フォーミュラ・ルノー3.5

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フォーミュラ・ルノー3.5の車体(ダラーラ・T12

フォーミュラ・ルノー3.5Formula Renault 3.5)とは、かつて開催されたヨーロッパの各国を転戦するフォーミュラカーレース選手権である。

概要[編集]

2005年ワールドシリーズ・バイ・ニッサンフォーミュラ・ルノーV6・ユーロカップが合併して設立された選手権で、正式名称は“World Series Formula Renault 3.5”である。「ワールドシリーズ・バイ・ルノー」と呼称されることが多いが、正式には「ワールドシリーズ・バイ・ルノー」はこの選手権の通称であると同時に、サポートレースのユーロカップ・メガーヌ・トロフィーユーロカップ・フォーミュラ・ルノー(FIAでは「ワールドシリーズF/ルノーV6」に分類している)の両選手権を含めたイベント全体の名称である。

「フォーミュラ・ルノー」の名が用いられている他のシリーズとは異なり、このカテゴリはF3F1の中間に位置付けられ、GP2等と同格とされる。使用される車体(シャシー)やエンジンなども他のフォーミュラ・ルノーで使用されるそれとは大きく異なる高性能なものが使用される。F3や他のミドルフォーミュラが成績によって自動的にスーパーライセンス発行の対象となるのに対し、従来本シリーズにはそのような規定が存在しなかったが、2007年より本シリーズのチャンピオンにも自動的にスーパーライセンスが発給されることになった。

このシリーズの出身でF1ドライバーとなった主な者は、初年度2005年のチャンピオンであるロバート・クビサ、2006年・2007年途中まで参戦したセバスチャン・ベッテル、2008年チャンピオンのギド・ヴァン・デル・ガルデ、2012年シリーズ2位のジュール・ビアンキ、2013年チャンピオンのケビン・マグヌッセン、2014年チャンピオンのカルロス・サインツJr.がいる。

しかし国際自動車連盟(FIA)が2015年にスーパーライセンス取得条件にポイント制を導入した際、明らかにマシンのスペックが劣る欧州F3よりも獲得ポイントが下とされ、フォーミュラのピラミッド構造を整理したいFIAの冷遇が明らかになった[1]。さらに2015年シーズンをもってルノーのスポンサー契約が終了し、2016年からはハイメ・アルグエルスアリの父が代表を務めるRPM-MKTGが運営を引き継ぎ「フォーミュラV8 3.5」として再出発することになった[2]フランス西部自動車クラブ(ACO)と提携してヨーロッパ以外も転戦するシリーズになったが、出走台数の大幅な落ち込みから2017年をもって消滅、ワールド・シリーズ・バイ・ニッサンから数えて20年の歴史に幕を下ろした[3]

車体[編集]

前身であるワールドシリーズ・バイ・ニッサンで使用されていた各シャシーや他のフォーミュラ・ルノー選手権で使われているシャシーを参考にダラーラが新たに設計した、ダラーラ・T05が用いられ、日産自動車フェアレディZ(350Z, Z33型)に搭載されているエンジンをベースとした排気量3.5LのVQ35を搭載する(ゆえに「Formula Renault 3.5」)。公称425馬力を出力するこのエンジンは、ダラーラと日産自動車が共同製作したギアボックス及びフォーミュラ・ルノーのセミオートマチックトランスミッションとつながれ、F1同様、シフトチェンジはステアリングの裏にあるパドルで行われ、クラッチペダルによるクラッチ操作は不要となっている。

2012年から、ザイテックが開発した530馬力を発生する3.4L V8エンジンを搭載した[4]ダラーラ・T12 を採用した。また新たにドラッグリダクションシステム(DRS)が搭載された。

この様にF1など、より上のカテゴリーへのステップアップを容易にするため、ギアシフトやペダル操作はF1カーのそれと統一され、他にもカーボンブレーキ、DRSの採用など、仕様はF1との共通性を多分に持たせたものとなっている。また参戦コストはGP2よりも安価であり、人気の原動力でもあった。

歴代チャンピオン[編集]

チャンピオン
2017年 ブラジルの旗 ピエトロ・フィッティパルディ
2016年 フランスの旗 トム・ディルマン
2015年 イギリスの旗 オリバー・ローランド
2014年 スペインの旗 カルロス・サインツJr.
2013年 デンマークの旗 ケビン・マグヌッセン
2012年 オランダの旗 ロビン・フラインス
2011年 カナダの旗 ロバート・ウィケンズ
2010年 ロシアの旗 ミカエル・アレシン
2009年 ベルギーの旗 ベルトラン・バゲット
2008年 オランダの旗 ギド・ヴァン・デル・ガルデ
2007年 ポルトガルの旗 アルバロ・パレンテ
2006年 スウェーデンの旗 アレックス・ダニエルソン
2005年 ポーランドの旗 ロバート・クビサ

チャンピオンドライバーには2015年までルノーF1チーム、2016年以降はLMP1のテストドライブの権利が与えられていた。

主なシリーズ参戦ドライバー[編集]

