フォレストプロット

フォレストプロット(forest plot)は、同一の問題を扱った複数の科学的研究から得られた推定結果と、それらを統合した全体的な結果をグラフで表示したものである[1]。医学研究においてランダム化比較試験のメタアナリシス結果を視覚的に表現する手法として開発された。近年20年間で、同様のメタアナリシス手法が観察研究(例: 環境疫学)にも広く応用されており、フォレストプロットはそれらの研究成果の提示にも繁盛に用いられている。ブロボグラム(blobbogram)とも呼ばれる。
フォレストプロットにはいくつかの形式があるが、一般的には2列構成で表示される。左列には研究名(多くの場合、ランダム化比較試験または疫学研究)が通常は上から下へ時系列順に列挙される。右列には、各研究の効果指標(例: オッズ比)が水平線で示した信頼区間とともにプロットされ、効果量は正方形で表されることが多い。オッズ比など比率を効果指標として用いる場合、信頼区間が各研究の推定値を中心に対称となるよう、また1より大きいオッズ比が1より小さいオッズ比に比べて課題に強調されないよう、グラフを対数スケールでプロットすることがある。正方形の面積はメタアナリシスにおけるその研究の重みに比例する。メタアナリシスによる全体的な統合効果推定値は破線の垂直線で示されることが多く、菱形としてプロットされるのが一般的で、菱形の左右の頂点がその信頼区間を示す。
「無効果」を示す垂直線もあわせてプロットされる。個々の研究の信頼区間がこの線と重なる場合、その研究では所与の信頼水準において効果量が無効果と有意に異なるとは言えないことを示す。統合効果推定値についても同様であり、菱形が無効果線と重なる場合は、所与の信頼水準においてメタアナリシスの全体的な結果が無効果と有意に異なるとは言えない。
フォレストプロットの起源は少なくとも1970年代にまで遡る[2]。1980年代初頭のメタアナリシスでは名称のないまま前身となる図が使われ始めており[2][3][4]:252、「forest plot」という表現が印刷物に初めて登場したのは、1996年5月に米国ピッツバーグで開催された臨床試験学会 のポスター発表要旨である可能性がある[5] 。名称の由来については、プロットが生成する「線の森」から来ているという調査結果がある[2]。1990年9月、リチャード・ピートが「乳がん研究者のパット・フォレストにちなんで命名された」と冗談を言ったことから、「forrest plot」と綴られることもある[2]。
例
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この図は代表的なシステマティック・レビューのフォレストプロットであり、早産が見込まれる妊娠における胎児の肺発達促進を目的としたコルチステロイド投与の臨床試験を示している。この治療が新生児の命を救うと示す十分なエビデンスが蓄積されてからも長らく広く知られておらず、治療は普及していなかった。その後、システマティック・レビューによってエビデンスが周知されると治療の普及が進み、新生児呼吸窮迫症候群による早産児の脂肪を数千例防ぐことができた。しかし、低・中所得国でこの治療を導入したところ、早産児の死亡率がむしろ上昇することが判明した。これは、医療水準が低い環境では感染症リスクが高く、乳児の死因となりやすいためと考えられている[6]。2017年のシステマティック・レビューでは、高所得国における本治療の有用性に関する追加研究の必要性は「ほとんどない」とされる一方、低所得国・高リスク妊娠に対する最適な治療法や投与量についてはさらなる研究が必要とされている[7]。
フォレストプロットの読み方
[編集]研究の識別
[編集]メタアナリシスに含まれる研究は、通常、左側に著者名と発表年が時系列順で示される。各研究がどの位置に配置されるかに特別な意味はない。
標準化平均差
[編集]プロットの右側には、各研究における介入群と対照群の効果量の差が示される。正確な数値は各行のテキスト部分に表示され、視覚的な概略がグラフフィック表現として右側に示される。垂直線(y軸)は効果がないことを示す。正方形から垂直線までの水平距離は、無効果を基準とした介入群と対照群の差、すなわち効果量の大きさを表す。
信頼区間
[編集]正方形から左右に伸びる細い水平線(ウィスカーまたはヒゲ)は信頼区間の幅を示す。線が長いほど信頼区間が広く、推定の精度は低い。線が短いほど信頼区間は狭く、推定の精度は高い。正方形またはウィスカーが無効果の垂直線と交差する場合、その研究結果は統計的に有意でないとされる。
重み
[編集]研究データの意義(統計的検出力)は正方形の大きさで示される。標本数が大きく信頼区間が狭い研究など、検出力の高い研究ほど大きな正方形で表され、統合結果への寄与度も大きい。
異質性
[編集]フォレストプロットは、同一の効果を観測した複数の研究がどの程度一致しているかも視覚的に示す。結果が一致しない場合は「異質(heterogeneous)」と呼ばれ、結論を導く上での確実性が低くなる。反対に結果が類似している場合は「均質(homogeneous) 」と呼ばれ、より確実な結論が得られやすい。
異質性は I2 統計量によって示される。I2 が50%未満であれば異質性は「低い」とされ、研究間の類似性が高いことを意味する。I2 が50%を超える場合は研究間の差異が大きいことを示す。
関連項目
[編集]- ガルブレイスプロット
- ファンネルプロット
- コクラン(組織) - ロゴがフォレストプロット
- フォレストプロットは、さらなる研究が必要かどうかを判断するのに役立つ
脚注
[編集]- ↑ Lalkhen, AG (2008). “Statistics V: Introduction to clinical trials and systematic reviews”. Continuing Education in Anaesthesia Critical Care & Pain 8 (4): 143–146. doi:10.1093/bjaceaccp/mkn023.
- 1 2 3 4 Steff Lewis & Mike Clarke (June 2001). “Forest plots: trying to see the wood and the trees”. BMJ 322 (7300): 1479–1480. doi:10.1136/bmj.322.7300.1479. PMC 1120528. PMID 11408310.
- ↑ Hedges, Larry V. (1982年). “Statistical Methodology in Meta-Analysis”. 2025年12月8日閲覧。
- ↑ Larry V. Hedges and Ingram Olkin (1985). Statistical Methods for Meta-Analysis. Orlando: Academic Press. ISBN 978-0-12-336380-0
- ↑ Bijnens L, Collette L, Ivanov A, Hoctin Boes G, Sylvester R (1996). Can the forest plot be simplified without losing relevant information in meta-analyses? Communication at the meeting of the SCT, Pittsburgh, Pennsylvania, 5–8 May 1996. Controlled Clinical Trials 17(2S): 124.
- ↑ Iain Chalmers (2016年10月4日). “Should the Cochrane logo be accompanied by a health warning?”. 2021年10月6日閲覧。
- ↑ Roberts, Devender; Brown, Julie; Medley, Nancy; Dalziel, Stuart R (21 March 2017). “Antenatal corticosteroids for accelerating fetal lung maturation for women at risk of preterm birth”. Cochrane Database of Systematic Reviews. doi:10.1002/14651858.CD004454.pub3. hdl:2292/34738. PMC 8094626.
外部リンク
[編集]- MIX 2.0 – メタ分析を実行してExcelでフォレストプロットを作成するソフトウェア。
- MetaXL – フォレストプロットを作成し、バイアス調整されたメタ分析を実行できるソフトウェア
- metafor: Meta-Analysis Package for R - フォレストプロットなどを記載できるRのパッケージ
- meta: General Package for Meta-Analysis - フォレストプロットなどを記載できるRのパッケージ