der Laan, William N. Eschmeyer & Ronald Fricke, “Family-group names of Recent fishes,” Zootaxa, Volume 3882, No. 1, Magnolia Press, 2014, Pages 1-230.
  3. ^ a b 本村浩之.2025.日本産魚類全種目録.これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名.Online ver. 35.https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/staff/motomura/jaf.html. 2025年12月10日公開、2025年12月24日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『Fishes of the World Fifth Edition』 pp.429-430
  5. ^ 『日本の海水魚』 pp.464-519
  6. ^ a b 『The Diversity of Fishes Second Edition』 p.312
  7. ^ a b c d e f g h i 『日本の海水魚』 pp.520-535
  8. ^ a b 『The Diversity of Fishes Second Edition』 pp.382-383
  9. ^ a b c Scaridae”. FishBase. 2025年4月4日閲覧。
  10. ^ 荒俣(2021) p.373
  11. ^ Scarus atropectoralisシノニム(FishBase)。
  12. ^ a b 日本産魚類の追加種リスト”. 日本魚類学会. 2010年12月26日閲覧。
  13. ^ Scarus javanicus はシノニム(FishBase)。
  14. ^ 荒俣(2021) p.372
  15. ^ Scarus longiceps はシノニム(FishBase)。
  16. ^ 荒俣(2021) p.368
  17. ^ Scarus bowersi はシノニム(FishBase)。
  18. ^ Scarus gibbus はシノニム(FishBase)。
  19. ^ Chlorurus sordidusをインド洋のみとして太平洋産をChlorurus spilurusとする説もある(本村 2025)。
  20. ^ a b 荒俣(2021) p.369

参考文献

[編集]
  • Joseph S. Nelson 『Fishes of the World Fifth Edition』 Wiley & Sons, Inc. 2016年 ISBN 978-1-118-34233-6
  • Gene S. Helfman, Bruce B. Collette, Douglas E. Facey, Brian W. Bowen 『The Diversity of Fishes Second Edition』 Wiley-Blackwell 2009年 ISBN 978-1-4051-2494-2
  • 岡村収・尼岡邦夫監修 『日本の海水魚』 山と溪谷社 1997年 ISBN 4-635-09027-2
  • 荒俣宏(2021)『普及版 世界大博物図鑑 2 魚類』平凡社