ドライバー 参戦年 主な成績 F1参戦歴
ポーランドの旗ロバート・クビサ 2005 2005年チャンピオン 2006-2010, 2019, 2021(BMWザウバールノーウィリアムズアルファロメオ
ドイツの旗セバスチャン・ベッテル 2006-2007 2006年15位、2007年5位 2007-2022(BMWザウバー、トロ・ロッソレッドブルフェラーリアストンマーティン
ドイツの旗マルクス・ヴィンケルホック 2005 2005年3位 2007(スパイカー
スペインの旗ハイメ・アルグエルスアリ 2009 2009年6位 2009-2011(トロ・ロッソ)
インドの旗カルン・チャンドック 2005 2005年29位 2010-2011(HRTロータス
ベネズエラの旗パストール・マルドナド 2005-2006 2005年25位、2006年3位 2011-2015(ウィリアムズ、ロータス
ベルギーの旗ジェローム・ダンブロシオ 2006 2006年36位 2011-2012(ヴァージン、ロータス)
オーストラリアの旗ダニエル・リカルド 2009-2011 2009年34位、2010年2位、2011年5位 2011-2023(HRT、トロ・ロッソ、レッドブル、ルノー、マクラーレンアルファタウリ
フランスの旗ジャン=エリック・ベルニュ 2010-2011 2010年8位、2011年2位 2012-2014(トロ・ロッソ)
フランスの旗シャルル・ピック 2008-2009 2008年6位、2009年3位 2012-2013(マルシャケータハム
オランダの旗ギド・ヴァン・デル・ガルデ 2007-2008 2007年6位、2008年チャンピオン 2013(ケータハム)
フランスの旗ジュール・ビアンキ 2009, 2012 2009年NC、2012年2位 2013-2014(マルシャ)
イギリスの旗マックス・チルトン 2009 2009年40位 2013-2014(マルシャ)
デンマークの旗ケビン・マグヌッセン 2012-2013 2012年7位、2013年チャンピオン 2014-2020, 2022-(マクラーレン、ルノー、ハース
イギリスの旗ウィル・スティーブンス 2012-2014 2012年12位、2013年4位、2014年6位 2014-2015(ケータハム、マルシャ)
スペインの旗カルロス・サインツJr. 2013-2014 2013年19位、2014年チャンピオン 2015-(トロ・ロッソ、ルノー、マクラーレン、フェラーリ)
スペインの旗ロベルト・メリ 2014-2015 2014年3位、2015年14位 2015(マルシャ)
アメリカ合衆国の旗アレクサンダー・ロッシ 2010-2012 2010年NC、2011年3位、2012年11位 2015(マルシャ)
ベルギーの旗ストフェル・バンドーン 2013 2013年2位 2016-2018(マクラーレン)
フランスの旗エステバン・オコン 2014 2014年23位 2016-2018, 2020-(マノーフォース・インディアレーシング・ポイント、ルノー、アルピーヌ
フランスの旗ピエール・ガスリー 2014 2014年2位 2017-(トロ・ロッソ、レッドブル、アルファタウリ、アルピーヌ)
ニュージーランドの旗ブレンドン・ハートレイ 2009-2011 2009年15位、2010年10位、2011年7位 2017-2018(トロ・ロッソ)
ロシアの旗セルゲイ・シロトキン 2012-2014 2012年35位、2013年9位、2014年5位 2018(ウィリアムズ)
カナダの旗ニコラス・ラティフィ 2014-2015 2014年20位、2015年11位 2020-2022(ウィリアムズ)
オランダの旗ニック・デ・フリース 2015 2015年3位 2022-2023(ウィリアムズ、アルファタウリ)

フォーミュラ・ルノーV6・ユーロカップ[編集]

フォーミュラ・ルノーV6・ユーロカップFormula Renault V6 Eurocup)とは、2003年に創設されたフォーミュラ・ルノー選手権。2003年、2004年の2年開催したのみでワールドシリーズ・バイ・ニッサンと統合され、2005年から「フォーミュラ・ルノー3.5」となった。

車体[編集]

イタリアのタトゥース(Tatuus)社製のシャシーを使用し、エンジンは、ルノー製の排気量3.5L V6エンジン、ルノーV4Y RSを搭載した(370馬力)[5]

歴代チャンピオン[編集]

チャンピオン
2004年 スイスの旗 ジョルジオ・モンディーニ(Giorgio Mondini)
2003年 アルゼンチンの旗 ホセ・マリア・ロペス(Jose Maria Lopez)

類似カテゴリ[編集]

フォーミュラV6・アジア・バイ・ルノー[編集]

タトゥース・FRV6

フォーミュラV6・アジア・バイ・ルノーFormula V6 Asia by Renault)は、ルノー・スポールの協力の下、AFOS(アジアン・フェスティバル・オブ・スピード)によって主催され2006年に初開催された選手権である。

初年度となる2006年は、マレーシアインドネシア中華人民共和国の3ヵ国で5イベント全12戦の日程で開催された。2007年については、これら3ヵ国に加え、日本・オートポリスで開催された。

車体[編集]

シャシー及びエンジンは、2004年をもって開催が終了したユーロカップ・フォーミュラ・ルノーV6選手権のものを流用している。

歴代チャンピオン[編集]

チャンピオン
2009年 バーレーンの旗 ハマド・アル・ファルダン
2008年 タイ王国の旗 ジェームズ・グランウェル
2007年 イギリスの旗 ジェイムス・ウィンスロー
2006年 インドの旗 カルン・チャンドック

脚注[編集]

  1. ^ F1ライセンス制にルノーが抗議。政治的変更との声も”. オートスポーツweb. 2015年1月10日閲覧。
  2. ^ “フォーミュラ・ルノー3.5:『フォーミュラV8 3.5』として再スタート”. F1-Gate.com. (2015年10月20日). http://f1-gate.com/formula-renault-35/news_28860.html 2015年11月8日閲覧。 
  3. ^ 金丸悠参戦のフォーミュラV8 3.5が20年に及ぶ歴史に幕。2018年の開催見送り
  4. ^ ZRS03 (3.4-litre)”. GIBSON TECHNOLOGY LIMITED. 2022年9月20日閲覧。
  5. ^ Technical Data”. Renault sport. 2007年 10 月14 日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

公式サイト[編集]