フルクサス
フルクサス(Fluxus)は、リトアニア出身のデザイナー、建築家 ジョージ・マチューナスが提唱した前衛芸術運動のこと。ラテン語で「流れる、変化する、下剤をかける」という意味を持つ。1960年代を代表する芸術運動として、ネオダダと並び称される。
特徴[編集]
- 多国籍のグループである(参加者の国籍はドイツ、アメリカ、日本、韓国など10ヶ国近くに及ぶ)。
- メンバーと非メンバーの区別があいまいである。
- 美術、音楽、詩、舞踏など広い芸術ジャンルにまたがる。
- グループとしてのはっきりした主義主張を持たない。
- 新奇なインターメディア表現、シンプルで意味を限定しない表現、ユーモア・ウィットのある表現、ゲーム性を好んだ表現。
略歴[編集]
初期のフルクサス[編集]
1962年9月にジョージ・マチューナスが、西ドイツのヴィースバーデン市立美術館で「フルクサス国際現代音楽祭」(全4回)を企画したのがフルクサスの始まりとされている。[1]このコンサートにはアリソン・ノウルズ、ヴォルフ・フォステル、エメット・ウィリアムズ、ディック・ヒギンズ、ナム・ジュン・パイク、ベン・パターソンらが出演した。
このコンサートは評判を呼び、翌1963年にかけて、デンマーク・イギリス・フランス・ドイツ・オランダの各都市を巡回した。まるでハーメルンの笛吹きのように、各国の現代美術家たちを刺激し、巻き込んでいった。マチューナスは、その最中の1963年2月にフルクサスを「反芸術主義による芸術共同体」としてまとめあげようとマニフェストを書き上げたが、社会的・政治的領域までに踏み込んだ「過激なアジ文」に賛同する者は一人もいなかった。 (1991年、ディック・ヒギンズはインタビューで「フランスやドイツのダダイストのように分裂するのだけは避けよう」「イデオロギー的な線引きを厳密にし過ぎないにしよう」と参加者間で話し合って決めた結果だったと明かしている)。
フルクサスは自らの「イベント」を「ハプニング」と区別していた。「イベント」は、スコアに基づき、特定の行為を明確に行うもので、日常的な物を芸術の舞台に持ち込み、その垣根を壊し、日常に芸術的な物を持ち込ませるという反芸術的な意図を持っていた。
全てのコンサートが終了した後、マチューナスはニューヨークのキャナル・ストリートに居を構えた。そして、フルクサスの名簿の作成、コンサートの企画・運営、新聞の作成、フルクサスメンバーの作品を様々な形態(「フルックス・キット」など)で販売するなど、猛烈な勢いとあふれんばかりの情熱でフルクサスを芸術グループとして組織していった。また、世界をいくつかの区分に分け、それぞれの区分に統括責任者を置き、自らはニューヨーク本部のチェアマンとして君臨し、1960年代後半には自らの建築の腕前を生かし、「ロフトを改造し、内装を整え、芸術家に廉価で売る」という事業「フルックス・ハウジング・コーポレイティヴ」を行い、ソーホーを芸術家の街にするきっかけを作った。日本人ではオノ・ヨーコ、武満徹 、一柳慧 、小杉武久 、塩見允枝子 、刀根康尚、ヨシ・ワダらがフルクサスに参加した。
初期フルクサスは、創始者であるジョージ・マチューナスと、その賛同者である芸術家たちという二つの軸を持っていた。マチューナスは「芸術共同体」を夢想し、芸術家が創作活動に没頭でき、自由に作品を発表できる土壌を整えたが、芸術家はインフラにただ乗りする形で、結局「芸術共同体」としての道は歩まなかった。マチューナスはその夢を果たせぬまま、1978年に死去する。彼は晩年「フルクサスは結成後数年すると、グループの名前というよりも一つの生き方、物事のやり方を指すようになってしまった」と回想していた。
1978年以後のフルクサス[編集]
マチューナスの死後、フルクサスに興味を持つ研究者やグッズコレクターが現れ、その需要に応える形で世界中で公演を続けている。
フルクサスとその周辺のアーティスト[編集]
世界各国[編集]
- アーサー・コプケ
- アラン・カプロー
- アリス・ハッチンソン
- アリソン・ノウルズ
- アル・ハンセン
- アレン・ブッコフ
- ヴィタウタス・ランズベルギス
- ヴィレム・ドゥ・リダー
- ヴォルフ・フォステル
- エメット・ウィリアムズ
- エリック・アンデルセン
- オイヴィント・ファールシュトレーム
- キャロリー・シュニーマン
- グスタフ・メツガー
- ケイト・ミレット
- ケン・フリードマン
- ジェームズ・テニー
- ジェフリー・ヘンドリックス
- シモーヌ・フォルティ
- シャーロット・モーマン
- ジャクソン・マクロウ
- ジャン・デュピュイ
- ジュゼッペ・キアリ
- ジュディ・リフカ
- ジョー・ジョーンズ
- ジョージ・ブレクト
- ジョージ・マチューナス
- ジョージ・ランドウ
- ジョセフ・バード
- ジョナス・メカス
- ジョン・アムレーダー
- ジョン・ケージ
- ダヴィ・デット・ホンプソン
- ダニエル・スポエリ
- チャック・ウェルチ
- ディーター・ロス
- ディック・ヒギンズ
- テリー・ジェニングス
- テリー・ライリー
- トーマス・シュミット
- ナム・ジュン・パイク
- バーツォン・ブロック
- ハリー・ルーエ
- バリー・マカリオン
- フィリップ・クラム
- フィリップ・コーナー
- ベック・ハンセン
- ヘニング・クリスチャンセン
- ベン・ヴォーティエ
- ベン・パターソン
- ベングト・アヴ・クリントベルグ
- ヘンリー・フリント
- マウリッツィオ・ナンヌッチ
- ミラン・クニザク
- ヨーゼフ・ボイス
- ラ・モンテ・ヤング
- ラリー・ミラー (アーティスト)
- リチャード・マクスフィールド
- ルイーズ・オデス・ネダーランド
- レイ・ジョンソン
- ロバート・ワッツ
- ロビン・ペイジ
- ロベール・フィリュウ
日本[編集]
脚注[編集]
- ^ http://www.add-info.com > HOME > art
出典[編集]
- 『フルクサスとは何か?』著者:塩見允枝子:フイルムアート社、2005年
- Jürgen Becker, Wolf Vostell, Happenings, Fluxus, Pop Art, Nouveau Réalisme. Eine Dokumentation. Rowohlt Verlag, Reinbek 1965.
- Happening & Fluxus. Kölnischer Kunstverein, 1970.
- Harry Ruhé, Fluxus, The most radical and experimental art movement of the sixties. Verlag A, Amsterdam, 1979.
- Baas, Jacquelynn, Friedman, Ken Fluxus and the Essential Questions of Life. Chicago and Hanover, NH: University of Chicago Press and Hood Museum of Art, 2011. ISBN 978-022-60335-9-4.
- Bernstein, Roslyn, and Shael Shapiro. Illegal Living: 80 Wooster Street and the Evolution of SoHo (Jonas Mekas Foundation), www.illegalliving.com ISBN 978-609-95172-0-9, September 2010.
- Block, René, ed. 1962 Wiesbaden Fluxus 1982. Wiesbaden: Harlekin Art, Museum Wiesbaden, and Nassauischer Kunstverein, 1982.
- Der Traum von Fluxus. George Maciunas: Eine Künstlerbiographie. Thomas Kellein, Walther König, 2007
関連サイト[編集]
- Fluxus Performance Workbook
- Subjugated Knowledges -- exhibition catalogue
- Fluxus Debris! Art/Not Art
- The Fluxus Blog
- Fluxus.org
- Fluxlist
- Fluxlist Blog
- Fluxus Museum in Potsdam, Germany
- Archives of The Fluxlist
- 40 Years of Fluxus by Ken Friedman
- Fluxus Heidelberg Center
- The Copenhagen Fluxus Archive
- Al Hansen
- Leif Nelson
- The FluxCase
- Fluxlist Europe
- Museo Vostell Malpartida
- Walter Cianciusi: A Fluxus Composer
- FluxFilms (1962 - 1970) in MPEG format
- Ben Patterson Artist's Project featured online in X-TRA Magazine